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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 蒼き龍騎士2

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 ちらつく雪の中、赤い髪の魔導師見習いは炎の攻撃魔法の呪文を唱えながら龍騎士・カイトへ襲いかかってくる。それを受け止めようとカイトは片刃の細身の剣を抜き放ち身構えた。

「偉大なる炎の精霊ブレイジング!わが祖国を蹂躙せし龍騎士とその軍隊を燃やし尽くせ!」

 美しい唇から零れる攻撃的な呪文、それと共に魔導師見習いの背中――――――丁度腰のあたりから炎が吹き出し、カイトに襲いかかってきた。
 そもそも精霊を使う魔法はそのものが近くにないと使うことが出来ない。大方こんなことを見越して火種を持ってきたに違いない。魔導師見習いの背中から吹き出した炎は瞬く間に紅の小龍となって、カイトに襲いかかる。

「カイト中将!」

 このままではカイトが火達磨になる――――――兵士達が悲鳴を上げたその時、不意にカイトの目の前に煌めく半透明の壁が立ちはだかった。どうやらそれは降り始めた雪で出来ているらしい。キラキラと炎を反射しながら雪の壁は溶かされ、水に変化しながら炎の龍を包み込んでは消してゆく。

「な、なに!龍騎士なのに・・・・・・魔法が使えるの!」

 不意を突かれた紅の魔導師見習いは驚愕の表情を浮かべる。その僅かな隙をカイトは逃さなかった。

「悪いね。俺は魔導学校の落ちこぼれなんだ――――――だけど基礎教育で学ぶ防御魔法でも役に立つことはあるさ!」

 カイトは紅の魔導師見習いとの間合いを素早く詰めると、剣の峰をその細腰に叩きつけた。

「うっ」

 機動力重視の細身の剣とはいえ、龍騎士の力で薙ぎ払われれば相当の衝撃が生まれる。骨まで砕け散るのではと思わせるその破壊力に、紅の魔導師見習いは吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れこんだ。そしてカイトはすかさず紅の魔導師見習いに馬乗りになり、刀の切っ先を細い首に当てる。

「おい!誰か封印の手枷を持ってこい!」

 カイトは部下に命じた後、押さえつけた紅の魔導師見習いを威嚇する。

「おっと、迂闊に首を動かすなよ。こいつは意外と切れ味が良いんだ」

 だが、紅の魔導師見習いはカイトの威嚇に怯える素振りも見せず憎まれ口を叩いた。

「・・・・・・だったら何でさっきは斬れなかったのよ!そんな魔法、使ってなんかいなかったでしょ!」

「当たり前だろ。峰打ちも知らないのか?」

「峰打ち・・・・・・なに、それ?」

 紅の魔導師見習いは怪訝そうな表情を浮かべる。その瞬間、カイトはグリアーノ国には片刃の剣が無いことを思い出した。だが、ここでいちいち説明をする暇など無い。

「城攻めの後で教える。少なくともこの国の武器よりは複雑な使い方ができる、ってことさ」

 その時兵士の一人がかなり頑丈そうな枷を手にカイトの近くにやってきた。

「すみません、これしかなくて」

 それは手枷は手枷でも男性用と思われるものだった。この太さでは紅の魔導師見習いの細い手などするりと抜けてしまうだろう。

「構わん。見習いなのにこれだけ強力な魔法が使えるんだ。男用の枷でも心許無いかもしれない・・・・・・足にかけておけ!」

 カイトは枷を受け取ると、メイコの足首にそれを付けさせた。どう見ても手首用の枷だったが、その魔導師見習いの細い手首ではするりと抜け落ちてしまうだろう。指一本、二本分くらいの隙間しかなかったが致し方がない。

「・・・・・・さっさと殺せばいいでしょう!」

 剣を突きつけられ枷をはめられた魔導師見習いはカイトに毒づき、つばを吐きかける。その不遜な態度にカイトの部下達は気色ばんだが、当の本人は平然としている。

「なかなか元気な魔導師見習い(バード)だね。だけど君は『緑の魔女』をおびき寄せる餌だ。そう簡単に殺しはしないさ」

 目の前にいる女が『緑の魔女』と深いゆかりがある者かは定かではない。たまたま近くにいた魔導師仲間同士、手分けして民衆を避難させただけかもしれないのだ。
 しかしカマをかけたその瞬間、美しい魔導師見習いの表情が一瞬強張ったのをカイトは見逃さなかった。

「・・・・・・知らないわ、『緑の魔女』なんて。そもそもそんな呼び方をされている魔導師なんて私達『白の魔導師』の中にはいないもの」

 一見平静を装っているがかなり動揺しているらしい。魔導師が自らの魔術の系統をばらすこと、それは魔法戦の敗北を意味する。そんな秘事を思わず口にするほど、目の前の魔導師見習いは『緑の魔女』の一言に気が動転していると見て間違いないだろう。カイトは口の端にかすかな笑みを浮かべると、さり気なくその点を指摘した。

「『白の魔導師』――――――なるほどね。じゃあ君らが使えるのはせいぜい炎の攻撃魔法くらいで、本格的な破壊魔法は使えないというわけだ」

 攻撃力のある破壊魔法を使われると、さすがに教導騎士団の力を借りなければ『緑の魔女』の捕縛は難しくなる。しかし本格的な攻撃魔法を使わないとなればカイトたちでも充分捕縛は可能だ。たぶんこの魔導師見習いの炎の魔法が彼女らの最大の武器だと思って間違いないだろう。
 カイトは勝ち誇った笑みを浮かべたまま、美しい魔導師見習いの顎に指をかけ上向かせた。

「君らの呼び方は関係ない。我らが『緑の魔女』と呼んでいるだけだからね。街の西側で民衆を導いていた少女――――――身の丈ほどの緑の髪が人目を引いたな」

 その瞬間、紅の魔導師見習いの目が驚愕に大きく見開かれた。

「やめて!私はどうなってもいい!だけど・・・・・・ミクに手を出すのはやめて!」

「へぇ。『ミク』ッて言うんだ、緑の魔女の名は」

 カイトの一言に魔導師見習いは唇を強く噛み締め、視線を逸そうとするが、カイトの指がそれを許さなかった。

「『ミク』とやらを活かすも殺すも君次第だ――――――大人しくしていれば『緑の魔女』の生命の保証はする。だが、少しでも変な気を起こせば」

 カイトは怒りの炎を宿している魔導師見習いの瞳を覗きこむ。

「――――――あっさり殺されたほうがまし、と思う地獄を二人して味わう事になるだろうね。さっき君に倒された兵士達はプライドをズタズタにされている。封印の枷を付けたままあの兵士達の中に放りだしたら――――――俺だって手がつけられない状況になるだろう」

 だが、そんな脅しにさえも魔導師見習いは怯えた様子を一切見せなかった。

(敵にしておくのは――――――惜しい女だな)

 屈強な兵士でさえここまでの胆力の持ち主はいないだろう。できることなら戦力として手許に置きたいところだが、この美しい野獣のような女を手懐けることはほぼ不可能のように思えた。

(むしろ、幼そうな『緑の魔女』の方が御しやすいかもしれない)

 紅の魔導師見習いを更に後ろ手に縛り上げながらカイトが思案したその時である。

「お姉ちゃん!!」

 甲高い少女の声があたりに響いた。



 その声の主と隊列の間にはそこそこの距離があった。だが、人目を引く真紅の髪は蒼い鎧を身につけた隊列の中ではより引き立つのだろう。緑色の長い髪を保つ少女はじっとこちらを見つめたまま、立ち尽くしている。そんな緑色の髪の少女に、紅の魔導師見習いは声を荒らげる。

「ミク!早く皆と一緒に逃げなさい!私のことは構わずに!!」

「だって・・・・・・だって!」

「いいから早・・・・・・・うっ!」

 魔導師見習いが叫ぼうとしたその瞬間、カイトの腕がその細い首にかかり締め付けた。

「『緑の魔女』!どうやらこの女はお前の姉のようだな!この女を殺されたくなければ大人しく軍門に降れ!」

 その言葉に少女は躊躇を見せたが、苦しむ姉を見捨てることは出来なかったのか、大人しくカイトの方に近づいてきた。

「残念だったな――――――どうやら妹のほうが聞き分けは良さそうだ」

 耳許で囁かれるカイトの勝ち誇った声に、魔導師見習いはがっくりと首を落とした。



 青龍隊に投降した緑色の髪の少女――――――ミクは特に縛られることもなく、隊列の後ろの方にあった馬車に連れて行かれた。グリアーノ国では見たことがない鉄で出来た馬車の胴体には金色の唐草模様が装飾され、中はふかふかとしたクッションが敷き詰められている。
 少なくとも妹に対しては手荒な扱いはされないと安堵した紅の魔導師見習いとは対照的に、ミクと呼ばれた少女は不安げな表情を浮かべる。

「これ・・・・・・は?」

「魔導師用の監禁馬車だ。魔法を使って逃亡されては堪ったものではないからね――――――乗るのは君一人だ」

 できるだけ穏やかな声でカイトはミクを促し、ミクはそれに従って馬車の中に入った。そして次の瞬間、カイトは紅の魔導師見習いを左肩に担ぎ上げたのである。

「きゃあ!何するのよ!」

 いきなり担ぎ上げられた紅の魔導師見習いは慌てふためき身体を揺するが、鍛え上げられた軍人の身体はびくともしない。

「お姉ちゃん!メイコお姉ちゃんを離してよ!」

 姉の悲鳴に驚いたミクは、馬車の中に閉じ込められたまま窓越しに叫ぶが、それを無視してカイトは紅の魔導師見習いを担いだまま青龍スミレの方へ歩いて行く。

「ちょっと下ろしてよ!足枷が付いていたって自分で歩けるわ!」

 だが、カイトは暴れる紅の魔導師見習いを肩に担ぎあげたまま下ろそうとはしなかった。

「少しは大人しく出来ないのか。せっかくの美人が台無しだ――――――メイコ」

 その呼びかけに紅の魔導師見習い――――――メイコは身体を硬直させる。自分たちの迂闊さのせいで名前から魔導の系統まで全てがばれてゆく失態に悔しさを覚えたのだろうか。メイコはカイトの肩の上で小さな呪いの言葉を吐き捨てた。

「地獄に落ちろ!」

「それくらい活きがいいほうがこっちとしても気が楽だ」

 そしてカイトはスミレの傍に行くと身体を低くするように命じた。

《カイト。あなたは『龍騎士以外の人間を自分の龍に乗せる意味』を承知して、こちらの魔導師見習いのお嬢さんを乗せるのですか?》

 咎める、というよりはむしろ面白がっている口調でスミレはカイトに尋ねる。どうやら奏国には『龍に乗る資格』に関して厳密な決まりがあるらしい。しかしスミレの茶化しをカイトは受け流す。

「勿論知っているさ。だが仕方ないだろう?このじゃじゃ馬を部下に預けるわけにもいかないし、妹と一緒に馬車に乗せたら馬車が壊される可能性もある」

《別に私の横に馬を引かせても構わないんですよ》

 完全にカイトをからかっている口調にカイトは怒りを露わにした。

「戦時中の非常事態だ。例外だってある!」

 そう言ってカイトは担ぎあげていたメイコをスミレの背中に放り投げると、自分も乗り込む。そしてメイコを自分の前に座らせると、前に手を伸ばし手綱を手にした。

「さぁ、進軍だ!今日中にシャンジェを陥落させるぞ!」

 カイトの激に兵士達は鬨の声を上げ、再び進軍を始めた。




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龍騎士と紅の魔導師見習いの一騎打ち、手の内を隠していた龍騎士の勝利と相成りましたヽ(=´▽`=)ノ
そして芋づる式に『緑の魔女』ことミクも捕縛できたというwww
予定では『緑の魔女』の捕縛にかなり時間がかかると見ていたカイトだっただけに、城攻めの前に『緑の魔女(候補)』を捕縛できたことはラッキーだったと思われます。

そして馬車に乗せられたミクと違って龍に乗せられたメイコですが、どうやら『龍騎士以外の人間を龍に乗せる』ことには特別な意味があるようで・・・それはそのうち語っていくつもりですが何時のことになるのやら(^_^;)

次回更新分でカイト生誕祭分の話は完成しますが、話そのものはまだまだ続きます。次回城攻め編、お待ちくださいませ(*^_^*)
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