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「VOCALOID小説」
聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 蒼き龍騎士3

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 ちらついていた小雪は徐々に大きくなり、降り方も激しくなってゆく。しかし降り注ぐ雪をも溶かすような熱気を纏い、奏国第二師団、別名青龍隊はグリアーノ国首都・シャンジェの目抜き通りを突き進んでいだ。人気のない街中を突き進む兵士達は、身につけた青い鎧と相まってまるで海原の大波のように見える。

「それにしても・・・・・・だいぶ荒れ果てた街だな」

 スミレの背中越しに通りを見つめつつカイトが呟く。一国の首都の建築物とは思えない、粗末な板塀の家々が表通りに並び、道は塵芥や汚物で汚れていた。歩兵達もそれを避けながら歩くのに四苦八苦しているようだ。
 少なくとも戦争で儲けている国の首都には思えない――――――訝しんだカイトは腕の中にいるメイコに尋ねる。

「おい、この近辺は貧民街なのか?斥候の報告では一番大きな通りとのことだが」

「・・・・・・悪かったわね。ここはそれなりに裕福な人が暮らしている場所よ!」

 貧民街、と言われたのがよっぽど面白く無かったのか、メイコが不服そうに頬を膨らます。だがそんなメイコの不満にお構いなくカイトは街の様子を指摘する。

「にしてはだいぶ家々も粗末だし、道にゴミも散らかっている。奏国と狄国との戦争で儲けているんじゃないのか?」

「それは領主と一部の商人だけ、下々には関係ないわ!それと道に関してはいつもこんな感じ。みんな窓からものを捨てるからね。表通りはきれいな方よ。裏通りはもっとヒドイもの」

 どうやらグリアーノではこれが普通らしい。ぶっきらぼうに言い放つメイコにカイトは苦笑いを浮かべた。

「・・・・・・なるほどね。どうやら君らの領主様は私腹を肥やすことに一生懸命らしい」

 そしてスミレの手綱を引きながら更に言葉を続ける。

「確かに武力で制圧する方法は褒められたものではないと思う。だけど奏国は今の領主よりはまともな生活を与えられると思うよ」

「・・・・・・どうだか!」

 忌々しげに吐き出すとメイコは身体を捩り、肩越しにカイトを睨みつけた。ここまで押さえこまれてもなお牙を剥こうとする魔導師見習いに、カイトはむしろ驚嘆さえ覚える。

「なかなか信じてくれないようだけど、まぁ見ていてごらん。一年後には上下水道も整備された街を作り上げてみせるから」

 その時、青龍隊の隊列が止まった。城塞の前に辿り着いたのだ。確かに斥候が報告したように城塞そのものの高さは低い。装備を付けた歩兵でも乗り越えられるだろうし、グリフォン隊なら軽く飛び越えられるだろう。その城塞の向こう側には今まで見てきた家々よりはましな石造りの家々が並び、その奥にはシャンジェ城がそびえ立っている。だが、城と言ってもそれほど大きなものではなく、奏国の辺境陣屋程度の規模だ。

「この程度ならば投石機も必要ないか」

 むしろ問題は手前にある石造りの家々だろう。敵兵が潜んでいる可能性が極めて高いが、兵士と間違えて庶民を殺してしまったら後々問題になる――――――と思った時、ふとカイトは腕に中にいる魔導師見習いの能力を思い出した。

「おい、女魔導師」

 カイトはわざと腕の中のメイコを強く抱きしめる。

「ち、ちょっとなにするのよ!すけべっ!それに私は魔導師見習い(バード)よ!そこは厳密に分けて!」

 どうやら男に抱きしめられることに慣れていないらしい。耳や首筋まで真っ赤にしながらメイコは慌てて身を捩るが、カイトの腕はびくともしない。

「どっちでもいいさ。君の力は魔導師って言っても通じるんだから・・・・・・ところでものは相談だが」

 カイトはメイコの耳許に唇を寄せた。触れるか触れないかの距離に近づけた唇にメイコの体温を感じつつ、カイトは用件を囁く。

「さっきの俺達に使った幻視魔法をここで使ってもらいたいんだが」

「冗談はやめて!あんたの手先になれっていうの!」

 領主は嫌いだが、さすがに敵に力を貸すことはしたくない。メイコは声を荒らげて抵抗するが、カイトは更にとんでもな事を言ってのけた。

「だったら実際に火を放つしか無いかな。むしろ君を説得する手間を考えるとそっちのほうが楽だけど」

 そしてカイトはメイコの耳許から唇を離すと、大声で歩兵隊に命令する。

「歩兵隊!城塞の内側に入り油を撒け!火を放って城塞内を燃やし尽くせ!」

「ち、ちょっと待って!」

 カイトの命令に従い、小さな樽を肩に担ぎ上げて城塞をよじ登る歩兵達の動きにメイコは慌てた。このままでは街が燃やし尽くされてしまう――――――メイコは観念してカイトの要求を呑むことを決断する。

「わ、解ったわ!炎の幻視を出せばいいんでしょ!だったらこの封印の枷とやらを外してよ!」

 封印の枷があったのでは呪文を唱えても魔法は使えない。

「最初から言うことを聞いておけばいいものを」

 カイトは笑みを浮かべると、メイコを後ろ手に縛っていた縄を愛刀で切り、足枷代わりに嵌めていた手枷の鍵を外した。

「ただし術をかけるのはここでしてもらう。反旗を翻されても困るからな」

 カイトは戒めを断ち切った刀をメイコの前にちらつかせる。

「何なら術のかけやすい場所にスミレに移動させようか?」

「・・・・・・だったらもう少し城塞の近くに。進軍経路の近くであればあるほど術は強くかかるから」

 逆らうことは許されない――――――腹をくくったメイコはカイトの指示に従う。

「判った」

 するとスミレは二人の会話を聞いていたのか、カイトの命令を待たずにふわりと浮き上がり城塞を飛び越えた。

《ここでいいですか、美しきバードよ。それとも全体が見渡せるようにもう少し高度を上げましょうか?》

「あら、あなたはやけに紳士的なのね青龍さん」

 丁寧な物腰のスミレに、メイコは驚きの声を上げる。

「あなたの主とは大違いだわ」

《スミレで結構ですよ、バード。あとカイトと私の関係は主従ではない、対等な立場なのです》

「嘘をつけ何が対等だ、スミレ!お前たち聖なる龍の態度のでかさにいつも人間が振り回されているんだ!」

《・・・・・・すみませんね。カイトは女性慣れしていないもので、若い娘さんに対する態度がなっていないんです。私が代わりに謝ります》

 まるで保護者のようなスミレの口ぶりに、メイコは思わず吹き出してしまった。

「わかったわ。じゃあもう少しだけ低く飛んでそのまま城の方へ。で、態度がなっていない将軍様?」

「・・・・・・その慇懃無礼な呼び方は止してくれ。俺もカイトで結構」

 からかい半分のメイコの一言に、今度はカイトが頬を膨らます。

「じゃあカイト。スミレを先導に皆が後に続くように伝えて。一直線に城まで攻め込めば双方の被害が少なくて済むでしょ?」

「判った」

 メイコの言葉にカイトは兵士達に命令を下し、メイコは呪文を唱え始めた。

「幻視の精霊・ブルー・クリスタル!偽りの炎で城塞の中を包み込め!」

 すると青い衣をまとった美しい精霊がメイコの指先から現れ、瞬く間に炎の姿に変わってゆく。そしてまるで道標のように大通りを偽りの炎が彩ってゆく。

「青龍隊!俺とスミレの後に続け!」

 カイトは手にしていた愛刀を高々と上げると、城の方へ指し示す。それと同時にスミレが低空飛行で先導を始めた。



 突如現れた大火に青龍の激しい翅音、そして奏国の兵士達の雄叫びに、家の中で息を殺していた一般人は勿論、それらの家に潜んで奇襲を目論んでいたグリアーノの兵士達も慌てふためく。

「おい、あの龍の背中を見ろ!炎の魔女が乗っているぞ!」

「それより魔女の後ろに乗っているのは誰だよ!ていうか、あの魔女が背後を取られているって・・・・・・王の招集さえ一蹴したあの女を屈服させたのか!」

「俺達が束になっても勝てなかったあの女を・・・・・・」

「元々奏国相手に勝ち目なんて無いんだよ!俺は死にたくねぇ!」

「俺だって!そもそも基本的な禄さえまともに払ってくれない王に忠誠なんて誓えるか!」

 本人は全く意識していなかったものの、カイトがメイコをスミレに乗せ、その後ろに陣取っていたことはグリアーノの兵士達にとって驚愕と恐怖をもたらしていた。炎を越えて襲い掛かってくるものも一切おらず、青龍隊は瞬く間に城へと到着する。

「抵抗するものは斬り捨てて構わぬが、無抵抗のもの、または投降してきたものに対しては一切の危害は加えるな!もし破ったら軍事裁判にかけるぞ!」

 その言葉に兵士達の緊張が一気に高まる。そしてそのまま歩兵たちを先頭に城への侵入攻撃が始まった。

「ねぇ。軍事裁判、ってそんなに怖いものなの?」

 足早に、というよりは慌てふためいて城内に攻め入ってゆく兵士達の背中を見つめつつ、メイコが尋ねる。

「うちの軍は規律が厳しいからね。金貨一枚盗んでも処罰の対象になる」

「国によってだいぶ違うのね。グリアーノなんて略奪で自分で稼ぐんだから」

「・・・・・・蛮族そのものだな」

 思わず呟いてしまった一言に、メイコは柳眉を逆立てた。

「ちょっと!蛮族とは何よ!蛮族とは!」

「本当のことだろう!」

 兵士達の戦いそっちのけで言い争いを始める二人に呆れたのか、スミレは二人を背中に乗せたまま地面に降りる。

(まったく。傍から見たらただの痴話喧嘩じゃないですか・・・・・・やはり無意識とはいえそういう『相手』を選ぶんでしょうかねぇ)

 城の中から兵士達の歓声が聞こえてくる。思ったより早く征圧が出来たようだ。この早さだったら仕留めたのは王とその側近ぐらいなのかもしれない。だがスミレの興味はそちらではなく、むしろ背中で痴話喧嘩をしている二人に向いていた。
 龍騎士が自分以外に己の龍の背中に乗せる『相手』、それはただ一人という決まりが奏国にはあるのだ。カイトはあくまでも『戦時中の例外』と言い張っているが、スミレにはそうは思えない。

(・・・・・・ま、この手強いお嬢さんがそう簡単に『龍騎士の花嫁』に収まってくれるとは思えませんけど。カイトも彼女を射止めるには苦労するでしょうね)

 未だくだらない言い争いをしている二人を背に、スミレはただ大人しくうずくまっていた。



 カイトたちによるグリアーノ・シャンジェ城の征圧は想像以上にあっけないものだった。兵士達の志気はかなり低く、歩兵たちが城になだれ込んでも攻撃してくるものはごく少数だったらしい。更に。王は隠し部屋に身を潜め、兵士達が発見した時には代々の家宝らしき宝飾品を抱えて震えていたと、後に責任者から報告を受けた。

「宝物庫にはかなりの量の狄国貨幣と奏国貨幣が溜め込まれていたそうだ」

「どうせあんた達が没収するんでしょ」

「いいや。あの金はそのままこの街の作り替えに当てる。とにかく上下水道!こんな不衛生な蛮族の街に奏国の代官を送り込むわけにはいかないだろう」

 水道が無いことがよっぽど信じられなかったのだろう。かなりしつこくその事を指摘するカイトに、メイコも苛立ちを露わにする。

「さっきから蛮族蛮族って・・・・・・失礼ね!」

「本当のことだろう!悔しかったら奏国の生活に追いついてみろ!」

 再び二人の口喧嘩が始まる。これが青龍騎士にして後の奏国グリアーノ領領主・カイト大公とその妻で後に第27代奏国筆頭魔導師になるメイコの最初の出会いであった。





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『奏国物語 蒼き龍騎士』の章最終話です。というより奏国物語の冒頭部分と言ったほうがいいのかもしれません(*^_^*)
実は大公家出身でおぼっちゃまなカイトと強力な魔導の力を持つ蛮族の武闘派・メイコ・・・この二人のラブロマンスになるはずなのですが,なぜだろうこの色気の無さwww本編中でスミレが指摘しているように多分カイトが苦労することになると思われます(^_^;)

こんな出会いをした二人ですが、果たして今後どうなるのか・・・来週から始まる『紅き勇者(または魔導師)』の章をお待ちくださいませ♪
(タイトルはまだ未定。これからちゃんと考えますが色がついたものになる予定)
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