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「短編小説」
江戸瞽女の唄

江戸瞽女の唄~互いの想い

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 秋霖の音だけが微かに聞こえる、安宿の小さな部屋に言い知れぬ沈黙が流れてゆく。その沈黙耐えられず、口を開いたのは隼人の方だった。

「おみわ・・・・・・誰だよ、蓮二郎って」

 出来る限りシラを切ろう――――――そんな隼人の思惑を、みわがあっさりと打ち砕く。

「隼人は――――――蓮二郎お兄ちゃんなんでしょ?精霊や付喪神がしつこく言ってくるよ。それに・・・・・・とある神様にも確認はしてる」

 ちらりとみわが表の方に目をやる。そちらは不忍池の弁天堂の方角だ。それを見て隼人は口の端に苦い笑いを浮かべた。

「不忍池のおせっかい婆様か。確かにあの人は芸事の守り神だからな」

 誤魔化せないと、隼人は小さくため息を吐くが、その溜息をどう解釈したのか、みわは今にも泣き出しそうな表情を浮かべつつ、口を開いた。

「――――――私、目のことはなんとも思っていないから。その事で蓮二郎お兄ちゃんの重荷にはなりたくないの」

「おみわ?」

 一体みわは何を言い出そうとしているのか。怪訝そうにみわの顔を覗き込む隼人に、みわは見えない目を潤ませつつ訴えた。

「償いのつもりで『手引』をしているのなら、もう充分すぎるほど尽くしてもらったよ。だから、私に縛られないで・・・・・・」

 とうとうみわは涙を零し始める。その涙に動揺しながらも、どうして良いか判らず隼人は布団に入ったままみわをじっと見つめることしか出来ない。

「蓮二郎お兄ちゃんには幸せになってもらいたいから・・・・・・お兄ちゃんが本当に望む生き方をこれからは・・・・・・」

「――――――いいんだな、おみわ?」

 不意に低い声で隼人が呟く。

「俺が望む生き方を、というのならそうしてやる。後悔しても遅いからな」

 その瞬間、みわは強く抱きしめられる。そして驚く間も与えられず隼人に唇を奪われた。突然の事にみわは身体を固くするが、隼人はそれ以上の行動に出ようとはしない。
 長い、長い接吻のあと、ようやく唇を開放した隼人はみわを抱きしめたままみわの耳許で囁いた。

「もう一度だけ機会をやる――――――俺が望む生き方は、お前を娶り、独り占めして誰の目にも触れさせない事だ」

「はす・・・・・・じろう、おにいちゃん?」

 思いもしなかった隼人の告白に、みわは驚き言葉を失う。

「お前は目が見えないから判らないだろうけど、男客がどんな目でお前を見ているか・・・・・・そんな目に一切触れさせたくないんだ。だけど」

 更に隼人の声が低く、苦しげになってゆく。

「お前は唄を捨てられないだろうし、客は少なくなりつつあるけどまだ江戸瞽女を求める客もいる。だから・・・・・・」

 みわの耳許で囁く声は微かに震えている。みわに拒絶されるかもしれない、その覚悟と恐怖がない混ぜになり声が震えてくるのだ。否、声だけではない。隼人の全身も小刻みに震えていた。

「今なら、まだ無傷のままお前を手放すことができるから。だから・・・・・・」

 そう言いかけた瞬間、今度はみわの唇が隼人の唇を塞いだ。

「・・・・・・どっちかじゃないとダメなの?」

 見えない目で隼人の顔を見つめながら、みわが小首を傾げる。

「勿論唄は捨てたくないけど、蓮二郎お兄ちゃんと―――――――隼人とずっと一緒にいたい。親方に許可を取れば・・・・・・」

 夫婦にだってなれるはず、という言葉をみわは呑み込む。実際結婚し、夫婦で遠くに巡業に出ている先輩もいるのだ。だが、流石にそこまでを口にするのは恥ずかしかったのか、みわは顔を真赤にして俯いてしまった。その俯いた顎に手をかけ、隼人はみわの顔を自分の方へ向ける。

「おみわ、良いんだな?」

 ここまで言われてしまったらあとには引けない――――――みわを抱きしめていた隼人の左手が腰へと滑りおり、更に身体を密着させる。その熱に浮かされるようにみわは小さく頷き、自ら身体をすり寄せた。



 やや強い雨の音と心地よい左腕の重さに、隼人はゆっくりと目を開けた。布団とは明らかに違う人肌の温もりに、昨晩の出来事が夢ではなかった事を実感する。

「この雨じゃ、今日も商売上がったりだな」

 ポツリと呟き、腕の中のみわを見た。昨夜はかなり疲れたのだろう。まだ起きる様子はない。

「昨晩はちょっと無理をさせちまったか」

 激情のままにみわを求める隼人に何度も応えてくれた。だが初めて男を受け入れる身体で隼人の情熱をすべて受け入れるのは流石に無理があったようだ。腕枕を抜き、隼人が上体を起こしてもみわは起きようとせず、小さな寝息を立てている。

「今日は雨だったから良かったけど――――――仕事のある時はちょっと手加減しないとダメそうだな」

 自分の呟きに赤面しつつ、隼人は脱ぎ散らかした着物に袖を通した。まだみわが寝ている内に朝餉の手配だけはしておきたい。

「・・・・・・結局手引の習性は抜けない、ってことか」

 自嘲しつつ、隼人は朝餉の注文をするために宿の番台がある一階へと降りていった。




UP DATE 2017.11.04 

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ようやく・・・ようやく一線を超えることが出来ました~わ~い♪\(*^▽^*)/\(*^▽^*)/\(*^▽^*)/わ~い♪
まぁ両片思いの状態だったので、どちらかが突破口を開けば・・・というのがありましたが、それぞれ屈折した物がありましたしねぇ(^_^;)
サーチ様の関係でロコツな描写はすっ飛ばしましたが、その辺は皆様の脳内補填でよろしくお願いいたしますm(_ _)m
(もしかしたら一旦この話を終わらせたあと、番外として書くかもしれませんが、本編ではこんな感じで^^;)

次回更新は11/11、一応最終話の予定なのですが、もしかしたらもう1,2話増える可能性も・・・取り敢えず朝餉の後の恋人のぐだぐだした感じ&後日改めて各所への報告に行く二人を書いて終わりにする予定です(`・ω・´)ゞ
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