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「VOCALOID小説」
réincarnation

ボカロ小説 réincarnation4~招かれざる男

 ←拍手お返事&旦那がタダでもらってくるものにはろくなものがない・・・(-_-;) →烏のがらくた箱~その二百七・駆け込み需要かぁ・・・ヽ( ´ー)ノ フッ
 一番最初にリンの耳が捉えたその物体は激しい衝撃波を伴ってドアを突き破り、六人がているオペ待合室へと飛び込んできた。衝撃波と共に襲い来るドアの破片から弟妹達を庇いつつ、メイコとカイトは飛び込んできたものを確認しようとする。だが二人がそれを確認する前に弟妹達が素っ頓狂な声を上げた。

「カ、カイ兄?何でカイ兄が?」

「馬鹿か、リン!確かにKAOTO型だけどカイ兄じゃねぇし!」

「しかもV3型だよ、あの人!エンジン音がお兄ちゃんと明らかに違うよ!」

 未成年型の3人が騒ぎ出したように、待合室に飛び込んできたそれはKAITO型のボーカロイドだった。黒く見えたのは着ているもののせいだ。モジュールのギルティに近い服装と言えば解りやすいだろうか。夏場にも拘らず長袖の黒いシャツにタイトなボトムスを合わせているその姿はボーカロイドというよりホストといった、風体だ。
 そして何よりも驚くべきなのはV1型より出力を落としているはずのV3型であるはずなのに、その破壊力がV1並、否、それ以上あるということである。

「ラボの言うことなんて信じちゃ駄目、ってことかな。俺だって時速120kmは出せないよ。せいぜい100kmってところかな・・・・・・」

「何呑気なことを言ってるの!ち、ちょっとオペ室のガラス窓が!!」

 メイコの悲鳴と同時に不快な破砕音が六人の耳を襲う。黒服のKAITOがオペ室と部屋を仕切っているガラスに拳を突き入れたのである。

ぴきっ

 さすがに一発の拳ではスピードに乗せた最大出力でも三枚重ねの強化ガラスは割れなかった。だが、銃弾を打ち込まれても入らないと言われているヒビが入ったことは事実だ。黒い服のKAITOは二度、三度と拳を突き入れる。ヒビはますます大きくなり、このままではガラス窓が割られかねない。

「レン!止めるぞ!めーちゃんは研究員の誰かからから鎮静剤をもらってきて!あれじゃあ人間は近づけない!あと、マスターがいたらめーちゃんのリミッターも外してもらってよ!俺達じゃ抑えきれないかもしれないから!」

 マスター命令が無ければメイコも最大限の力を出すことは出来ない。あわよくば北堀にメイコのリミッターを外してもらうことを願いつつ、カイトはメイコに告げる。

「解った!ルカ!ミクとリンを頼んだわよ!」

 そう言い残すとメイコは部屋を飛び出し、スタッフルームへと走りだした。それと同時にカイトとレンは黒い服のカイトに飛びつく。

「おい、やめろ!一体なんだって言うんだ!」

 カイトが黒服のカイトの右腕を掴み抱きかかえるように押さえつける。だが、黒服のカイトは興奮したままだ。

「離せ!メイコを・・・・・・咲音メイコをここから出せ!」

 黒い服のカイトは右腕を取られたまま、左の拳をカイトの鳩尾に叩きこむ。

「うっ!」

 その瞬間、カイトが苦しげな呻き声を挙げる。鳩尾にはボーカロイドエンジンの動力源が組み込まれており、人間同様『急所』だ。しかも基本的にボーカロイドに『利き手』は無い。たった一発で手術室のガラス窓にヒビを入れたボーカロイドの渾身の拳を急所に突きこまれてしまったら、さすがに堪える。それでも右腕を離さなかったのはさすがだが、黒服のカイトの腕を掴んでいたカイトの腕の力が緩み、男はカイトを振りほどく。そして再び強化ガラスに拳を付き入れた。

ミシリ

 嫌な音を立ててさらに大きなヒビが入る。

「おい、いい加減にしろ!この騒ぎで咲音さんにトラブルがあったらあんたのせいだぞ!」

 攻撃を受けないよう黒服のカイトの背後に回り込んだレンはその腰にしがみつき、叫ぶ。

「咲音さんは今記憶のバックアップ中なんだぞ!ここで変な真似をしてみろ!今までの記憶が全部吹っ飛ぶ上に下手したら死ぬぞ!」

 レンの声が部屋に響いた瞬間、男の表情に驚愕が走る。その刹那、注射器を手にしたメイコが部屋の中に飛び込んできた。

「ちょっとあなた!話は後で聞いてあげるから少し頭を冷やしてちょうだい!」

 その言葉より早くメイコの手刀が男の項に叩きつけられる。そのスピードからするとどうやら北堀にリミッターを外してもらったらしい。

「うぉっ!」

 その衝撃に黒服のカイトがその場に蹲るが、メイコの攻撃の手は止まらない。白く、細い手で黒服のカイトの首筋を強く押さえ神経回線を確認すると、そのまま手にしていた注射針を差し込み、中の液体を注入した。



 黒服のカイトはどうやら車でこの研究室に乗り込んできたらしい。気分を直そうと外に出たミクとリンが見たものは破られたラボの門扉と半壊したポルシェ911ターボだった。

「こうなることが解っていたら先に潰しておいたのになぁ」

 そんな妹の爆弾発言をミクは聞かなかったことにした。だが気持ちは解らないでもない。そして壊れた愛車を乗り捨てて玄関から真っ直ぐオペ室へ向かったらしい。化粧を直しに受付方面にあるパウダールームへと向かうルカの行く先はところどころ破壊された跡があった。

「受付の横に施設案内があるのが仇になりましたわね」

 山奥にあるとはいえ意外と多くのボーカロイドや関係者がメンテナンスその他の理由でやってくる。その為にある施設案内だが、黒服のカイトはそれを見てオペ室へ当たりをつけてやってきたのだろう。で、オペ待合室での出来事があり現在に至る。

「・・・・・・本当にKAITOって厄介よね~。こいつ、絶対に咲音さんのストーカーだわ」

 不機嫌極まりない声で呟くメイコの隣には鳩尾をさすりながらメイコに甘ったれてくるカイト、そして少し離れた場所には警戒を解こうとしないレンが座っていた。そんな二人の姿はどちらが兄でどちらが弟か判らない。

「あんたねぇ・・・・・・いい加減甘えるの止めたら?それとわざと鳩尾晒したでしょう?」

 あまりにもしつこく絡みついてくるカイトにうんざりしたのか、メイコは低い声でカイトに尋ねる。

「あ、ばれた?」

 悪びれもせずに答えるカイトに、メイコは呆れたように肩を竦めた。

「あ、ばれた?じゃないわよ!あんたの事だから自分に注意を引きつけてレンを守るつもりだったんでしょうけど、もしその思惑が外れてレンが怪我でもしたらどうするつもりだったの!思ったより私も早く戻れたから良かったものの」

 メイコがぼやいたその時、外の空気を吸いに行っていたミク、ルカ、リンの3人が部屋に入ってきた。三人とも顔を強ばらせながら眠っている黒服のカイトの様子を覗き見る。

「お帰り。そんな心配することないよ。まだ眠っているし」

 カイトは三人の怯えを取るように告げると、改めて話を続けた。

「めーちゃんは心配するけどさ、レンなら俺がいなくても多分大丈夫だったと思うよ。レンは小柄だけどその分身軽だし。全種類のボーカロイドの中でも一番素早いんじゃない?それにあの破壊行動を止めたのはレンの一言だったんだから、もうちょっとレンを褒めてあげてよ。な、レン?」

 カイトはにっこり笑ってウィンクをする。どうやらこの兄はレンに花を持たせてくれるらしい。不意に話を振られたレンは少し驚いたように目を丸くした。

「あ、ああ・・・・・・・でもカイ兄だって鳩尾やられていねけりゃ俺と同じことを言っただろ?この人、咲音さんに惚れているみたいだからさ」

 レンの言葉に妹達がきゃあきゃあと騒ぎ出し、メイコに静かにするよう一喝される。

「みたい、じゃなくて惚れている、だよ。レン」

 姉妹達の騒ぎを他所にカイトは不意に真顔になった。

「俺だって自分が与り知らないところでめーちゃんが解体される、なんて事になっていたら同じ行動に出るよ。いやもっと酷い破壊行動に出ていたかもしれないな。俺V1だし、V3よりも感情やパワーの制御ができないから」

 そう、V3エンジンを搭載しているはずの黒服のカイトならもう少し感情やパワーの制御ができる筈なのだ。その事をレンは改めて思い知らされる。

「あ、そうか。とことん制御を受けまくったV3であんだけの破壊力・・・・・・KAITO怖ぇ。でもさぁ、咲音さんには特定のパートナーはいないって言ってなかったっけ?」

 レンが先のオリエンテーションでのやり取りを思い出したように呟く。その疑問にカイトが答えた。

「もしかしたら咲音さんやマネージャはそう思っていたかもしれないけど、この人は違う風に捉えていたのかもね。MEIKO型って結構鈍いから・・・・・・」

 少し刺を含んだカイトの言葉に、何かしら覚えがあるのかメイコははは、とから笑いをする。

「片思い、か・・・・・・切ないよね」

 その一方、兄弟の中でも一番感受性が強いミクが涙ぐむ。その時である、不意に部屋の扉が開き、北堀と、北堀より少し年下に見えるスーツ姿の男が入ってきた。

「マスター?そちらのお方は?」

 初めて見る顔に警戒心を露わにしてルカが尋ねる。

「ああ、こちらは咲音さんのマスター兼事務所社長の福澤巧さんだ。巧さん、こっちは俺の子供たち。あんたは上の二人しか知らないだろうけど」

 彼らのマスターはVOCALOID達も自分の子供同様に扱う。普通の人であれば奇異の目でそれを見るが、福澤と呼ばれた男はマスターを変人扱いすること無く六人に微笑みかけた。

「なるほど、あんたが育てているだけあるな。皆素直そうだ。メイコ、カイト、俺の事は覚えているか?」

 福澤、と呼ばれた男に声をかけられ、メイコとカイトはまるで子供のように邪気のない顔で頷く。

「ええ、確かミクが生まれる少し前にお会いしましたよね」

「ああ、あの時はボカロ達も何かと不安定だったから事あるごとに呼び出されていたっけ。今じゃ懐かしい思い出だ。しかしまさか俺のところの馬鹿が問題を起こすとは思わなかったよ、優さん」

 まだ眠りについている黒服のカイトの顔を覗き込みながら福澤は苦い顔をする。

「だけど巧さん、あんた確かKAITOは持っていなかっただろ?MEIKOの件があるからできるだけ近づけたくないって言ってたじゃないか」

 北堀の言葉に福澤は事務所社長の顔で少し肩をすくめた。

「事務所がでかくなるとそうも言っていられなくてな。KAITOの需要が大きくなりだしてからKAITOマスターと一緒に雇うようになった。スリープさせている予備を含めて事務所では今、四体ほどKAITO雇っているんだが、こいつはそのうちの稼ぎ頭だ」

 福澤は横たわっている黒服のカイトの枕元に陣取ると溜息を吐いた。

「下手したら廃棄処分、だよな・・・・・・」

 それだけではない。管理不行き届きのペナルティが事務所に課せられるのはほぼ間違いないだろう。がっくりと肩を落とす福澤に、北堀が助け舟をよこす。

「そういう手もあるけど、その前に扉と壁とオペ室の強化ガラス費用、しめて一億円ほど弁償してもらわないと。それをこいつに稼がせてからでもうちは問題ないが」

「・・・・・・暫くすればほとぼりも覚める、ってことか?」

 訝しげな目で北堀を見つめる福澤に、北堀がにやりと意味深な笑みを浮かべた。

「そういう風にとってもらっても構わない。それより興味深いのはこいつのデータだ。悪いけど脳内から筋繊維のダメージまで全部スキャンさせてもらったよ。こういう状態でリミッターが外れたボーカロイドのデータは皆無だから、研究者として非常に興味があるんだ。これからのV3KAITOの対策も兼ねてね」

「ああ、煮るなり焼くなり勝手にしてくれ。優さんのカイトにまで怪我させやがって」

「あ、僕は大丈夫ですからあまり・・・・・・」

 カイトは申し訳無さそうに福澤に頭を下げるが、福澤は少し渋い表情を浮かべながら黒服のカイトを見下ろした。

「いや、こいつに関しては今回のことだけじゃないから。売れっ子だが素行は悪いし、V3なのにやたら扱いにくいし・・・・・・仕事だけはこっちの希望以上のことをしてくれるんで素行の悪さには目を瞑っちゃいるが」

 困ったような笑顔を浮かべつつ福澤は北堀に声をかける。

「そういえば俺のメイコのバックアップは?」

 福澤にとって咲音メイコは仕事上のパートナーであり、実の娘にも近い存在である。心配そうに尋ねる福澤に、北堀は屈託のない笑みを見せた。

「今現在30%、ってところかな。9年近く蓄積された膨大なデータだ。取りこぼしがないように慎重にやらせてもらっているよ。ま、そこからが本来の仕事だけどな」

「そこからが・・・・・・一発勝負なのか?」

 さらに眉根を寄せつつ福澤は北堀に問う。

「いや、そもそも一度に中枢の全部を使うわけじゃない。とはいえ、失敗が許されるのは4回まで・・・・・・全部で5回まではやり直しが効くから多分大丈夫だろう」

「なら大丈夫かな・・・・・・」

 福澤の表情がほんの少しだけ緩む。

「声帯の動きと母性を中心とする人間らしい感情――――――それさえクリアすれば1か月後にでもMEIKOV3の発表ができるし、あんたのメイコも記憶もそのままに新しく生まれ変わるよ」

 北堀の言葉に福澤はようやく安堵の表情を浮かべた。





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なんとビックリ、清純派アイドルにろくでもない男の影がっ!(爆)時速120kmで飛び込んできたのは最新式のKAITOでした。どうやら咲音に執着を持っているようですが・・・果たして両思いなのか、単なる迷惑なストーカーなのか(^_^;)
多分奴の目が覚めたらメイコあたりが吐かせると思いますので今しばらくお待ちくださいませ♪
なお本編で書きそびれましたが、ラボにはボーカロイド用入院施設があります。黒服のカイトが寝かされているのはそのうちの一部屋で、メイコ、カイト、レンは『お目付け役』として看病(という名の監視)をしております。目が覚めた途端暴れられても人間じゃ太刀打ちできませんから・・・。

次回は月曜日の夜、黒服のカイトが目覚め、事情を話し始めます。
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