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「VOCALOID小説」
Confession~告白~

ボカロ小説・Confession~告白~3・いくつもの出会い

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 N.Y行きの飛行機が出発するまであと40分、もうじきやってくる暫しの別れにメイコとミクオが名残を惜しんでいたその時、出発ロビーの一角がにわかにどよめいた。その尋常ではない騒ぎに二人も思わずそちらに視線を向けてしまう。

「あ、あれって、もしかして・・・・・・!」

 その『存在』を見た瞬間、メイコの表情が強張る。人混みをかき分け、派手な足音と共に二人の方へやってくるその『存在』――――――それは初音ミク型AIであった。グレーの公式衣装を身につけた細い肩を怒らせ、眉を吊り上げているその表情は、明らかに激怒していると思われる。

(もしかしてあの子、カイトのところの・・・・・・)

「あれ、フクザワ・プロのセカンド・ミクだね」

 メイコの心中を読んだかのように、ミクオはいともあっさり口にした。

「って他人事のように!あんたの移籍先じゃない!あんた、何かやらかしたの?」

 もしかしたら自分ではなく、ミクオが彼女を怒らせているのかもしれない。メイコは微かな可能性に賭けたが、ミクオはメイコの淡い希望をものの見事に打ち砕いた。

「そうだけど、挨拶ぐらいしか交わしたことねぇよ。てか、向こうは俺が同じ事務所だってことも知らねぇんじゃないかな」

「となると・・・・・・やっぱり私とカイトの事、かなぁ」

 メイコが低く呟いたその瞬間、ミクオの顔も青ざめる。

「メイ姉、それやばくね?確か1ヶ月前だっけ、スポーツ紙にあのミクとクソカイトとの交際が報道されてたよな・・・・・・あれっててっきりプロモだとばかり思っていたけど、マジだったら本気でやばいぞ。メイ姉。逃げろ、超逃げろ!」

「って、もう遅いよ!」

 これもずるずるとカイトとの関係を続けてきたせいであり、自業自得だ。目の前に迫ってきた緑色の長い髪にメイコは覚悟を決めた。



 大勢の旅客の中、派手な足音を立ててやってきたミクは、メイコの前でぴたり、と止まる。

「お尋ねしますけどあなた、元マスダ事務所のメイコさんですよね?」

 瞳の中に怒りの炎が見えるというのはこの事を言うのだろう。自分としてはカイトとの関係に罪悪感しか感じていないだけに、こう迫られると何も言い返せない。もう耐えられない――――――メイコは思わず腰を90度に折り曲げ頭を下げてしまう。

「ゴメンナサイ!フクザワ・プロのサード・カイトとはちゃんと切れ・・・・・・」

「クオくんとはどういう関係なんですか!正直に答えてください!」

 二人同時に叫び、思わず顔を見合わせる。

「え・・・・・あ、あの、カイトのことじゃないの?」

 思わず尋ねたメイコの問いかけに、ミクは不思議そうに小首を傾げた。

「何でお兄ちゃんがここで出てくるんですか?それよりクオ君とあなたはどういう関係なんですか!クオ君、他の女の子の誘いとかは全部断るくせに、こんな朝早く見送りに・・・・・・」

 ミクは涙ぐみながらメイコに迫る。どうやらミクの怒りはメイコとカイトの関係とは全く関係ないらしい。その事に気がついたメイコは落ち着きを取り戻し、涙ぐむミクに尋ねた。

「・・・・・・もしかして、あなた、クオのこと好きなの?」

 そう聞かれた瞬間、ミクは耳まで真っ赤に染める。

「だ、だってクオ君きれいだし、歌はうまいし、性格だって良いし・・・・・・そりゃあ大量生産品で大して才能のない私なんて見向きもされないのは判っているけど」

 消え入りそうな声で訴えるミクに、メイコは確信しミクオを肘で軽く小突いた。

「だってよ、クオ。もてる男は辛いね!」

 その瞬間、ミクオもミクに負けじと茹でダコのように真っ赤になる。どうやらミクオもまんざらでもないらしい。

「他人事だと思って、お気楽だなメイ姉!てめぇのことじゃ無いと知った途端にこれかよ。姉貴なんてろくなモンじゃねぇ!」

 姉貴、とミクオが口走った瞬間、ミクが不思議そうな表情を浮かべた。

「姉貴・・・・・・?だって亜種型だったらメイト型かカイコ型が兄姉じゃないの?」

「ああ。俺達はちょっと特殊なんだよ。同時期に作られて、そのまま事務所にレンタルされてさ。まだ不安定だった俺の面倒を見てくれたのがメイ姉なんだ。だから本家と亜種の違いはあるけど、実の兄弟みたいな関係なんだ」

「そ、そうだったの・・・・・・勘違いしてごめんなさい」

 消え入りそうな声で謝るミクにメイコはホッとした表情を浮かべた。

「とりあえず誤解が解けたようで良かったわ。じゃあ、私はそろそろ出発しないと・・・・・・二人共『仲良く』ね~!」

 わざと『仲良く』という言葉に力を込めると、メイコは真っ赤になって照れる二人の前から立ち去り、飛行機へ乗り込んだ。



 空路アメリカに渡ったメイコは空港に来ていた迎えの車に乗り込み、すぐさまグリニッチ・ビレッジにある日本ボーカロイド研究所アメリカ支部の事務所に顔を出した。

「初めまして、メイコ。僕は担当マネージャーのマイク・ジャスター。これから管理棟にある君の部屋に荷物を置いてもらってから、君を担当するボカロPの浅川ルカを紹介するよ」

 金髪碧眼の男が流暢な日本語でメイコに説明をする。

「ここって・・・・・・日本語、大丈夫なんですか?」

 てっきり英語での生活になると覚悟していただけに、メイコは軽く驚いた。

「ああ、勿論。だってここは『日本ボーカロイド研究所』なんだからね」

 マイクはメイコに笑顔を見せながらウィンクをする。

「この中では君たちボーカロイドは特別な存在だ。日本以上に優遇されているんじゃないかな?だけど・・・・・・」

 不意にマイクの青い目が陰りを帯びる。

「N.Yにおけるボーカロイドの立場はひどいもんだ。人間の歌手の仕事を奪うものだと壊されたボーカロイドも少なくないし・・・・・・レオン、ミリアム、ローラのアプリ型が生産中止になったのは知っているだろう?」

「はい」

 メイコにとって同じV1エンジン世代のアプリ型生産停止は衝撃的な話だった。売れなければ新たな『自分』を作ってもらえない――――――それは個体の『死』よりもボーカロイドにとって恐ろしいことである。

「AI型はまだ辛うじて生産が続いているが、それが中止になるのも時間の問題だと言われている。それを防ぐために、今回大々的に『ボカロ・アマチュア・ナイト』を開催しようってことになったんだ。人間の歌手とボーカロイドは決して敵対するものではなく、共存できるものだってアメリカ人に認識してもらうためにね」

 傷心旅行のつもりが、とんでもない使命を帯びたコンテストだったとは――――――マイクの言葉にメイコは気を引き締めた。



 管理棟に荷物を置いてすぐさまメイコはミキサー室に案内される。するとそこでは一人の女性がエディターに何か曲を打ち込んでいた。どうやらジャズのようだが、はっきりとは判らない。

「ルカ!日本から送られてきた今回のパートナーだ」

 マイクの声にその女性が振り向き、笑顔を見せた。三十代くらいだろうか、長い黒髪が印象的な美女である。『巡音ルカ』のピンクの髪を黒色にし、そのまま大人の女性にしたらこんな感じになるに違いない。だが次の瞬間、その美しささえ吹き飛んでしまう衝撃がメイコを襲った。

「初めまして、メイコ。私が浅川ルカ、あなたを担当するボカロPよ」

(マシンボイス・・・・・!)

 人工声帯によるものなのか、その声は機械音だった。そういえば浅川ルカは咽頭癌にかかったという話を北堀はしていた。

「驚いた?癌で声を奪われちゃってね。今、アメリカで治療を受けながらボカロPをやらせてもらっているの」

 ボーカロイド以上に無機質な機械音なのに、感情豊かな声――――――浅川ルカの声はまさにそうだった。ボーカロイドとして声の美しさを自負しているメイコだったが、自分はここまで感情を出せるだろうか、と軽く落ち込んだ。

「お若いのに癌と戦っているなんて・・・・・・大変ですね」

 さすがにいつまでも落ち込んでいられないとメイコは話題を変えようとしたが、今度はルカが神妙な表情を浮かべる。

「若い・・・・・・う~ん、40歳超えるとその言葉は微妙だなぁ。ま、褒め言葉として受け取っておくわ」

「40歳を超えているぅ?」

 思わぬ浅川ルカの年齢に、メイコは目を丸くする。

「あれ北堀さんから聞いていないの?こう見えても41よ。ただでさえアジア人は若く見られるから、業界関係者から舐められるのよね。だから若い、って褒め言葉が嫌いなのかもしれない」

 浅川ルカは髪をかきあげながら悪戯っぽい笑みを浮かべた。となるとボカロPとしてもそこそこベテランなのだろうか。この人物に自分の声を委ねたら―――――メイコは高揚感を覚える。

「ま、これから半年間、よろしくね」

 浅川ルカがメイコに手を差し伸べる。

「こちらこそよろしくお願いします!」

 半年間という期限付きだが、彼女が自分のボカロPなのだ――――――差し伸べられた細い手を取り、メイコは深々と頭を下げた。



 その後一週間ほど管理棟で暮らしていたメイコだったが、やはり『無菌状態』慣れることは出来なかった。なまじ日本で『自由』を味わっていただけに、アメリカ支部の完全管理を受け付けなかったのだ。
 そこで精神状態の向上の為『日本人街なら』という条件の下、同様の症状を表した他のボーカロイドと共にリトル・ジャパンに住むことになったのである。

「メイコ、おまたせ!うわぁ、美味しそう!」

 リリィ、CAL、リュウトの三人はドアを開けると、ブション・ベーカリーのフランスパンにルカが譲ってくれたブルーマウンテン、そしてあらゆる種類の卵料理にサラダが並んでいるテーブルの前に座った。

「温かいうちにどうそ召し上がれ。うちの宿酔いの分は残しておかなくていいから」

 メイコの言葉に三人が爆笑する。そして人間と何ら変わらない、穏やかな朝食の時間が始まった。




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日付を超えてしまいましたが何とか3話目をUPする事が出来ました(^_^;)誤字脱字あるかもしれませんのでお気軽にご指摘願いましたら幸いです(^_^;)

空港で二人を見つめていた影、それはカイトと噂になっていたフクザワ・プロのセカンド・ミクでした(*^_^*)どうやらこの子にとって『カイト型=お兄ちゃん』らしく、恋愛対象としては他の型のボーカロイドが好みらしいです。そんな所に移籍してきたミクオに惚れちゃったんでしょうねぇ。ちょっとストーカー的な性格は気になるところですが、そこは目をつぶってやってくださいませ(^_^;)

そして渡米したメイコを待っていたのはアメリカ支部のマネージャーやボカロPである浅川ルカ、そして同じコンテストに出る仲間たち・・・『いくつもの出会い』を果たしております。
実はこのフレーズ、TMネットワークの『Confession~告白~』でも出てくる、私が大好きなフレーズなのですよ♡

~いくつもの/出会いから/ほんの少しの/友達ができたよ/うまく生きてゆくのは/あいかわらず下手だけど~

というものなのですが、更にこれと対になる歌詞もまた大好きで(*^_^*)それもそのうち話の中で表現してゆきたいと思っております(*^_^*)

次回更新予定は10/20、ボカロ版アマチュア・ナイトの予選です♪
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