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「VOCALOID小説」
聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 翠の歌唱乙女4

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 青龍隊の攻撃によって満身創痍の狄国軍に襲いかかったのは、目にも眩しい純白の集団だった。

「おらおらおら!命が惜しかったらさっさと逃げな!」

「虫けらの分際で我が奏国軍に立ちはだかろうなんて笑止!」

「あら、意外とか弱いんですのね。狄国の殿方は!」

 輝く純白のユニコーンを乗りこなし、次々と狄国の兵士をなぎ倒してゆくのは奏国第四師団・白龍隊の乙女達だった。
 容姿端麗な者が多く、他国からは『お飾り部隊』と揶揄されることもある白龍隊だが、実際は彼女たちが乗りこなしているユニコーンよりも遥かに凶暴だ。
 カイトは比較的穏やかな表現でメイコに白龍隊のことを説明したが、第二師団・赤龍隊隊長・メイトに至っては『白龍隊が反乱を起こしたら奏国はあっさり乗っ取られる。青龍隊赤龍隊束になったって本気の白龍隊には敵わねぇ』とまで言い切っている。女性だけの部隊とはいえ侮れないのだ。
 そしてこの部隊を作り上げ、中心にいるのが、真珠色の龍に乗っている長い桃色の髪が印象的な女性だった。

「グミ!左が手薄になっている!騎兵隊と共に左手前方を攻めろ!」

「リリィ、もう少し耐えろ!!イア!リリィの支援に回れ!」

「いろは!そっちのカタが付いたら今度は右手!ゆかりの援護をしろ!」

 自らも刀を振るいながら的確な采配を振るう姿は百戦錬磨の老練な将軍の如くだが、実際は二十歳を僅かに過ぎたほどの美女である。狄国の兵士の返り血を浴びながら、若き女将軍は更に突き進む。

「陛下の軍に産毛一筋ほどの傷もつけてはならぬ!皆の者、行け!!」

 その号令に白龍隊の乙女達は更に暴れまくり、ユニコーン達も額の角で兵士達を次々と殺してゆく。ユニコーンの白い毛並みと乙女達の白い鎧が返り血に染まれば染まるほど奏国軍は優勢になる。

「あ~あ、こりゃあ相当溜まっていたな」

 その殺伐とした戦いぶりを見つめつつ、カイトが呟く。一応援軍として投石隊と弓矢隊にも準備をさせていたが、その必要も無さそうだ。

「っていうか俺達の援軍なんて待たなくても、白龍隊だけで絶対倒せたよな」

 実際、陸軍の青龍隊や水軍の赤龍隊とほぼ同等の力量を持つ白龍隊だ。間違いなく単体でも狄国軍を倒せただろう。

「・・・・・・でも何でそれをしないの?私が見てもかなり強い軍隊だと思うけど、あの白い鎧の部隊は」

 カイトに追いついたメイコがスミレによじ登りながら尋ねる。それを引っ張りあげながらカイトは小さく溜息を吐いた。

「うちの陛下が嫌がるんだよ、白龍隊のみの戦いを。殆どは紫龍隊、皇帝軍との行動だけど、それが敵わない場合でも他の部隊と行動を共にするんだ」

 もし、白龍隊単体での作戦が許されるならば、もっと複雑で効率的な戦術が使えるのにとカイトは嘆く。

「・・・・・・色々大変なのね、大きな国って」

「まったくだ」

 そうこうしている内に今度は紫色の軍隊――――――奏国第一師団・紫龍隊がやってきたのである。さすがに勝ち目はないと、狄国軍の歩兵たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、騎兵達も逃げたり投降したりしはじめる。

「皇帝陛下のお出ました・・・・・・君とミクちゃんを引き合わせるけど、失礼のないように。でないとグリアーノの民がどうなるか、俺にも保証はできない」

 その緊張を滲ませた一言に、メイコは気を引き締めた。



 紫と白、そして青の鎧を着た歩兵達は怪我人を手当し、両軍の亡骸を一箇所に集めている。たとえ敵であっても戦の庭で亡くなった者には最大限の敬意を払う、それが奏国の習慣だ。狄国の兵士の亡骸もきちんと身なりを整えられた後、奏国側の死者と共に瓔珞高原の片隅に埋葬されることとなる。
 そんな中、カイト達青龍隊は皇帝軍本体に合流した。そして一息つく間もなく、カイトはメイコとミクを連れて皇帝の前に進み出る。

「陛下、お待たせいたしました。青龍騎士カイト、これに」

 カイトが膝をつき、礼をしたその前には黒っぽい鎧を身につけた、紫色の長い髪の青年がいた。予想よりかなり若いが、どうやらその男が奏国皇帝らしい。メイコとミクもカイトに倣い、膝をついて頭を下げる。

「こちらはグリアーノ国の魔導師見習い、『紅の魔導戦士』メイコとその妹の『緑の魔女』ミクになります」

 カイトは自分の背後にいるメイコとミクを皇帝に紹介した。その言葉の後に今度はメイコが挨拶をする。

「お初にお目もじ仕ります、奏国皇帝陛下」

 取り敢えずこれだけ言っておけば大丈夫だと前日カイトから教えてもらった挨拶である。日常会話なら奏国語を話せるメイコやミクだが、さすがに皇帝に対する敬語となると難しい。なので取り敢えず失礼がないようにと付け焼刃的に教えてもらった一言だ。それでもその効果は絶大だった。

「面をあげよ、若き魔導師よ。ここは戦場だ、堅苦しい挨拶は必要ない」

 母国語でないことを考慮してくれたのか、かなりゆっくりとした皇帝の声にメイコとミクは恐る恐る顔を上げた。見上げると更に大柄に見える美丈夫は、微笑みながら二人に声をかける。

「ところで先ほど風に逆らって射たれた火矢は、そなた達魔導師の仕業か?」

「御意。先ほどの火矢は姉・メイコの技にございます」

 メイコが口を開きかける前に答えたのはカイトだった。

「彼女たちは『白の魔導師』、我らが黒曜教導師団が使うような破壊魔法は一切使わない流派に属しております。なので火矢を望みの場所に打ち込ませることが関の山で・・・・・・」

 この場はカイトに任せたほうが賢明だ――――――メイコは感付き、ミクにもグリアーノ語でその旨を囁こうとする。だがその前に皇帝の思いもかけぬ鋭い声が二人の動きを制したのである。

「どうやら火矢は姉の魔法のようだが、緑も魔女も同様か?」

 皇帝は目を細めてメイコとミクをじっと見つめる。口調こそ穏やかだったが、その視線は剣のように鋭い。宮廷暮らしが長い奏国の貴族ならいざ知らず、その視線は田舎から出てきた小娘には恐怖でしかなかった。ミクは顔を真っ青にして小刻みに震えだす。

「せ、僭越な・・・・・・が、ら・・・・・・申し上げます!」

 震えるミクの手を握りながら、メイコはたどたどしい奏国語で訴える。

「ミクは・・・・・・癒しの魔法・・・・・・だけ、使えます!」

「済みません、私が補足します。二人共日常会話はともかく奏国宮廷語は知りませぬ故」

 カイトがメイコを制しながら、皇帝に訴えた。

「魔導師見習い・ミクは巨大な癒しの魔法を使うことはできますが、それ以外の魔法においてはメイコに劣ります。黒曜魔導師の中等科卒業並、といったところでしょうか。しかし癒しの魔法においてはかなり巨大な力を持っております。現に・・・・・・」

 カイトは言葉を区切り、自分の兵士達を指さす。

「グリアーノからここまで、十日近くかかる道のりを我々は七日で到達するという強行軍を行ってきました。これは彼女の魔法にて一日の疲れや小さな怪我を癒やしてもらったからに他なりませぬ。そして今回合戦の成果も充実した体力によるもの・・・・・・我が青龍隊が彼女の魔力の証明にございます」

「確かに・・・・・・陸路にしては速い合流だったな」

 だが、皇帝の目からはまだ疑念の色が消えていなかった。

「確かに青龍隊は力が漲っておるようだが・・・・・・朕は実際にこの目で見聞きしたものしか信用はせぬ。もしその魔女の力が本物だというのであれば、ここにいる兵士達全てを癒してみよ」

 皇帝の言葉にカイトは一瞬言葉をつまらせたが、その代わり返事をしたのはメイコだった。

「ぎ、御意!兵士たち・・・・・・癒や、します!」

 しかしミクの震えは未だに収まってはいない。更にガタガタと震えるミクを、メイコはギュッ、と強く抱きしめた。

「ミク、落ち着いて。今までやってきたみたいにやればいいだけじゃない」

「お姉ちゃん・・・・・・」

 メイコの胸の暖かさにようやく緊張から開放されたのか、やっとポロポロと涙をこぼしはじめたミクの頭を、メイコは優しく撫でてやる。

「カイト。申し訳ないんだけど、皇帝陛下から少し離れた場所に移動することは可能かしら?この子、ちゃんとした貴族に謁見するのって初めてだから

「ちゃんとした貴族って・・・・・・それって俺の立場は?」

 どうやらミクの中ではカイトは『ちゃんとした貴族』扱いされていなかったらしい。プライドを傷つけられ少しむっとした表情を浮かべたカイトだったが、そのやりとりが幸いした。皇帝が二人のやりとりに笑い出し、自分が見える範囲ならばと少し離れた場所に移ることを許可してくれたのである。
 二人は皇帝に一礼した後三十歩ほど離れ、怪我人がいる方へと向く。

「いい?最初はそんなに大きな声じゃなくてもいいからね。ゆっくり、音程を合わせて・・・・・・」

 メイコがそう言いかけた時である。不意に斜め後ろから聞き慣れない楽器の音色が聞こえてきたのである。だが、聞きなれないのはその楽器の音色だけで、旋律はミクやメイコがよく知っているもの――――――毎夜青龍隊の兵士たちに歌って聞かせていたグリアーノ民謡だった。その音にミクとメイコは振り返る。

「ヘヘッ、さすが近衛隊。娯楽用の楽器まで持ってきていやがった。どうせなら伴奏付きのほうがいいだろ?」

 そこにいたのはメイコ達が初めて見る楽器――――――何本もの弦が張られた楽器を手にしたクオだった。

「クオ、くん?その楽器は・・・・・・?」

 初めて見る楽器に興味をそそられたのか、ミクはクオが手にした弦楽器を覗きこむ。満月のように丸い形をした胴に細い首、その細い首に向かって何本もの弦が張られていた。素朴な土笛と太鼓くらいしか見たことがないミクにとって、それは未知の楽器だった。

「月琴で言うんだ。俺、これでも月琴の名手なんだよね」

 そう言いながらクオが軽く音を鳴らす。その澄んだ音色に強ばっていたミクの顔が、笑顔に緩んだ。

「せっかくだから皆にも聞かせてやってくれよ、ミクの唄をさ。そりゃあ皇帝陛下の命令も大事だけど・・・・・・やっと戦いが終わったんだ。どうせなら目一杯楽しもうぜ!」

 ざっくばらんなクオの言葉に変な緊張が取れたのか、ミクはくすりと笑う。そしてメイコの手を握りしめつつ、澄み切った第一声を発した。





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ようやく皇帝陛下(がくぽ)&白龍隊隊長(ルカ)登場なのですが、二人共名前を出せませんでした・・・orz取り敢えず髪の毛の色で何とか理解してやってくださいませ~(>_<)(ルカはともかくガックンがね・・・なかなか名前を出せないのですよ。二人称が『陛下』なので^^;)
そしてルカが乗っているのに何故白い龍なのか・・・まだ出していない設定なのですが、この龍のたてがみ、黄色なのですよ(^_^;)まだまだ謎が多い娘子軍ですがちまちまと書き進めてゆきますね(*^_^*)

ようやく皇帝軍と合流を果たしたカイトたちですが、魔導師見習い姉妹、特にミクに疑惑の目が向けられてしまいました。火矢の件を『二人でやりました~♪』と適当にごまかしておけば良かったのかもしれませんが、そうは行かなかったのでしょう。癒しの魔法は使えるけど、緊張の中果たしてきちんと魔法が使えるのか?もし使えたとしてもそれが『役に立つもの』と認められるのか・・・4/21、次回が『翠の歌唱乙女』の章最終話となります(*^_^*)
(その後、28日は帰省が入ってしまいますのでボカロ小説はお休みします。新章は5/5の予定で・・・奏国帰還編となります^^)
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