暁光碧烏~gyoko-hekiu~

拍手お返事書かせていただきましたm(_ _)m選挙は終わりましたが、これからが本番。選ばれた議員さん達には給料分きっちり働いて頂きましょう(๑•̀ㅂ•́)و✧

拍手お返事&さて、これから仕事をしていただきましょう(๑•̀ㅂ•́)و✧ 

拍手お返事&おまけ

選挙、一部の票はまだ終わっておりませんが大勢は決まりましたね(*´ω`*)いきなりの解散・総選挙でしたが、今回の選挙で野党が分離し、保守系とリベラル系がきっちり分けられたのは良かったかもしれません(#^.^#)
しかし本番はこれから!問題が山積みの日本ですから、その問題を一つ一つ地道に解決していただきませんと(๑•̀ㅁ•́๑)✧
憲法改正もいいですが、その前にやらなければならないことは沢山あります。少子高齢者問題に日本の借金、その他もろもろ・・・戦闘機一機分のお金で解決できる問題もありますし、まずは私達の税金の無駄遣いを可能な限り控えていただきたいです(>_<)

拍手コメントありがとうございますヽ(=´▽`=)ノお返事以下に書かせていただきますね~(^_^)/~
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ボカロ小説・日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)7 

日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)

ジメジメと湿った、古ぼけた通路に無機的な足音が響く。MR3620が引き止めるのも聞かず地下への階段を降りたK0332は、周囲を注意深く探りながら一歩一歩前へ進んでいた。幾重にも張り巡らされたレジスタンス側の電磁シールドがK0332の体内レーダを狂わせているからだ。

「2097年製に2138年製、この電波は2264年製か―――こう規格がバラバラの電磁シールドが張られていると、厄介だな。物理的に一つ一つ潰すしかないか」

かと言って電磁シールドばかりに気を取られていると敵に逃げられてしまう。そのバランスが難しいところだ。
仕方ないのでK0332は体内レーダをクローズし、そのかわり物理聴覚レベルの感度を最大限に上げる。元々ボーカロイドとして作られたK0332の聴覚は他のタイプのアンドロイドに比べて極めて優れている。それこそ鼠の足音、蜉蝣の羽音まで聞き分けることができる程だ。
K0332はその状態で周囲を探る。聞こえる範囲を徐々に広げていくと、右47度方向324.5m先からざわざわとさざめく複数の人間の話し声が聞こえてきた。

「間違いないな。だいぶ近い―――心臓音の数からすると人間の数は32人、エンジン音からヒューマノイド系マシンは3体、ってところだな」

レジスタンス側のヒューマノイドの性能がどれほどのものかは解らない。だが少なくとも自分よりも古い、ヴィンテージ物だ―――K0332はそう判断し、レイライフルのエネルギー充填が満タンであることを改めて確認した。これだけあればほぼ確実に全員倒せるだろう。

「あとはどれだけ不意打ちを食らわせる事ができるか、というところだが・・・やはりそう簡単にはいかないか」

忌々しげにK0332が呟いたその時である。地下道内に突如騒々しいエンジン音が鳴り響き、排ガスとガソリンの臭いがK0332の鼻を突く。

「・・・どうやらお迎えのようだな」

流石に侵入者の存在を知らせるシステムくらいは向こうにもあるのだろう。むしろ身を潜める手間が省けてありがたい―――K0332はレイライフルを構え、自分に近づいてくるエンジン音に向かって連射した。





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江戸瞽女の唄~むかし語り 

江戸瞽女の唄

うららかな小春日和の陽射しが座敷の奥まで差し込んでくる。朝餉を取ろうと着替えを終えた隼人のもとに、兄・祥太郎がやってきた。
 その手には赤子がすやすやと眠っている。隼人にとっては甥っ子に当たる祥三だ。兄が抱いているということは、きっと義姉が朝餉の支度をしていて手が塞がっているのだろうと隼人は推測する。

「ああ、もう起きていたか、蓮二郎」

 少し驚いた表情を浮かべる兄に、隼人はふくれっ面を露わにした。

「・・・・・・当たり前じゃないですか、兄さん。一体何時だと」

「昔はこの時間になって叩き起こしに来てもなかなか起きなかったくせに」

 祥太郎の指摘に隼人は苦笑いを浮かべることしか出来ない。確かに子供の頃は寝坊癖が治らず父や兄によく叱られていた。

「で、わざわざ起こしに来てくださったんですか、兄さんが・・・・・・というか、庄屋様直々に」

「それもあるが、ちょっと話したいことがあってな・・・・・・お前、そろそろみわと一緒になるい気はないか」

 あまりにも単刀直入過ぎる、唐突な言葉に隼人は面食らう。

「はぁ?一体何を言い出すかと思えば。どういう風の吹き回しですか?」

「親父殿がお前のことを心配して、毎夜枕元で愚痴をこぼすんでな。いい加減お前も大人になったらどうだ、いろいろな意味で」

 祥太郎は隼人にそこに座るように促すと、自らもあぐらをかいた。そうなると兄の話は長くなる――――――立ち話では済まないのだ。隼人も諦めて祥太郎の前に正座する。

「しかし兄さん、俺のところには親父殿は枕元どころか夢にもでてきませんが」

「そりゃあお前が心の何処かで拒んでいるからだろう。というか、未だに根に持っているんじゃないのか?俺とおみわが許嫁になったことを」

 からかうように言うと、祥太郎は腕に抱えた我が子の顔を覗き込んだ。

「おみわの代わりに、というのは語弊があるが、みわの妹のおつやが嫁に入ってくれたんだし、既に三人も子供を成してくれている。許嫁の件はもう遥か昔のことだ」

 祥太郎は遠い目をしながら更に続ける。

「お前たちも瞽女の仕事があるだろうから、簡単に所帯は持てないだろう。だが瞽女と手引以上の絆を持っても良いんじゃないか?」

「はぁ」

「その決意ができれば、お前の枕元にも親父殿が出てくると思うぞ」

「それは勘弁願いたいですね。兄さんのお気遣いはありがたいですけど、暫くは今のままでやっていきます」

 きっぱりと言い放った隼人に、祥太郎は苦笑いを浮かべた。



 法要が終わると隼人は早々に実家を後にし、みわを預けてある瞽女の頭領の家に向かった。勿論みわが心配だったということもあるが、やはり兄を始めとする家族から色々云われるのが煩わしいということが一番の原因だ。

(俺達は俺達だ――――――瞽女と手引、充分じゃないか。夫婦以上に一緒にいられる関係なんだから)

 みわに欲望を感じないと言えば嘘になる。だがその欲望さえ押さえ込んでおけば、どちらかが死ぬまでずっと一緒にいられるのだ。その為には己の浅ましい欲望など捨ててしまえる――――――隼人はそう信じ込み、みわを引き取り早速巡業へと出向いていった。


 だがこの三日後、隼人は己に課した禁を犯すこととなる。





UP DATE 2017.10.21 

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烏のがらくた箱~その三百九十七・こ~ゆ~場合、どう対応したら・・・(゚∀゚) 

烏のがらくた箱

一般的な田舎町同様ジジババが多いわが町ですが、それでも僅かながら小さなお子さんもいます(*^_^*)で、赤ちゃんは泣くのが仕事みたいなものですし、3~5歳ぐらいのイヤイヤ期も(当事者のお母さんは大変ですが)微笑ましいもの(*´艸`*)特に理由など無くちょっとした不安や不機嫌で泣いているんだろうな~ということも多いのですが、ごくたまに『これはお声がけしたほうが良いのか?』という状況もありまして・・・以下のような状況の場合、皆さんはどのような対応をしているのでしょうか(・・?ちょっと気になったので2~3個ほど実例を書かせていただきます(*^_^*)因みにどの状況でもお母さんは殺気立っていて声がかけづらい状況でした(>_<)

◆耳鼻科診療所にて。いつもは適温&きれいな空気にこだわっている診療所なのですが、その日はたまたま空調の調子が悪かったのか、室内が変に蒸し暑い状態でした。そんな中、泣き出してしまった1歳位の赤ちゃんが・・・。その赤ちゃん、かなり厚着だったんですよね~。その日確かに外は寒かったのでお母さんとしては『風邪を引かないように』と厚着をさせたのでしょう。しかし蒸し暑い室内では着込みすぎ(>_<)ほっぺもだいぶ赤く、明らかに『この子、間違いなく『暑い~!』って泣いているんだろうな』と子育てをしたことがない私でさえ理解できたのですが、お母さんは泣き止ませるのに必死でそこまで気が付かないようでした。

◆電車内にて。それまでご機嫌で笑っていた2~3歳の女の子が突如泣き出してパニック状態に(>_<)親御さんらは理由がわからず泣き止ませようとしておりましたが、私はしっかり見ておりました。子供用のバギーのつなぎ目に、その子のウデ肉が挟まってしまったところを・・・本当であれば声をかけたかったところですが、電車内で中途半端に混んでいたため声をかけるどころか近づくことさえ出来ませんでした(>_<)

◆真夏のかなり暑い日、薬局にてやんちゃ盛りの男の子が保冷剤を舐めまくり、お母さんに叱られておりました。しかしどう見てもその子は熱中症直前状態・・・きっと喉が乾いていたのでしょう。保冷剤にくっついていた水滴を必死に舐めておりました(-_-;)
そしてそんな場所に限って水が無い・・・自動販売機も無いし経口補水液さえ見える場所に売っていない(>_<)というか、私が直接知っている子育て中の母親は大抵水筒を持ち歩いているのですが、そのお母さんは水筒を持っていないようでして。その後、私より先に薬局を出ていきましたが『保冷剤を持ち歩くくらいなら水筒を持ち歩いたほうが良いんじゃないか?』とつい思ってしまいました(^_^;)

基本的にお子さんのことを一番理解しているのは親御さんだと思うのですが、時には距離が近すぎるが故に気が付かないこともあるのかな~と。せめてお声がけできる雰囲気があれば良いのですが、世知辛い世の中、なかなか難しいものがあります(^_^;)


今週もご来訪&拍手、ランキングへのご協力ありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ
選挙もとうとう明後日に迫ってきましたね(๑•̀ㅂ•́)و✧どんな結果になるかは判りませんが、まずは一票を投じること、これに尽きます(๑•̀ㅁ•́๑)✧雨がひどくなりそうなのはちょっと気になりますが(^_^;)この雨がどう選挙結果に影響してくるのか、それも気になるところです。
ちょっと気になったのですが公◯党党首のあのセンスのない替え歌、如何なんでしょうかねぇ。政治団体の党首としてではなく、創価学会と強い繋がりのある団体のリーダーとして。あそこの団体って日蓮宗でしたよね?あ~ゆ~下品な替え歌はOKなのか、いっそ池田大作先生のご意見を聞いてみたいところです






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烏のまかない処・其の三百二十九~アンチョビとオリーブのピザ 

烏のまかない処


近所にあったビルが壊され、新たなショッピングモールを建築しているのですが、その間のつなぎにと隣町まで買い物遠征に行っております。その際、買い物をするビルと同じ建物内に『カプリチョーザ』があると知り、たま~に利用させていただいております(^_^;)
昔は大皿料理だったカプリチョーザですが、今は一人分メニューも充実(*´艸`*)とはいえ結構好き嫌いが激しいのでまだ王道料理しか食べていないのですが・・・そんな中、ひょんな間違いから食べることになってしまったのがアンチョビとオリーブのピザ"アッチューゲ"です/(^o^)\
たまたまランチメニューセットがこのピザだったのですが、店員さんの説明がちょっと小声&滑舌悪くて聞き取れず(^_^;)メニュー写真に映っていたマルゲリータのつもりで注文したらこれがでてきたのですwww
まぁ、いい加減に店員さんの説明を聞いていた自分が悪いので、そのまま頂いたのですが・・・これは昼間に食べてはいけません(-_-;)アンチョビの塩気とオリーブの風味が酒を誘うのですよ・・・食べれば食べるほど『あああっ、ワインがほしいっ!昼酒飲みてェェェ!!』という欲求が高まってくるのです/(^o^)\
あ、もしかしたら日本酒もイケるかも。アンチョビ≒イワシの塩辛みたいなものですので、ほぼ間違いなく日本酒も合うでしょう。少なくともコーヒーではバランスが取れませんでした(>_<)何故これをランチメニューに採用したのか・・・間違いなく夜に客を誘うためとしか思えない(-_-;)このピザ一枚で嗜む程度のお酒が飲めればワインのハーフボトル一本、そこそこの酒呑みだったらフルボトル一本は飲めるでしょう。ビールなら更に飲んでしまいそうwww酒豪だったらアッチューゲ一枚で無限に酒が飲める可能性がありますので、酒呑みは昼間に迂闊に頼まないほうが良いかも/(^o^)\
あ、あとお魚が苦手な人はちょっとダメかな。結構イワシ独特の臭気がありますから、アンチョビは(慣れるとソレが美味い!)
テッパンのピザも良いですけど、たまには大人味のピザも良いものです(*´ω`*)

次回更新は10/26、今回はお酒のアテにもなりそうなものでしたので、甘いものを取り上げたいかもです(と言いつつ辛いものだったりする^^;)





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vague~豚屋火事・其の貳 

港崎遊郭連続誘拐事件の章

 階段を二十段ほど下ったところに踊り場があり、火はそこで激しく燃えている。冬物の重たい打掛を頭から被ったまま、白萩は息を詰めて踊り場を駆け抜けた。

(熱いっ!)

 足袋を履かない娼妓の素足に、炎と熱気が容赦なく襲いかかる。床もかなり熱くなっており、脚を踏み出すのにも難儀した。もしかした既に足の裏や脛に火傷を負っているかもしれない。それでも白萩は一気に階段を駆け下り、二階に辿り着く。

「みんなっ、早く!」

 同心の江川に早く一階に下りろと促されながらも、白萩は後ろを振り返り叫んだ。その声に娼妓達は次々に階段を駆け下り始める。だが白萩の声がかかるまで躊躇していた分、それは遅すぎた。

「きゃぁあああ!」

 四人目の娼妓が階段の中程まで下りたまさにその時、階段の炎が急激に大きくなり、娼妓もろとも崩れ落ちたのである。
 否、階段だけではない。岩亀楼の三階全体が激しい炎に燃え上がり、崩れ落ちたのだ。まだ三階に残っていた娼妓達は断末魔の悲鳴を上げながら落下し、炎に包まれる。さらにぼとぼとと落ちてくる炎は二階の床にも延焼し、白萩達に迫ってきていた。

「他の娼妓達は諦めろ!早くしないと俺達も焼け死ぬぞ!」

 江川は立ち尽くす白萩らに怒鳴りつけると、自ら先頭を切って一階へと駆け下りていく。

「夕菊ちゃん、行こう!梅富士ちゃんには悪いけど」

 炎に包まれている同僚をおろおろ見つめている夕菊に、白菊は目に涙を浮かべながら訴えた。
 炎に包まれながらも梅富士はまだ生きていた。身体に付いた火を消そうと床を転げまわっており、もしここで火を消してやれば彼女は一時的に助かるかもしれない。
 だが、その前に燃え盛る炎に包まれて逃げ道を失う事は確実だ。そうなったらここにいる全員助からなくなる。せめて幼い夢菊が一人で逃げられる場所までは、と白菊は夕菊をかき口説く。

「うん・・・・・・」

 助かるかもしれない同僚を見殺しにする後ろめたさと後味の悪さはあるが、夕菊も覚悟を決めた。そして夢菊との三人は一階へ続く階段を駆け下りる。

「熱いっ!」

 火の粉がかかったのか、階段の途中で夢菊が悲鳴を上げた。その瞬間、夢菊の脚が止まってしまう。

「夢菊ちゃん!これを被りなさい!」

 夢菊の悲鳴に白萩が自らの打掛を夢菊にかけてやり、その手を引っ張った瞬間である。階段を駆け下りる三人目がけて炎に包まれた天井が降り注いできたのだ。決して広くない階段上の三人にその破片を避ける術はない。炎をまとった天井の破片は容赦なく襲いかかり、白萩の頬は灼熱の痛みに襲われた。
 それだけではない。頭や肩、背中にも容赦なく炎の欠片が降り注ぐ。早く階段を下りて外に逃げ出さなくては焼け死んでしまう――――――焦りのままに白萩は一歩踏み出した。
 だが白萩の一歩をしっかり支えてくれる筈の足場は、その一歩を踏み出した途端、脆くも崩れてしまったのだ。

「えっ、何!」

 白萩の驚愕の声と共に身体がぐらりと揺れる。そして次の瞬間、崩れた足場から炎の柱が吹き出したのだ。

「白萩ちゃーん!」

 夕菊の悲鳴が轟々と唸る炎の中に響く。一体自分の身に何が起こったのか理解できないまま、白萩は炎の中へ落下していった。



 港崎遊郭を取り囲む頑丈な塀に沿いながら、作間と垣崎は炎を上げている岩亀楼に向かって走り続けていた。頑丈な塀は焼け落ちる様子を見せないのに、不快な熱気と火の粉だけは容赦なく二人に襲いかかる。
 落ちた火の粉は兄から借りた一張羅の羽織に穴を開け、ちりちりと項の後れ毛を焼いていく。髪の毛を焼く嫌な臭気が鼻を突くが、それを払っている余裕は今の作間にはない。

「駿次郎先輩!あそこです!」

 ようやく見えてきた岩亀楼裏の通用門を指差し、垣崎が叫んだ。大門に比べたらあまりにも貧相な出入り口だが、大門と違い押し合いへし合いになっている様子はない。
 更に近づくと誰かが避難誘導をしているようだった。その声に従うように着の身着のままの男衆や腰巻姿の娼妓達が順々に遊郭の外へ避難している。

「木下?木下、生きているのか!」

 声の主に気がついた垣崎は、通用門から出てくる妓楼の者達を強引に掻き分け、通用門の内側に入り込む。そこには全身煤だらけになりながら避難誘導をしている木下の姿があった。

「あ、垣崎さん!」

 垣崎の顔を確認するなり、木下は煤で汚れた顔に満面の笑みを浮かべる。どうやら怪我も無さそうで垣崎は安堵した。だが次の瞬間、兼田と江川の姿が近くにない事にも気が付く。

「おい、木下。他の二人はどこにいる?」

 嫌な予感を覚えつつ、垣崎は木下に尋ねた。その問いに対し木下は岩亀楼の勝手口の方を指し示す。

「二人ならまだあの中です!」

 幸いにも勝手口はまだ炎が回っておらず、次々に娼妓や禿、男衆らが外に出てきている。

「二人は若い衆に代わって日本人館で避難誘導をしているんです」

 木下が誇らしげに答えた瞬間、垣崎が訝しげに眉を顰めた。

「若い衆に・・・・・・代わってだと?」

 避難誘導をするのはともかく、見世の若い衆に代わってという理由が解せない。そんな垣崎に木下は事情を説明する。

「ええ。外国語を喋れる若い衆は洋人館の避難誘導に回っているんです」

「そうか。外人は無理でも日本人なら同心でも誘導できるから、って事だな」

 ようやく合点がいったらしい垣崎の一言に、木下も深く頷いた。

「そうなんですよ。兼田さんは一階で、江川さんは二階か三階に行っている筈なんですが・・・・・・ああっ!!」

 垣崎に説明をしていた木下の口から不意に絶叫が飛び出し、上の方を指さす。

「さ、三階が!」

 木下が指差した方向を見た垣崎も思わず大声を上げる。その瞬間、ばきばきと不快な大音響と共に岩亀楼の三階部分が崩れ落ちてきた。炎を纏った木っ端や熱せられた瓦、砕け散った硝子窓が容赦なく二人に降り注ぐ。

「え、江川さんが三階にいるかもしれないんです!」

 今にも泣き出しそうな声で訴える木下を垣崎が怒鳴りつける。

「木下!おめぇはここで誘導を続けろ!俺が・・・・・・って、駿次郎先輩!!」

 木下を落ち着かせ、自分が燃え盛る岩亀楼に飛び込もうとしていた矢先であった。垣崎の横を大柄な影が――――――いつの間にか通用門から中に入り込んでいた作間が素早くすり抜けたのである。
 作間はそのまま燃え盛る岩亀楼に走り寄ると、まだ見世の者が出てきている勝手口から強引に入り込んでしまう。

「あの馬鹿!あのでかい図体でいつの間に通用門から中に入りやがった!」

 先輩を先輩とも思わぬ毒舌でけなすと、垣崎はそのまま作間の後を追いかける。

「おい、作間駿次郎!勝手に人のシマを荒らすんじゃねぇ!」

 垣崎は勝手口で誘導をしている兼田を突き飛ばしながら岩亀楼の中へ飛び込み、やくざ者紛いの恫喝を作間の背中にぶつけた。だが作間は背後で喚く垣崎を振り返りもせずにやり返す。

「おめぇのシマなんざ知ったこっちゃねぇ!白萩が・・・・・・三階に部屋を持っている娼妓達がまだこの中にいるんだよ!」

 ぱらぱらと落ちてくる火の粉を払い、纏わり付く煙にむせながら作間は階段の方へ進む。どうやら三階にいた見世の者達、そして江川が逃げ遅れているらしい。
 作間と垣崎は険しい表情のまま舞い散る火の粉の中をくぐり抜け、岩亀楼名物の石灯籠がある中庭が見える場所まで出た。
 すると二階に続く階段下で江川が上を見ながら何かを叫んでいるではないか。

「江川!大丈夫か!!」

 垣崎は駆け寄りながら江川に声をかけるが、江川は上を見たまま返事をしない。その視線に嫌な胸騒ぎを覚えた作間と垣崎は、江川の視線を追いかけ階段を見上げた。

「あ、あれは!」

 それを見た瞬間、垣崎が思わず大声で叫ぶ。江川の視線の先――――――そこには炎に包まれた女達の姿があった。
 充満する黒い煙に遮られて顔はよく見えないが、うっすらと見える影からすると娼妓が二人に禿が一人のようである。絶え間なく降り注いでくる火の粉と炎と共に舞い落ちてくる木っ端に行く手を遮られ、三人は降りるに下りられないのだ。
 さらに不運な事に、燃え広がる炎は階段を支える柱にも移り勢いを増している。上にいる三人もろとも炎が階段を包むのにそう時間はかからないだろう。

「早く!早く下りてこないと焼け死ぬぞ!」

 江川の怒声が炎の中に響く。その声に反応したのか、一人の娼妓が階段を下りようと一歩踏み出したまさにその時である。今まで耐えていた階段の柱が炎に耐え切れず崩れ落ちたのだ。

「えっ、何!」

 脚を一歩踏み出した娼妓は驚きのあまり悲鳴を上げる。そしてその声は紛うことなく白萩の声だったのだ。勿論作間がその声を聞き逃すはずもない。

「白萩!」

 作間は反射的に江川を突き飛ばし、炎の中へ飛び込む。そして階段から落ちてくる白萩を受け止めようと鍛えあげられた双の腕を伸ばした。

どさり!

 しっかりした手応えと共に作間の身体が前のめりになる。間一髪、落ちてきた白萩を受け止めることが出来たのだ。作間は上手く腕の中に収まった白萩の身体を落とさぬよう、足を踏ん張った。
 腕の中の白萩は、顔やむき出しになった脚に火傷を負っている上に気を失っている。どうやら階段から落ちる途中で意識を失ってしまったらしい。

「白萩!俺だ!目を開けてくれ!」

 作間は腕の中でぐったりしている白萩に訴えるが、白萩は微かに睫毛を震わせるだけで目を開けようとはしなかった。
 一方、垣崎と江川はかろうじて残っている階段の上にいる二人――――――夕菊と夢菊に飛び降りろと叫んでいた。ただ、かなりの高さがあるだけに二人共飛び降りるのに躊躇している。

「早くしろ!階段の柱がやられちまっている!そこの足元が崩れるのも時間の問題だぞ!あんたが飛び降りなけりゃ妹分だって助からないんだ!」

 必死の形相で江川が夕菊に訴え、手を伸ばす。

「おら、そっちのガキ!とっとと飛び降りやがれ!おめぇがちんたらしているから姉分達が逃げ遅れたんだろうがよ!」

 子猫のように恐る恐る下を見ている夢菊に、垣崎が苛立ち紛れに怒鳴りつける。そんな決めつけたような垣崎の物言いに、夢菊が少々たれ気味の眦を釣り上げる。

「そんなこと無いもん!何も知らないおじさんのくせして!」

 逃げ遅れたのが自分の所為だと言われたのがよっぽど悔しかったのか、夢菊は垣崎の顔を目がけて飛び降りた。

「おっと、危ねぇ!」

 自分の顔目がけて飛び降りてきた夢菊の脚を抱えるように抱きとめると、垣崎はそのまま夢菊を肩に担ぐ。

「ちょっと!お尻触らないでよ!すけべっ!」

 夢菊の小柄な身体を担ぎあげた際、垣崎の手が夢菊の腰に触れてしまったらしい。夢菊は脚をばたつかせながら垣崎の肩の上で暴れ始めた。

「大人しくしやがれ、このガキ!おめぇの貧相なケツなんざ興味ねぇよ!おい、江川!そっちはどうだ?」

 垣崎は夢菊の脚を無理やり押さえつけると、江川の方を確認する。すると丁度その時、階段の上からまるで天女の如くふわり、と夕菊が江川の胸許に飛び降りてきた。その優雅さに垣崎は思わず口笛を吹く。

「さすが岩亀楼の花魁ともなると飛び降り方も色気があるぜ・・・おい、江川!他に逃げ遅れた奴はいるか?」

 垣崎の言葉に江川は首を横に振り、夕菊は哀しげに目を伏せた。

「殆どが三階に取り残されました。上の階で生きている者はいないでしょう」

 江川の報告に垣崎は唇を噛み締め、覚悟を決めたように頷く。

「判った・・・・・・江川!取り敢えずここから逃げるぞ!駿次郎先輩、そっちは大丈夫ですか!」

「ああ。意識は失っているが生きている!」

 作間は両腕で白萩を抱えたまま垣崎に答えた。この炎の中、生き残っているのはこの六人だけだろう。

「急ぎましょう!ここも間もなく焼け落ちる!」

 垣崎の言葉に作間と江川は頷き、激しさを増す炎の中を勝手口に向かって走りだした。





UP DATE 2017.10.18

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烏のおぼえ書き~其の二百三十一・東京市の保健衛生事業 

烏のおぼえ書き

北里柴三郎や野口英世らが登場し、公衆衛生学の研究が発展しつつあった昭和初期ですが、その恩恵が庶民まで行き届くにはあともう少し・・・というところだったようです。
昭和3年度における法定伝染病患者数は東京市内でも7000人、その内赤痢が3000人、腸チフスが2000人、猩紅熱とジフテリアが約1200人、その他天然痘患者などもいたようです。
この数は欧米の都市と比較するとかなり多かったようですね(´・ω・`)
しかもこの患者数は都市に人々が流入し、人口が多くなっていくほど人口1000人に対する割合が多くなってゆき(明治31年:2.75%→昭和3年:3.44% なお明治31年の法定伝染病患者数は4000人弱)、患者死亡率も25%前後を推移していたようです。
(特にひどかったのが大正7年の患者死亡率33.18%、法定伝染病に罹ったら3人に1人は死んでいたという(>_<))
こんな状況を打開しようと、東京市は保健衛生施設の建設にも力を入れておりました。その第一が5つの市民病院(*^_^*)広尾、大久保、大塚 、築地の一般病院と、東京市療養所(結核診療所)があったとのことです。

ただ、病気になってから治すのではいくら病院がしっかりしていても手が回らない(>_<)そこで病気にならない環境を!と二つの方法でごみ処理をしておりました。何せ東京市が排出するゴミの量は一日あたり23万貫(862.5t)/(^o^)\処理をしなければ瞬く間にゴミで溢れかえってしまいますのでねぇ(^_^;)
その方法一つは深川の埋め立てにゴミを利用すること。因みに一日に深川の埋立地に運ばれたゴミの量はかなり多く、手車850台、自動車18台、伝馬船150艘、人夫1300人がその処理にあたっておりました。
また塵芥処理工場も深川に設置、7万貫前後のごみ処理を行っていたとのこと。1貫=3.75kgなので換算すると262500kg=262.5tですね。当時は生ゴミだったら庭に穴を掘って埋めてしまいますし、紙や枯葉は焚き火に出来ました。更に埋め立てに使われているゴミもあるのにの多さ・・・大都市ならではなのでしょう(´・ω・`)

更にし尿処理もこの時代徐々に進化してきていたようです。一部には下水が通り、水洗トイレも出来ていたようで(*^_^*)それでもまだまだ汲み取り式が一般的(>_<)当時のお金で35万円余りがし尿処理に使われていたそうです。
(そして今和次郎先生が調べ上げた市民一日の放尿量が2000石とのこと/(^o^)\これ、リットルに直すと360720㍑らしい・・・よく調べられたなぁ、と感心いたしますwww)

次回更新は10/24、東京市の上下水道について取り上げる予定です(*^_^*)




【創作関連】
医療関係も面白そうですが、それ以上に気になるのがごみ処理の方ですね。私が子供の頃まで『生ゴミは土に埋める。自分で燃やせるものは庭で燃やす』が当たり前で、それほど出すゴミの量は多くなかったはずなのですが・・・文字通りちりも積もれば山となる、東京市になれば相当な量だったのでしょう(>_<)そして『普通のゴミ』が自宅で処理できたということは、ゴミ処理場に集まってくるゴミ達は個人じゃ処分できない、訳アリ品が多くありそうな予感が( ̄ー ̄)ニヤリ
そんな訳アリ品のゴミ達&ガテン系一癖も二癖もあるおっさんたちの話など面白そうです(๑•̀ㅂ•́)و✧
(イケメンじゃないけど男前なオッサンが書きたい・・・てか男臭い男前オッサンがあまり供給されないので、自己生産するしか無いという/(^o^)\)


【参考・引用文献】
新板 大東京案内 下(今和次郎 編纂 ちくま学芸文庫)


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拍手お返事&火山の危険警戒レベルの基準って・・・ 

拍手お返事&おまけ

箱根駅伝、私の母校の日大はものの見事に予選敗退しました/(^o^)\10位と91秒も差があったんじゃあねぇ・・・留学生におんぶにだっこじゃなくもっと日本人練習せい!と活を入れたいところです(-_-;)
(大学駅伝レベルになったら能力差なんて殆どありませんからねぇ。科学的根拠に基づいた、合理的かつ気合&根性をも加味した練習をしなけりゃ勝てません。我が母校は頭悪いから『合理的』部分が極めて弱い/(^o^)\)

新燃岳、またまた活動が活発になっているようですね(>_<)火山の気まぐれは人間の手に負えないものですので、ただやり過ごすしか対策方法はないのでしょうが・・・あの火山の危険警戒レベルの基準というものはどうなっているのでしょうか(・・?
以前我が県内にある大涌谷も危険警戒レベル3になったことがあるのですが、今回の新燃岳や他の火山に比べてかなり貧相な火山活動だったんですよね~(-_-;)もし大涌谷を基準にするのであれば、今回の新燃岳の活動は危険警戒レベル4~5くらいになるんじゃないのか?と思えるのですが・・・あれは近所にある家の数も判断基準に含まれるのでしょうかねぇ。ニュース映像で見るとかなり危険に思えるのですが((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
これから紅葉が美しくなり、登山客も多くなる季節です。できればもう少し、明確な判断基準が示されるとありがたいかもです(>_<)

拍手コメントありがとうございますヽ(=´▽`=)ノお返事以下に書かせていただきますね~(^.^)/~~~


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ボカロ小説・日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)6 

日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)

「今回はやっと増上寺まで進めたんだけど、残念ながら増上寺にも監禁施設は無かったの。しかも最悪なことに掃討部隊まで来ちゃって」

30人ほどが集まった部屋の中、中央に立ったリンが偵察の報告をする。その報告にその場に居た仲間達はがっかりとした表情を露わにした。

「そうか・・・カズもマサムネも、そしてミクちゃんさえも見つからなかったか。レジスタンスの人間はともかく、ミクちゃんはヴィンテージ・ボカロだから分解機に放り込まれたりしないとは思うが」

リーダーらしい、50代ほどの男が呻くように呟く。

「そうとも限らないわよ、タクミ。私達をヴィンテージなんて崇め奉ってくれるのは人間だけで、中央政府から見たら単なる旧式ヒューマノイドだもの」

悲しげに眉をひそめながらメイコが口を開いた。

「間違いなくカズやマサムネと同じ扱いを受けているはずよ」

「でもさ!ミク姉からの『信号』は確かに受信したんだよ。だから絶対にどこかで生きているはず!」

悲観的なメイコの言葉をリンが打ち消そうと声を上げる。だがメイコは悲しげに首を横に振った。

「『信号』だけなら『MOTHER』からでもダミーを発信できるわ」

その一言にその場な沈鬱な空気に包まれる。

「・・・だけど、ほんの僅かな可能性があるなら私達は助けに行くべきだし、他の誰かがいるかもしれない。取り敢えずは一回計画を立て直して出直すしか無いわね。タクミ、どれ位で次の準備が整う?」

「大体一週間くらい、かな」

その時である。不意にレンが立ち上がり、壁に耳をつけた。

「・・・何かが近づいてくる。距離は324.5m、二本足歩行だけど人間の歩き方じゃない。ほぼ間違いなく掃討部隊の兵士だろうけど何故か1体だけだ。普通ならグループで行動するのに。すっげぇ気味が悪いんだけど」

敵らしきものが近づいてくる―――レンのその一言に場の空気が凍りつく。

「ショウ!女子供を17シェルターに避難させろ!その他の奴らは配置に付け!」

緊迫したリーダーの号令に全員が立ち上がり、走り出した。




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江戸瞽女の唄~みわの追懐 

江戸瞽女の唄

 月夜に朗々と長唄が流れてゆく。やや年配、の艶めいた唄声に続き、若々しい声が探り探り続くところから鑑みると、どうやら師匠に稽古をつけてもらっているらしい。

「・・・・・・さぁて、こんなところにしておこうかね。おみわ、お登喜」」

 三味線の撥を止めて瞽女の師匠のお尚が声をかける。関東大震災の悲劇の中、生き残った数少ない『指導ができる瞽女』の一人で、みわを始め若い瞽女達は彼女に稽古をつけてもらっている。

「はい、お師匠様。本日もお稽古ありがとうございました」

 みわと妹弟子のお登喜は三味線を置き、畳に手をついて礼をする。三人とも盲ているだけに傍から見ると滑稽かもしれないが、どんな世界にも礼儀は大事である。それは瞽女の世界でも変わりはない。

「久しぶりの稽古だけど、本当にあんたは筋が良いわね、おみわ」

 三味線の弦を緩めつつ、お尚がみわに声をかける。その褒め言葉にみわは恥じらい、はにかんだ笑みを浮かべた。

「いえ、そんな」

「お師匠様の言うとおりよ。瞽女の中で一番の稼ぎ頭なんだし」

「それは隼人の采配が良いからだと・・・・・・」

 確かに瞽女の稼ぎは依頼者との交渉窓口である手引の腕に拠るところが大きい。勿論瞽女の技術や容姿も稼ぎを左右するが『唄える場所』を見つけ出さないことにはどうしようもないのだ。
 隼人の手腕は仲間内でも群を抜いており、お尚の亭主でもある瞽女の親方も一目置いていた。

「本当にあなた達二人には感謝しているわ。江戸瞽女は先の震災でだいぶ数を減らしてしまったけど・・・・・・流行りの唄はどの瞽女でも唄えるけど、江戸瞽女にしか唄えない歌もある。それを伝えていっておくれね」

 師匠の言葉に、みわは思わず背筋を伸ばし気を引き締めた。



 瞽女屋敷の使用人によって部屋に案内されたみわは、手探りで寝間着を探り当て、着替えを済ませる。普段であれば隼人が手はずをしてくれるのだが、父親の法事で地元に帰っている。手引にとって一年に何度かしか無い貴重な休暇を邪魔することは瞽女であってもできない。

「たまには隼人も・・・・・・蓮二郎お兄ちゃんに戻る時間が必要ですよね、庄屋様」

 みわは闇に沈んだ虚空を見つめ、まるで誰かに語りかけるように呟く。その視線の先には壮年の男の姿があった。それは二年前に亡くなった隼人の父親――――――みわが生まれた村の庄屋だった男の亡霊であった。

「悪いね、おみわちゃん。あの馬鹿息子のせいで盲にしてしまった上にほったかしにして」

 亡霊とは思えぬ、しっかりした輪郭を保った庄屋は、隼人によく似た笑みを浮かべる。その笑顔につられるようにみわも思わず笑みを浮かべる。

「いいえ、庄屋様。こんな事がなければ、私は――――――大好きだった『蓮二郎お兄ちゃん』を独り占めする事ができませんでしたから。盲になって瞽女になったことはむしろ感謝しております。ただ、庄屋様の墓前にお線香一本もあげられず」

「その事は気にしなくていいよ。実際こうやって話せるんだし。明日には蓮二郎もこっちに戻ってくるだろうから、またよろしく頼むよおみわちゃん」

 申し訳無さそうに謝るみわに気遣いを見せつつ、隼人の父親はスッ、と闇に消えた。



 物心付いた頃から蓮二郎はみわの傍にいた。長女であるみわの世話を蓮二郎は何くれと焼いてくれ、まるで本物の兄妹のようだった。その関係が変わってしまったのはあの日――――――みわと蓮二郎の兄・祥太郎が許嫁になった日である。
 二人の事実上の婚約を聞いた蓮二郎は急に不機嫌になり、そして追いかけてきたみわを土手から突き落としたのである。
 当時は自分の身に起こったことが受け入れられず、ただ混乱するばかりだった。ようやく落ち着いたのは瞽女になるために組合がある東京に出てきてからだろうか。失明してしまったことを嘆くこともあったが、それは長くは続かなかった。
 家の手伝いや弟妹の世話をすることさえ無く、流行りの唄を教えてもらい、その唄を褒めてもらえる日々はまるで幸せな夢を見ているようだった。確かに目の見えない不自由はあったが、身の回りの世話をしてくれる世話役がみわが気が付かないことにまで気を回してくれたので、本当に困るようなことは殆ど無かったのも幸いした。その為だろうか、自分を土手から突き落とした蓮二郎に恨みを感じることは全く無く、基本的な修行期間を過ごしていく。


 そんな中、瞽女として一人前になったみわに付けられたのが、手引の修行を終えたばかりの隼人だった。


 既に変声を終え、低い声になっていたから最初は判らなかったが、余計なおせっかいをしてくる精霊や付喪神らがみわに伝えてきた。隼人が本当は蓮二郎だということ、そして村を飛び出しみわの世話をせんがために手引になったということを――――――。
 だがみわは『隼人』にその事を問いただすことが出来ずにいた。もし聞いてしまったら彼が――――――蓮二郎が自分の許から去ってしまうのでは、という恐れがみわに二の足を踏ませているのだ。

(蓮二郎おにいちゃんと・・・・・・隼人と離れたくない)

 兄と慕っていた感情はいつしか恋へと変わっていた。昔と違い、今は瞽女の結婚も認められているから互いがその気になれば所帯を持つことも可能だろう。だが目が見えない自分が妻になってしまったら隼人の負担は更に増えるのではないか――――――その思いがみわに二の足を踏ませていた。

(自分の気持ちを押し殺してさえいれば――――――隼人が誰かと結婚するまでは一緒にいられる)

 未来永劫、とは願わない。普通であれば出かける度に手引が変わる瞽女も少なくない中、みわ達は請け負ってくる仕事量が多いからという理由で一緒に組むことを許されているのだ。その幸福をありがたく思うべきなのだが、人の欲というものはどんどんと大きくなるというのもまた事実である。

(いつか・・・・・・自分の気持ちが伝えられる日が来るのかな)

 虫の声だけがみわの耳を撫でてゆく。叶うはずもない想いを抱え、みわは布団へと潜り込んだ。




UP DATE 2017.10.14 

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Author:乾小路烏魅
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角川twitter小説大賞優秀賞受賞

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