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「VOCALOID小説」
réincarnation

ボカロ小説 réincarnation14~再誕のコンサート

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 耳をつんざく歓声が武道館に鳴り響く。『MEIKOの日』でもあるこの日の咲音メイコ復活コンサートファイナルは異様な盛り上がりを見せていた。どの会場もチケットは10分間でソールドアウト、マスコミも注目する復活コンサートツアーだったが、やはり最終日は特別だ。
 コンサートチケットを持たない者も僅かな可能性を求めて会場の外にたむろし、諦めた者もパブリックビューイング会場へと足を運ぶ。しかもそこでさえも入場できないファンが出る始末で、彼らは仕方なしにスマホやPCで某動画サイトの生中継をみようとあちらこちらに数人ずつ集まっては小さなモニター画面を食い入るように見つめていた。
 勿論会場内はそれ以上の盛り上がりを見せており、開場と共になだれ込んできた親衛隊はコンサート開始1時間前だというのに準備運動とばかりにシュプレヒコールを声高に絶叫しまくる。
 そんな光景に普通なら唖然とするのだろうが、さすがに咲音ファンは慣れたものだ。彼らを横目で見ながら平然と自分の席に座り、咲音メイコを支え続ける彼らを微笑ましく見つめている。それは招待を受けた北堀のボーカロイド達も同様だった。

「それにしてもすごい人ねぇ。あらゆるMEIKOの中でもここまで観客動員数を誇れるのは『紅葉メイコ』くらいじゃないかしら」

 伊達眼鏡にウィッグを被ったメイコが思わず咲音と双璧をなすMEIKOの名前を上げるほど、会場は熱気に溢れかえっている。

「確かに『時雨』と『紅葉』の二人のコンサートもすごい入りだけど、ここまで騒がしくはないよ。あの二人の曲は和風が殆どで落ち着いたものだし・・・・・・やっぱり変装してきて正解だったでしょ、めーちゃん」

 メイコの隣に座ったカイトの言葉にメイコは勿論、弟妹達も思わず頷いた。同じMEIKO型とはいえ、S型で童顔カスタマイズされた咲音とはだいぶ見た目が違うメイコだが、それでも万が一とカイトに無理やり押し付けられ身につけてきたのは正解だった。
 確かにMEIKO親衛隊は咲音ではなくてもMEIKO型ボーカロイドに異常な執着を見せるものも少なくないので、これくらいの変装は必要だろう。よくよく見るとメイコと同じような変装をし、KAITO型のボディガードを付けたMEIKO型が数人、コンサート会場にいるのが確認できる。

「それにしても、親衛隊ってすごいよね。まだコンサート始まる前なのにあんなに叫んで大丈夫なのかな?人間なのに」

 メイコを挟んでカイトと反対側に座っているリンが興味深そうに親衛隊の方を見る。ひと通りシュプレヒコールを唱え終えた彼らは赤いサイリウムを手にし始めていたが、それさえもリンには不思議な光景に映るらしい。そんな小さな妹の髪の毛を撫でてやりながら、メイコは『大丈夫よ』とボーカロイドにしか聞こえない小さな声で呟いた。

「あれはあくまでも準備運動。彼らは初日からず~っと咲音さんを追っかけて全会場を制覇しているんだからあれくらいじゃ潰れないわ・・・・・・それにあれで驚いてちゃダメ。咲音ファンの『ヲタ芸』がそりゃあすごいんだから」

「「「「え?ヲタ芸??咲音さんのコンサートで???」」」」

 思いもしなかったメイコの言葉に弟妹達4人が声を揃える。平然としているのはカイトくらいだ。

「ああ、君達が生まれる前のことだからね。俺も映像で見たことがあるけど、あれはすごいよ。見たらドン引きするかハマって一緒にヲタ芸をやりだすかどちらかだと思う」

 確かに咲音はミクの発売とほぼ同時期に引退しているので弟妹達がその事を知らないのは当然だが、それとは違う『何か』を全員が感じ取る。

「ふぅん・・・・・・で、兄貴はもしかしてハマったクチなのか?」

 胡散臭そうにレンがカイトに尋ねる。その問いかけに対し、カイトはさも当たり前のように答えた。

「当然!だけどMEIKO親衛隊に入ろうとしたらめーちゃんに『親衛隊はMEIKOの嫁にしかなれないけどいいの?』って言われて諦めた。MEIKO親衛隊隊規第24条『MEIKOは誰の嫁でもない。あえて言うなら親衛隊員がMEIKOの嫁である。MEIKO親衛隊たる者、俺嫁論争による不毛な争いを禁ず。』は絶対だし――――――俺はめーちゃんを嫁にしたいもんね」

 あまりにも親衛隊隊規をすらすらと諳んじ、どさくさ紛れに爆弾発言をする兄を4人の弟妹達は冷ややかな目で見つめた。ルカに至っては『変態』とあからさまに口にする。その時である。

ぱぁ~ん!!

 不意に派手な爆裂音が会場に鳴り響き、ピンクや赤の花吹雪が武道館全体に舞い上がった。それと同時にプロジェクションマッピングだろうか、正面に大きな咲音の影が映し出される。

「皆様、お待たせしましたぁ!咲音メイコ復活祭ファイナル、はっじまるよ~~~!」

 透き通るその声は咲音の妹である1stミクのものだ。まさかミクが咲音のMCをやるとは思っていなかった会場の客は驚き、会場は騒然とする。

「そうそう、ここのミクちゃんがね、『ファイナルだけでもMCやらせて!』って福澤さんに脅迫したんだって」

 既に座席から身体半分を乗り出しているミクが思わぬ暴露話を打ち明ける。

「き、脅迫ぅ?」

「うん。『もしやらせてくれなきゃオシゴト全部キャンセルしてやる!』って。でも叶えられて良かった~。ミクちゃん、かなりハードスケジュールだから調製も難しかったんじゃないかな」

 確かに咲音と1stミクの姉妹は特に仲が良い。しかしボーカロイドの身でマスターである福澤にMC権を脅迫とは・・・・・・メイコは思わず頭を押さえた。だが、そんなメイコの心痛に拘らずコンサートは続いてゆく。
 プロジェクション・マッピングの影がガラスの破砕音と共に粉砕し、その欠片が蝶々になって飛び立ったかと思った刹那、舞台中央から咲音が飛び出してきたのである。その姿はステージ衣装ではなく、あえて『MEIKO』の公式衣装、黒いシースルーのアンダーが目を引くセクシーなもの。S型、童顔にカスタマイズされた咲音には少々大人っぽすぎるデザインのだが、それを咲音風に可愛らしく着こなしてしまうのはさすがだ。

「みんな~!今日は復活コンサートファイナルに来てくれてありがと~!!」

 咲音の愛くるしい声に地鳴りのような図太い雄叫びが重なる。

「今日は皆のために目一杯歌うからね!!まずは『星間飛行』、いくよ~!!」

 引退前の大ヒット曲を口にした瞬間、さらに会場が揺れる。そしてその揺れが収まらぬうちに咲音の新たな『声』が武道館に響き渡った。



 2時間にわたるコンサートは大成功に終わった。まだまだ聞き足りないとばかりにファンのアンコールの声は舞台袖にも押し寄せる。咲音の再登場を待ちわびるその声を聞きながら、咲音は目を僅かに潤ませつつ舞台袖に立っていた。

「ありがとう・・・・・・みんな」

 アンコール用に選んだ衣装は、新曲用の桜色のセパレート。腰にも桜のデコレーションが付いたその衣装は咲音に合わせてどこまでも愛らしい。
 その衣装と同じ色に頬を染め、大きく深呼吸をした咲音を支えるように背後にいるのはラボから退所した後、交際することになった黒服のカイトである。

「鳴り止まないな、アンコール」

 小さな肩を両手で包みながら、黒服のカイトが咲音の耳許で囁く。耳を聾する歓声の仲、本当に小さな声だが咲音の耳にはそれで充分だった。

「ありがたいよね・・・・・・すっかり忘れ去られた歌手だと思っていたのに、こんなに待っていてくれる人がいたなんて」

 微かに湿った声に、黒服のカイトは咲音の肩を包む手に力を込める。

「泣くのはまだ早いだろ?ステージが終わったらいくらでも泣かせてやるから・・・・・・勿論、俺の腕の中で」

「・・・・・・ばか」

 桜色よりなお赤く、苺のように頬を染めて背後にいた恋人を軽く睨みつけたその時である。ステージに溌剌とした妹の声が響いた。

「みんなぁ~~~!今日はお姉ちゃんのコンサートに来てくれて、本当にありがとぉ~~~~~!」

 咲音以上に喜びに満ち溢れたその声に、会場が再度揺れ動く。既に親衛隊の声は枯れ、殆ど出なくなっていたが、それでも咲音への情熱を己の声に託して叫び続ける。

「お待たせしました~!アンコールはやっぱりこれでしょう!新曲『スイートマジック』!」

 会場を煽るミクの声に今日一番の歓声が沸き上がり、咲音の足許も揺れ動いた。

「ほら、行って来い!」

 口調はぶっきらぼうだが、でも肩を押す手はどこまでも優しく黒服のカイトは咲音をステージに向かわせる。その大きな手とミクの弾む声に促され、咲音は再び眩いばかりのスポットライトに照らされたステージに踊り出た。


ぱっぱっぱらっ ぱっぱっぱらっぱっ ぱっぱっぱらっ らっぱっぱっ♪


 軽やかな咲音の声が会場に鳴り響くと悲鳴に近い歓声と共に赤とピンクのサイリウムが打ち振られる。その声に応えるように咲音も手にした電子花束を打ち振り、プロジェクション・マッピングの花弁を会場に振りまいてゆく。
 溌剌としたその声は、新たな5つの声でも福澤が『咲音らしさ』を出すのに苦労したと言われる『POWER』、その声で歌う新曲は動画にUPされたと同時に関係者が驚くほどの勢いでランキングを駆け上がった期待作である。


ねぇあげようか 甘い罠 ほら虜にしてあげる♪


 その歌詞の通り昔からのファンは勿論、新たなファンの心も虜にする咲音の声。生まれ変わり、新たなステージへと駆け上がるその声はどこまでも美しく、強かった。



参考楽曲:咲音メイコ V3 POWER「スイートマジック」 sm23314836




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咲音の復活コンサート、お愉しみいただけましたでしょうか♡もし宜しかったら参考楽曲に脚をお運び下さいませv可愛らしい天使・咲音メイコの本物と荒ぶる親衛隊をご覧いただけます(*^_^*)咲音も親衛隊も大好きっ\(^o^)/

萌の赴くままに書きなぐってしまったボカロ小説、『réincarnation』はこれにて最終話になります。お付き合い下さった皆様、本当にありがとうございますm(_ _)m
既に多くの作家様が書かれていると思われるV3開発ネタですが、私なりの妄想は吐き出せたのではないかと(^_^;)既存の設定とは違う部分も多々あるかと思われますが『乾小路流』のボカロと言うことでご容赦を。
なお、話の中に出てきますMEIKO親衛隊ですが詳細はこちらにて。因みに私も入隊しております(おいっ)ええ、こ~ゆ~のに弱いんですよ、新選組だって浅葱のだんだらに局中法度、MEIKO親衛隊にも赤い法被にMEIKO親衛隊隊規・・・それがヲタだと言われてしまえばそれまでですが何か?

GW中は管理人多忙のためボカロ小説はお休みさせていただきます。で、twitter小説コンテストの様子を伺いつつ次回作を書きたいと思うのですが・・・もし書けましたら自作は平安末期(源平壇ノ浦の戦いの直後)を舞台に土蜘蛛×白拍子ネタをお送りします。自作はここまで長編にはならないと思うけど・・・私のことなので長くなる可能性はありです(^_^;)
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