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聖龍協奏曲~奏国物語

ボカロ小説 聖龍協奏曲~奏国物語 朱鷺色の花嫁3

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 白龍・陽炎から降り立った美しき隊長は、桃色の髪を靡かせながら声を張り上げる。

「グリアーノの紅の魔導師・メイコ!いるのなら我の前に出てこい!貴様とは決着を付けねばならぬ!」

 戦士としてはあまりにも華奢な姿に繊細な声――――――皇帝が幾度も白龍隊隊長の職を辞するよう促すのも頷ける。それでも戦士としてのなけなしの挟持を振り絞り、ルカは刀の柄に手をかけ、一歩、また一歩とメイコたちの方へ近づいてきた。

「メイコさん、ここは私達に任せて。変ないざこさは起こさないほうが無難だわ」

 メイコと共に復興指導に当たっている魔導省の役人・心響がメイコに囁きかける。

「見た目は派手だけど、他の部隊の領域は絶対に侵さない事で有名なのよ、白龍隊の隊長は。それなのにこんなところにまで乗り込んでくるくらいだもの。相当あなたに恨みを持っているのかもしれないわ・・・・・・逆恨みっぽいけど」

「それは言えるな」

 メイコと心響の会話に入ってきたのは、リーダー格のブルーノだった。

「何だかんだ言ってもルカ姫は皇帝のお気に入りだ。迂闊なことをしたら後々厄介な事になるだろう。ここは我々が適当に誤魔化しておくから、君は後ろの方に・・・・・・」

 と、ブルーノがメイコを人混みの後ろに隠そうとしたその時である。不意にメイコの腰に何者かが抱きつき叫び声を上げたのだ。

「ルカ隊長!グリアーノの紅の魔導師、ここにいました!」

 その必死の叫び声にメイコ驚き、自らの腰に抱きついた者を見る。

「へぇ・・・・・・奏国の軍隊ってこんな幼い子も見習いとして入隊させるのね」

 メイコの腰に抱きついている者、それは金色の髪をした少女だった。どうやら騎士見習いらしく、見習い用の簡易な革鎧を身に付けている。
 だが見習いとは言っても白龍隊の兵士の一人という挟持はあるらしく、震えながらもメイコを逃がすまいと必死に抱きついていた。その必死さに振り払う気も失せ、メイコは少女の金色の髪の毛をポンポンと軽く叩く。

「私の事、怖いんでしょ?こんなに震えちゃって・・・・・・でも隊長命令なら仕方ないわね。解ったわ、あんたに免じて白龍隊の隊長の前に出てあげる」

 すると少女は恐る恐る顔を上げた。目に目一杯涙を溜めながら、それでもまだメイコの腰から離れようとしない。明らかにミクより年下のようだ。しかしそんな幼さにも拘わらず上からの命令を頑なに守るその根性には目を見張る他はない。

「本当?絶対に逃げたりしない?」

「まぁ、私の腰にしがみついていたいんなら別に構わないけどね」

 その気になれば振り切るのは造作も無いことだが、そうすれば後で任務不履行云々でこの娘が懲罰を受けるかもしれない。さすがにそれは気分が悪い。
 メイコは未だ自分の腰にしがみついている少女の肩を軽く抱くと、いきり立っているルカに向って叫んだ。

「グリアーノの『魔導師見習い』のメイコでよろしければここにいるわよ!申し訳ないけど私、まだ魔導師じゃないの!」

「どちらでも構わぬ!陛下を惑わし、奏国中枢に食い込もうなどと不届き千万!」

 肩を怒らせながらルカはこちらにやってくる。しかも刀まで抜き放っているではないか。さすがにこれはまずいとメイコは腰にしがみついている少女に逃げるように勧める。

「どうやらあなたの隊長はかなり頭に血が昇っているみたいよ。怪我をしたくなければ一旦私から離れなさい。あれじゃああんたも斬られちゃうわよ」

 しかし少女は離れようとしない。というか自分の目の前で起こっている出来事にパニックを起こしているらしく、動くことができなくなっているのだ。

「仕方がないなぁ。じゃあちょっと眠っていてね」

 メイコは少女の額に指を当てると口の中で呪文を唱える。すると少女はその場に崩れ落ちた。その刹那である。

「・・・・・・陽炎?」

 今まで大人しく、というより半ば愉快そうに人間のやらかすことを見つめていた白龍・陽炎が、少女が倒れた瞬間に翼を広げ、メイコを威嚇するではないか。
 まるでルカではなく、金色の髪の少女が白龍の主のような態度である。そしてメイコは改めて足元に崩れ落ちた少女と白龍を見比べた。

「ああ、なるほど。そういうことね。白龍の本当の主はこの・・・・・・!!」

 メイコが何かに気が付き呟こうとしたその瞬間、メイコに向かってルカの刀が振り下ろされる。だが、そこに残ったのはメイコが借りていた黒曜教の導服だけだった。

「あ~あ、この導服。意外と好きだったのになぁ。ブルーノ、借りていたやつ破いちゃってごめんね!」

 そこにいたのは下着姿のメイコだった。どうやら『空蝉の術』を使って服の中から抜けだしたらしい。
 辛うじて胸と腰を覆う布だけがメイコの体にまとわりついているその姿は、魔導師見習いとは思えぬほど筋肉質だった。すらりとした肢体には剣闘士のような筋肉がついており、無駄の欠片もない。その肉体美は明らかにメイコのほうがルカよりも戦士として優れていることを意味していた。それを認識した瞬間、ルカの瞳が更に激しく嫉妬に燃える。

「何を小癪な!覚悟せよ!」

 ルカは更にメイコに襲いかかり、メイコはそれを軽々と避ける。

「いったい何が華都であったか知らないけど・・・・・・こんな美人を怒らせるなんて皇帝陛下も罪よねぇ」

 めちゃくちゃに振り回されるルカの刀から逃げながら、メイコは壁に立てかけられていた長箒を手にした。

「ちょっと細いけど、他に武器になりそうなものが無いし、仕方ないか」

 メイコは長箒の穂の部分を折ると残った柄の中央を握る。そんな臨戦態勢のメイコに向かってルカは刀を振りかざし襲いかかった。

(この戦い、絶対に負ける訳にはいかない!私の場所を失わないためにも!)

 その刃からするりと逃げるメイコを追いかけながら、ルカは華都での出来事を思い出していた。



 それは五日前、皇宮にある皇帝専用の喫茶室での事だった。淹れられたばかりの奏国茶の香りを楽しんでいたその時、皇帝が思わぬことを口にしたのである。

「魔導戦士部隊というのも悪くないな」

 その一言にその場にいた龍騎士達――――――キヨテルを除くカイト、ルカ、メイトの三人は目を丸くする。

「しかし我々には黒龍隊――――――教導師団がありますが」

 真っ先に皇帝の意見に異を唱えたのは、水軍を率いるメイトだった。既に魔導を使う軍隊がありながら、何故更に魔導軍を増やそうとするのか理解に苦しんだのだ。

「確かにな。だが黒龍隊の負担がここ最近大きくなっているのもまた事実」

 皇帝の指摘に三人は表情を強張らせる。確かに皇帝の指摘は紛れもない事実だった。それはこの場にキヨテルがいないことでも充分に証明されている。

「魔導による攻撃、暗殺から奪取した領土への布教、復興支援――――――さすがに一部負担を軽減させるべきだろう」

 言葉を紡ぐうちに、不意に皇帝の秀麗な眉が曇った。

「それに狄国の玉蟲部隊がかなり戦力の増強を図っているとの情報が入っている。これ以上の領土拡大をする気はないが、攻めこまれては元も子もない・・・・・・カイト」

「はっ!」

 皇帝の呼びかけにカイトが返事をする、

「お前は確か魔導が使えたな?」

「御意。ただし義務教育で習う防御魔法のみですが」

「率いるだけならそれで充分だ。取り敢えず各部隊から10名ずつ素質のあるものに魔導を習得させ、新たに魔導戦士部隊を作る。暫くの間はそれを青龍隊で率いるように」

「御意」

「そのうちメイコも奏国に慣れるだろう。そうしたら彼女に率いさせれば良い。その際には陽炎を貸与させ、白龍隊を魔導戦士隊にしようと思う」

「へ、陛下!お戯れを申されては困ります!娘子隊はどうなるのですか!」

 ルカは皇帝の御前であるにも拘わらず声を荒らげた。だが皇帝は微かに笑みを浮かべながら己の構想をルカに告げた。

「娘子隊は皇帝近衛軍に吸収・合併する。今現在は他の部隊と何ら遜色ない働きをしているが、この戦力はあくまでも今現在の構成員による個人的能力によるもの。これを維持していくのは難しいだろう。近々本来の任務である貴婦人警護に専念させるつもりだ」

 つまり、事実上の白龍隊娘子隊の解散だ。わなわなと震えるルカに皇帝は更に追い打ちを掛ける。

「ルカ、いい加減諦めろ。そもそもお前は兵士としても華奢すぎるし、部隊を率いる隊長としても狡猾さに欠ける。お前にはお前にふさわしい戦場があるはずだ」

 その時、近従から声が掛かる。議会への参加を促されたのだ。

「この件は議会に提言する。決まり次第動いてもらうからそのつもりで居るように」

 そう言い残すと、皇帝はルカ、カイト、メイトの前から去っていった。



(絶対に・・・・・・絶対に渡しの場所を守ってみせる!)

 メイコという存在がいなければ自分はまだ白龍隊の隊長でいられるはずだ――――――自分の剣を巧みに躱すメイコを睨み、ルカは更に襲い掛かる。だがその剣の切っ先は最初の一撃で導服を切り裂いたきり掠りもしない。

「小癪な!」

 ルカは更に踏み込み、剣を横一線に薙ぎ払った。その時である。

「ねぇ、いまさらなんだけどさぁ、一体華都で何があったの?」

 グリアーノ訛りがひどい奏国語で、メイコがのんびりした口調でルカに語りかけてきた。





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とうとう始まってしまいました、メイコvsルカのキャットファイト。しかしやる気満々なのはルカだけで、メイコは正直戸惑っております(^_^;)そりゃそうですよねぇ、華都でどんなやり取りがあったのか全く知らないんですからwww
その一方、人混みからメイコを発見しその腰にしがみついてメイコを取り押さえた?金髪の少女―――まだ名前は明かしてませんが、勘の良い方ならすぐに判りますよね(*´艸`*)そして彼女が気を失った際、白龍・陽炎が示した威嚇の態度・・・これらの謎が全て明かされた時、ルカはメイコの話を聞いた時よりも衝撃を受けることになるでしょう。(ううっ、ネタバレになるので全くかけない><)

次回更新は7/21、メイコvsルカの戦いの結果を中心に書かせていただきます(*^_^*)
(しかしがっくん生誕祭に間に合うかな・・・できればあと2話で終わらせて7月31日の生誕祭に間に合わせたい><)
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