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「紅柊(R-15~大人向け)」
甲午・秋冬の章

清波の年季明け・其の参~天保五年十二月の始末(★)

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 冬の夜気と情事の熱が入り混じる部屋の空気がゆらり、と揺らぐ。油差の辰治郎が整え、柔らかく部屋を照らす行灯の下、五三郎の眼前に清波の全てがさらけ出されてしまった。
 あえかに息づく秘所はしっとりと濡れ、すぐにでも男を迎え入れられるだろう。だが五三郎はすぐに清波を貪るような真似はせず、さらに両足を大きく広げた。その瞬間、蜜壺に溜りつつも辛うじて持ちこたえていた甘露がとろりと零れ出し、清波の菊座を伝い布団まで濡らしてゆく。それを確認した五三郎は、清波を上目遣いで見上げつつニヤリ、と笑う。

「他に客もいねぇんだし、今日で最後なんだから多少羽目をはずしたって大丈夫なんだろう?」

 行灯の灯りに煌めく蜜の道をなぞり上げつつ、五三郎は清波に尋ねる。その動きはいつもの五三郎の手の動きとは違い、わざと清波を焦らすかの如く繊細なものだった。その指の動きに翻弄されまいと腰を捩りつつ、清波は五三郎の問いかけに応える。

「そ、そりゃあご贔屓にしてくださった後藤様の頼みとあっては・・・・・ふあっ!」

 五三郎の節くれだった指が清波の花芽を撫で上げた瞬間、清波は嬌声を上げ、頤を仰け反らせた。普段であれば娼妓に負担をかけないよう、適当なところで愛撫を切り上げ交合に持ち込むのが江戸の男の嗜みである。だが今日は清波を抱くことができる最後の日なのだ。しかも他に客がいないとなれば、普段遠慮して出来ないことも試したくなるというのが人情だろう。
 五三郎もその例に漏れず、ここぞとばかりに清波の身体を良いように嬲り、百戦錬磨の娼妓を翻弄しようと躍起になっていた。いつも以上に充血し、膨らんだ花芽を弄ぶだけでは飽きたらず、清波の背後に廻り大胆に開ききった清波の両足を抱え直す。そして乱れた襦袢をさらにまくり上げ、蕩けきっている清波の花弁や花芽、そして菊座まで指を這わせ続けたのである。いつにも増してしつこく、そのくせ繊細すぎるその動きに清波は首を横に振りつつ懇願する。

「ご、後藤様、もう堪忍・・・・・・」

 これ以上嬲られては身体が持たないと年下の上客に許しを請う清波だが、五三郎はそれを許さなかった。

「まだまだだ。腰が抜けちまうまで可愛がってやる。それとも・・・・・・」

 五三郎は背後から清波を強く抱きしめ、耳朶を甘噛みする。

「俺じゃなく、辰治郎に抱いて貰うか?」

 辰治郎、という名前が五三郎の口から出た瞬間、五三郎が舐っている清波の耳朶が熱を帯びた。

「もう・・・・・・意地悪を言わないでおくんなんし!」

 舐りから逃げ出した清波は、肩越しに五三郎を睨めつけるが、その瞳は欲情に潤み迫力の欠片もない。それをいい事に五三郎は再び清波の耳朶を咥え、さらに清波の花弁や花芽、そしてあえかな膨らみの頂で凝った乳首を再び責め立ててゆく。

「何が意地悪なもんか。惚れた男に抱かれたいって思うのは当然じゃねぇか。それともこうやって惚れた男の目の前で他の男に抱かれる方が好みなのか?」

 わざと清波を恥ずかしがらせるような一言を小さく囁くと、五三郎は舌先を清波の耳に差し込みつつ蜜壺に指を挿れた。上下の穴に異物を差し挿れたその瞬間、ちゅぷり、と淫猥な音大きくが響き、同時に屏風の向こう側の気配がゆらり、と揺れる。

(さすがに動揺を隠せねぇようだな)

 屏風を挟んでもはっきり感じられる辰治郎の動揺に、五三郎は満足する。あくまでも客商売、辰治郎側からいざこざを起こすわけにはいかないし、そもそも見世の花魁に恋心を抱くこと自体吉原ではご法度だ。それでも抑えきれない感情が溢れでてしまうのだろう。

(むしろ喧嘩になるくれぇの方が潔くていいと思うけどよ・・・・・・吉原とはいえ『お店者』の辛ぇところだよな)

 辰治郎に対する同情とほんの少しの優越感に浸りつつ、五三郎はわざと屏風の向こう側に居る辰治郎に聞かせるよう声を張り上げた。

「おいおい、こんなに締め付けやがって・・・・・・指にまとわりついてきやがるぜ」

 清波の蜜壺に挿し込まれる指はいつの間にか三本に増えている。それだけ響かせる濡音は激しく、濃密な女に匂いも立ち込めてゆく。それだけの反応を示しつつも、品を崩さない清波に『ならずの御職』の矜持を五三郎は感じた。この矜持が女の表裏を全て知り尽くしている廓の男を惹きつけるのだろう。

「仕事でさえこれだけの気の遣りようだ。辰治郎に抱かれたらどんな風になっちまうのか、ちょいと興味はあるが・・・・・・」

 五三郎は親指で花芽を擦りつつ蜜壺に入り込んでいる三本の指を動かし続ける。さらに左の乳首を嬲っていた手は左側の乳房全体を包み込み、揉みしだき始めた。

「か、変わるわけ・・・・・・ああっ!」

 徐々に激しさを増してゆく五三郎の愛撫に、清波も本気の声を上げ始める。だが、それは五三郎の愛撫の所為ばかりとはいえない。今や素人でも判る屏風の裏側の気配に、清波は昂ぶり始めているのだ。それに感づいた五三郎は意地悪く清波に囁く。

「いや、変わるさ。他の客は気がついているか解らねぇけど、あんたの身体は正直だよ。何せ辰治郎の気配を感じるだけで・・・・・・・」

 くちゅり。部屋中に更に大きな濡音が響く。五三郎が蜜壺から三本の指を派手に引き抜き、それを清波の目の前に突き付けたのだ。その指はぐっしょりと濡れ、指の先端からは濃密な雫がひとつ、またひとつと滴り落ち清波の柔肌に垂れてゆく。

「ほら、こんなに濡れちまう。蜜壺の締りだって全然違うんだぜ。これでよく今まで他の客にばれなかったのか感心するぜ」

 五三郎は濡れた指を美栖紙で簡単に拭くと、清波を布団の上にうつ伏せにし尻を高く掲げさせた。そして丸く張り出した尻を両手で掴み、大胆に押し広げる。すると尻の奥から蜜をたっぷり含んだ花弁とひくついている蜜壺が顕わになった。

「おっと、こっちを向く必要はねぇぜ、花魁」

 一瞬首を捻り、五三郎の方を向こうとした清波に、五三郎が声をかける。

「今からおめぇを抱くのは後藤五三郎じゃねぇ。油差しの辰治郎だ・・・・・・顔が見えなきゃ想像しやすいだろう」

 五三郎は上体を清波の背中に押し付け、逸物を濡れそぼった花弁に擦りつけながら囁いた。

「・・・・・・その代わり、俺もあんたを幸と思って抱く。お互い片恋同士、開き直って楽しもうぜ」

 自嘲気味に笑うと、五三郎は一気に清波の蜜壺に己の逸物を突き立てる。いつもはしない後背位という体位の所為だろうか、いつにも増して力を漲らせている五三郎の逸物が清波の蜜壺の中、余計にはっきり感じられる。それはいつも相手にしている五三郎の逸物ではなく、初めて抱かれる誰か――――――否、抱かれたくても抱いてはもらえぬ辰治郎の逸物のように清波には感じられた。

「ああっ!」

 まるで辰治郎に抱かれているような錯覚に陥った清波は、派手な声を上げて腰を振る。その腰の動きに合わせるように五三郎の動きも激しいものになっていった。いつの間にか屏風裏の気配は消えていたが、二人はそれに気づかず高みへと昇ってゆく。

(互いの想い人を胸に抱きながら、っつうのも俺達らしいな)

 いつか互いの想い人と心を通じ合わせる日が来るだろう。それまでの繋ぎとしての関係が五三郎と清波にはお似合いなのかもしれない。情事の淫靡な空気と冬の夜の清冽さが入り混じる部屋で、五三郎と清波は最後の夜の名残を惜しみ続けた。



 清波の恵比寿屋における務めは大晦日ギリギリまで続いた。既に借金はすべて返済しているし、最後の日くらいは身上がりをしても誰も文句は言わなかっただろう。だが清波は最後の最後まで贔屓客の為と見世に出て、務めを果たしたのである。
 除夜の鐘が鳴り始める中、最後の客を送り出した清波は女将の居る内所へと入った。するとそこには女将と主、そして番頭達が揃って年越しそばを食べていた。だが辰治郎はまだ仕事が終わっていないためかその場にはいない。内心がっかりしつつもそれを顔に出さず、清波も年越しそばを受け取った。

「清波、あんたは本当に馬鹿な子だよ。今日くらい身上がりをすればいいのに」

 清波に蕎麦を渡した女将はあからさまに呆れた表情を浮かべる。借金のある娼妓でさえ、最後の日は自分の為に騒ぎたいと自分で自分を買い上げる『身上がり』をし、女将達の眉を顰めさせるものも少なくない。そんな娼妓達と比べ、清波はやはり優れた花魁なのだ。それだけに女将も清波の今後を心配していた。

「そんな心配をしないでくなんし、おかあさん」

 女将の気遣いをありがたく受け止めつつ、清波は大丈夫だとばかりに花の笑みを皆に向ける。

「嫌でも明日一月一日は潔斎をしないといけませんし・・・・・・お休みだと何だか寂しいじゃないですか。わっちにはこの仕事が性に合っているんですよ」

「だけど二日からは局見世なんだろう?休まなくて大丈夫なのかい?」

 確かに二日からは局見世で働かねばならない清波である。吉原の中では高級な部類に入る中見世・恵比寿屋の花魁に最下級の局見世の娼妓の仕事は辛すぎると女将は反論する。

「大丈夫ですよ。そもそも二畳一間の局見世じゃ廻しもできませんし、客引きだってうまく出来るかどうか・・・・・・確かにお客様の質は変わりますけど、どっちにしても吉原に来るお客様。岡場所とは質の良さが違います」

 清波は女将を心配させないよう努めて笑顔を見せた。だが、女将はまだ不服そうな表情を浮かべる。

「いっそあんたが残ってくれれば・・・・・・」

 女将はこの場にはいない遣手の弥叉波の愚痴を暗に零す。確かに仕事はできるが女将との仲が極めて悪い弥叉波である。それだけに才能があり、女将になついている清波に残ってもらいたいというのが女将の本音なのだ。しかしその言葉に清波はやんわりと首を横に振る。

「それは言わない約束ですよ。弥叉波姐さんだって頑張っているんですから」

 清波はきっぱり言い切ると、改めて背筋を正し楼主と女将に向き直った。そして三指を付くと、深々と頭を下げる。

「十五の頃から本当にお世話になりました。田舎娘をここまで育ててくださって・・・・・・この御恩は一生忘れません」

 その潔い姿に、楼主や女将は勿論、その場にいた番頭達も思わず涙ぐんだ。



 しんしんと冷える大晦日の夜に除夜の鐘が鳴り響く。この鐘が鳴り止む頃、新しい年が江戸に、そして吉原にやってくるのだ。新たな年の新たな旅立ち――――――清波は襟を正し、局見世へ引越すための身支度を一人整え続けた。




UP DATE 2013.12.18

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慌ただしかった師走、ようやく『花魁・清波』のお勤めが終了しました(*^_^*)今の世の中でも惜しまれつつ引退、となるとその後始末も大変ですが、この当時もそれは変わりません。『ならずの御職』のファンも少なからずいるわけですし、彼らに対するアフターフォローもしっかりしなければなりませんし(^_^;)
そして『恵比寿屋』での務めを終えた清波は羅生門河岸の局見世へと引っ越します。果たして辰治郎はそこにやってくることができるのか否か・・・( ̄ー ̄)ニヤリ

次週25日は新作拍手文、そして紅柊はできれば1月1日、2014年抱負とともにUPしたいな~と(^_^;)『笑ってはいけない地/球/防/衛/軍/』を見つつ、頑張って書いてゆきたいと思ってます(^^)
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