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「紅柊(R-15~大人向け)」
乙未・秋冬の章

桑都の織姫・其の参~天保六年七月の手仕事(★)

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 むっとする草いきれの中、荘三郎は桑畑の向こう側にある綸の家へと向かっていた。既に上弦の月は西の空に沈み、伸ばした指先さえ見えない闇夜が辺り一面に広がるが、子供の頃から通い慣れた道を進む荘三郎の足取りに危なげなところは一切ない。それどころか、ようやく叶えられる綸への想いに、むしろその足取りは弾むように軽かった。
 桑畑の向こう側にはぽつんと寂しげに灯る明かりは綸の家のものだろう。もしかしたら綸がいる部屋のものかもしれない。まるで灯りに吸い寄せられる虫のように、荘三郎は灯りの方へと足早に進んでいった。



 綸の家に到着した荘三郎は庭に周り、灯りの付いている部屋の縁側へ上がり込む。そして部屋の中を確かめる為、ほんの僅かに障子を開けた。忍び込んだはいいが、綸の老父母が眠っている部屋だったらあまりにも間抜けすぎる。だが、そこにいたのは寝間着にも着替えぬまま、糸車で糸繰りをしている綸だった。その色気の欠片もない姿に荘三郎はがっくりと肩を落とす。

「おい、お綸。男が夜這いをかけるって言ったその夜に、手間のかかる夜なべ仕事をする奴があるかよ」

 荘三郎は呆れながら部屋に入り込み、綸の傍に近づく。だが、綸は黙ったまま糸車を見つめたままである。並みの男なら機嫌を損ねてしまったかとオロオロするところだろう。だが、この無愛想さに子供の頃から慣れている荘三郎にとっては痛くも痒くもない。

「それにしても細く繰るよなぁ。他の土地の事は判らねぇが、少なくとも桑都一の糸だぜ」

 擦り寄るように綸の隣に座ると、糸車で繰った絹糸を手に取りその腕を褒める。

「そ、そんなこと知るもんかい!」

 荘三郎の褒め言葉に対してぶっきらぼうに言い捨てた綸だったが、その声は心なしか震えていた。その声の震えに気が付いた荘三郎が、綸の横顔をよくよく見ると行灯に照らされた首筋や耳朶が紅く染まっているようにも見える。

「ふぅ~ん・・・・・・お綸、もしかしておめぇ、緊張しているのか?」

「ば、馬鹿お言いでないよ!」

 荘三郎の指摘に、綸は反射的に荘三郎を睨みつけ声高に否定する。だが、その顔は行灯の灯りでのはっきり判るほど紅潮しており、綸が強がりを言っているのは明白だ。

「しっ、あんまり大声出すと親父さん達が起きちまうぜ」

 勝算を確信した荘三郎は、人差し指を綸の唇に当てながらニヤリ、と笑う。その一癖ある笑みに綸は何も言い返す事ができず、頬を膨らませながらそっぽを向いた。

「本当におめぇは相変わらずガキみてぇだな」

 綸の子供じみた仕草に昂ぶりを覚えた荘三郎は、綸の肩を抱くとそのまま自分の胸へと引きずり込み抱きかかえてしまう。

「ちょ、ちょっと・・・・・・」

「今更勘弁してくれ、っていうのは無しだせ、お綸」

 綸の耳元で囁きながら、荘三郎の手はさり気なく胸へと降りてゆく。だが、綸の身体は強張ったままで、かなり緊張しているのが手に取るように判る。

(生娘だろうとは思っていたけど、まさかここまで初心だとはな)

 かと言って彼女の性格を考えると、その事を指摘してしまえば更に意固地になってしまうだろう。荘三郎はそのまま自らの手をさらに下ろしてゆき、帯の辺りを抱きかかえるように両腕を回して背後から綸を抱きしめた。

「今夜は・・・・・・全部俺に任せてくれないか」

 甘く、柔らかな声で荘三郎は綸を口説く。

「最初は痛いかもしれねぇけど、すぐに慣れるし機織りに比べたら簡単だ」

「は、機織りと色事を一緒にしないでよ!」

 可愛げのない言葉と共に荘三郎の腕の中でもがく綸だったが、荘三郎の腕は少しも緩みはしなかった。それどころかさらに力が籠り、荘三郎の厚い胸板が綸の背中にさらに密着する。

「一緒になんかしてねぇよ。おめぇの織る反物は特別なんだから・・・・・・それともこっちの方も特別にして欲しいのか?」

「・・・・・・・馬鹿」

 だが、その声は先程に比べてだいぶ小さく、大人しいものになっていた。荘三郎は綸が大人しくなったのを確認すると、その細い首筋に唇を這わせ、ぺろりと舐め上げる。

「ひゃあっ」

 首筋に感じたぬるっ、とした感触に綸は驚きの声を上げるが、荘三郎は構わず首筋への愛撫を続ける。後れ毛のかかる項から耳朶の後ろ、そして肩口へと荘三郎の舌は這いまわり、時折唇で軽く吸い上げられながら紅色の刻印を付けてゆく。

「や、やめてよぉ・・・・・・ふあっ、んんっ」

 最初こそぬるりとした舌の感触の気持ち悪さとくすぐったさに戸惑いを見せていた綸だったが、荘三郎の焦れったい、執拗な愛撫が続くうちにその声にはくすぐったさとは違った甘ったるいものが含まれ始めた。
 そしてその声の変化を敏感に感じ取った荘三郎は、綸を自分の方へ向かせると、そのまま唇を奪い、するりと舌を割り入れた。

「んん!!」

 まさか舌が入り込んでくるなどと思いもしなかった綸は驚きに目を見開くが、荘三郎はそのまま綸の舌を絡めとり、軽く吸ってやる。すると微かにぴくん、と綸の身体が跳ね上がり荘三郎の袖をギュッ、と強く掴んだ。荘三郎に抱きつくことは勿論、腕を突っ張って拒絶することさえ思いつかないらしい。荘三郎の接吻に明らかに動揺している綸の舌を舐りながら、荘三郎は綸の様子をじっと観察する。

(初めてにしても・・・・・・初心すぎやしねぇか?)

 生娘にしても、あまりにも反応が硬すぎる。少なくとも嫌われてはいない、否、むしろ夜這いを受け入れ、この接吻を拒絶していないのだから好意を持っているはずなのに――――――そうなると考えられることはただひとつである。

「・・・・・・おい、お綸」

 長い接吻を終えた荘三郎が綸に尋ねる。

「おめぇ、春画の一枚も見たことがねぇ、ってわけじゃねぇだろうな?」

 すると綸は顔を真赤にして唇を尖らせた。

「そ、そんなの見るわけ・・・・・・」

 だが、それ以上は言い返すことも出来ず、俯いてしまった。腕の中にいる、可愛げのない愛しい人は春画さえろくに見たことがない、無垢な存在だったのだ――――――その事実に荘三郎は小躍りしそうなほどの嬉しさを覚えたが、そこはグッと我慢して大人ぶった言葉を綸にかける。

「そうか。だったら余計に俺のやることを信じてもらわねぇとな」

 荘三郎は綸の顎をの下に指を添えると、くいっ、と仰向かせる。

「おめぇは機織りのことだけ考えていりゃあいい。その代わり、おめぇのおとっつぁん、おっかさんの事から色事のいろはまで俺が全部まとめて面倒見てやるから大船に乗ったつもりでいてくれ」

 綸という真っ白な存在を、自分の色だけに染めることが出来る――――――そんな高揚感を感じながら、荘三郎は微かに開いた綸の唇を再び貪り始めた。



 淫靡な濡音が夏の闇夜に溶けてゆく。荘三郎は長い時間を掛けて綸に接吻をし続け、その緊張を解いていった。
 最初こそ荘三郎の舌を受け入れるだけで精一杯だった綸も徐々に荘三郎の愛撫に慣れてくる。
 遠慮がちにではあるが侵入してきた荘三郎の舌に自らの舌を絡めたり、荘三郎に促されつつ自らの舌を荘三郎の口腔に差し入れたりという行為も覚え、拙いながら必死に荘三郎の愛撫に応えようとする姿はどこまでも愛おしい。

(そろそろ体の方の緊張も解けてきたかな?)

 出来ることならこのまま押し倒し、その身体を貪りたい衝動と闘いながら、荘三郎はゆっくりと綸の懐に手を差し入れる。だが、夏場だというのにきっちり着込んだ襦袢はなかなか荘三郎の手の侵入を許してくれそうもない。これ以上は帯と腰紐を緩めなければ難しいだろう。

「・・・・・・床は敷いてあるのか?」

 掠れた声で尋ねると、綸は消え入りそうな小さな声で右手の襖を見やる。

「隣の部屋に・・・・・・」

「じゃあそろそろ場所を変えるか。糸車はそのままにしておけばいいだろう」

 荘三郎は綸の肩を抱きかかえるようにして立ち上がると、そのまま隣の部屋に続く襖を開ける。するとそこには綸のものらしい一組の布団が敷かれていた。荘三郎はそのまま綸と共に部屋に入り込むと布団の上に綸を座らせ、帯に手を掛ける。

「全く男が夜這いに来るっていうのにこんなにきっちり帯を締める奴があるかよ」

「だって・・・・・・」

「おめぇが初心で恥ずかしがり屋だってぇのは今夜嫌ってほど知ったよ。だけど・・・・・・」

 そう言いながら荘三郎は帯を解き、綸を長襦袢姿にすると更に腰紐を緩めたのだ。荘三郎のその手際の良さに慌てたのは綸である。

「ま、待って・・・・・・」

 綸は自分の腰紐を緩める荘三郎の手を止めようとするが、その手は綸の手をすり抜け襦袢の胸元へ這い上がっていた。

「待つわけねぇだろう。さんざん焦らしておいてよぉ」

 荘三郎は緩くなった襦袢の胸元に手を差し込むと、その感触を確かめるようにそっと撫で始めた。本当なら邪魔な襦袢も剥ぎ取りたいところだが、急いてしまえば色事に奥手な綸は抵抗を見せるだろう。まずは荘三郎の手に触られることに慣れるのが先だ。

「きれいな肌だな。すべすべと柔らかくて・・・・・・ここはどうだ?」

 荘三郎が膨らみの頂で屹立している蕾を指の腹で撫で上げる。

「あっ・・・・・それっ!」

 そっと撫で上げただけだが、綸は今までにない過剰な反応を示し荘三郎の手から逃れようと身を捩る。

「これは嫌か?」

 荘三郎はできるだけ穏やかな声音で尋ねるが、綸は小さく首を横に振った。

「わかんない・・・・・・だけどゾクゾクするの。嫌な感じじゃないんだけど」

 先程のぶっきらぼうな口調とは打って変わって舌足らずな声で荘三郎に訴える。生まれて初めて感じる感覚が理解できず、混乱しているのだろう。『嫌な感じではない』という綸の言葉に安堵を覚えつつ、荘三郎は綸の耳元に唇を寄せる。

「それが『気持ちいい』ってことさ。もっともっと『ぞくぞく』させてやるからな」

 荘三郎はもう一方の手も綸の懐に差し込み、襦袢の袷を両手で強引に開いた。するとぷるん、と想像以上に豊かな乳房が飛び出したのである。その乳房に吸い込まれるように荘三郎は顔を寄せ、一方の乳首を口に含んだ。

「あ・・・・・んっ」

 軽く乳首が甘噛みされた瞬間、綸ははっきりとした嬌声を上げる。荘三郎はわざと大きな音を立てて乳首を、そして乳房を舐めまわし、もう一方の手でやわやわと掬い上げるように乳房を嬲った。
 男を初めて受け入れる綸を気遣い、本当にごく普通の――――――むしろ弱々しい愛撫しか施していないが、綸にとってはかなり強い刺激だったのだろう。潤んだ目でじっと荘三郎を見つめたかと思うと、いきなりその首筋に抱きつき自ら唇を重ねて来たのである。

「・・・・・んふっ、ふはぁ」

 たどたどしい息継ぎをしながら、それでも荘三郎を求め始めた綸に、さらに強い愛おしさを感じないわけがない。

(そろそろ大丈夫かな?)

 荘三郎はさり気なく自分の膝を綸の膝にすり寄せ、ゆっくりとその膝を割っていった。



UP DATE 2014.7.16

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荘三郎くん、夜這いをしかけたのは良かったのですが、ツンデレお綸ちゃんは想像以上に強敵でした(爆)夜這いを仕掛けられるって予め予告されていながら夜なべ仕事&夏場なのにきっちり着込んだ着物ってww
きっと恥ずかしくてしょうがなかったんでしょうね・・・いかにも『待ってました』と思われるのが嫌だったのか、単に照れくさかっただけなのかは定かではありませんが、奥ゆかしい大和撫子がこの時代にはいたということで・・・何かがビミョ~に違う気がするんですけど(^_^;)

次回更新は7/23、この続き&事後の二人のやりとりを中心に書かせていただきます♪
(結局惚れた弱みで荘三郎が殆どひっかぶるような気がするのは何故だろう・・・(-_-;))
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