FC2ブログ

「短編小説」
その他短編小説

とある事件とその顛末~ろくでなし探偵と売れない女優

 ←烏のがらくた箱~その四百二・『ぶらっくふらいでぃ』より『さいばぁまんでぃ』に賭けます(๑•̀ㅂ•́)و✧ →ボカロ小説・日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)12
 大震災の被害からようやく復興し、以前のような賑わいを見せ始めている映画の街・蒲田。そんな街の一角に探偵・上杉紗綾彦は事務所を構えていた。
 庶子ではあるが華族の跡取り、親の遺産だけで余裕綽々で生きていける身分だけに本気で探偵業を生業としようとしているのかは甚だ疑問がある。実際気分が乗らない、地味な仕事などは依頼を断ることもままあるからだ。しかしそれでも倒産せずに細々とやってこれているのは元々の資産の多さと、もう一つの『理由』があった。



 師走に入り、年の瀬も見えてきたある日、紗綾彦の許へ顔なじみの女優・巻城アキがやってきた。勿論歳暮を届けに来たわけでは無いので手ぶらだ。

「あら、珍しい。あんた一人なんて。レイトはいないの?」

 部屋に入るなり、きょろきょろと見回しながら紗綾彦の『相棒』の不在を確認する。そんなアキをつまらなさそうに一瞥すると、紗綾彦は取り掛かっていた書類に視線を落とした。

「麗斗なら使いに出している。一体何しに来たんだ。俺は仕事で忙しい」

 普段はろくに仕事を受け付けていないのに――――――喉元まで出かかっていた言葉をアキは飲み込み、紗綾彦が作業をしている机に手をついた。

「ああら、いいの?せっかくお仕事の依頼、持ってきてあげたのに」

 身体を低くし、紗綾彦の顔を覗き込みながらアキはにやりと笑う。

「・・・・・・依頼の内容にもよる」

 アキの挑むような態度に何かを感じたのか、紗綾彦は僅かばかりの隙きを見せた。その隙を見逃すアキでは無い。すかさず畳み込むように依頼を口走り始めた。

「一応『人探し』になるのかな。もしかしたら探す相手は生きていないかもだけど」

「おいおい、物騒だな」

 そう言いながら紗綾彦の顔が輝き出す。地味な浮気調査などより警察沙汰になりそうな派手な人探しのほうが紗綾彦の好みである。相棒の麗斗には嫌がられるがこればかりは性分だ。

「で、どんな『事件』なんだ、それは?」

 よだれを垂らさんばかりの顔つきでアキに迫る紗綾彦だが、アキはそれをするりと躱した。

「何よ、それが人に物を尋ねる態度なの?本当に女心を解ってないなぁ」

 アキはぐるりと机を回り紗綾彦の膝の上に乗っかる。そして首に腕を回しながら耳許で囁いた。

「この前、私が出演した映画、覚えてる?」

「ええと、確か『したごころ』だっけ?」

「『出来心』よ、ばか!」

 アキは紗綾彦の鼻の頭をぱちん!と指で弾くと不意に真剣な表情を浮かべた。

「その『出来心』のディレクターが昨日から行方不明なの。ああいう世界にいながらくっそ真面目な男でね。連絡無しで無断外泊なんて絶対にありえないのよ。だから奥さんが――――――というかあたしの友達が心配しているの。でも一泊くらいだと警察は動いてくれないじゃない?だからあんたに手柄を、って思って来たのにさ!あたしの出た映画ぐらい覚えていなさいよ!!」

 そう言いつつ、さらにアキは紗綾彦の高い鼻を指先で弾いた。

「いててっ・・・・・・それにしてもその男、女優に手を出したのか?」ろくなもんじゃねぇな。アキの友人っていうなら女優仲間だろ?」

「あら、やり逃げが多い男たちが殆どの中で結婚までしたんだから良いじゃない」

 軽く鼻を鳴らしながらアキは更に続ける。

「で、そのディレクターを探してもらいたいんだけど、着手金は・・・・・・」

 アキがそう告げたまさにその時、重い扉が開き、その向こう側から何ら特徴のない一人の男と美少年が現れた。

「アキさん。また紗綾彦さんにちょっかいを出していたんですか?確かにアキさんは美人で妖艶だけど、紗綾彦さんは女性には興味ないって言っているのに」

 半ば呆れたようにその少年は肩をすくめる。そんな少年――――――麗斗を睨みつけながら、アキは挑発的な笑みを浮かべた。

「あら、わからないわよ?あんたみたいな華奢で女みたいな美少年を愛人にしているんだからあたしにだってチャンスはあるかもしれないじゃない」

 そう言いながらアキは紗綾彦の膝から降り、男に近づいていった。

「ごめん、紗綾彦。依頼は無しで。もう解決したわ――――――どうしたのよ、内田さん?行方不明になって!美菜子が本当に心配していたのよ!!」

「いや、その・・・・・・実は」

「隠し子がいたんだよ。いや、隠し子疑惑か」

 パイプに火を付けながら紗綾彦は説明する。

「昨日、昔過ちを犯した女から『あんたとの間に息子がいるから養育費を支払え』と言われたらしい。で諸々調べたんだが――――――麗斗、結果は?」

「シロでした。そもそもその過ちは10年以上も前の話なのに子供は7歳でした。最初は誤魔化していましたけど、戸籍を取ると言ったらあっさり白状しまして」

 差弥彦に対し、事務的な報告をしつつ麗斗は封筒から一枚の書類を取り出す。それは内田に脅しをかけた女の戸籍謄本だった。そこには問題の隠し子の生まれ年も書かれている。

「アキさん、すみません。ご心配をおかけして――――――どうしても美菜子には心配をかけたくなかったのですが、何だかんだで時間が長引いてしまって」

 自分が与り知らぬところで話が大きくなっていたことに内田は驚き、アキに謝った。きっと自宅に帰ったら妻にも頭を下げっぱなしだろう。

「内田さんはちっとも悪くありませんよ、アキさん。向こうの女がさんざんごねたんです。どうして女性ってああもしつこいんでしょうかね」

 それはアキに対する嫌味でも会った。それに気がついたアキは麗斗を睨みつつ面白くなさそうに持論を吐く。

「そりゃあ生き延びる為でしょ。必死に食らいつかなきゃ端役だって貰えないんだから」

「やはり『人生の先輩』の言葉に重みがありますね」

「煩いわね。ババァ、って言いたいなら言いなさいよ、このガキ!!」

 顔をしかめ、麗斗に対してあっかんべぇと舌を出したアキに、その場は笑いに包まれた。



UP DATE 2017.11.25


にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
INランキング参加中。
お気に召しましたら拍手代わりに是非ひとポチをv





こちらの話は『江戸瞽女の唄』に脇役として登場した2人を主人公にしたものです。→その話
『江戸瞽女~』では自宅の屋敷の風景でしたが、今回は仕事場で。本当は銀座あたりに事務所を出したいけど流石におこがましいと思っているのか、それとも遊びに行くには最適だと思っているのか蒲田に探偵事務所を構え、のらりくらりと生活をしております(^_^;)芸能の街ではありますが、そこまで垢抜けていないところが良いんですよ、蒲田は(*´艸`*)
そんな蒲田の事務所での日常を今回は書かせていただきました。実際事件となったらかなりの長編になりかねない(-_-;)更に色仕掛けも、シリーズでやるならば組み込みたいし(紗綾彦は女性担当、麗斗は男性担当になるかな(^_^;))
これに関してはもう少し設定を練ってから、ということになりそうです/(^o^)\

そして来週から水曜日→短編とかネタの書き出し、土曜に『vague』を更新いたしますm(_ _)mとはいえ、これも一応『カッコカリ』ということで・・・体調との兼ね合いを見つつ、出来る限り書き続けたいものです(*^_^*)
関連記事
スポンサーサイト




 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ 3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ 3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ 3kaku_s_L.png 雑  記
総もくじ  3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ  3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ  3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ  3kaku_s_L.png 雑  記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【烏のがらくた箱~その四百二・『ぶらっくふらいでぃ』より『さいばぁまんでぃ』に賭けます(๑•̀ㅂ•́)و✧】へ  【ボカロ小説・日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)12】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【烏のがらくた箱~その四百二・『ぶらっくふらいでぃ』より『さいばぁまんでぃ』に賭けます(๑•̀ㅂ•́)و✧】へ
  • 【ボカロ小説・日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)12】へ