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「VOCALOID小説」
LOVE DRUG

ボカロ小説 LOVE DRUG6.舞い戻ってきた歌姫

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 苺マカロンP――――――その名はがくぽも知っていた。『巡音ルカ』発売当初から活動しているボカロPで『かわいいルカうた』を中心とするタグが付けられる楽曲を提供することでも知られている。曲数こそ少ないが、大人の可愛らしさを綴った歌詞と繊細な調音技術の高さには定評があり、コアなファンが多いボカロPだ。
 しかしその女性的な曲調や少々甘過ぎの感がある動画、そして何よりも『苺マカロン』というボカロP名からてっきり女性だとがくぽは思い込んでいたのである。
 だが、がくぽの思い込みも仕方ないだろう。硝煙と煙草、そしてブラックコーヒーの匂いが似合う精悍な男のボカロP名が『苺マカロンP』だとは誰も思うまい――――――暫くの沈黙の後、ようやく見崎が口を開く。

「・・・・・・おい、カイト。今回はそっちの用件で来たわけじゃないんだから、せめて『見崎さん』とくらい呼べないのか?」

 見崎の唸るような声音に、カイトは意味深な笑みを浮かべつつ返事をする。

「でも、『苺マカロンP』の方がここでは通りがいいですよ?そもそも『刑事局組織犯罪対策部部長・見崎隆宏』なんて言っても誰も判らないと思いますが」

 そんな『恋人の兄』の言葉にそこはかとない悪意を感じるのはがくぽの気の所為だろうか――――――そう思えるだけの冷静さを取り戻したがくぽは、ようやく見崎に対して口を開いた。

「え~と、苺マカロ・・・・・・」

「見崎でいい!」

 恥ずかしさこの上ないボカロP名を口にしかけたがくぽに、見崎が怒鳴りつける。

「では見崎さん、ひとつだけお尋ねしたいのですが、何故よりによってそのP名をタグロックしてしまったのですか?」

「・・・・・・嫁のせいだ」

 やはり本人が好き好んで選んだ名前では無いらしい。当時のことを思い出したのか、恨めしそうに見崎は事の次第を語り始めた。

「あれはもう6年前になるか・・・・・・当時急激に多くなり始めていたボーカロイド絡みの犯罪に対応できるよう組織犯罪対策部に命令が下った。そこで俺は当時発売されたばかりで英語ライブラリも持っていた『巡音ルカ』をレンタル、その性能を調査した」

 見崎の語りにがくぽとカイトは黙って頷く。確かにルカやがくぽが発売された当時、アプリ型ボーカロイドを使っての脅迫電話や詐欺電話が相次いでいた。それに対応する為に警察庁がボーカロイドの性能を知ろうとするのは当然だろう。

「しかし、ひと通りの調査が終わった後・・・・・・魔が差したんだ」

「魔が差した・・・・・・とは?」

「もしかしたら今後に役立つかも、と高校時代に作った自作の曲を冗談半分に打ち込んでみたんだ。そうしたらベタ打ちでもそれなりに上手く歌ってくれたんで・・・・・・つい嫁に動画を見せたら、あいつが面白がって動画投稿サイトにUPしたんだ。しかも俺が仕事で家にいない間に」

「ああ、なるほど・・・・・・もしかしてボカロP名も見崎さんがいない間に?」

「その通り、よりによってあんな恥ずかしいボカロP名をタグロックしやがって――――――身近な女ほど信用してはいけないと心の底から思ったよ」

 見崎の心からの訴えに、がくぽとカイトは同情の眼差しを向けた。ボーカロイドの世界も女性が優勢で、男性ボーカロイドの肩身は狭い。それだけに見崎の災難は他人事とは思えなかった。

「よりによって・・・・・・そのP名はキツイですよね」

「まったくだ。お前たちも気をつけろよ」

 見崎はそこで話を切り上げた。

「下らない話に付き合わせて済まなかったな、がくぽ。そろそろ恋人のところへ行ってやれ」

 見崎に促され、がくぽは真顔に戻る。きっとルカはボカロ・クラッシュの影響に苦しんでいるだろう。クリーニング手術までの間、それを少しでも和らげてやらねばならない。

「はい、そうさせていただきます。では見崎さん、また後日改めて」

 がくぽは見崎に頭を下げるtp、ルカがいる703号室へと急ぎ足で向かった。



 その後、ルカの手術は予定時間より2時間ほど早まって始まった。先にクリーニングをしたボーカロイドの内2体がクリーニング不可能な状態まで汚染されていて、手の施しようが無かったのである。

「ルカに関しては中枢のクリーニングをした後、全てのメモリーをV4Xのボディへと移行する」

 ルカに付き添ってオペ室に入ろうとしたがくぽに、北堀が手術内容を告げた。

「そのままV4Xに移行するのは不可能なんですか?」

 手術着に着替えながら、がくぽは北堀に尋ねる。

「・・・・・・『ルカのマスター』としては誘拐時の忌まわしい記憶なんて全てデリートしてしまいたいところだが、警察からの要請がある。できるだけその記憶を消さずに復元してほしいと苺マカロンP、もとい見崎刑事から申し渡された」

「・・・・・・やはり苺マカロンPの方が通りがいいんですね」

 思わず北堀の口をついたボカロP名にがくぽは苦笑いを浮かべる。すると北堀もつられるように笑みを浮かべつつ、照れくさそうに頭を掻いた。

「何せうちのルカの上得意だ。そもそもあの人の本名はレンタル契約時に聞いたきりだったからすっかり忘れていたよ」

「インパクトありすぎますからね、あのP名は」

 着替えを終えたがくぽはオペ室の中へ入ってゆく。その中には既にボカロ・プールに横たわったルカがいた。その横にはもう一人のルカ――――――V4Xのボディが並べられている。今までより少し幼く見える顔立ちだが、ルカの『人格』が入れば少しは表情が変化するかもしれない。

「がくぽくん、大丈夫?」

 オペ室に入室したがくぽに、手術着を身につけたメイコが声をかけてきた。

「ルカはクリーニングだけじゃなく、V4Xへの移行もあるから一旦中枢だけの姿になるわよ?あまり気持ちいいものでは無いと思うけど」

「大丈夫ですよ。どんな姿だってルカには変わりありませんし、すぐに新たなボディが与えられるんですから。それよりも・・・・・・」

 がくぽはちらりとミク、リン、レンの三人を見やる。三人とも皆と同じ手術着を着込んでオペの準備をしていた。

「俺よりもむしろ彼らの方が問題では?」

「ああ、あの子達は大丈夫。私やカイトのV3移行の時にも手伝いに入っているし、むしろ私達よりも優秀な助手かもしれない。特にリン、レンは上三人の・・・・・・ルカを入れたら4人全員の新ボディ移行の手伝いをしているから」

 そう言われて改めて観察すると、年少組は人間に指示される前にてきぱきと準備をしていた。特にレンは作業の中心となっている。

「確かにあの手際なら安心できますね」

 がくぽは目で笑ってルカが横たわっているボカロ・プールの横に座り、人工羊水に浸かっているルカの手をとった。

「俺は大して役には立てないけど・・・・・・」

「でもルカが目覚めた時に目の前にいる、っていう重要な役目があるよ」

 そう声をかけてきたのはカイトだった。

「僕らきょうだいや、マスターではその役目は担えない――――――眠り姫の目覚めは王子様に任せるよ」

「・・・・・・はい。あまり頼りがいのある王子ではありませんけど」

 がくぽは頷き、手術の邪魔にならない場所まで一旦下った。



 手術はおよそ30分で終了した。かなりの量の薬物を打たれており、クリーニングに時間がかかってしまったが、既に一部中枢をV4X仕様にしていたのでメモリーへのダメージは予想より小さかった。
 だが問題はこの後だった。V4Xの公式販売は2月下旬であるため、早々にV4Xのボディになってしまったルカは表向きの仕事が――――――つまりがくぽとの仕事ができなくなってしまったのである。
 更に蛇牙関係の捜査の関係上、ルカやその他誘拐されていたボーカロイド達は連日警察庁に呼び出され、二週間ほど拘束された。それが終わったと思ったら今度は生誕祭用のレコーディングである――――――こんな状況で、がくぽとルカは逢うことは勿論、電話さえろくに出来ず互いの生存報告をLINEでする日々が続いた。

「事情が事情だけに文句は言えないが・・・・・・もう少しどうにかならないものかな」

 楽屋でがくぽがぽつり、と呟く。そんながくぽをバンド仲間のカイトが慰めた。

「仕方ないさ。この冬はクリスマス前だけでも一緒にいられたんだから諦めろよ」

 しかし、諦めろと言われてもそう簡単には諦めきれないのが男心である。せめて今日の誕生日くらいは一緒にいることができればとレストランを予約してプレゼントも買い込んだが、下手をしたらそれも無駄になりそうだ――――――諦めかけたその時である。

「がくぽさん。ごめんなさい!お待たせしました!」

 新しい公式衣装を彷彿とさせる、ミモレ丈のスカートを靡かせてルカが楽屋に飛び込んできた。頬を桜色に紅潮させたルカは真っ直ぐにがくぽに近づくなり、飛びつくようにがくぽに抱きつく。そんな大胆なルカの行動に驚きながら、がくぽはルカに尋ねた。

「あれ?今日も確か生誕祭用のレコーディングがまだ入っていたんじゃ?」

「ええ。だけど苺マカロンPさんが『本職もまだケリが付いていないし、俺は遅刻組に甘んじればいいから』ってキャンセルしてくれたんです!」

 どうやら見崎が二人に気を遣ってデートの時間をプレゼントしてくれたらしい。見崎らしい気遣いにがくぽは心の中で感謝する。

「じゃあこれからレストランに行こうか。魚介が美味しい地中海料理の店を予約したんだ」

 がくぽはルカの手を取りながら微笑む。春にはまだ遠いが、二人の間には春風が吹いているようだ。少しだけ幼くなったルカの笑顔を見つめながらがくぽはささやかな、しかし大きな幸せを噛み締めていた。




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色々ありましたが、ルカは無事がくぽの元へ帰ってくることが出来ました(*^_^*)それにしても苺マカロンP,あまりにも気の毒wwwどうやら彼の家庭もボカロの世界同様女性上位らしいですwww

私の作品にしては珍しい現代ものサスペンス?でしたが如何でしたでしょうか(^_^;)少しづつ書けるジャンルを広げなければと思いつつ、広げては玉砕を続けている感じがしないでもないwwwそんな拙い話に最後までお付き合いいただき本当にありがとうございましたm(_ _)m

そして来週1/26、ルカが手術を受ける前の数時間、703号室であった出来事(勿論R-18)をおまけとして書きたいなと(*´艸`*)一応ルカ攻め、がくぽ受けで考えておりますが宜しかったらお付き合いのほど宜しくお願いしますm(_ _)m
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