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「VOCALOID小説」
聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 幕間・皇帝と一角獣の処女1

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 奏国首都・華都の手前にある宿場町・槐峡で、奏国軍は暫しの休息を取っていた。ここで身なりを整え凱旋するのだ。多くの国民が見物に押しかけると予想されるだけに戦で汚れた姿で凱旋する訳にはいかない。準備は着々と進んでおり、既に先触れも出している。後は出立の号令を待つばかりなのだが、この三人だけはそうはいかないようであった。

「いいか、用をたす時は厠に入ること!グリアーノと違って草むらなんて無いんだからな!それと水浴も人間用の場所があるから面倒臭がるんじゃない。馬の水浴場で水浴びをしようなんてもっての外だ!特に華都では蛮族の風習は認められないんだからな!」

 特別に黒曜教祭司の衣装を借り、それを身に付けたメイコとミクを前に、カイトが説教を繰り返す。
 今日だけで同じ内容の説教を三回、道中に至っては数え切れないほどカイトは同じことを繰り返し言い続けている。だが、生まれついてからの習慣はそう簡単に変えられるものではない。この道中、グリアーノの生活そのままに行動するメイコとミクに、カイトらは散々振り回されていた。

「・・・・・・判ったわよ。うるさいなぁ」

 うんざりした表情でメイコが唇を尖らせる。最初の頃こそ神妙な表情でカイトの説教を聞いていたが、今は慣れてしまって半分以上聞き流している。それはミクも同様で、メイコに髪を編んでもらいながら鼻歌など歌っていた。そんな姉妹を苦々しく見つめながら、カイトは更に説教を続ける。

「それと!皇帝と白龍隊隊長の件も――――――オーラの色が一緒だとかいうことも絶対に黙ってろよ。そんなことが元老院の石頭の耳に入ったらますます厄介なことになるんだから!」

 白龍隊隊長――――――その言葉がカイトの口から飛び出した瞬間、メイコとミクの動きが止まった。そして二人してカイトの顔をじっと覗き込む。

「ねぇ、カイト。その辺のこと、もう少し詳しく聞かせて欲しいんだけど」

「そうそう!龍に乗れる人って奏国でもたった5人何でしょ?だったら白龍隊のルカ隊長だってそれ相応の身分が貰えるんじゃないの?それなのに側室にもなれないって・・・・・・すごく気になる!」

 自分達の奥手さを棚に上げ、他人の色恋の話にはすぐ食いついてくる――――――乙女の不可思議さに翻弄されながら、カイトは諦観の溜息を吐く。

「仕方ないな・・・・・・その辺のこともきっちり話すから、絶対に騒ぎ立てないでくれよ」

 そう前置きをしてカイトは皇帝と白龍隊隊長・ルカの話を始めた。



「あ~ら、あなた達。まだユニコーンなんかに乗っているの?」

 ユニコーンに水と餌をやっていたルカ達ユニコーン隊に対し、騎馬隊の女騎士達は侮蔑的な笑い声を上げた。泥はねさえも拭えぬ素顔に戦闘服のままのルカ達に対し、女騎士達は派手な化粧に行軍中とは思えぬ肌も露わな服を身に付けている。女騎士というよりはむしろ従軍娼婦と言ったほうがしっくりくるかもしれない

「ふふっ。娘子隊に入っているのに未だ誰からも目にかけてもらえないなんて」

「一体何のために娘子隊に入ったの?貴族の息子を引っ掛けなけりゃ意味無いでしょ?」

「そんな貧乏臭い格好なんかしているからいけないのよ。ばっかじゃないの!」

 女騎士達は侮蔑的な言葉をルカ達に叩きつけては癇症な笑い声を上げる。そんな女騎士達を、ルカは黙ったままやり過ごしていた。



 貴族とは名ばかりの郷士の娘に生まれたルカは、苦学の末に皇立士官学校に入学することが出来た。一応『皇后及び王族の姫君の護衛』の為募集されている女性軍人だったが、その枠はたった三人だけという超難関である。途中で脱落するものも多い中、ルカは男子学生を凌駕し、主席で士官学校を卒業した。だが士官学校を卒業し、憧れの娘子隊に入ったまでは良かったが、現実はお粗末なものだった。

 ルカが入隊した頃の娘子隊は一応奏国軍の一部隊としてくみこまれていたが、実際のところは貴族の娘の腰掛け、または貴族の子弟との出会いを求める女達が殆どだった。否、士官学校を出ていない者達は全員男目当ての者だったと言っていいだろう。
 まじめに軍人としての勤めを果たそうという志を持ったものはごくわずか――――――士官学校卒業の先輩、後輩を含めて八人足らずだった。
その八人は処女しか乗ることが出来ず、なおかつ娘子隊の象徴でもあるユニコーンを与えられた。要は彼女たちにしか乗りこなすことが出来ないからなのだが、身分の低い士官学校出身のルカ達に、清純の象徴でもあるユニコーンを奪われた他の女達は妬みをぶつけ始めたのだ。
 事あるごとにルカ達は嫌がらせを受けたが、それでも『軍事裁判沙汰になるよりは』とただひたすら耐えていた。そんな中、その出来事は起こったのである。



 それは奏国の東に位置する天領視察の帰り道での事だった。激しい雨の為に橋が流され、足止めを食ってしまったのだ。

「この雨、いつまで続くんだろ・・・・・・もう三日目だよね」

 リリィが恨めしそうに天を仰ぐ。

「こればかりは仕方ないよ。陛下だってお天道様だけは自由にできないもの」

 リリィの隣でグミも同意する。先輩のいろはは体力温存とばかりに寝てしまっているし、ゆかりとイア、カルとラピスは鎧の手入に勤しんでいる。
 そんな中、ルカは素朴な土笛を吹いていた。ルカの郷土に伝わる伝統楽器でもあるその土笛は掌に収まるほど小さいものだったが、その音量は意外と大きい。天幕中に響くその音に、娘たちは勿論、天幕の中で繋がれているユニコーンも聞き惚れている。
 だが、そんなのんびりした雰囲気でいたのはユニコーン隊の乙女達だけであった。いつまで続くかわからぬ雨に兵士達は苛立ち、喧嘩沙汰になったり、騎馬隊の女達との淫行に耽ったりと規律は乱れ始めていた。
 否、ユニコーン隊の者達もその規律の乱れに巻き込まれる可能性はあった。だが、彼女たちを護るのは凶暴なユニコーンである。乗り手の美しき乙女に近づこうものならば、その角で串刺しにされるのは目に見えている。
 だが、それを物ともしない足音がユニコーン隊の乙女達の許へ近づいてきた。

「陛下!お戻りくださいませ!」

 その声はルカの土笛の音をかき消すほど大きかった。どうやら皇帝が自らの天幕を出たらしい。だが、ルカ達が驚いたのは次の一言だった。

「そちらはユニコーン隊の天幕ではありませんか!陛下といえどユニコーンを相手になされては無傷ではいられませぬ!」

 皇帝がこちらに向かっている――――――その一言にルカの手が止まり、いろはがむくりと身体を起こす。そして外を覗いていたリリィとグミが慌てて天幕の中央に転がり込んできた。

「た、大変だよ!陛下が・・・・・・陛下がこっちにいらっしゃる!万が一があったらまずいから、ユニコーンを裏に移動させておいたほうがいいんじゃないの?」

「う、うん!そうしようか・・・・・・ラピス、イア。手伝って!」

いろはが二人を促し、慌ててユニコーンの移動を始める。

「陛下が御自ら足を運ぶなんて・・・・・・私達、何かしたっけ?」

 手入中の鎧を片付けながらカルが皆に尋ねるが、皆首を横に振るばかりだった。

「ううん。むしろ何もしていないのが問題なんじゃ」

「でもサボっていたわけじゃないじゃん」

 騒然とする中、ルカが一声かける。

「少し落ち着きましょう。もしかしたら単に気分転換で外を歩いていらっしゃるだけかも・・・・・・」

 だが、ルカの希望的憶測はものの見事に外れた。不意に天幕の入り口が跳ね上げられ、大柄な男が――――――軽装の皇帝が何も言わずにユニコーン隊の天幕に入ってきたのである。それに続いて側近が慌てて入ってくる。男に対して凶暴なユニコーンがいないことを確認すると、側近はほっとした表情で皇帝に声をかけた。

「陛下!後生ですからご自身の天幕へお戻りを・・・・・・お前たち、頭が高い!皇帝陛下の御前であるぞ!」

 側近の一言に、八人は慌てて頭を下げる。その八人を見回しながら、皇帝は口を開いた。

「先程不可思議な音色の笛を吹いていたのは・・・・・・そちらの中にいるのか?」

 どうやら皇帝は、ルカの土笛の音に誘われてこちらにやってきたらしい。その問いかけに、ルカは反射的に返事をしていた。

「はっ、私めでございます。お耳汚し、誠に申し訳なく・・・・・・」

「面をあげよ」

 ルカの声を遮り、皇帝が命ずる。だが、皇帝に直接声をかけられたという緊張のあまり、ルカはなかなか顔を上げることが出来ない。

「陛下の命令だ。さっさと面をあげぬか!」

 なかなか顔を上げられないルカに、側近が声を荒らげる。その苛立ち混じりの命令に、ようやく落ち着きを取り戻したルカは恐る恐る顔を上げた。

「ほぉ、なかなかの美形だな」

 皇帝はルカの小さな顎に指をかけ、更に顔を上向かせる。

「この美貌で未だユニコーンに触れることができるという事は、にわかに信じられぬが」

 すると何を思ったのか、皇帝はルカの腕を掴み、立ち上がらせたのだ。

「気に入った。余と共に参れ」

「陛下!お戯れが過ぎまするぞ!」

 皇帝が何をしようとしているか、いち早く気がついた側近が慌てて皇帝を止めようとする。

「ユニコーン隊の娘達は純潔を守る事と引き換えにユニコーンに触れることを許されております!一時のお戯れでその権利を奪うことは、いくら陛下でも・・・・・・」

「この者の身は余が保証する。ユニコーンに騎乗する事ができなければ側室にでもすれば良い」

 そう言い捨てると、皇帝はルカの腕を掴んだまま天幕から出た。

(え・・・・・・いったい、何が起ころうとしているの?)

 目を白黒させながら、ルカは追いかけてくる皇帝の側近に目で助けを求めるが、側近は悲しげな表情を浮かべ首を横に振る。

「許せ・・・・・・陛下のお召だ。ユニコーンに乗ることはできなくなるが、最悪、騎馬くらいは与えて貰えるように手配してやるから」

 それはルカの純潔を皇帝に捧げよということであった。それにようやく気がついたルカだったが、抵抗する間もなく皇帝の天幕へと引きずり込まれる。
 ユニコーン隊の天幕の数倍は広い天幕の中には、5,6人の軍幹部がいた。皆驚きに目を見開きながら皇帝をルカを見つめる。

「陛下、その者はユニコーン隊の・・・・・・・」

「・・・・・・暫し席を外せ。これは命令だ」

 その声は不機嫌そのものだった。その声に怯えるように天幕にいた者達は全員外へ出る。

「どいつもこいつも・・・・・・余の顔色ばかり伺いおって」

 原因は判らないが、どうやら何か皇帝の逆鱗に触れてしまっているらしい。自分はその不機嫌を鎮めるための人身御供なのだ――――――ルカに恐怖が湧き上がる。

(どう、しよう)

 子供の頃から勉学と稽古に励み、男女のことなど殆ど知らないルカである。これから皇帝の相手をしなければならないのに、その作法さえ知らないのだ。皇帝の不機嫌を鎮めるどころか、むしろ怒りを増幅させてしまうかもしれない。
 困惑と恐怖を抱えるルカだったが、時は待ってくれない。皇帝はルカの両肩を強く掴むと、有無をいわさず唇を重ねてきた。





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GWのお休みを挟んで2週間ぶりの『奏国物語』です(*^_^*)今回は『遠征編』と『首都編』の間をつなぐ幕間ということで、色々な諸注意を・・・傍若無人な蛮族の娘たちにカイトが説教をするという形で皇帝・がくぽと白龍隊隊長・ルカの馴れ初めを語ってもらいました。因みにメイコ&ミクがカイトのいうことを素直に聞くか否かは定かではありません(^_^;)

天領視察の際、元々ユニコーン乗りだったルカを見初めた皇帝がくぽ。どうやらかなり不機嫌なようですが・・・その理由等々はその内に書かせていただきますが、土笛の音色が原因で皇帝の目に止まり、そして『お召』されてしまったようです。ただ、ルカは軍隊一筋で皇帝の相手をする作法なんて知りませんのでどうなることやら・・・次回は朝っぱらからR-18展開になりそうです(^_^;)
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