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「紅柊(R-15~大人向け)」
甲午・秋冬の章

鮫ヶ橋の残暑・其の壹~天保五年八月の房事(★)

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 仲秋とはいえ、昼間はまだまだ暑さが残る筈の八月だが、去年からの天候不順の所為か江戸の町はすっかり秋めいていた。朝晩は震えるほど寒く、本来単で過ごさねばならない時期なのに、寒がりの年寄りは行李から袷や綿入、ひどい者は半纏まで引っ張りだして着込む始末である。

 だが、その日暮らしの鮫ヶ橋の住人にそんな余裕は無い。下帯一つ、中には縄を腰に巻いただけの裸体の男達が昼間から酒を飲み博打を打ち、客をとる女達は腰巻一つで同僚と井戸端会議をしている。医者どころか売薬さえ買うことが出来ない鮫ヶ橋では極めて珍しい年寄りでさえ、元の色形が判らない襤褸を身に纏い、辛うじて雨風をしのげるあばら屋の中で蹲っている有様だ。

 そんな中、夕波だけは継ぎ接ぎの少ない袷の着物を着込んでいた。鮫ヶ橋の町名主他、この土地で権力を持つ男達の殆どをたぶらかし、金をむしり取っているからだ。
 鮫ヶ橋において、その貪欲さで夕波の右に出るものはいないだろう。最初こそ『吉原から美貌の花魁が流れ着いてきた』ともてはやしていた男達も、十日もすると夕波を恐れて近づかなくなっていたし、権力者達さえも夕波に恐喝されて渋々顔を見せる有様であった。今や鮫ヶ橋の権力者達が夕波の男妾になっているといっても過言ではないだろう。

 今日もまた、そんな哀れな男の一人が夕波の局見世から命からがら飛び出してきた。長着から下帯まで、身に着けているものを全て手に持ち、全裸で飛び出してきた男の頬はげっそりとこけ、目は落ち窪んでいる。足許はふらつき、何かに怯えるように縮こまった逸物は、弱々しい秋の陽光に晒され、一層哀れを誘う。

「ふん、情けない。たったの五発で使い物にならなくなるなんてさ・・・・・・何が鬼鷹組の若頭だ!おとといきやがれ、糞ったれ!」

 紅色の長煙管を手にした夕波が、哀れな男の背中に悪態を投げつける。どうやら噂を聞きつけた無頼者が夕波を買いにわざわざ鮫ヶ橋までやって来たはいいが、返り討ちに遭ってしまったらしい。精の一滴まで搾り取られ、あとは命だけというところまで追い詰められたところで辛うじて逃げ出すことが出来たらしい。

「ま、ニ分程度しか払えない男じゃこんなところかねぇ」

 夕波は長煙管の吸口を唇に運びつつ、懐から二分銀を取り出す。男はこれで三日三晩夕波を買いたいと言ってきた。
 吉原じゃ一晩分にしかならない値段だが、一切り二十四文が相場の鮫ヶ橋ではかなりの高額だ。勿論夕波は否とは言わず嬉々として男を引き入れ――――――否、引きずり込んで事に及んだのだが、男が保ったのはたった半日であった。夕波の性欲の強さに耐えられる男はそういない。

「そう言えば益五郎の野郎、全く顔を見せやしない・・・・・・あいつがいないから、せっかくの一見を潰しちまったじゃないか」

 煙管をくゆらせながら夕波は、ふと新實益五郎の事を思い出した。去年の年末から暫くの間夕波の許に通っていた新實だったが、ここ三ヶ月ほど顔を見せていない。
 何せ同心二人を始め多くの者を殺した男である。いつ何時奉行所に捕まってもおかしくないし、どこかで野垂れ死んでいる可能性だって否定出来ない。それならば仕方がないと思うが、夕波の有り余る性欲を満足させられる男は新實しかいないだけに惜しい気もする。

「ま、仕方ないか。あんなろくでなし、何処で野垂れ死んでも・・・・・・」

「誰がろくでなしだって?」

 独りごちた夕波に、何者かが物陰から声をかける。夕波はそちらに流し目をよこしながら、剣呑な声で答えた。

「あんたの事だよ、益五郎。ろくすっぽ顔を見せないでさ・・・・・・こっちは仕方なしに貧相なモンを相手に小銭を稼いでいるんだ」

「仕方ねぇだろう。急なお勤めで上方まで行ってきたんだからよ」

 そう言いながら物陰から現れたのは新實益五郎だった。三ヶ月前と変わらぬ姿、そして凶悪さを漂わせながら夕波に近づき、古ぼけた合切袋を夕波に放り投げる。

「おっと・・・・・・何だい、この重さは!」

 小さな袋とは思えぬその重さに吃驚した夕波は、慌てて合切袋を開いた。そこには二分銀や一朱銀、その他小銭がぎっしりと詰まっていた。ただ、小銭と入っても高額な二分銀が中心で、かなりの金額になることは算盤が出来ない夕波でも容易に想像できる。

「こんなに、沢山・・・・・・」

 この中の一枚を稼ぎだすのに、三日三晩――――――実際は半日だが――――――身体を売ろうとした自分が馬鹿らしくなってくる。だが、新實は夕波の局見世に上がりこみながらつまらなそうに呟いた。

「所詮小銭ばかりだ。だが、こっちに小判を持ってきたらそれだけで足がつくだろう。小判の方も両替屋で崩したらこっちに運び込むからそのつもりでいてくれ」

 勝手知ったる我が家の如く、新實は敷かれたままの布団の上に座り込む。そして古びた煙草盆に置かれた煙管を手にし、煙草を詰め始めた。

「いいのかい?わっちが全部使い込んじまうかもしれないよ?」

 金子の山に機嫌を良くしたのか、夕波は煙管を吸う新實の傍に座り込み顔を覗きこむ。実際夕波なら瞬く間に持ち込んだ金子を使い果たしてしまうだろう。だが、新實はそんな夕波を窘めることなく、むしろ満足気な笑みを見せた。

「別に構わねぇさ。また稼げばいいだけだ・・・・・・誰かを斬り刻んでよ」

 新實は夕波の細い顎に指をかけ、煙草臭い息で囁く。

「それより『お勤め』続きで飯盛さえ買えなかったんだ・・・・・・やらせろよ、夕波」

 新實の目には明らかな欲情が浮かんでいる。それを認めた瞬間、夕波も涎を垂らさんばかりの物欲しげな表情を浮かべた。

「まったく無粋な男だよ・・・・・・もうちっとましな口説き文句な無いのかい?」

 新實に文句を言いつつも夕波もその気になっている。あからさまなしなを作りながら夕波は新實に抱きつき、接吻を乞う。その露骨過ぎる誘いに怯むことなく、新實は夕波の唇を吸った。その瞬間、夕波の舌は新實の唇を割り、遠慮無く新實の口腔に入り込んで貪り始める。

「ん・・・・・・ふっ」

 夕波の舌は蛇のように新實の口腔を下品に這いずり回り、淫猥な濡音を立ててゆく。口の端からは唾液が垂れ、顎を濡らしていくが、そんなことはお構いなしに夕波は強く新實の舌を吸い、唇を軽く噛んだ。並の男であれば、それだけで射精してしまったり、怯えて逃げ出してしまうかどちらかの反応を示すだろう。だが新實は余裕の笑みを浮かべつつ、夕波の首筋に指を這わせる。その愛撫に夕波は身体をくゆらせ、胸や腰を新實に押し付け始めた。

「・・・・・・おめぇは本当に恐ろしい女だな、夕波」

 夕波の長く、淫らな接吻から開放された瞬間、新實は夕波の目を覗きこむ。

「人を殺してきた男を怖がるどころか、てめぇから進んで貪るとはよ・・・・・・俺には似合いの女だ、おめぇは」

 新實は嬉しげに呟くと、夕波の耳朶に歯を当て強く噛んだ。

「あうっ!あ、あんた、ひとの耳朶を食いちぎる気かい?」

 愛撫にしてはあまにも乱暴な噛み方に、夕波は柳眉を逆立て新實から逃れようとする。だが、新實は夕波を離そうとはせず、さらに強く抱きしめた。

「それがご希望だったら食いちぎってやっても構わないぜ」

 だが、その言葉とは裏腹に新實はじゅるり、と音を立てて夕波の耳朶を吸い上げ、舌で敏感な部分を舐め上げる。その瞬間、夕波の身体が痙攣したようにびくり、と跳ね上がり、鼻にかかった嬌声を上げる。

「ちょ、ちょっと、あんた、そこは・・・・・・あうっ!」

 先程男の精を絞りとった女とは思えぬほど愛らしい声を上げ、夕波は身体を色っぽくくねらせた。だらしなく着崩した着物の裾は既に大きく乱れ、白粉を塗った内腿が、その奥の影まで露わになる。その艶めかしさはいつもの強欲な夕波とは思えない。

「色っぽく啼くじゃねぇか、夕波・・・・・・よっぽど餓えていたのか?」

 新實は再び耳朶に軽く歯を立てると、左手を夕波の懐に突っ込んだ。張りのある膨らみの頂きで主張している凝った乳首を指で弾いたあと、強く指で摘んで引っ張り上げる。

「はうっ!」

 痛みに顔を歪める夕波だが、その声には明らかな欲情が含まれている。

「こんなに乳首を凝らせやがって。どんだけ男を咥えこめば気が済むんだ、おめぇはよ」

 新實は耳朶から唇を離すと、着物の袷を乱暴に左右に開き双の乳房を露わにした。そして情事に艶めく乳房に歯を立てる。

「おおうっ!」

 夕波が獣の様な声を上げ、新實の頭を抱きかかえる。だが、新實は噛み付くことを辞めなかった。柔らかな乳房に幾つもの歯型をつけながら乳房を貪り、乳首に吸い付く。そして舌で転がしながら軽く歯を立てた。

「はうっ・・・・・・いつまで、焦らすんだい。早く、おくれよぉ!」

 いつまでも乳房に噛み跡を付けている新實に業を煮やした夕波は新實の股間に手を伸ばし、逸物を引っ張りだそうとする。

「そんなに欲しいのかよ・・・・・・こいつが欲しかったらまずは舐ってからだ」

 新實は己の着物の前をはだけると、下帯をずらし半勃ちになっている逸物を下帯から引っ張り出した。

「ふぅん・・・・・そんなにしゃぶられるのが好きになっちまったとはねぇ。ま、女冥利に尽きるけどさ」

 この時代、どんな淫乱な売女でも、男の逸物を口で舐って愛撫をするものは極めて少ない。夕波はそういった意味で稀有な存在なのだ。その愛撫に新實が溺れるのも仕方ないだろう。
 新實の要望に対し夕波は満足気に微笑むと、舌で鈴口を舐めつつ新實の逸物を咥え込んだ。半勃ちだった新實の逸物は、淫らに蠢く夕波の口の中徐々に大きくなってゆく。

「おい、夕波。お前も可愛がってやるから俺の顔に跨がれ」

 夕波の愛撫を受けつつ寝転がった新實が、夕波に指示を出す。その指示に驚いたのは夕波である。

「いいのかい?仮にもお武家の顔に跨るなんて・・・・・・ちょっと気が引けるねぇ」

 さすがに一瞬躊躇した夕波だが、新實自身が乗っかれというのだ。夕波は遠慮の欠片さえ見せずに裾を腰までまくり上げ、新實の顔の上に跨った。その時である。

「ひいっ!」

 濡れ始めた花弁にぬるりとした感触を感じ、夕波の動きが突如止まる。新實の舌が夕波の花弁を舐め上げたのだ。その痺れるような快感に夕波は思わず腰を揺らす。

「そ、そこはダメだって、感じちゃうっ!あっ、ん・・・・はうん・・・・・ 」

 そして湧き上がる快感に耐えられず、腰から崩れ落ちるように新實の身体に全身を預けてしまった。だが、新實の攻撃は止むことなく、充血し膨らんだ花芽目がけて舌を動かし始めたのである。

「あんっ、そこぉ・・・・・・もっとぉ!」

 夕波はさらに淫らな花弁を新實に押し付けるが、新實は不意に愛撫を止めてしまう。

「感じるなら感じるって言えよ、夕波。でなけりゃこのまま止めちまうぞ」

 その瞬間、夕波の顔が強張った。

「そ、それだけは・・・・・感じてる!気をやりそうなほどなの!だから止めないで!」

 ここで愛撫を止められてはたまらない。夕波は新實の顔に股間を押し付け、盛りのついた猫のように腰を振る。

「この淫乱が・・・・・・そこまで言うなら腰が抜けるまで可愛がってやるぜ」

 昏い愉悦を含んだ新實の声が、夕波の股間に響いたその瞬間、新實の舌が濡れそぼる花芽をペロリ、と舐め上げた。





UP DATE 2013.8.7

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久しぶりに登場しました、新實&夕波の悪役コンビvここまで突き抜けているとむしろ清々しささえ感じてしまいます♪(おいっ)

どうやら新實は江戸を離れ、上方に『お勤め』に出ていたようです。やはり不景気、出張でもしないとやっていけないのでしょう。夕波だって昔は一晩で軽く稼げた二分というお金を稼ぐのに必死です。
そんなストレス社会の鬱憤を晴らすかのように二人は情事に没頭しますvええ、今月はお盆の帰省もありますから調べ物が多いエロ無し話はちょっと大変なのですよ(^_^;)困ったときのエロ頼み、ってやつです(^_^;)

次回更新は8/14、完全にこの続きになります。クソ暑い残暑の盛り、暑苦しい二人の情事が続きますがご容赦のほど、宜しくお願いしますm(_ _)m
(お盆時なので特に閲覧にはご注意をv背後から覗かれたら元も子もないような話です^^;)
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