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「紅柊(R-15~大人向け)」
乙未・春夏の章

父子日和・其の貳~天保六年六月の空梅雨(★)

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 梅雨時にしては爽やかな夜風が九尺二間の長屋を吹き抜ける。その清涼な空気を艶かしい熱に染めるのは、押し殺した澪の嬌声といつにも増して執拗な恭四郎の愛撫だった。
 恭太が生まれてからというもの、恭四郎はいとしい我が子が起きぬよう、そして乳飲み子を育てている澪に負担をかけぬよう比較的あっさり情事を済ませていた。だが、長兄・恭一郎が訪ねてきたこの日ばかりは普段とは一変、まるで別人のように澪を貪った。

「お、おまえさん・・・・・・」

 ぱんぱんに張ってうっすらと血管が浮かんでいる乳房を揉みしだき、溢れ出る母乳を音を立てながら吸い上げる。普段の恭四郎なら決して立てないようなその下品な音に、澪はますます昂ってゆく。

「もう、・そんな吸い上げないで・・・・・」

「何を言ってやがる、お澪。いつも乳が張って痛いなんて言いながらてめぇで絞って捨てているだろうが」

 口に中にぷっくりと膨らんだ乳首を含んだまま、恭四郎は澪に語りかける。その際に触れる歯や舌さえも澪を翻弄してゆく。

「昼間言っただろう?そろそろ恭太の弟か妹を作ろうって・・・・・・今日はおめぇにも頑張ってもらうからな」

 上目遣いにニヤリと笑うと、恭四郎は熱く蕩けている澪の花弁に指を這わせた。

「あんっ」

 一緒に暮らして二年、すっかり恭四郎の愛撫に慣らされた澪の身体は、その指先一つの動きで次の愛撫を予測し疼いてしまう。ただ花弁の縁をなぞるだけの恭四郎の指なのに、澪の蜜壺はそれを誘いこむようにひくついてしまうのだ。

「物欲しそうにこんなに濡らしやがって・・・・・・おめぉえだってまんざらじゃないんだろ?」

 恭四郎は澪を煽るように囁くとつるり、と中指だけを蜜壺に滑り込ませ、それと同時に親指で花芽を軽く弾いた。

「ひゃっ・・・・・・ん、それ、だめぇ!」

 蜜壺と花芽を同時に責められ、澪は堪らず恭四郎に強く抱きつく。その身体は僅かに与えられた刺激に激しく打ち震え、恭四郎の耳許にかかる吐息はかなり熱を帯びている。

「今からそんなに感じてどうする?これからが本番じゃねぇか」

 親指と中指だけで澪を狂わせながら恭四郎は己の逸物を下帯から引っ張りだす。既に先走りで濡れたそれは行灯の灯りに黒く光り、鎌首をもたげて澪に狙いを定めている。

「どうせ明日も雨だろうから多少寝坊したって良いだろう?今夜は・・・・・・手加減してやれそうもねぇ」

 澪の吐息よりなお熱い言葉を吐きながら指を引き抜くと、恭四郎は澪の滾る蜜壺に己の逸物を突き込んだ。



 恭四郎が果てたのは、澪が三度気を遣った後だった。その激しい抱き方――――――否、縋り付き方に澪は違和感を覚える。

「おまえさん、大丈夫?」

 澪の身体を抱きしめながら目を閉じている恭四郎に、さすがに心配した澪は心配そうに尋ねた。その問いかけに対し、恭四郎は目を開けながら複雑な笑みを浮かべる。

「やっぱり・・・・・・兄貴が訪ねてきたのがまだ尾を引いているみてぇだ」

 澪の頬に己の頬を擦りつけながら、恭四郎は覇気のない声で続ける。

「俺が不良仲間とつるんで家を飛び出してから十年以上・・・・・・今更だよな。渡瀬の家の敷居なんざまたげるかよ」

 だが、その声には明らかに父親を憂える色が滲んでいた。そんな恭四郎の耳許で、澪は限りなく優しい笑みを浮かべながら囁く。

「孝行をしたい時分に親は無し・・・・・・もしかしたらこれが最後の機会になるかもしれませんよ。私がしたくても出来ない親孝行、ここはおまえさんが頭を下げてお父上に会ってあげてくださいな」

「お澪・・・・・・!」

 恭四郎は思わず身体を離し、澪の顔をまじまじと見つめた。澪の親は――――――澪の家族は恭四郎達の窃盗団によって殺されたのだ。それを思えば勝手に家出をした自分の矜持など些細なものである。

「判った。仕事が一段落したら紋付きを借りる算段をしようか」

「おまえさん・・・・・・!」

 ようやく長年会わなかった父親と再会する決意をしてくれた――――――澪が感激し、その目に涙を滲ませたその次の瞬間、澪の耳に信じられない言葉が飛び込んできた。

「そうと腹をくくったらもう一回やりたくなったな。お澪、もう一回付き合え」

 恭四郎は舌なめずりをすると、澪を押さえつけ、固く張っている乳房に舌を這わせる。その変わり身の早さに澪は呆れる。

「もう、本当にころころと気分が変わるんだから」

 だが、そんな澪の唇から甘ったるい嬌声が漏れだしたのは、それからすぐの事だった。



 数日後、恭四郎達三人は家族揃って麹町にある貸衣装屋に足を運んだ。ここは恭四郎が『裏』の仕事をする際によく利用する店だ。そんな誼もあり、恭四郎の紋付きは店の主人の見立てですぐに決まったが、初めて店を利用する澪の着物がなかなか決まらない。

「おまえさん、いくらなんでもこれは派手すぎですよ。ご実家とはいえお武家様のお屋敷を訪ねるんですから」

 加賀友禅だろうか、裾模様に豪奢な扇をあしらった珊瑚朱色の留袖を手にしている恭四郎に、澪は渋い表情を露わにする。

「気にするな。それに俺にだって見栄ってぇもんがあるんだ。てめぇの女房にみすぼらしい着物を着せて渡瀬の家の敷居をまたげるか、ってんだ!」

 どうやら澪を初めて親に見せるに当たり、見栄え良く着飾らせたいらしい。しかし恭四郎が勧めるものはあまりにも派手すぎだ。こんなものを身につけて行った日には恭四郎の両親や兄に不快感を与えかねないと、澪は恭四郎の説得に動き出す。

「こんな派手な柄は商家の娘が着るもので、留め袖とはいえ人妻が着るようなものでは・・・・・・」

「十九なら娘みてぇなもんだろうが。なぁ、店主?これを着ても別に大丈夫だと思うだろう?」

 恭四郎は見世の主に同意を求めるが、主は曖昧な笑みを浮かべるだけである。どうやら主も澪の言い分に肩を持つらしいとその笑みで恭四郎は理解する。

「ちっ、どいつもこいつも・・・・・」

 唇を尖らせたその時である。

「おう、親父!ここ数日の様子は・・・・・・何だ、恭四郎。おめぇもここに来てたのか?」

 威勢のいい声と共に同心の幾田とその手先の末吉が貸衣装屋に入ってきた。どうやら定廻りの顔見せらしい。

「来てたのか?じゃねぇですよ・・・・・・そうそう幾田さん、兄貴に俺の居場所をばらしたでしょう?そのせいで実家に顔を出さなきゃならなくなっちまったんですから」

 ふくれっ面を露わにする恭四郎に、幾田は思わず笑い出した。

「何だ、実家にてめぇのことを隠していたのか?」

「そうですよ。親父と大喧嘩をして飛び出してきましたからね」

「かれこれ十年以上も前の話だろうが。いい加減会いに行ってやれよ」

「ええ、だから着物を借りようとしているんじゃないですか」

 そう言いながら恭四郎はちらりと澪の方を見やった。

「俺はもう少し派手な方が、って言っているのにあいつは地味なもんばかり選びやがって」

「そりゃそうだろうよ。ろくでなしの亭主とはいえ、その実家の武家に挨拶に行くんだ。迂闊なもんを身につけりゃあおめぇに恥をかかせるって慎重なんだろうよ」

 そう言いながら幾田は花浅葱の小袖を指さした。まるでお召のような絞が表面に浮いているものだが、さすがに本物のお召ではないだろう。

「あれはどうだ?色味は地味だが若女房じゃないと着こなせねぇぞ。涼しげでいいと思うがなぁ」

 確かにそれは落ち着いた色味で目を引くものではないが、澪を引き立てることは出来るかもしれない。

「さすが幾田の旦那、伊達に遊んでいませんね」

「何をほざいてやがる。俺はてめぇの嬶だけで手一杯だ!」

「まぁ確かに『八丁堀小町』を嫁にすりゃあ気が気じゃないでしょうよ」

「てめぇにだけは言われたくねぇよ」

 そんな軽口を叩きながら、幾田は花浅葱の小袖を手に取り澪に声をかける。

「おい、お澪ちゃん。こいつはどうだい?こいつなら身分相応だし、武家の屋敷に上がるのにも非礼にはならねぇ」

 幾田の声に振り向いた澪は一瞬目を丸くし、その次の瞬間満面の笑みを浮かべた。

「わぁ、ありがとうございます!」

 どうやら幾田の見立ては澪の好みにも合致したらしい。そして幾田の見立てを喜んだのは澪だけではなかった。

「旦那、なかなか良いお見立てで」

 今まで曖昧な笑みを浮かべていた貸衣装屋の主が幾田の見立てを褒める。その言葉に、幾田は苦笑いを浮かべた。

「親父、世辞なんぜ言っても何も出てこねぇぞ?」

「いいえ。お世辞なんかじゃありませんよ。この小袖は縁起物でしてね。これを借りていったおなご達は全員が全員、やれ良縁が決まっただとか子宝に恵まれただとか・・・・・かれこれ五件くらい続いていますかねぇ」

 どうやらこの花浅葱の小袖は店でも特別の『縁起物』らしい。普通の貸衣装なら二、三度袖を通せば更に下の店へ卸したり、古着として売ってしまったりする。それなのに少なくとも今まで五件の貸出をしているということは、これを求めて来る客もいるということだろう。

「へぇ、なるほどね。じゃあおめぇ達が借りて行ったら今度は親子の和解、っていう目出度い話が付け加えられるってわけだ」

「旦那ぁ、変な気合を入れるのはやめてくださいよぉ」

 そう言いながらも恭四郎もその小袖に心が傾いていた。やはり身につけるならば縁起の良い物にあやかったほうがいい。

「じゃあこいつを借りていこうか。お澪、おめぇもこれならいいだろう?」

「ええ、勿論」

 澪の笑顔に恭四郎もつられて笑った。



 長屋に帰った後、恭四郎は兄に明日の午後に家に行くと手紙を書き、町飛脚で送った。

「あの夕焼けならきっと晴れるだろうな」

 空梅雨はあまりありがたくないが、せめて明日だけは・・・・・・沈みゆく夕日を眺めながら恭四郎は心の中で手を合わせた。



UP DATE 2014.6.11

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父親に会おうか会うまいか・・・悩んでいた恭四郎ですが、澪の一言で父親との再会を決意しました。確かに澪のように親が死んでしまった後では親孝行することも親子喧嘩をすることも出来ませんからねぇ(^_^;)

そして腹をくくった恭四郎は早速準備とばかりに貸衣装屋に訪問着を借りに行きます。どうやらこちらの貸衣装屋、奉行所の息がかかっているらしく、恭四郎も利用しているらしい・・・確かに探索の際は変装も必要になりますしね(*^_^*)
幾田の手助けも借りながら選んだ訪問着、次回はそれを着てとうとう渡瀬家へと乗り込みます。果たして無事親子感動の再会は果たせるのでしょうか?それとも・・・続きは次回6/18の最終話をお待ちくださいませ♪
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