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「紅柊(R-15~大人向け)」
甲午・秋冬の章

ならずの御職・其の貳~天保五年七月の片恋(★)

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 五三郎との一戦を交えたあと、清波は『小用を』と部屋を後にした。大概そういう時は他の廻し客の所へ行く時だ。新見藩の陪臣の子とはいえ、芝生まれの芝育ちの五三郎である。この廻しがあるからこそ格安で娼妓が買えるのだと割りきって煙管を吹かせ始めた。

「・・・・・なかなか旨いじゃねぇか、この刻み煙草。」

 五三郎は自らの煙草入れを見つめながら唸る。その中に入っている煙草は、昨日幸が『お客様用だけど、少し多く買いすぎてしまったから』と五三郎に分けてくれたものであった。いつも飲んでいる煙草よりも細く刻まれており、味が滑らかだ。その舌触りの良い煙に陶然としながら、先ほど消え去った幸の幻の残滓を少しずつ手繰り寄せてゆく。

「あともうちょっとだったのにな。」

 つまりは実力で幸を手に入れろ、ということなのだろうか。五三郎は深く煙を吸い込むと、火皿の灰を煙草盆に落とした。その時である。

「お待たせぇ!」

 思いがけないほど早く清波が帰ってきたのである。時間にしたら線香一切分も無いだろう。

「おいおい、どうしたんだ?やけに早ぇじゃねぇか・・・・・まさか、本当に小用だったのかよ。」

 冗談半分に五三郎は尋ねるが、清波は五三郎の茶化しに苦笑いを浮かべた。

「いえ、廻しだったんですよ。途中までは上手くいってたんですけどねぇ。何故かコトの最中にお客さんのものが萎えちまって・・・・・そのまま『今日はこれで』って帰っちまったのさ。」

 清波は寂しそうに呟いて五三郎の横に座る。

「何でなんでしょうかねぇ・・・・・わっちのお客は結構そういうお方が多くって。わっちとしては誠心誠意、お務めしているつもりなんですけど。」

 誰も振らないと公言するほど仕事熱心な娼妓である。それだけに客が途中で帰ったり、離れていってしまうのが悔しいのだろう。唇を噛み締め、目に涙を浮かべる。その表情に五三郎はつい余計な一言を零してしまった。

「途中で、か・・・・・何となく判るような気がするなぁ。」

 その瞬間、清波は真顔で五三郎ににじり寄る。

「後藤様、どうかその理由を教えてくれなんし!わっちの何処が悪いんでしょうか?直せるもんなら直して見せますから!」

 その鬼気迫る清波の迫力に気圧されながら、五三郎は先程感じた事をそのまま口にする。

「いや、おめぇさんが直接の理由じゃないんだよ。この見世に結構二枚目の油差がいるだろう。そいつが・・・・・。」

 と、五三郎が言いかけたその瞬間、清波の顔が行灯の灯りでもはっきり判るほど赤くなった。

「やっぱり・・・・・自分の想いってモンは、隠していても出ちまうものなんですかねぇ。」

「え?自分の、想い・・・・・?」

 清波の思いがけない一言に、五三郎は面食らう。

(も、もしかして清波もあの野郎に惚れているって言うんじゃ・・・・・。)

 まさかとは思ったが、得てして嫌な予感ほど当たるものである。案の定、初恋を語る乙女のように頬を染めたまま清波は自分の心の中を五三郎に吐露し始めた。

「これは誰にも言わないでおくんなんし・・・・・わっちの片恋の相手なんです。油差の辰治郎さんは。」

(なんてこった!)

 両思いなのに互いの気持ちに気がついていない―――しかもそれが初心な少年少女ではなく、色恋に関して百戦錬磨の廓の男と女が、である。黄表紙よりも突拍子もない恋のあやに五三郎はただ唖然とするばかりであった。

「な、なるほどなぁ・・・・・。」

 顔をひきつらせつつ苦笑いするしか無い。多分もう一人の客が気が付いたのは辰治郎とかいう男の視線だけだろう。だが、清波の隠している想いも薄々感じてしまってしまったのかもしれない。
 互いに惚れ合っている仲の女を抱きながら、男の刺さるような視線を感じる―――良人が用心棒をする夫婦夜鷹でもあるまいし、よっぽどの好きものか、間男の趣味でもない限り耐えられる状況では無いだろう。

「世の中、うまくいかないもんだよなぁ。」

 自分も清波も惚れた相手を抱くことが出来ない―――――思わず五三郎は呟いてしまった。

「ところで後藤様はお時間はまだおありで?」

 どうやら逃げてしまった客の他、清波の相手は五三郎だけらしい。清波の問いかけに五三郎は目線を上に上げ考えこむ。

「う~ん、あと半刻以上はお師匠様も水野様の家中と話し込まれるだろうから・・・・・」

 今回のお仕置きで斬罪にされた男の兄が『どうしても』と吉昌を接待していた。本来自分が弟の首を斬らねばならぬのに、腕が無いばかりに山田一門にそれを任せてしまったと悔やんでいた表情が思い出される。あの様子では吉昌もなかなか開放して貰えないだろう。

「だったらもう一回、如何です?」

 そう言いながら清波は五三郎の太腿へ手を伸ばしてきた。確かにさっきは幸の幻を消されてしまい、精を吐き出しはしたものの中途半端なモヤモヤが残っている。だったらこの鬱屈した思いまで全て吐き出してしまおうと、五三郎は再び清波へと手を伸ばした。



 辰治郎の話をした所為だろうか、先程より清波の肌が熱を帯びているような気がする。五三郎は袷から手を忍ばせると、火照った乳房を下から掬い上げ、凝った乳首を指で摘まむ。

「はぅん。」

 五三郎に絶妙な愛撫が心地よかったのか、鼻にかかった甘い声が清波の口から漏れる。そのまま乳房を弄びながら、五三郎は清波の秘所に手を伸ばした。その刹那、再び油差の辰治郎が気配を消して部屋の中へ入ってきたのである。その気配の消し方は完璧で、目で確認していなかったら間違いなく存在に気がついていなかっただろう。

(ちっ、こんだけ気配を消せるんならさっきだって・・・・・さっきのあれは絶対にわざとだな。)

 五三郎は辰治郎の忍び足に怒りにも似た感情を覚えた。清波との情交を邪魔されるのは別に何とも思わないが、清波の上に重ねていた幸の幻を霧散させたことだけは絶対に許せない。

(そんなに見たいんなら見せてやろうか!)

 五三郎は清波を行灯へ―――――辰治郎のいる方へ向けて横向きに寝かせると、素早くその後ろへ回る。

「後藤様?」

 いつもはしない横臥位に清波は怪訝そうな表情を浮かべる。

「たまにはいいだろう?二回とも同じやり方じゃ芸がねぇし。」

 清波を背後から抱きしめつつ、五三郎はその耳許で囁く。そして襟元に手をかけると一気に開き、小振りな乳房を辰治郎の目の前にさらけ出した。その瞬間、辰治郎の息を呑む気配が五三郎に伝わってくる。

(ざまぁねぇ・・・・・だったらこれはどうだ!)

 五三郎は立て続けに清波の着物の裾をたくし上げると左足に手をかけ、高々と抱え上げた。
 清波の身体を隠すものはかろうじて腰に残っている帯だけである。小振りな乳房の頂きで小刻みに震えながら凝っている乳首、意外とむっちりと脂の乗った太腿に、さらにその奥で蜜を含んで息づいている淫靡な繁み―――――全てが辰治郎の目に晒される。

「!!」

 その瞬間、辰治郎の動きが不意に止まり、清波の裸体にその視線が釘付けになった。だが、幸の幻の代償はこんなものでは済まない。五三郎は挑むような視線を辰治郎に投げかけながら清波の耳朶を軽く噛む。

「あんっ。」

 甘ったるい声が清波の唇から溢れると同時に、五三郎は意地悪く耳許で囁いた。

「清波、油差の辰治郎がおまえさんの恥ずかしい姿を見てるぞ。それでもいいのか?」

 その囁きに清波は恥じらいを見せ、顔を伏せようとする。だがそれを許さず、五三郎は辰治郎に見せつけるように清波の蜜壺へ己の逸物をゆっくりと挿入し始めた。

(うっ、何だよ、この締め付けは!)

 先程の、ふわりと綿で包まれたような緩い締め付けとは反対に、まるで経験の浅い若い娘のように清波の蜜壺は五三郎の逸物をきゅうきゅうと締め付けてくる。惚れた男に見られていると知っただけでこの反応である。五三郎は悪乗りをして、わざと大きく濡音を立てながら激しく腰を動かし始めた。その様子を辰治郎は小刻みに震えながら見つめている。

( ふん、こっちのお楽しみだって潰されたんだ。それくらいは苦しんでもらわねぇとな!)

 惚れた女が全てをさらけ出し、自分以外の他の男に弄ばれている―――――普通の男であれば相手の男に殴りかかっているだろう。だが辰治郎は唇を噛み締めたまま油をさし、そのまま部屋を出て行った。



 辰治郎は部屋を出るとそのまま厠に駆け込んだ。

「畜生、あの男・・・・・わざとだ!」

 厠の扉を閉めるなり下帯を緩め、はちきれんばかりに怒張した逸物を引っ張りだすと、辰治郎は自分で慰め始めた。
 脳裏には清波の白い肌と男の逸物を飲み込んでいる秘所が浮かんでいる。さらに一瞬だけ視線があった時、清波は後ろめたそうに視線を逸らしたように見えた。
 単純にバツが悪かっただけかもしれないが、辰治郎にはまるで不義密通の現場を取り押さえられた妻のように見えたのだ。
 いっそ他の娼妓のように堂々としていてくれれば清波への想いは冷めるのかもしれない。だが、清波はこの見世に買われてきた時からずっと変わらず、清純な乙女のような恥じらいを持ち続けているのだ。

「花魁・・・・・!」

 十三年前、泣きそうになるのをじっと耐えながら女衒に連れて来られた姿が今でも目に焼き付いている。当時十六歳だった辰治郎は単に泣かれないようにと飴玉を渡したのだが、その時辰治郎に見せた、花のような艶やかな笑みに辰治郎の心は奪われた。

 尤もその愛想の良さは誰に対しても、というのは後々判明するのだが、それでも辰治郎の恋心が冷めることはなく、年を経るごとにますます強くなってゆく。
 いっそ別の見世の娼妓なら金で買うこともできるが、同じ見世ではそれも許されない。
ただ、清波が他の男に抱かれているのを指を咥えて見ているしか無いのだ。

(花魁が・・・・・左の脇腹を撫でられると弱いことさえあの武左衛門は知らないくせに!)

 痛みを伴うほど勃起した逸物を擦りながら、辰治郎はいつしか妄想の中で清波を抱いていた。



UP DATE 2013.7.10

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何とびっくり、座敷持・清波と油差・辰治郎は互いに片思い(だと思い込んでいる)でした(*´艸`*)まぁ、状況が状況なので互いの想いを知っていても付き合うことは出来ないんですが・・・(´・ω・`)

ただ、面白く無いのが五三郎(爆)最初は油差の辰治郎に同情さえ抱いていた五三郎ですが、互いに両思いだと解った瞬間いぢわるをし始めます。間男趣味は皆無の五三郎なんですが、幸の幻(というか妄想)を潰されたのがよっぽど悔しかったんでしょうねぇ。辰治郎の前に清波の裸体をさらけ出し、見せつけるようにヤッちゃうなんて(身も蓋もない・・・^^;)
さすがに我慢しきれなくなった辰治郎は厠に飛び込み、自分で処理することになっちゃいました(^_^;)
次回更新予定は7/17、辰治郎が妄想の中で清波を抱きます。できれば久しぶりにかなりハードなのを書きたいかも・・・なにせ廓の男女ですからv朝UPでもやることはやりますよ~v
(なので閲覧は夜に、がオススメです^^;)
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K様、ハードエロはハードエロなんですが・・・(^_^;) 

お早うございます\(^o^)/ハードエロはエロなんですが、残酷絵方面ではなくテクニシャン同士の技の繰り出し会いになりま~す(爆)何せ残酷絵が流行したのは慶応2年から慶応3年に版行された『英名二十八衆句』以降、天保じゃ先走りすぎてますって\(^o^)/オワタ
(ちなみに残酷絵、我が猫絵師・国芳門下の落合芳幾と、その弟弟子の月岡芳年によって制作されております^^)里見八犬伝、鎌田敏夫先生執筆のものでしょうか?あれは色っぽかったですよね~(^q^)

感想ありがとうございましたv16日、楽しみにしておりますね(^^)ではでは~(^.^)/~~~
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