FC2ブログ

「VOCALOID小説」
LOVE DRUG

ボカロ小説 LOVE DRUG5・ニューナンブM60と苺Macaron

 ←拍手お返事&『三首』の冷えが耐えられない私にとって・・・(^_^;) →烏のおぼえ書き~其の七十八・鳥追
 その部屋は本牧埠頭にある事務所の地下にあった。10年以上も昔に倒産した企業の持ち物だったその事務所に『地下室』を作ったのは他でもない蛇牙である。出入りの激しいこの場所では『事務所の改装』という名の工事は珍しくないし、周囲の企業にも気づかれることはなかった。むしろ工事が終わり、蛇牙の構成員が出入りするようになってからのほうが怪しまれたほどである。それでもボーカロイド達が地下に監禁されていることは気が付かれずにこの日まで――――――がくぽが恋人のルカの声を拾うまで来たのである。

「ルカや他のボカロたちを辱めた罪・・・・・・絶対に許さぬ!」

 激情のままにがくぽが倒れている青年に言い放つ。部屋の片隅には三人ほどの、あられもない姿をしたボーカロイド達が座り込んでいた。そして隣の部屋からも気配がする。その全てが『ボカロ・クラッシュ』によって中枢を破壊され、歌唱機能を始め殆どの性能が破壊されているのである。ボーカロイドにとってこれ以上の屈辱はない。怒りもあらわにがくぽが再び目の前の青年を殴ろうとしたその時である。

「そこまでだ、蛇牙!!」

 完全武装し短機関銃を手にした神奈川県警察SATの隊員が部屋に流れ込んできた。更にその後から拳銃を手にした見崎が飛びこんでくる。

「動くな!警察庁刑事局組織犯罪対策部だ!」

 SATの短機関銃及び見崎が手にしたニューナンブM60の銃口が蛇牙の青年に一斉に向けられる。

「見張りを始め、貴様の仲間は既に我々が逮捕した!無駄な抵抗をせずに手を頭の上に上げろ!」

 改めて聞くと、美声の部類に入る見崎の声がコンクリート打ちっぱなしの部屋に響く。どうやら先程聞こえた銃声はSATと蛇牙の銃撃戦の音だったらしい。そして『人質』がその場にいなかったことを良しとして、蛇牙のメンバーの殆どを銃撃、抵抗できない程度の怪我を負わせた後にその場にいた全員を逮捕したのである。

『ちっ、ケチが付いたな。欲を出して開発ボカロにまで手を出したのが運の尽きか』

 勝ち誇った見崎を見つめつつ、青年は殴られ腫れ上がった頬を押さえ不敵な笑みを浮かべた。そして何を思ったかテーブルの上に置いてあったスイッチを手に取り、見崎らにそれを見せつける。

「俺を逮捕したけりゃすればいい。だが、その前にこいつを――――――この部屋の爆破装置のスイッチを入れてやる!」

 その瞬間、SATの隊員達に微かな動揺が走る。もし青年の言葉が本当ならば、間違いなくこの部屋にいる自分達は木っ端微塵になるだろう。

「何を馬鹿なことを!そんなことをすればお前だって死ぬぞ!」

 部下達の動揺を蹴散らすように見崎は青年に怒鳴りつけるが、青年はヘラヘラと笑いながら見崎を睨みつける。

「ああ、死ぬさ。だがプロジェクトが失敗したらどっちにしろ組織によって殺されるんだ。しかも嬲り殺し、さ・・・・・・だったら爆弾であっさり逝くほうが遥かにマシだ!」

 青年はスイッチに親指をかけながら凄惨な笑みを浮かべた。

「さぁ、死にたくなければ銃を下ろして貰おうか!」

 その言葉に見崎は渋々部下に自動小銃を下ろすように命じる。蛇牙の内部制裁は日本の暴力団など比べ物にならないほど残虐だ。海や川に死体が浮かぶのはまだましな方で、四肢をバラバラにされたり、中には野良犬に喰われている死体もあると聞き及ぶ。
 青年の言葉通り、内部制裁に遭うくらいなら警察官を道連れに自爆したほうがましだろう。

「そうそう、大人しく言うことを聞いてくれりゃあ爆破はしないからさ」

 青年は爆破スイッチをちらつかせながら反対側にある扉へと向かう。そしてドアノブに手をかけたその時である。

「させるか!」

 不意にがくぽが叫び、それと同時に青年に飛びかかった。成人男性型ボーカロイドの瞬発力は秒速100mに近い。その勢いで体当たりされた青年は、勢い余って背後の壁に叩きつけられる。そしてその瞬間、手にしていた起爆スイッチから手を離してしまった。

「しまった!」

 慌てた青年は起爆スイッチを拾おうと覆いかぶさるがくぽを殴るが、がくぽはびくともしない。それどころか状況を把握した見崎が起爆スイッチに銃口を向けるではないか。

「がくぽ!銃声と共に右へ避けろ!」

 その叫びと同時に、見崎のニューナンブM60が火を吹き、がくぽの左側に転がった起爆スイッチを打ち砕く。そしてそれを確認すると同時にSATの隊員が青年に押し寄せ、動けないように押さえつけた。

「12月29日、午前0:32分!ボーカロイド誘拐及び公務執行妨害の現行犯で逮捕する!」

 SAT隊員の声と同時に、冷たい手錠が青年の手首の自由を奪う。その瞬間、がくぽは気が抜けたのかその場にへたり込んでしまった。



 一連のボーカロイド誘拐に関わっていた『蛇牙』メンバー及びボーカロイド・言和の逮捕によって警察の仕事はひと段落ついた。だが、事件はまだ終わっていない。
 ボカロ・クラッシュによって精神崩壊を起こしたボーカロイド達を研究所へ送り、クリーニングをしなければならないのだ。現場でボカロ・クラッシュの汚染を確認した7体のボーカロイド達は、警察車両よって山間部にあるボーカロイド研究所分室へ送り込まれた。

「すみません、見崎さん。俺達のためにこんな多くの警察車両まで・・・・・・」

 ルカを抱きかかえながらがくぽが詫びるが、見崎は表情を崩さずに気にするな、と口にした。

「もしかしたら彼女たちのメモリーに蛇牙の情報があるかもしれない。それは俺達にとって必要なものだから、研究所に送り込んでデータを洗い出すのは当然だ」

 見崎が呟いたその時、がくぽの腕の中のルカが微かに呻き、眼を開く。

「ルカ、気がついたのか?」

 今までぐったりと意識を失っていたルカの目覚めにがくぽは気色ばむ。するとルカはきょろきょろと周囲を見回し、不思議そうな表情を浮かべた。

「がく・・・・・・ぽ、さん?ここ、は?」

「警察車両の中だ。誘拐されていた君達を警察が助けてくれて・・・・・・」

 がくぽは見崎の方を見ながらルカに説明をする。そしてその視線を追いかけたルカが見崎の顔を見た瞬間、思わぬことを口走った。

「な・・・・・・んで、Pさんがここにいらっしゃるんです、か?」

 その言葉を聞くなりがくぽの表情が険しくなる。もしかしたら『ボカロ・クラッシュ』のせいで意識が混濁しているか、知覚神経に障害が出ているのかもしれないとがくぽは危惧を覚えた。

「ルカ?この方は警察の方でボカロPじゃ・・・・・・」

「まぁ、いいから・・・・・・きっと色々あってちょっと混乱しているだけだろ」

 ルカに説明をしようとしたがくぽを何故か見崎が止める。心なしかその目が泳いでいるように思えたが、今はそれどころではない。
 サイレンを鳴らしながら猛スピードで分室へ向かう警察車両の中、がくぽは腕の中のルカを強く抱きしめた。



 関東西部の山奥にあるボーカロイド研究所分室にルカを含む7体のボーカロイド達が運ばれたのは事件解決後からおよそ1時間後だった。到着するなり7体のボーカロイド達はトリアージにかけられ、即座に集中治療が始まる。
 そんな中ルカはよりによってカテゴリーⅡ、すなわち待機的治療群に振り分けられてしまい、その中でも最終の治療となってしまった。

「何故!ルカの治療が最後なんですか!!」

 がくぽは治療責任者に詰め寄るが、それを止めたのはルカのマスターである北堀だった。

「がくぽ君。君の気持ちは解るし、私だって自分のところのルカの治療をいち早く始めたい。だが、ルカの中毒症状は7体の中で一番軽いんだ――――――どんなに遅くても明朝にはクリーニングを始められると思うから、それまでルカには辛抱してもらう。」

「そ、そんな・・・・・・」

 待機病室に運ばれてゆくルカを見つめながら、がくぽは拳を握りしめる。

「がくぽ、こればかりは仕方ないんだ。兄としてもつらいものがあるけどね・・・・・・ルカは703号室に運ばれていったから、君もそこでゆっくり休んでおいたほうがいい」

 そう声をかけてきたのはルカの兄に当たる、北堀のカイトだった。

「ルカは大丈夫。すでにV4Xのボディができているし、モニター参加する際にかなり細かな部分までデータを取ってあるから。無いのは誘拐される3日前以降のものだけかな・・・・・・・だから最悪でもそのままデータをV4Xのボディに流し込めばほぼ元通りのルカに戻る。だけど、他の子達はメモリーも破壊されていて復元も難しい状態なんだ」

 カイトの説明にがくぽは頷く。確かに他のボーカロイド達に比べルカの症状は軽度だし、研究開発ボーカロイドだけにバックアップもほぼ完璧だ。

「解りました。では、703号室で待機してます」

 カイトに告げてその場を後にしようとしたがくぽだったが、それをカイトが引き止める。

「あ、その際に鍵はかけておけ、ってマスターから言付かってる。ほら、『ボカロ・クラッシュ』って元々催淫効果が強いから・・・・・・ルカが君を襲う可能性が極めて高いんだって」

 ボーカロイドの可音域ぎりぎりの声で告げたカイトの一言に、がくぽは羞恥のあまり顔を真赤にした。

「え、あの・・・・・・」

「ルカのクリーニングが最終になった理由は君がいるから、ということもあるんだ。恋人同士なら『そういうこと』があっても問題にならないだろ?それに703号室はオペ室からかなり離れているから他の人間やボカロが近づくことも無いだろうし・・・・・・色々大変だと思うけどルカを頼むよ」

 つまり『親』や『兄』公認の宿泊である。ある意味これ以上気まずく、恥ずかしいことは無いだろう。しかしこうでもしない限り、ルカは研究室の男性スタッフを手当たり次第襲いかねない。それを防ぐためには、やはりがくぽに監視及び『相手』をしてもらうのが最善なのである。

「は、はぁ・・・・・・承知、しました」

 照れくささも相まって何とも言えない神妙な表情でがくぽが頷く。その時である。

「では北堀さん、何かありましたら警察庁の刑事局組織犯罪対策部部長・見崎隆宏までご一報をお願いいたします」

 北堀と何かを話していたのだろうか、見崎がオペ室の隣にある部屋から出てきた。やけに自分の所属に力を込めたのは警察官ならではの特色なのだろうか――――――がくぽがそう思った瞬間、横にいたカイトが見崎に笑顔を向ける。

「ご無沙汰しています、苺マカロンPさん。まさかあなたがこの事件を担当してくださっていたとは思いませんでした」

 あまりに衝撃的過ぎるカイトの一言に、がくぽは眼球が落ちるかと思われるほど目を見開き、見崎は恥ずかしさのあまり耳や首筋まで真っ赤に染めた。




Back     Next


にほんブログ村 小説ブログへ
INランキング参加中v
こちらはブログ村の小説ランキングにリンクしております。



こちらは画像表示型ランキングですv




なんとびっくり、ハードボイルドなおじさま・見崎は警察庁の刑事局組織犯罪対策部部長兼ボカロPでした♡しかも苺マカロンPという、かなり可愛らしい名前のwwwこのP名が付いてしまったのは彼の奥さんのしわさによるものなのですが、その詳細は次回への持ち越しということでご容赦くださいませ( ̄ー ̄)ニヤリ
(なお今回のタイトルは彼の二面性を表したものです♪)

がくぽや見崎の活躍で何とかルカたちを救出する事が出来ました(*^^*)本当はもっと銃撃戦をさせたかったのですが、海外で物騒な事件が続いていることもありさすがに不謹慎かな~とちょっと自粛(^_^;)因みに一階部分での銃撃戦ではSAT側にも多少のけが人が出たという裏設定です。
(本気で書き出すと収拾がつかなくなりそうなので^^;)

次回が(たぶん)本編最終話、その後でおまけとして703号室での出来事(R-18)を書きたいと思います(*´艸`*)
関連記事
スポンサーサイト




 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ 3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ 3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ 3kaku_s_L.png VOCALOID小説
総もくじ 3kaku_s_L.png 雑  記
総もくじ  3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ  3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ  3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ  3kaku_s_L.png VOCALOID小説
総もくじ  3kaku_s_L.png 雑  記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【拍手お返事&『三首』の冷えが耐えられない私にとって・・・(^_^;)】へ  【烏のおぼえ書き~其の七十八・鳥追】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【拍手お返事&『三首』の冷えが耐えられない私にとって・・・(^_^;)】へ
  • 【烏のおぼえ書き~其の七十八・鳥追】へ