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「vague~道場主・作間駿次郎顛末記」
仏蘭西伝習と駒場野の一揆

vague~江戸城登城と謎の老人

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 最初に蜂起した一揆は鎮圧された。しかし他に三件も一揆が起こっているらしい―――兄・優之輔からの情報に、作間の顔色が豹変する。

「兄上、その情報は確かなものなのでしょうか」

「いや、解らぬ。そもそも一揆を装った無宿者の暴動かも知れないし、最初の一揆と連動して起こったものかも知れない――――――だが、よりによって朱引に隣接する場所で起こった一揆だ。幕府の威光に関わってくる」

 深刻な兄の言葉に作間も頷くしかない。百姓一揆が起こるということは、その土地の管理が出来ていないと言うのと同義である。
 大名領地で起こればお取り潰しのいい口実にさえなる案件だ。その百姓一揆が天領で、しかも朱引のすぐ外側で起こっているのである。練兵所を作るという大義はあれど、極めて深刻な事態だ。

「・・・・・・大名らにも気を使わねばならないのは理解できるが、いきなり百姓の畑を潰して練兵所を、というのは如何なものか」

 よっぽど悩ましいのか、優之輔が思わず愚痴をこぼす。その愚痴に作間は驚きの表情を浮かべた。

「兄上が私の前で老中の愚痴を零すなんて、初めてじゃないですか?確かに今回の件はあまりにも乱暴ではありますけど」

「乱暴なんてもんじゃない。大名の屋敷などどうにでもなるが、田畑はそうは行かない。持ち主の百姓だけではない、それを食っている江戸の町民だって食べるものに困るだろう――――――国防も重要だが、もう少し考えていただきたいものだ」

 険しい表情のまま優之輔は弟の顔を覗き込む。

「駿次郎、お前も私と一緒に登城してくれ。できれば弟子に聞いた話を城でもして欲しい」

「承知、しました。断罪は覚悟しておりますが、せめて一つでも罪の重さが減るように・・・・・・」

「お前の弟子の事なら多分大丈夫だろう。処罰されるのは首謀者のみ、更に今回は天領での一揆だ。間違いなく騒動をちいさなものに見せかけようとするだろう」

 そう言いながら優之輔は立ち上がる。

「今回、お前は幕府の最も醜い部分を見ることになるだろう。その腹づもりでいて欲しい」

 あまりにも意味深な兄の言葉に、ただただ頷くだけの作間だったが。この言葉の本当の意味を作間は登城後に思い知らされる事となる。



 兄に借りた熨斗目と裃に着替えた後、作間は兄と共に江戸城に登城した。だが、江戸城は表向きは平然と――――――特に何らかの事件が起こっているようには全く見えず、作間は拍子抜けする。

「何だか・・・・・・静かなものですね。まるで他の方々は一揆が起こっていることなど全く知らぬように」

 目付けの控室に通されるや否や作間は兄に率直な感想を述べる。

「ああ、その通りだ。多分今起こっている一揆に関しては老中と目付、あとは実働部隊くらいしかまだ知らないだろう。何せこれほど大きい江戸城だ。全員が知る事となれば身動きが取れなくなるだろう」

 その一言に作間は苦笑いを浮かべた。

「確かに兄上の仰るとおりかも知れません。今回の件、あまりにも――――――」

 作間が良いかけたその時である。不意に隣の部屋に通じる部屋に続く襖が開き、中から老人が顔を出してきた。年の頃は還暦過ぎくらいだろうか。その眼光の鋭さに作間は一瞬だけ怯んだが、その老人が何者であるか気づいた瞬間破顔する。

「五三郎先生、ご無沙汰しております。平河町でなく、まさかお城の中でお目にかかるとは思いもしませんでした」

 すると老人も視線を和らげ笑顔を見せた。

「誰かと思えば駿次郎じゃねぇか。久しぶりだな――――――俺の道場で据物斬の稽古をした時以来か」

 懐かしそうに目を細める老人に、作間も深く頷いた。




UP DATE 2018.3.25

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スミマセン、日付が変わるどころか日の出前のUPになってしまいましたorz
やっぱりエッセイとは訳が違いますね・・・予定通りにUPできるようになったら体調も復活と考えて良いのかも知れません(´・ω・`)

今回、作間は兄と共に江戸城へ登城することになりました。本来ならありえないことですが、『首謀者の息子』から直接話を聞いている作間から事情聴取をしようというところでしょうか。
そして登城し、控室に入った途端に現れた謎の老人( ̄ー ̄)拙作をお読み下さている方なら『あ、あいつか!』と名前を見てすぐお解りいただけるかも知れませんが、あの有名人が登場いたします。詳細は本編にて語らせていただきますが、彼に深くゆかりのある藩が練兵所に大きく関わってくるのですよ・・・次回にその事が書ければ良いのですが、体調次第でどうなるか(^_^;)次回をお待ちくださいませm(_ _)m
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