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「VOCALOID小説」
聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 紅き魔導戦士4

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 どこまでも深い闇の中、心地よいぬくもりがメイコを包む。どこまでも優しく暖かく、しかしメイコを拘束して離さない力強さもあるその闇を意識したその時、メイコの耳にぱちぱちと爆ぜる薪の音が聞こえてきた。その音にメイコはゆっくりと瞼を開く

(ここ、は?)

 目覚めたとはいえ、未だぼんやりした頭でメイコは記憶を手繰り寄せる。

(そうだ、私。何だか怪しい魔導師に窮奇の縄張りまで連れて行かれたんだっけ)

 奏国の兵士も窮奇に食い殺させると言っていたから、あの男はほぼ間違いなく奏国と敵対する国の魔導師だろう。もしカイトの助けが来なければ、間違いなく窮奇に食い殺されるところだった。しかしスミレに乗ったカイトに助けられたその後からの記憶が無い。

(でも・・・・・・助かったのよね)

 でなければ、こんなぬくもりを感じるわけがない――――――と、その時メイコは自分が誰かに抱きしめられていることに気がついた。驚き、目を見開くが目の前にあるのは間近に迫った鎖骨と、そこから続く喉仏のある喉元だけだ。そしてメイコの肌に触れている感触からすると、相手は勿論、メイコも服を着ていないのは確実である。

(え、え、え、!な、何があったのよ!何で私、裸にされているの!!)

 驚きが大きすぎて叫ぼうにも声が出ない。そして男の腕を外し逃げようとしてもかなり強くメイコを抱きしめて、腕が緩むような様子もない。

(どうしよう・・・・・・)

 途方に暮れたその時、メイコの頭の上から声が降ってきた。

「起きたのか、メイコ」

 その声はカイトのものだった。その声を聞いた瞬間、メイコは腕を伸ばして身体を引き離そうとする。しかしカイトの腕の力は予想以上に強く、メイコが力いっぱい押してもびくともしない。見た目は細身だがやはり軍人、かなり力が強い。

「な、なんでこんな状況になっているのよ!怪我なら癒しの魔法で治るはずでしょ!」

 恥ずかしさを虚勢で隠しながら、メイコはカイトに文句を言う。しかしカイトから帰ってきた返事は至極まっとうなものだった。

「体温が戻らなかったんだ・・・・・・どんな魔法を使っても。キヨテルやミクちゃんも手の施しようがなくってさ」

 ぼそり、と小さな声で呟いたカイトの顔を見上げると、心なしか頬が染まっているように見えた。だが、もしかしたらメイコの背後で燃えている暖炉の火が頬に映っているだけかもしれない。

「かと言って君の妹に暖めさせるわけにもいかないだろう?君が目覚めた時、二人で結託すれば俺達の包囲網から逃げることも可能だし」

 カイトは敢えてメイコとミクの逃亡の可能性について言及したが、何故かメイコにはそれが言い訳にしか聞こえなかった。

「それは買いかぶり過ぎでしょ。黒龍隊だっているんだし、私達なんかあっという間に捕まえられるわ」

「よく言うよ。『紅の魔導戦士』が・・・・・・キヨテルが調べてくれたよ」

 メイコの背中をゆっくりと撫でながら、カイトは言葉を続ける。

「炎を使って国境付近にいる略奪者を退けているんだって?下手な国境警備隊よりも狄国から恐れられているらしいじゃないか」

「・・・・・・そんなの、知らない」

 メイコは小さな声で反論する。

「ま、どちらにしろ油断ならない相手には変わらない。だけど低体温のまま放っておいて死なれても後味が悪い――――――ってことで今に至る。それとも他の男が良かったのか?」

「じ、冗談はやめて!」

 冗談にしてもひどすぎる――――――メイコはありったけの力でカイトを突き飛ばすとベッドの上から逃げるように転げ落ちた。だが、そこから更に逃げようとしても何故か足に力が入らず、床にへたり込むのがやっとだ。

「おい、自分の格好をもう少し考えてから行動しろ。さすがに俺だって目のやり場に困る」

 カイトは全裸で床にへたり込んでいるメイコに自分達がかけていた毛布を頭からかぶせる。そしてベッドから降りると、毛布ごとメイコを抱えると、改めてベッドの上に横たえた。

「色々言いたいことがあるだろうけど、今夜は諦めろ。あの雪山の中、長い時間薄着でいたんだ。体調が戻らないもの仕方ないだろう。どっちにしろ服だって乾くのに一晩かかる」

 そう言ってカイトが指さしたのは暖炉の前にかけられていたメイコの服だった。まだあまり乾いていないようで、完全に乾くのは明日の朝になってしまうだろう。

「・・・・・・解ったわ。でも今夜だけだからね!」

 メイコは言い捨てるとカイトに背中を向ける。

「それが敗戦国の魔導師見習いの言葉か?ま、いいけどさ」

 一筋縄ではいかない跳ねっ返りの魔導師見習いに呆れつつも、カイトはメイコがくるまっている毛布に潜り込む。そしてメイコの身体に己の身体を密着させると、メイコの細腰に腕を回しギュッ、と抱きしめた。



「メイコさん。もう一度確認しますが・・・・・・あの腐れ魔導師の杖に触った、ですって?」

 翌朝、メイコから事情を聞いたキヨテルが低い声で尋ねる。否、キヨテルだけではない。メイコの隣に座っていたミクも半ば怒りの表情でメイコににじり寄る。

「お姉ちゃん!ミクはいつも言っているでしょ!お姉ちゃんは魔導師見習いの中でも特に『感度』が鈍いんだから、明らかに他の魔導師の物だって解っているものに触っちゃダメって!」

 儚げな姿からは想像もできないミクの大音量の怒鳴り声に、メイコは勿論、そばにいたカイトも思わず背筋を伸ばしてしまった。

「そりゃあ私やミクさん、更にはめぼしい魔導師達の力を結集して回復魔法をかけても体温がなかなか戻らなかったはずですよ。ていうか、よく生きて朝を迎えられたものです」

 うんざりした表情も露わにキヨテルがぼやいた。どうやらメイコの体温が戻らなかった原因は薄着で雪山をうろついていたからではなく、黒衣の魔導師の杖に生命力を削がれていたかららしい。予め原因が判っていれば、低体温への対処法も変わっていた。
 しかしキヨテルやミクはメイコの手当をする際、そのことを知らされていなかったのでごく普通の回復魔法をかけてしまったのである。それでは普通の傷は治せても、魔法によるダメージを回復することは不可能だ。
 それ故に本来ならメイコは生命力を削がれたまま死んでいてもおかしくない状況だった。しかしある一つの偶然がメイコを救ったのである。

「本当にカイト中将が魔導学校の義務教育まで修了していてくれて助かりましたよ。あなたは無意識だったんでしょうけど、メイコさんに自分の生命力を分け与えていましたからね・・・・・・メイコさん、ちゃんとカイト中将に感謝してくださいよ!」

 どうやらカイトが無意識にやっていた『裸で抱き合う』という行動が、メイコに生命力を注ぐ形になっていたようだ。お陰でメイコは無事朝を向かえられたのである。

「・・・・・・はい、そうさせていただきます」

 さすがにバツが悪いのか、メイコは身体を縮こませてその場にいた全員に頭を下げた。



 その後、ミクを含めた魔導師数人がかりでメイコの治療に当たった。杖を掴んでから半日以上経過してしまっていたので、その分の浄化が難しくなっていたのである。

「でもこれで皇帝軍との合流まで問題は無さそうだな」

 スミレの背中の腕でカイトがにこやかに笑う。その腕の中ではメイコが不満げに頬をふくらませていた。

「・・・・・・何で私があんたと一緒にスミレに乗らなきゃならないのよ!」

「『緑の魔女』より『紅の魔導戦士』の方が厄介なんでね。逃げられたら困るんで俺の監視つき」

 そう言ってカイトは遠慮なく左腕をメイコの腰に回し、右手でスミレの手綱を取る。二人の背後に広がるシャンジェには、既に今までの半分弱の人間しか残っていなかった。
 女子供や年寄りは既に『救いの村』に避難を始めていたし、男たちの中でも傭兵として働きたいというものは青龍軍に組み込まれた。残ったものは特殊技能を持った職人と戦うのは嫌だが力仕事なら出来るという男たちばかり――――――つまり新しいシャンジェを作り出すために敢えて残る者たちだ。

「想像がつかないな・・・・・・シャンジェどうなるのか」

 ちらりと後ろを振り返りながら、メイコが小さく呟く。

「まずはものの役にも立たない城壁は無くなるよ。都市を繁栄させるのに枠を作っちゃ意味が無いからね。あとは完璧な水道だ」

「もう・・・・・・本当にこだわるわね!」

「当たり前だろ?水さえ支配すればもっと文化的な生活が送れるんだから。それさえきちんとやってもらえば、グリアーノの風習を尊重するよ」

 その時、スミレが大きく翅を広げ、ふわりと飛翔する。

「とりあえず3年、そうすれば新たな領主が奏国から入ることになる。その前に君には生まれ変わったグリアーノを見せてあげることが出来ると思うよ」

 さすがに他の貴族の領地に勝手に入るのは、奏国内でも難しいからねとカイトは笑う。だがカイトは思いもしなかった。三年後、メイコが新たな領主と共にこの地に脚を踏み入れることを――――――そしてその新たな領主が自分であることを。

 先陣を切って飛び始めた青龍に続き、グリフォン隊、騎兵隊、そして歩兵隊が美しい隊列を作って街道を南へと進む。その先には既に戦場となっている狄国と奏国の国境があるのだ。一刻も早く合流しなければと青龍隊はただひたすらに進みつづけた。




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奏国物語・紅の魔導戦士編完結いたしました(*^_^*)あまり魔導戦士らしい活躍はしていないのですが、めーちゃんの活躍はおいおい書いていくことに・・・なるといいなぁ(おいっ)

実はこの話、元々『めーちゃんvs雪山の妖怪』という図式だけは決まっていたのですが、どういう設定でこれを書こうか迷いに迷って作品でもあります。行軍の途中で出くわすのか、それとも仲間と『救いの村』に行く途中で出くわすのか・・・しかし、どれもしっくり来なくて、結局もう一つライバルが出てくる今回のパターンになりました(^_^;)この戦いはかなり長く・・・奏国と狄国のどちらかが滅ぶまで続くのでしょうねぇ(-_-;)

次回からは『緑の歌唱精霊』編、皇帝軍との合流&怪我人を癒してゆくミクの活躍がメインとなる予定です。
そして申し訳ございませんが、来週から暫くの間ボカロ小説の更新を火曜日朝9:00にさせていただきます。ちょっと父親の介護スケジュールが大幅に変わってしまいそうで・・・暫くの間月曜日が忙しくなってしまいそうなのでご了承くださいませm(_ _)m
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