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「VOCALOID小説」
LOVE DRUG

ボカロ小説 LOVE DRUG3・彷徨いの歌唱人形

 ←拍手お返事&ここ最近年に一度しか使わない万年筆なので・・・(>_ →烏のおぼえ書き~其の七十五・江戸の防火対策
 クリスマスが過ぎ、新しい年明けが目前に迫りつつあってもルカの行方は杳として知れなかった。例年にない寒波が年の瀬の街を包む中、バイクに乗ったがくぽは首都高を横浜方面に向かって走っていた。
 ルカが行方不明になってから既に5日、警察庁の動き出しているとボーカロイド研究所から連絡が来たが、ルカがどんな目に遭っているか考えるとじっとしていられない。
 新宿や池袋、渋谷などの歓楽街の表通りは勿論、暴力団が関わっているようないかがわしい場所にまで踏み込んでルカを探そうとしたが、結果は芳しくない。

「ボカロの兄さんよ。『蛇牙』にあんまり関わらないほうがいいぜ」

 そう忠告したのは、風俗店を経営している指定暴力団所属の中堅幹部だった。

「やつらが日本日上陸してからというもの、俺達のシマだって荒らしまくられているんだ。仁義もへったくれもありゃしねぇ」

 今にもがくぽに殴りかかろうとする若い若中を牽制しつつ、中堅幹部は苦々しく吐き出す。闇の世界にも秩序と言うものはある。むしろ無駄な争いを起こし、国家権力に潰されないようにする為にそれは表世界より遥かに厳しい。しかし『よそ者』である『蛇牙』はそんな秩序などお構いなしに日本の暴力団の縄張りを荒らしているという。それは彼の国の特性――――――珊瑚の根こそぎ密猟していく一部漁民らと根本は同じものなのかもしれない。

「何でもいい。蛇牙について知っていることを教えてくれないか。あんたに迷惑はかけない」

 忠告を受けたものの諦めたくはない。どんな些細な事でもいいからとがくぽは中堅幹部に食い下がる。そのしつこいほどに真摯な態度に根負けしたのか、中堅幹部は諦観の口調でがくぽに語りだした。

「・・・・・・あくまでも噂だ。奴ら、誘拐したボカロのお姉ちゃんたちを船便で運んでいるらしい。飛行機は検疫が厳しいからな。だが、そこに載せる前に大抵は『ボカロ・クラッシュ』で頭を壊されているって話だぜ」

「ありがとう。恩に着る!」

 がくぽは中堅幹部に深々と頭を下げると、即座に踵を返して部屋を飛び出した。

「いいんですか?あの噂ってかなりいい加減な噂でしょう」

 がくぽが立ち去った後、若中の一人が中堅幹部に尋ねる。それに対して中堅幹部は微かに口の端を歪めつつ若中に答えた。

「あいつだって解っているさ。ガセだったらそれまでだし、本当だったら・・・・・・騒ぎになってサツの蛇牙締めが厳しくなるだろう。どっちにしろ俺達に不利益は無い」

 中堅幹部は煙草に火を点けると窓に近づき、立ち去ってゆくがくぽの背中を見つめ続けた。



 バイクの爆音はボーカロイドの耳にとって刺激が強すぎる。そんな爆音から繊細な耳を守る為の耳栓代わりに挿し込まれたイヤホンからは、VanaN'Iceのメンバー・カイトがMCを務めるラジオの生放送が流れていた。今日は特別ゲストにメイコが出演しており、がくぽとレンはオフである。否、オフにしてもらったと言うべきか。

「1時間だけだけど、少しはルカさんを探す時間が長く取れるだろ?」

 急遽メイコのゲスト出演が決まった時、カイトはがくぽにそう告げた。

「がくぽとレンが休むことは俺からディレクターに話をつけておく・・・・・・他のメンバーがいたら話せないメイコとの特ダネも暴露するから、って言えば、ディレクターもノーとは言わないさ」

「ありがとう、カイト」

 カイトの気遣いにがくぽの胸は熱くなる。

「がっくん、お願いね。ルカを・・・・・・助けて」

 ルカの親友でもあるメイコも涙声でがくぽに訴えた。自分がルカにコーラスを頼まなければ、ルカがこんな事件に巻き込まれることは無かっただろうという負い目がメイコにはある。その心情を察してか、メイコに対してがくぽはできるだけ明るい笑顔を見せた。

「ああ、勿論。この前ちょっと有力な情報を得たから横浜まで行ってくる。東京の港ではめぼしい成果が得られなかったから」

 既に東京のコンテナ埠頭は虱潰しに探したが、そこは既に警察の捜査が入っていたし、めぼしい成果は得られなかった。東京で行方不明になったのだから当然だろう。
 だが捜査の手が及んでいない横浜ならもしかしたらルカが監禁されているかもしれない。新幹線で新横浜まで10分弱、そこから港までは距離があるが車で移動すれば問題ない。

「取り敢えずここ――――――大黒埠頭から探す、か」

 五大港の一つである横浜港だ。コンテナを扱う埠頭だけでも数カ所はある。がくぽはルカの声を拾うため、可音域を最大に広げて捜索し始めた。



 ソファーのある小部屋から階下の大部屋に連れて来られたルカは手錠を掛けられ、床に寄りかかる形で座らされていた。どうやらこの大部屋は誘拐していたボーカロイド達を一時的に監禁する部屋らしい。ルカの他に4,5体のボーカロイドが、手錠を掛けられて床に直接座ったり横になったりしていた。

「お前、V2のくせになかなかしぶといな」

 ルカを誘拐してきた青年とは違う、中年の痩せこけた男がルカの顔を覗き込みながら苛立ちを露わにする。
 それもそうだろう、既にルカの体内には3回分の『LOVEDRUG』、つまり『ボカロ・クラッシュ』が打ち込まれているにも拘らず、ルカは精神崩壊を起こすこと無く耐えていた。
 普通一度『ボカロ・クラッシュ』を打ち込めば、V3エンジンボーカロイドでさえ95%の確立で精神崩壊を起こす。V2であればほぼ100%に効果が認められ筈なのだが、ルカは落ちる気配さえ見せない。

「相当我慢しているんじゃないのか、お嬢さん?そろそろ幻覚が見えても不思議じゃないくらいクスリ、打ち込んでいるんだぜ?」

 痩せた男は手にした空の注射器をルカの目の前で振ってみせた。確かに男の指摘通り、ルカの脳内は薬物中毒特有の症状が現れている。だが、それを気取られないようルカは唇を噛み締め、痩せた男を睨みつけるた。その様子を愉快そうに痩せた男は見つめる。

「ルカ型にしちゃなかなか強気だな。まるで『MEIKO』みたいだ・・・・・・その気の強さがどこから来るのか、そしてドラッグに対する耐性がどの程度のものなのか、本国に運んでからよく調べさせてもらうよ」

「ほん・・・・・・ごく?」

 痺れで動かしにくい唇を無理やり動かし、ルカが痩せた男に尋ねる。

「ああ『蛇牙』の本部は中国にあるんだ。今年の最終便が明日出るから、お前たちをその船に乗せてゆく」

 痩せた男はちらりと他のボーカロイド達を見やった。そこには既にドラッグで精神崩壊を起こしているボーカロイド達がいる。
あるものは幻覚に怯え、あるものはケラケラと箍が外れたように笑い転げていた。またあるものは薬物欲しさに男に縋り付き、蹴り飛ばされている。その浅ましい姿にいたたまれなくなり、ルカは視線を他のボーカロイド達から逸して俯いた。

(私は・・・・・・どこまで『ボカロ・クラッシュ』耐えられるのでしょうか)

 薬物中毒の成れの果てを見つめつつ、ルカは内心怯える。だがそれを目の前の痩せた男に見せるわけにはいかなかった。弱みを見せ、そこから付け入られれば間違いなくルカも他のボーカロイド同様奈落へと堕ちてゆくだろう。

(がくぽ・・・・・・さん)

 崩れ落ちそうになるルカの心を支えているのはがくぽの面影だった。だが、それさえも徐々に霞んでゆくようだ。

(たす・・・・・・けて)

 新たに薬物を持ってこようと立ち去っていく痩せた男の背中を見つめながら、ルカは心の中でがくぽの名を呼んだ。



 大黒埠頭をひと通り探した後、ベイブリッジを渡って本牧ふ頭にやってきたがくぽは、異様な気配に気がついた。

(この足音は・・・・・・二十数人はいるな)

 万が一、生命の危機に直面すればセーブ機能は外れるが、そのレベルに達しない攻撃を受けると厄介だ。がくぽは足音のする方へ慎重に近づいていく。その時である。

「おい!ボーカロイドがこんなところで何をしている」

 口調こそ脅しが入っているが、その声の大きさはかなり小さいものだった。人間が出せる声ぎりぎりの弱さだ。この大きさの声でボーカロイドを呼び止めるのは、研究員かAI型ボーカロイドを使いこなすボカロ・マスターくらいだろう――――――がくぽは反射的にその声の方へ振り向く。
 するとそこには四十代半ばから五十代くらいの、精悍な男が立っていた。剣呑な空気を漂わせているが、どう見てもマフィアとは思えない。むしろその逆――――――警察官のような気配といったところだ。

「先日行方不明になった『巡音ルカ』を探しています。俺の恋人なんです」

 今更嘘を言っても仕方ないと、がくぽは素直に目の前の男に事情を話す。

「中国系マフィア『蛇牙』のボカロ狩りにあったらしいんです。そこで・・・・・・とある人物に『港からボカロたちを送り出している』という情報を聞きまして」

 すると精悍な男は頷きながらがくぽに一歩、近づいた。

「安心しろ。多分情報源は俺達をそう変わらない。日本の指定暴力団も暴対法と『蛇牙』に圧されて絶滅危惧種と化しているからな。自分達の利益になるのなら警察にだってネタを流すさ」

 男はニヤリと笑うと、人間の出せる最小の声のままがくぽに尋ねる。

「ここに山積みにされているコンテナの中から『お仲間』の気配はするか判るか?」

 その言葉にがくぽは耳を澄ます。だが、山積みになっているコンテナからはボーカロイドの息づかいどころか、微かなエンジンノイズさえ聞こえない。

「・・・・・・この周辺にはいないようですね」

「となると、あっちの倉庫か事務所棟に蛇牙どもがいそうだな。もしかしたら俺の部下が既に嗅ぎつけているかもしれない」

 どうやらこの精悍な男は警察関係者で、蛇牙を捜索しているチームリーダーらしい。しかしそれを確信すると同時にがくぽの脳裏に新たな疑問が湧いてくる。

「あの・・・・・・そもそもここにボーカロイド達が監禁されているという確信を、何故持たれるのですか?」

「さっきもちらっと言ったが、蛇の道は蛇、だ。本牧周辺に蛇共がうじゃうじゃたむろっているからさっさと処分してくれってチクってきた奴がいるんだよ」

 判るようで判らない、大雑把な説明をしつつ、精悍な男は事務所棟に向かって歩き出す。

「恋人が心配ならおまえさんも来い。ただ、自分と恋人の身は自分で守ってくれよ」

「身を・・・・・・守る?」

 その物騒な一言にがくぽはあからさまに眉をひそめる。

「ああ。間違いなく銃撃戦になるだろう。しかも人間の人質がいなけりゃこっちは容赦するつもりはない」

「・・・・・・確かに俺達は中枢がやられなければ。銃で打たれても問題ありませんしね」

 男の言葉に妙に納得しつつ、がくぽは男の後についていった。





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家族や研究員でさえ『中枢だけ無事なら』と半ばあきらめている状況ですが、やはり殿は諦めきれないようです(*´艸`*)
仕事の合間にあちこちに聞きこみをし、有力情報を元に恋人の行方を探す・・・きっとキャンセルした仕事はラジオだけではないでしょう(え゛)それはひとえに仲間の協力があってこそだと思います。

そして話の後半に出てきた謎のおっさん・・・どうやら警察のそこそこ偉い人で、部下を連れて蛇牙の捜索をしているようですが、果たしてその具体的な正体は?そもそも何故ボカロの性能を熟知しているのか・・・残りあと2~3回ほどになりますが、年内の更新は今回が最終となります(>_<)
そしてルカ及びボーカロイド達救出作戦は1/5にUPいたしますので、お正月番組の合間にでも覗いてやってくださいませ(^^)
ではボカロファンの皆様、良いお年を~(^_^)/~
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