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「VOCALOID小説」
聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 蒼き龍騎士1

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 遠征用の陣屋にしてはかなり豪奢な天幕の中へ、奏国(かなでのくに)第二師団、通称青龍隊の鎧を身につけた若者――――――キョウが足早に入ってきた。

「カイト中将、ただいまグリアーノ国首都・シャンジェから斥候が帰ってまいりました」

 息を弾ませながらキョウはカイトに報告する。

「そうか。予想よりもだいぶ早かったな――――――すぐにこちらに通せ」

 カイトは寒さから喉を護っている襟巻を少し緩めながらキョウに命じた。カイトの母国である奏国から見て北西にあるグリアーノはかなり寒い。地理的な事情もあるのだろうが、内陸故の寒暖の差も無視できないだろう。その寒さに追い打ちをかけるように今朝から雪もちらつき始めている。この近辺の気候はよく知らないが、万が一積もられたら進軍もままならない。
 雪が本降りになる前にさっさと皇帝命令を遂行し、狄国と交戦している奏国第一師団、すなわち皇帝自らが率いる紫龍隊と合流しなければ――――――頭の中で段取りをなぞり終わった時、丁度斥候として派遣していた兵士がカイトの前にやってきた。

「ご報告申し上げます。シャンジェに配置されている敵兵の数はおよそ5000強。既に城塞に立てこもっておリます。ただ、城塞とは言っても我が国のものに比べるとかなり脆弱で・・・・・・」

 その報告にカイトは不愉快極まりないといった表情を浮かべる。

「首都なのにたった5000人しか兵を置かず、しかもそれらも既に城塞に立てこもっているだと?城下町の庶民を見殺しにするつもりなのか?」

 首都戦とはいえ、戦闘そのものは軍を展開しやすい広域――――――例えば町の郊外や収穫が終わった畑でやることが多い。カイト達の進軍も『後の奏国領民』である庶民にできるだけ被害を与えないよう、細心の注意を払って時期や場所を決めているのだ。
 それなのにグリアーノの国王は、城下の領民を犠牲にして自分だけ助かろうと護衛の兵士共々城塞の中に引っ込んでしまったというのである。

「ふん!そんなに怯えるなら我らの言うとおり、狄国への食料や武器の補給を止めればいいものを」

 さすがに戦闘に関係ない庶民を犠牲にするのは避けたい。それでなくても遠征のため武器の数が限られている。できるだけ少ない消費で勝ちを収めなければならないのだ。

「・・・・・・仕方ない。町の代表者に死にたくなければ避難するよう交渉するしか無いか」

 厄介な仕事が一つ増えてしまったが仕方が無い。カイトは立ち上がると首周りを保護していた襟巻を外し、兜を被る。

「領民を逃した後に城攻めだ!陛下に命じられた『緑の魔女』の捜索はその後だ。最悪我らの後に来る奏国教導師団に任せてもいいだろう」

 側近の手を借りる事なくさっさと軍装を整えたカイトは、副官のウィルに出撃命令を下した。



 皇帝からの命令は二つあった。ひとつは奏国の敵である狄国の同盟国で補給庫でもあるグリアーノ国を潰すこと。もうひとつはグリアーノ国内にいると噂される『緑の魔女』を捕まえることだ。あくまでも噂の域を出ないが、その魔女は流行病に全滅しそうだった村一つを丸ごと救ったというのである。それも一つや二つでは無いらしい。皇帝はその力に興味を示しているが、今回の進軍同様カイトにとって『面倒くさい』任務の一つでしかない。

「・・・・・・魔法だったら教導師団の奴らだけでも充分だと思うんだけどなぁ」

 他国同様、奏国にも魔導師達は多く存在する。それは街中のいかがわしい占い師レベルの者から、国立の魔導学校で基礎を叩きこまれ、魔導省に入るエリートまで様々だ。
 その中でも特に優れたものが奏国教導師団に入り魔導を使った戦いを行うのだが、皇帝はそれだけでは飽きたらないらしい。

「あんだけ厳しい訓練や授業を耐え抜いてきているのに――――――役立たずなんて言われたらやってられないよな」

 重たい兜の中でカイトは思わず呟く。実はカイトも軍人になる前は魔導師を目指していた。上流貴族出身とはいえ次男であったカイトは『手に職をつけるため』に十五歳まで魔導学校で学んでいたのである。だが戦争と流行病で父と兄を立て続けに亡くし、家を継ぐ羽目に陥って魔導学校を中退した。それだけに魔導学校の厳しさも嫌というほど知っている。

「ま、実際『緑の魔女』とやらを捕まえてみれば、奏国の魔導師達が如何に優秀か陛下だって理解してくれるさ」

 カイトは口の中でブツブツ呟きながら、待機していた龍の前に立つ。青玉の如く青く煌めく鱗に更に濃い色のたてがみ、そして知性を湛えた菫色の瞳こそ、奏国第二師団の象徴でもあり、別名の由来でもある青龍であった。奏国でもたった五人しか許されない『龍騎士』の称号をカイトは持っているのだ。

《カイト、ようやく出陣ですね。さっさと終わらせて早く温かい奏国に帰りましょう》

 おどけた青龍の一言に、ようやくカイトの頬にも笑みが零れた。

「スミレ、グリアーノ国の首都・シャンジェに向かえ!」

 すると龍は大きく翼を広げ、ふわりと浮き上がった。



 龍騎士・カイトを中心にグリフォン隊、騎兵隊、歩兵隊からなる奏国第二師団は極めて早い進軍速度でシャンジェへと向かった。そして太陽が中天に辿り着いた頃、ようやく小高い丘の上にあるシャンジェ城の姿がかいま見えた。だが、不意に隊列の先頭の方から騒ぎ声が湧き上がったのである。

「一体何があったんだ?敵の軍隊は穴熊宜しく城に篭っているというのに」

 列の先頭には歩兵たちが隊列を組んでいるが、その隊列は既に崩れ、人だかりの状態になっていた。なのでそこで何が起こっているのかカイトには見ることが出来ないのだ。
 一体歩兵隊の兵長は何をしているのか――――――そう思った矢先、歩兵の一人がカイトの許へ慌ただしくやってきた。

「憚りながら申し上げます!所属不明の魔導師らしき人物が我軍の前に立ちはだかり道を塞いでおります!それを退けさせようと歩兵たちが奮闘しているのですが、魔法で弾かれてしまって・・・・・・」

「何だって?で、その魔導師達の人数は?」

「それが・・・・・・たった一人なのです」

「一人?!」

 驚きのあまりカイトは素っ頓狂な声を上げた。近隣諸国にその名を轟かせている奏国の五龍旗を知らないものはいないはずだ。そして隊列の先頭にそれを掲げているにも拘らずたった一人立ちはだかるとは俄には信じられない。

「一体どんな勇者なのか・・・・・・いや、愚か者なのか」

 興味をそそられたカイトは青龍・スミレの背中に立ち上がり前方を覗き見る。すると歩兵たちの中央に、フード付きのマントに身を包んだ魔導師らしき者が杖を手に立ちはだかっていた。女にしては背が高く、男にしては小柄だ。フードを目深に被っているため顎しか見えないが、かなり細面と見受けられる。
 そして結界でも張っているのか、歩兵たちは一定の距離から魔導師に近づけないでいるのだ。進もうとしては転び、腰が砕け、中には尻餅をつくものまでいる。そんな状況に業を煮やしたのか、歩兵隊兵長がとうとう抜刀したのだ。

「おい、魔法使い!さっさとどかぬか!でなければ蹴散らすぞ!」

 兵長がマント姿の魔導師に怒鳴りつけ、刀を振りかざす。刀の長さはギリギリ魔導師に届くだろうか――――――そうカイトが思った瞬間、不意に魔導師が手にした杖を振ったのだ。するとその杖の先端から炎が吹き出し、青龍隊を取り巻いたのである。その炎に兵士達は慌てふためき、パニックになる。

「スミレ!翼で風を起こしてこの炎を蹴散らせ!」

 魔法によって出来た炎が風で吹き消えるかどうかは解らない。しかし今できることは青龍・スミレやグリフォン達の翼によって火を消すしか方法が無いのだ。しかしそんなカイトの焦りを小馬鹿にするようにスミレは気の抜けた大あくびをすると、ふわり、と宙に浮かんだ。

「おい、スミレ!兵士たちが・・・・・・あっ!」

 カイトは眼下を見下ろして愕然とする。カイトが今までいたその場所、そして兵士達の隊列の周辺は全く燃えていないのだ。しかし兵士達は慌てふためき、のたうち回っている。これはもしかして――――――と、カイトはスミレに尋ねる。

「催眠術と目眩ましの複合技、か?」

《ええ。しかし青龍隊全員に催眠術と目眩ましを同時にかける技量はなかなかのものですよ。これは『緑の魔女』にも期待できそうですね》

 スミレはやけに嬉しそうに喉を鳴らしつつ、今度は更に遠くを四本ある指のうちの一つで指し示した。

《彼女は兵士たちを傷つけるつもりは毛頭ないようですね。というか、単に時間稼ぎでしょう、あれの》

 その方角には、多くの町人たちが町の外へ避難してゆく姿が見受けられた。そレを誘導しているのは若い娘――――――身の丈ほどもある緑色の髪が印象的な、魔導師姿の娘である。その姿を見た瞬間、カイトは小さく声を上げてしまった。

「もしかしてあれは陛下が仰っていた・・・・・・」

《緑の魔女でしょう――――――カイト、せめて彼らが町から逃げ出すまでは待っていてやりましょうよ。どうせ庶民は避難させる予定だったのでしょ?》

 だが、カイトは不服そうにスミレに異を唱えた。

「しかし、あそこまで我軍がコケにされては放っておくわけにはいかない。緑の魔女はともかく、あの魔導師だけは絶対に・・・・・・」

《あ、言っておきますけど彼女はまだ魔導師じゃないと思いますよ。あの若さだとまだ『バード』――――――魔導師見習いでしょうね、この地方では》

 完全にカイトを小馬鹿にしているスミレの口調に、とうとうカイトも本気で怒りだした。

「スミレ!魔導学校中退だけは余計だ!それと、何で若い女だと断定する!」

 もしかしたら少年かも知れないではないか――――――異議を唱えたカイトにスミレはあっさりと答えを返す。

《あなた、杖を持つ手を見なかったのですか?あの手は間違いなく若い女性――――――十代後半から二十代の女性の手ですよ。っていうかそんなのも判らないんですか、人間なのに》

 さりげないスミレの嫌味に、カイトはちっ、と舌打ちをする。

「・・・・・・俺はお前みたいに女好きじゃないんでね」

《そうでしたね。あなたは美少年を侍らすのがお好きですものね》

 スミレはカイトの性癖をさらり、と言ってのけると更に言葉を続けた。

《一旦話を戻しましょう。あの魔導師見習いの、一人で青龍隊に立ち向かっていく度胸にあなたは目をくらまされている。尤も兵士たちも同様ですけどね――――――お、そろそろ庶民の避難が終わったようですね》

 青龍はクスクスと笑いながらゆっくりと、まやかしの炎に包まれている地面へと下りてゆく。しかしカイトの目には炎は既に見えなかった。一度破れた目眩ましは二度と見せることは出来ないのだ。
 だが、目の前の魔導師――――――正確には魔導師見習いはそれを気にした風もなく、杖を振りかざす。すると兵士の目の前から炎の幻が消えたらしい。元に戻った風景に呆気に取られる兵士たちを尻目に、フードを目深に被った魔導師見習いはカイトに語りかけてきた。

「蒼き龍騎士よ、あとは勝手にするが良い。尤も・・・・・・己の民人を見捨てるような領主など私が焼き殺したいぐらいだが」

 どちらかと言うと低音の、艶のある美しい声で言い捨てると、踵を返し背を向ける。その瞬間、兵士たちが途端に色めき立った。

「お、女か!」

「畜生!女の分際で青龍隊をコケにしやがって!」

「やっちまえ!」

 頭に血が昇った兵士たちは一斉に魔導師めがけて襲いかかる。

「おい、待て!」

 さすがに魔導師といえど数人の屈強な男に背後から襲われては呪文を唱える暇さえ無いだろう。このままでは兵士達に殺される。もしかしたら『緑の魔女』ゆかりの魔導師かもしれないのに――――――そう思った瞬間である。魔導師見習いに襲いかかった数人の男達がまるで弾き飛ばされるように背後にふっとばされたのである。

「な、何!」

 少なくとも魔法ではない。カイトの国の国家魔術である黒曜魔術も、その他他の流派でも呪文を唱えるのに十数えるほどの時間が必要だ。では一体何があったのか―――――――カイトは目の前に広がっている光景に言葉を失った。

「・・・・・・へぇ、奏国の兵士っていうのは女一人倒すことが出来ないんだ」

 魔導師見習いの女は振り向きざまに杖で兵士達のこめかみを殴打したらしい。女の足元に倒れている兵士達は皆こめかみを押さえて呻いている。
 そして振り向いた衝撃によるものか、目深に被っていたフードは外れ、肩の辺りで切りそろえられた赤毛が顕になった。赤毛に縁取られた顔はどこまでも端正で、女神もかくやと思わせるほどだ。しかしその顔立ち以上に印象的なのはその目であった。カイトを射抜く視線は鋭く、まるで伝説の狂戦士のよう――――――否、この世で最強と言われる、龍騎士のようである。

「女・・・・・・言わせておけば!」

 魔導師見習いの言葉に熱り立った兵士達が更に襲いかかる。だが彼女は杖を武器に次々に兵士を倒していくではないか。 瞬く間に二十人ほどの兵士が倒され、他の兵士達は魔導師見習いを遠巻きに見つめている。

《まるで龍騎士みたいに強いですねぇ、あのお嬢さん》

 愉快そうに笑うスミレに、カイトは不服そうな表情を露わにする。

「龍騎士を馬鹿にしているのか?」

 そうこうしている内に赤毛の魔導師見習いは兵士達を倒しながらカイトの方へ近づいてくる。

《どうやらあなたが出て行かないと収拾がつかないようですよ》

「そうらしいな・・・・・・皆、道を開けろ!俺が戦う!」

 そうスミレに返事をすると、カイトはスミレから飛び降た。それに気がついた魔導師見習いは真っ直ぐにカイトへと走って来て対峙する。

「龍騎士、いざ勝負!」

 魔導師見習いの声と共にカイトが刀を抜き放つ。その瞬間、魔導師見習いの口から何やら呪文が飛び出した。それは魔導学共通のルーン語のよるもので、カイトはその意味を瞬時に把握する。

(炎の攻撃魔法か――――――引っかかったな!)

 魔導師見習いははカイトが単なる龍騎士――――――つまり魔法の嗜みなどまるで無いと思っているはずだ。武力では互角かも知れないが、『手の内』がばれない内に勝負を決めれば勝てる。その瞬間、カイトは勝ち誇った笑みを浮かべ、昔魔導学校で習った呪文を口の中で呟いた。




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UPがかなり遅くなってしまいましたが、ようやく出来ました、私にとって初めての西洋風ファンタジー小説です(*^_^*)しかし奏国は昔の中国のイメージだから、びみょ~に西洋風とは言いがたいのですがwwwなおグリアーノは古代ヨーロッパの田舎の王国、というか領主をイメージしていただけるといいかも(^_^;)

一応大設定としては・・・
◆五匹の龍が象徴となっている奏国という国があり、それぞれの龍の下には軍隊がある。
◆紫=皇帝龍・その下には近衛軍
◆青=陸軍師団・今回出てきたのはこれです
◆赤=海軍師団・いちおーメイトくんあたりが師団長を務めている設定。ほぼ海賊ですwww
◆白=娘子軍・これは師団まではいかないけど、近衛隊と共に行動して同様の任務を果たすことが多いかな?
◆黒=教導師団・魔術を使う軍隊でもあり、戦後復興などを担当する部署でもある。何でも屋ですね。ちなみにキヨテル先生が率いております♪

この設定から更に話をふくらませていく予定です。よろしかったらお付き合いのほどお願い致しますm(_ _)m
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