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「VOCALOID小説」
聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 紅き魔導戦士1

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 シャンジェ城を呆気無く陥落させた奏国第二師団―――――ー青龍隊だったが、本当に大変なのはここからであった。悪政によってボロボロになってしまったグリアーノそのものを立て直し、奏国へ編入するという大仕事があるし、狄国侵攻の北の要としての体裁も整えなくてはならない。下水道さえない不衛生なこの街では、陣屋にするにも抵抗がある。

「まだパンとスープを受け取っていないものはいないか!」

 戦災民となってしまった城下の庶民のための炊き出しを前に、片言のグリアーノ語でカイトが叫ぶ。底の方にまだ少しだけスープが残っており、あと10人ほどに配ることが出来そうだ。

「もうひと通りは行き渡ったんじゃないかしら。お腹が減っていれば遠慮はしないと思うし」

 カイトの隣にいるメイコが周囲を見回しながらカイトに声をかける。その足首には再び封印の枷が付けられていたが、それ以外の縛めは解かれている。逃げようと思えば逃げられそうだったが、既にメイコにその気はないらしい。

「でも大丈夫なの?あんなたくさんの量のパンとスープ・・・・・・普段の食事よりもはるかに多いわよ。あんなに毎日食べていたら冬が越せないわ」

「確かに城の食料庫にさえ大した備蓄は無かったね」

 豊かな穀倉地帯であるはずのグリアーノ国だが、その食料の七割近くは税として奪われ、庶民は水で薄めた雑穀粥しか食べることが出来ない。更に税として奪った穀物は狄国へ輸出され、金貨に変わっていた。なので庶民の家には勿論、城にさえまともな食料はないのである。
 もしそれさえも無くなってしまったらとメイコは心配するが、カイトは大丈夫だと太鼓判を押す。

「ま、10日ほどは城の備蓄や俺達が持ってきた物を出せば問題ないし、遅くても3日以内に黒龍隊が食料の追加分を持ってやってくる。それと健康な男性以外は奏国の『救いの村』で一時的に過ごしてもらうから、この冬の問題はしなくても大丈夫だ」

「『救いの村』って・・・・・・あれ、本当にあるの?」

 メイコは驚きに目を丸くする。『救いの村』――――――それは奏国にある被災者専用の居住区だった。地震や水害など災害の多い奏国には『復興するまでの仮住まい』として『救いの村』があった。幾つかに分かれているが、全体として2~3万人は住むことが可能だそしてカイトはそこを戦災民に提供してくれるというのである。

「ああ。都市部に比べたら井戸水を自分で汲まなければならない分大変だけど、ここと違って水道は完備されているし衛生的だ。食料も向こう一年無料で支給される。尤も・・・・・・」

 カイトの声が低くなる。

「俺達の軍門に下り、奏国の国民になることが条件だけどね」

「もし、嫌だと言ったら?」

 既に王も捕縛され、食料も充分に与えられているので反対する道理はないのだが、一応訪ねてみる。

「戦争捕虜として奴隷扱いが関の山だろうな。雪もひどくなる中、これだけ多くの者達を奏国に連れて行くのも一苦労だ。だったらここで餓え死んでもらうしか・・・・・・」

「それを言われちゃうと降伏するしか無いじゃない」

 メイコが肩をすくめたその時である。見張りをしていた兵士の、ひときわ大きな声が聞こえてきた。

「黒龍隊だ!第四師団がやってきたぞ!」

 その声と同時に兵士達の雄叫びが城中に響き渡る。

「ようやく教導師団様の御目見得か。俺達は体の良い露払いだよな」

 ボヤキの色をにじませるカイトの言葉に、メイコは思わず笑ってしまった。



 その黒い集団は、ある意味カイトが率いる青龍隊よりも異様な感じがした。黒い鎧に身を包んだ兵士達を率いるのは闇がそのまま形になったような黒龍で、その上には僧衣を身にまとった若い男が乗っていた。ただ頭を丸めておらず短髪のところを見ると、完全な僧侶ではなく半俗なのかもしれない。

「カイト中将、ご苦労様でした!」

 黒髪の男は龍の上から声をかけると、その背中から飛び降りた。その軽々しい態度にカイトは苦虫を噛み潰した様な表情を露わにする。

「おい、キヨテル。教導師団隊長ともあろう者がそう軽々しい態度で・・・・・・もう少し威厳というものを身につけたらどうだ?」

 しかしキヨテルと呼ばれた黒髪の男はカイトの言葉に全く反省の色を見せなかった。

「別にいいじゃないですか。ここは戦場。城の中ならいざ知らず、降りるのにいちいちアゲハに首を下げさせるのも面倒ですよ」

 どうやら黒龍の名はアゲハというらしい。黒く艶めく鱗にたてがみ、そして大きな黒い目は愛嬌さえ感じられる。

「こちらのお嬢さんは・・・・・・『伝達』で言っていた魔導師見習い(バード)ですか?」

「ああ。油断していると痛い目を見るから気をつけろよ」

「奏国一の勇者にそう言わせるとはなかなかですね」

 キヨテルと言われた男は感心したように呟くとメイコに笑顔を向けた。

「初めまして、麗しき魔導師見習い(バード)よ。私は奏国第四師団隊長、キヨテル中宣教使と申します。以後お見知り置きを」

「・・・・・・異教の神官にずいぶんと紳士的なんですね。黒曜教の魔導師は異教徒に容赦無いと聞いておりましたが」

 妙に愛想が良いキヨテルに対し、少し身構えながらメイコが尋ねる。

「その噂は半分は本当で半分は眉唾ですね。そりゃあ話し合いの席にもつかず、いきなり襲いかかってくればこちらだってそれ相応の戦い方をしますけど、無抵抗の相手にそんな無体はしませんよ。尤も・・・・・・目眩ましを本当の攻撃と勘違いすればその限りでは無いでしょうけど、少なくとも我が黒龍隊にそんな間抜けはおりませんのでご安心を」

「おいキヨテル。それは俺に対する嫌味か?」

 確かに自分達はメイコの術を見抜けず本当の炎だと勘違いした。カイト自身もスミレの指摘がなければ本物の炎だと勘違いしたままだったろう。キヨテルは間違いなくその事を言っているのだ。不満もあらわにむくれるカイトに、キヨテルは勝ち誇った笑みを浮かべる。

「それ以外に何があるんですか?仮にも魔導学校で基礎教育まで受けた人間が、瞬時にそれを見破れないって・・・・・・奏国皇立魔導学校の中等部で主席を争っていた人が嘆かわしい」

 かけていた眼鏡を取り、よよ、と泣くふりをしたあと、キヨテルは真顔になった。

「ま、冗談はさておき奏国語を理解してくれる人がいて助かりました。これから本格的な聴取をするので一人でも多くの通訳が欲しい」

「聴取、って何を?」

「色々ですよ。この国の政治状況から経済状況、食事の傾向だって・・・・・・どうやらカイトは奏国流の食事をグリアーノの民にそのまま出してしまったようですけど、毎日食べるとなれば、食べ慣れた味付けのほうがいいでしょう?」

 キヨテルは鍋の中身を見ながらメイコに告げる。

「まぁ、確かにすごく複雑な味でびっくりしたけど・・・・・・食べられるだけありがたいし」

「しかし皆が皆、あなたのような健康体とは限らない。胃腸が弱っているとどんな美食でも、食べ慣れていないもの以外は毒になる――――――ところでこの国の料理は塩味が殆どですか?」

「ええ。西の山で岩塩が取れるので。あとは香草類だけ」

「なるほど岩塩ですか」

 海水を煮詰めて作る塩よりも岩塩は効率が良い。もし優れた岩塩鉱山があるのならば資金源にもなるかもしれない――――――考えこむキヨテルにカイトが語りかける。

「岩塩の質にもよるが、純度の高いものなら高値で売れるかもしれないな」

「ええ。農作物ではたかが知れていますしね。その売上金をこの地域の立て直しに使えれば・・・・・・」

 そんな皮算用を語りだした二人だったが、その話にメイコが割って入ってきた。

「ちょっと待って!あそこには窮奇(きゅうき)が――――――翼の生えた虎がいるのよ!あれに見つかったら人間は食べられてしまうの。だからあれが寝ている昼間の内に、少人数で行って少しずつ・・・・・・」

「『少しづつ』でもこの国全体の塩をまかなえるんですか?」

 その質問にメイコはこくり、と頷く。

「だけど塩取職人達だって年に2,3人は窮奇の被害に遭うんだから・・・・・・自分達が日々食べる分には困らないけど、貿易なんて絶対に無理!そんな大規模に岩塩を取ったら昼間にも窮奇が起きて人を襲うかもしれない」

 その顔色を見る限りでは本当の話らしい。確かに厄介な妖獣がいるとなれば大規模な掘削は不可能である。

「まぁ、それについてはおいおい調べることにしましょう。奏国の領地になる場所にそんな物騒なものが住み着いていたのでは困りますからね」

 土地神をも恐れぬその一言に、メイコは黒曜教の恐ろしさを垣間見た気がした。

(知らないって本当に怖いわね・・・・・・窮奇に食べられても知らないんだから!)

 だが、メイコはその時気が付かなかった。自分達以外にその話を聞いてる者がいたことを。
 そしてその人物が後にメイコを窮地に追い込むことになろう事など知る由もなかった。



 黒龍隊が来た後、グリアーノの有力貴族達及び町役人たちが城の大広間に招集された。彼らの前には捕縛され兵士達に取り囲まれているグリアーノ王がいる。

「グリアーノの諸君、これから君たちに選んでもらいたいことがある」

 カイトの言葉をメイコが翻訳する。そしてメイコの背後には怯え、震えているミクがいた。

「ここに捕縛されている愚かな王に忠誠を誓い我らと戦うか?それとも我らが軍門に下り奏国の属領になるか!」

 メイコは極力穏やかな言葉を選びつつ翻訳するが、カイトの語気だけは誤魔化せない。剣呑な雰囲気が広間に漂う中、更にキヨテルの言葉が追い打ちをかける。

「もし我々に付いてくださるのであれば、三年間税金は免除になります。そして貴族の方の身分もある程度保証致しましょう。ですが、もし我々に歯向かうのであれば、この場は即座に血の海になりますよ」

 キヨテルのその言葉の瞬間、周囲にいた兵士達が腰に指していた刀を抜く。そのギラつきにその場にいたグリアーノ人達は言葉を失った。

「・・・・・・力づくで要求を呑ませるんなら別にここに集めなくったっていいと思うんだけど」

 ボソリ、と呟いたメイコだったが、不意に袖を引っ張られる。

「どうしたの、ミク?」

「お姉ちゃん・・・・・・ずっと一緒にいてね。ミクを置いて一人でどこかにいかないで」

 カイトやキヨテルの脅しに不安を覚えたのか――――――メイコはミクの頭をそっと撫でてやる。

「当たり前でしょ!輿に乗せられるか龍の上に放り投げられるかの違いはあるかも知れないけど、私はあなたを置いて行ったりしないわ」

 もしかしたらミクの力を欲している皇帝によって引き離される可能性はあるかも知れないが、少なくてもこの場所ではないだろう。
 そしてミクだけなら――――――虫さえ殺せない、争いが嫌いなミクならば、反乱の先導になることもないと生かしてもらえるかもしれない。

(色仕掛けなんてガラじゃないけど・・・・・・ミクだけは助けてほしいと、カイトあたりに媚を売っておくしかないかもね)

 未だ騒然とする広間に背を向けるようにメイコはミクの方へ振り向き、その華奢な体を抱きしめた。





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奏国物語、二話目はめーちゃんが主役?の話になります。奏国軍に占領されてしまったグリアーノですが、むしろ占領前より待遇は良いみたいで(^_^;)こうなると人間『より良い生活をしたい!』とばかりに一気に奏国へと気持ちが傾きます。これで庶民の心を掴んでから、貴族や有力商人に脅しをかけるというwwwこうやって奏国は領土を広げているんでしょうねえ。
更に今回は敵国の補給も断つことができているので一石二鳥です♪

ただ、領土内にある岩塩鉱山に厄介なイキモノが生息しているという・・・更にこの話を盗み聞きしている者もいるようですね。次回更新は3/2(たぶん3/3にずれ込む(^_^;))、めーちゃんに危機が迫ります(>_<)
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