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「VOCALOID小説」
réincarnation

ボカロ小説 réincarnation2~過去のトラブル、現在のトラブル

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 V1エンジンの影響を受けた初期型KAITOが暴走を起こした――――――プロジェクト・リーダーでありレン達のマスターでもある北堀の重い言葉に、集められたボーカロイド達は息を呑んだ。

「マスター、もう少し詳しく教えていただけませんか?俺はV1エンジンを搭載していますけど、暴走なんて起こしたことはありませんし、聞いたこともありません。本当にそんなことがあったのですか?」

 カイトの言葉にその場にいたKAITO達、そしてたった一人のレンが頷く。その一方、何か思い当たる節があるのか、神妙な表情を浮かべたのはMEIKO達――――――それを見回したあと、北堀は穏やかな声で事情を説明した。

「KAITO達が知らないのは尤もだ。そもそもこの暴走はAI型プロトタイプが起こしたもので、量産型KAITO発売予定の3ヶ月前も話だから」

「なるほど・・・・・・だから俺達が知らないんですね」

「その通り。再三言っているようにV1エンジンはバトルロイド用のエンジン、つまり人間を殺傷する事ができる数少ないエンジンだ。そしてKAITOに使われた男性型V1エンジンはMEIKO型に使われた女性形V1エンジンに比べて闘争本能が極めて強い・・・・・・そもそもそんな殺人エンジンをボーカロイドに使う方が間違っていたんだけどな」

 北堀は苦笑いを浮かべつつ話し続ける。

「なまじMEIKOの成功があった分、我々は増長していた事を否めない。KAITO開発期、マスターマシンから3体のKAITOを複製し、最終テストのためにMEIKO持ちのマスター達に預けたんだが・・・・・・尽くMEIKOはKAITOによって破壊、またはCPUバグによって廃棄に追い込まれた」

「いったい何が・・・・・・!」

 テスト機の一部が暴走を起こしたというのならまだしも、3体とも暴走を起こしたというのは俄に信じがたい。レン達家族の後ろに座っていたKAITOの一人が思わず立ち上がり、食いつくように北堀に尋ねた。

「俗な言い方をすれば『恋愛感情の縺れ』ってところかしら。MEIKO型に比べて感情の振り幅を大きく設定した分、プログラムが不安定になったの」

 言い難そうにしている北堀に代わり、サブリーダーの女性研究員が後を引き継ぐ。

「壊された方法は全部違うんだけどね。破壊された子は殴りかかってきたKAITOからマスターを守るために自分の体を犠牲にした。因みに壊されたMEIKOとマスターは事実婚状態だった」

 指を一本立てながらサブリーダーは過去の事件を説明してゆく。

「二人目はKAITOに告白された混乱のため中枢全体にバグを起こしたの。当時のMEIKOは後輩育成の母性本能とマスターの命令に従う従属本能以外の感情は極力カットしていたから、KAITOの恋愛感情を受け入れられなかった。こちらのバグは修正パッチが出たけど被害にあった子は治らなかった。CPUだけならともかく、中枢全体だったからね。そして最後の一人は・・・・・」

 サブリーダーがぎりっ、と唇を噛みしめる。

「・・・・・・KAITOにレイプされた挙句無理心中に巻き込まれた。この当時はKAITO型の方が物理的出力が大きかったから抵抗も出来なかった」

 怒りを滲ませた低い声で告げるサブリーダーの声に全員が沈黙する。後で知ることになるのだがこのサブリーダーはMEIKO型開発当初から参加していただけに、我が子を殺された怒りを抱いていたのかもしれない。そんなサブリーダーの後を引き継いで北堀が説明を続けた。

「勿論これはモニタリング期の話だ。ある程度のトラブルはあるだろうと予想していたがここまでひどい結果になるとは思わなかった。しかしKAITOの販売日は既に決定していたし、今更エンジンから開発し直すということも難しかった。そこで・・・・・・」

 北堀は一旦言葉を区切り、会議室を見回した。

「KAITOの物理的出力を可能な限り減らし、いざという時MEIKOがKAITOを破壊できるようにした。あと姉弟設定を中心としたマインド・コントロール・・・・・・販売予定日まで時間がなかった当時の私達にはそれくらいしかできなかった。あ、あと暴れた時に捕縛しやすいようマフラーやコートなどの公式衣装のデザインチェンジも行われたっけ」

 なるほど、あの無駄に暑苦しい衣装にはそういう理由があったのか――――――レンは変なところで感心した。尤も今現在、本来の目的で利用しているのはレンの片割れやすぐ上の姉だったりするが・・・・・・事あるごとに妹達によってマフラーを引っ張られている兄の情けない姿を思い出しながら、レンは小さく溜息を吐いた。

「でも・・・・・・」

 レンの左後方に座っていたV3版KAITOが恐る恐る尋ねる。

「普段は俺達の方が重いものを持ったりしていますし、その・・・・・メイコさん達がお酒を飲んで暴れた時は押さえつけたり・・・・・・俺達の方が出力は大きいように感じられるのですが」

「ああ、MEIKOが君らより物理的なパワーを出力させるのはマスターの命令があった時だけだ。それ以外は特に必要ないだろう?」

「確かに!普段からめーちゃん達の方が強かったら男の沽券に関わりますからねぇ」

 北堀の言葉にKAITO達に安堵の空気が流れるが、それに小さく反論するものがいた。

「・・・・・・ていうか、男の沽券だとか出力云々以前の問題じゃね?現状じゃ普段からMEIKOの尻に敷かれていねぇKAITO見つけ出すほうが難しいしよ」

 周囲に聞こえないようボソリ、と呟いたレンの一言に姉と兄は苦笑いを浮かべる。確かに普段の生活においてボーカロイドのリーダー的役割はMEIKOが担っている事が多いし、KAITOはそれに従っているように見える。むしろそれによって調和が保たれていると言っていいだろう。
 だが、それは長年の研究員、そして関係者の努力によって作られたものなのだ。

「・・・・・でもね、実際起動させて使い始めてみると個体によってはトラブルを起こすものも出てきてね。特にひどいのが弟妹に対するヤキモチ。特にミクの発売当初はMEIKOの関心がミクに行ってしまったためにそれに関してのトラブルが続出したの」

 サブリーダーの少し刺のある言葉に、何ともいえない曖昧な笑いが零れる。どうやらこの場にいるKAITO達の身にも少し、否、かなりの覚えがあるのだろう。

「さすがにがんじがらめにかけまくったマインド・コントロールによって破壊行動は無かったけど・・・・・・だが、それだけでは足りずKAITO型は数々のマイナーチェンジ、そして一番最初にV3エンジンへの変換が行われたの。V1エンジンの改良型であるV2エンジンではと同じことが起こりかねない不安もあったのでね」

 その言葉に全員が納得したように頷いた。MEIKOに比べKAITOの開発は異常に早かった。それはKAITO型が抱える不安定要素を取り除く必然性からだったのだろう。その一方MEIKO型の開発が置き去りにされているのは何故なのか?その疑問に北堀が答える。

「言っただろう、『MEIKOV1は奇跡』だったと・・・・・・純粋なボーカロイドである他のタイプと違ってMEIKO型は極めて人間に近い。ボーカロイド開発だけなら単純にV3エンジンへ乗り換えても構わないんだが、MEIKOに関してはボーカロイド以外のAIへの発展も計画されている。それだけにV1エンジンの長所をそのままにV3へと移行するよう国や他のシンクタンクからも依頼されているんだが・・・・・・正直難航している」

 しん、と水を打ったように静まり返る部屋の中、北堀の言葉だけが響き渡る。

「理由は判然としないが、MEIKOとV3エンジンの相性が極めて悪い。声帯の動きも悪いし何より母性を中心とした感情の幾つかがマインド・コントロールをかける前から欠如してしまう。かと言ってV1エンジンのままではこれからの開発に支障が出てしまう。そこで・・・・・・

 一瞬ためらった後、北堀はとんでもない事を言い出した。

「V1エンジンのMEIKO1体を解体、そこから新たなV3エンジンを作り出すことにした」

 その瞬間、レンの横にいたカイトがいきなり立ち上がる。

「マスター!つまり、僕らのパートナーの誰かが解体・・・・・・殺される、ってことですか!」

 その言葉と同時にKAITO達の殺意が部屋中に漲る。中には自分のパートナーを抱きかかえ、あからさまに北堀を威嚇するKAITOも出る始末だ。だが、北堀はその殺意を物ともせず淡々と言葉を続けた。

「その通り。だが、それは君のパートナーではないし、KAITOをパートナーにしているどのMEIKOでもない」

 そう言って北堀はレンの斜め前に座っていた、マネージャーらしき人物と共に来ていたMEIKOを立ち上がらせる。

「彼女はマスターマシンから作られた10体の、最後の1体だ」

 その言葉にMEIKOやKAITOは勿論、レンも驚きを露わにする。

「よ、よく無事に生存していましたね。先程の話からするといつ壊されてもおかしくなかったのに」

「それはうちの社長が――――――マスターがKAITOを使わずにいてくれて、ミクが生産されたと同時に私を引退させてくれたからなんです。あ、申し遅れました。私、咲音メイコと申します」

 紹介されたMEIKOがたおやかに微笑む。その瞬間、会場は一斉にどよめいた。

「うわ、あの伝説のアイドル、咲音メイコさん?本物だぁ!」

「確か今はモデルの仕事を中心にやっているんだっけ?やっぱり違うよね。憧れる~!」

 KAITO達は勿論、他のMEIKO達も憧れの眼差しで彼女を見つめる。それはレンも同様だった。

(話には聞いたことがあるけど『伝説』の咲音メイコさんか・・・・・・申し訳ないけど、うちのメイ姉に比べるとマジ天使だよなぁ)

 プロダクション所属のMEIKO達の中でも一線を画すその雰囲気は、姉と同じMEIKO型とは思えぬほど神々しい。兄弟が悪さをすると即座に鉄拳制裁が待ち構えている自分の姉とは別次元のボーカロイドだ。きっと飲酒してもシャンパンくらいしか飲まないのだろう。絶対にワンカップや焼酎のボトルなどには手を出さないに違いない。

(いいな~、あんなMEIKOが姉貴だったらな~)

 そんなレンの思いなどどこ吹く風、北堀の話が続く。

「彼女のマスターは音楽業界側の開発者の一人だ。それ故彼女を丁寧に扱ってくれていたがさすがに9年も経過するとあちらこちらバグが起こってしまい、ボーカロイドとしての寿命も見えてきている。そこで彼女を元にして新たなV3エンジンを作るのだが、それだけだとデータが足りない。勿論世界中のMEIKO型からもデータ収拾はするが、ここに呼び出したMEIKO達からは特に咲音に不足している部分のデータ・・・・・・・家族愛だとか恋愛感情だとかのデータの補足を頼みたい」

「それくらいだったらお安い御用です」

 それは何故かKAITO型から返ってきた。その無駄に自信満々の声に思わずMEIKO達は失笑する。

「ただ、一週間から長くて一ヶ月の拘束がある。それだけは覚悟しておいてくれ」

 長くて一ヶ月、MEIKOに触れることは叶わなくなる――――――それを聞いた瞬間、KAITO達はがっくりと項垂れ、MEIKO達は心なしかホッとした表情を浮かべる。そしてそんなKAITOやMEIKO達をレンはただ一人呆れたような視線で見つめていた。




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月曜日に投稿して3日で第二話投下です(^_^;)特に用事がない場合向こう一ヶ月はこのペースで行きそうな予感・・・まだ骨格状態ですけど既に8話目まで出来ているんです。完結はしていないけど(おいっ)お友達からお誘いを受けている競作とかtwitter小説大賞を利用して『潮騒抄』も仕上げたいので、できれば4月中にはこの話を完結させます。
(そうすりゃぴくしぶにめーこの日の時期に合わせて投下できるかも)

今回は最終テストで起こったKAITOのトラブル&今現在起こっているV3MEIKOのトラブルが中心の話になりました。勿論捏造しまくりですが、そこは二次創作ということで(^_^;)なお裏設定では・・・

◆露出の多いMEIKOの公式衣装:戦闘の際衣服が邪魔にならないように。末端や皮膚が破壊されても交換すれば問題なし。
◆無駄に布地が多いKAITOの公式衣装:本文で書いたように捕縛しやすいように。まふりゃ~掴んだりコートの裾踏んづけたり、卑怯には卑怯で対向するしか無いでしょう♡

・・・となっております。どのPV見ても何故かめーちゃんのほうが強そうですしねぇ。

次回更新予定は(何事もなければ)3/17、半分くらいは今回のような設定説明、後ろ半分からようやく事件らしい事件に突入しますv
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