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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 紅き魔導戦士2

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 夜 メイコとミクはシャンジェ城の部屋のひとつに監視つきで軟禁された。抵抗の様子は見せていなかったが、万が一を考えてのことだろう。領主の子供の為の部屋のひとつらしく、グリアーノにしてはかなり豪奢な作りの部屋だった。

「これから私達どうなるのかな」

 体の弱い老人や小さな子供がいる母親は優先的に『救いの村』に入れるって話になっていたが、魔導師見習いであるメイコやミクの処遇は具体的に聞いていない。ただ、反乱の指導者にもなりかねない魔導師やその見習いを脆弱な監視下に置くことはまず無いだろう。

「青龍隊と暫くは行動を共にすることになるのかも。兵士達の話によると、この後に狄国の第一師団と合流することになっているみたいよ」

 しかし、破壊魔法を使えない自分達を連れて行っても役に立つとは思えない。カイトの、否、奏国の思惑が全く理解できないまま二人して考えこんでしまったその時である。部屋の外で兵士達の小さな話し声が聞こえた直後、重々しくメイコ達がいる部屋の扉が開いた。するとそこには見慣れない黒衣を着た男が佇んでいた。

「メイコ様、青龍隊のカイト中将がお呼びです」

 黒衣の男がメイコに声をかけたその瞬間、メイコは違和感を覚える。

「あなたは・・・・・・青龍隊の人じゃないわよね?それなのに何故カイトの命令を?」

 青龍隊なら青い軍服や鎧を身につけている。その徹底ぶりには驚きを通り越してあきれ果てたが、カイト曰く『あの青い鎧は信用の証なんだよ。俺の部下に裏表のある奴はいない』とのことだった。
 その時は『そんなものか』と軽く受け流していたが、ちはだかる黒衣の男を目の当たりにした今、その言葉がやけに真実味を帯びてくる。警戒を露わにするメイコに対し、黒衣を着た男は苦笑いを浮かべ、口を開いた。

「ええ、私は黒龍隊の者です。実は我が隊長とカイト中将の会議の際、魔導師見習い様に伺った方が良さそうな地理的な話が出まして・・・・・・我が隊のキヨテル中宣教使よりも、カイト中将の名前を出した方が良かろうかと」

 確かに自分達をこの部屋に入れるとき、カイトは『これからキヨテル達と会議だ』と言っていた。確かに地理的な事だと貴族たちよりも国中を巡り歩き、人々の救済にあたっている自分達の方が詳しい。

「・・・・・・解ったわ。少なくとも今までの領主よりもあなた達のほうがまともな治世をしてくれそうだしね」

 狄国に食料を流さなくなれば、もしかしたら税金も安くなるかもしれない。会議の席に参加させてもらえるならばその事を訴えるのも悪くないだろう。メイコは心配そうに自分を見つめるミクに対し、笑顔を向ける。

「じゃ、ちょっと行ってくるわね。心配しないで・・・・・・あなたは先に寝ていなさい」

時間も時間だし、大して長くはならないだろう。ミクの頭を優しく撫でた後、メイコは黒衣の男に付いて部屋を出て行った。



 一人部屋に残されたミクは、ベッドではなく一人がけのソファーに座った。修行も兼ねての野宿生活が多いミクにとって、与えられたベッドと毛布は初めて見る豪華なものであった。一旦布団に潜り込んだら最後、メイコが帰ってくる前に完全に眠りこけてしまうだろう。せめてメイコが帰ってくるまでは起きていよう――――――ミクは決意する。
 しかし、蜜蝋の長さが爪の半分ほどの長さほど減ったその時、部屋の外から思いもよらなかった話し声が聞こえてきたのだ。

「カイト中将自らお出ましとは・・・・・・紅の魔導師だけでは何か足りない話でもあったのですか?」

 部屋の外で監視役の兵士が怪訝そうに尋ねる声が聞こえてきた。ミクはその声に耳をそばだてる。

「一体何の話だ?そもそも俺はメイコを呼びにやらせてはいないぞ!」

 強張った声と同時に部屋の扉が開かれる。そこには顔を強張らせたカイトがいた。

「ミク、だっけ?メイコは・・・・・・君のお姉さんはどこに行った?」

 カイトの一言に今度はミクが驚く番だった。

「え?奏国の会議に参加して欲しい、って黒衣の人に呼び出されましたけど・・・・・・中将様が呼びだしたんじゃないんですか?」

「俺のことはカイトで結構。それよりも俺はメイコを呼び出してなんかいないし、会議も引き継ぎの確認だけの簡単なものだ。ところで・・・・・・メイコを釣れ出した男がどんな風体だったか覚えているか?」

 カイトは緊張の滲んだ声でミクと監視の兵士達に尋ねる。

「黒龍隊の制服を身につけていましたね。兵士ではなく教導司祭の高官だと思われます。ただ、特徴のない顔立ちでして・・・・・・」

「そうそう!目の大きさから鼻の高さ、唇の厚さまであそこまで特徴がないのも珍しいよな」

「・・・・・・あの、それは魔法で『仮面』を付けていたからだと思います」

 兵士とカイトの会話にミクが遠慮がちに割って入った。

「魔導師は顔を知られると色々厄介なので『仮面』を付けて本当の顔を隠すことも多いんです。それをされると魔導師同士でも相手の本当の顔は判りません」

「じゃあ、君も相手の本当の顔を判らない、ってことか?」

 落胆の色を隠さずカイトが唸る。

「はい。だけど右手の小指に指輪を付けていました。他の魔導師さんは装飾品を付けていないからちょっと気になったんですけど」

「指輪?」

 その時である。騒ぎを聞きつけたのか、もう一人の師団長・キヨテルも部屋にやってきた。

「騒々しい。下の階まで声が筒抜けですよ。一体何があったんですか・・・・・・あれ、あの胸の大きい美人の魔導師見習いは?」

 キヨテルの一言に、カイトが眉をひそめる。

「他に言い方はないのか、変態魔導師」

「女性の長所を褒め称えて何が悪いんですか?で、僕の質問の答えは?」

「残念ながら判らない。どうやら教導司祭の高官がメイコを連れ出したらしい、という話だが・・・・・・しかも身元が割れないよう『仮面』とやらを付けていたらしい」

「なるほど。『仮面』を使っていたとなるとちょっと厄介ですね。他に特徴は?」

 キヨテルは監視の兵士に尋ねる。

「それが中肉中背で何ら特徴が・・・・・・声も抑揚がなくって」

「下手をすると見た目や声も魔法で変えていた可能性がありますね。そもそもメイコを誘拐しようとする輩、相当の力がある魔導師でしょう。もしかしたら我々の本当の配下ではなく、間者が潜り込んでいたのかもしれない」

「自分の部下の不祥事を間者云々でごまかそうとするな、出来損ない魔導師」

 カイトの物言いにキヨテルも黙っていない。

「何が出来損ないですか!そもそもこうもあっさりと優秀な魔導師を何者かに攫われてしまう青龍隊の見張りの方がポンコツなんですよ。やっぱり師団長の鍛え方がなっていないから」

「なにを!」

「お二人共、やめてください!」

 今にも殴り合いになりそうな二人に、慌ててミクが割って入る。

「あの・・・・・・さっきの指輪の話で思い出したことがあるんです。大した手がかりにはならないと思うんですけど・・・・・・小指に付けていた指輪、たぶん琥珀です。七色の翅の甲虫が入っていたのを思い出しました」

「七色の甲虫・・・・・・玉蟲の指輪ですって!」

 キヨテルが声を荒らげる。

「黒曜魔導の魔導師は仕事に赴く際、装飾品は一切身につけないんです。破壊魔法を主にするんで、何かあったら怪我のもとになりますしね」

「七色の翅の甲虫、となると・・・・・・間違いなく狄国の玉蟲部隊の腐れ魔導師だな」

 カイトの一言にキヨテルも頷いた。

「やはり『緑の魔女』狙いだったでしょうね。奏国まで噂が聞こえるくらいですから、隣国の狄国は更に詳しい話が聞こえているでしょうし」

「しかし何故メイコを・・・・・・とにかく探そう!キヨテル、魔導で探索を」

「あ、それなら私もできます!」

 メイコの探索にミクも手を挙げる。

「じゃあ頼んだ」

 カイトはキヨテルとミクに探索を頼むと、壁に寄りかかりその様子をじっと見つめ始めた。



 カイト達がメイコが連れ去れれたことに気が付いて動き始めた丁度その時、メイコは黒衣の魔導師の後について歩いていた。
 カイトに呼び出されたとの話だったが、いつまでたっても目的の部屋に辿り着かない。それどころかどんどんと下へ降りていくではないか。
 さすがにおかしいと思ったメイコは目の前の黒衣の男に声をかける。

「ねぇ、いつになったら会議をしている部屋につくの?」

 その言葉に男はゆっくりと振り返り、その顔を見た瞬間メイコは声を上げた。

「あなた・・・・・・誰!さっきの人と違う!」

 これは罠だ――――――だがメイコがそのことに気がついた瞬間、男の指先から黒い瘴気のようなものが吹き出し、それに包まれたメイコは気を失った。

「ふん、噂に聞く紅の魔導戦士も他愛もないものよ」

 男は床に倒れ込んだメイコに近づくと、その額に指を当てる。

「なるほど、岩塩鉱山はここから西へ半日のところか」

 どうやら男は額に指を当てて知識や思考を読み取る能力があるらしい。暫くの間メイコの額に指を当て、ある程度の情報や知識を盗み読む。そしてある程度の情報を盗み取った後、額から指を離しメイコを担ぎあげた。

「窮奇(きゅうき)の贄へするには少々惜しい気がするが・・・・・・これくらいの餌じゃなければ奴も満足はしないだろう」

 そして魔導師が呪文を唱え始めると、魔導師の体はメイコと共に徐々に薄くなり、しばらくすると完全にその場から消え去った。



「お姉ちゃんの気配が・・・・・・お城の中からすごく遠くに飛んだの」

 集中から自らの意識を開放したミクがぽつり、と呟いた。その顔には疲労が滲んでいる。

「ここからかなり西の方、歩いて半日はかかる・・・・・・岩塩の鉱山のあたりに微かに気配を感じるの。だけどそれが確かか判らない」

 姉の気配ゆえ、辛うじて追いかけることができているのかもしれないが、さすがに瞬間移動の追尾は幼いミクには負担が重かったらしい。これ以上ミクに負担をかけることは出来ない――――――そう判断したキヨテルはミクの手を取る。

「ミクさん、ちょっと失礼しますね。あなたの見たものを私が詳しく読み取りますから、楽にしていてください」

 そしてキヨテルはミクの手を立ったまま瞑想状態に入った。

「・・・・・・ああ、間違いないですね。かなり雪が積もっていますけど、岩塩がむき出しになった場所が見えます。そこの近くに大柄な男が女性を一人、肩に担いでいます・・・・・・兵士達の証言とは違いますが、『仮面』を使っていたのなら多分この男に間違いないでしょう」

「解った!西の山だな!」

 カイトが飛び出そうとしたその時、キヨテルが待ったをかける。

「一応これも持って行ってください。魔導の力を込めた護り刀です。人間には大して効果は無いかもしれませんが、怪物には効果絶大です。確か翼のある虎がいるんでしたよね?」

 キヨテルの言葉にカイトが頷く。

「できれば掃討部隊を引き連れて行くべきなんだろうが・・・・・・もし俺に何かあったら副師団長に俺の代理をするよう伝えておいてくれ!」

 カイトは冗談とも本気とも付かない言葉を残すと、そのまま部屋を飛び出した。





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一難去ってまた一難、メイコが何者かに誘拐されてしまいました(>_<)
色々ありすぎた一日、さすがにメイコの集中力や体力も限界だったのでしょう。普段なら魔法が使えなかったとしても金的蹴りくらいは相手の男に対して食らわすであろうメイコがあっさり敵の術にはまってしまいました。(普通なら相手が呪文を唱え終わる前にキンタマのひとつやふたつ蹴り潰して・・・以下略)

その一方、早い時間にメイコの誘拐に気がつくことが出来たカイトたちですが、相手が瞬間移動を使うとなるとねぇ・・・スミレに乗ればそこそこの早さで『徒歩半日』の距離はたどり着けると思うのですが、タイムラグは致し方がありません。なおキヨテル率いる黒曜魔導師はテレポート魔法は使えません。
(魔導師の移動には龍やグリフォンを使う&河川を使った物流も発達しているのでテレポート魔法を発展させる必要性が無かったと思われます)

次回更新は3/9(10日夜)、メイコのピンチにカイトが駆けつけてくれるはずです・・・たぶん(^_^;)
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