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「vague~道場主・作間駿次郎顛末記」
仏蘭西伝習と駒場野の一揆

vague~一揆鎮静の奥の手は?

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 山田浅右衛門吉利――――――通り名・山田五三郎老人は、将軍家御様御用を任されている人物である。身分は浪士であるが、月に三日ほど腰物方との打ち合わせなどをするために江戸城に出仕を義務付けられている。
 作間とは剣術を通じての既知であり、城内では数少ない馴染みの顔だ。それだけに山田老人の顔を見て作間も、そして優之輔もあからさまに安堵の表情を浮かべる。

「山田先生、今日は出仕日だったのですね」

 優之輔の言葉に山田老人は、渋い表情を浮かべ首を横に振った。

「いいや。今日の登城はお前さん達と同じ理由さ。一揆に関連して呼び出された」

 武家らしからぬ、伝法な口調で言い切ったその瞬間、作間と優之輔の表情が強張る。目付である優之輔ならともかく、全く関係ない部署に付いている山田老人まで呼び出されていたとは思わなかったからだ。

「何故五三郎先生まで?」

 作間は思わず色めき立ち、山田老人ににじり寄る。すると山田老人は少しだけ困惑に眉を潜めつつ口を開いた。

「いや、俺だけじゃねぇ。っていうか、これは口外してよかったのかな」

 少し逡巡してから、山であ老人は小声になる。

「ま、目付とその弟だから問題ねぇか・・・・・・今回の一揆で流石に老中達もてめぇらのやらかしたことの重大さに気がついたらしい。裏から手を回して大名屋敷を空けさせようと画策し始めた。その狙いを付けられたのが備中新見の関伊勢守――――――俺の実家・後藤家の主君だ」

 山田老人の口から飛び出した、思わぬ人物の名前に今度は優之輔が驚きに目を見開いた・

「関殿というと大坂城の加番や京都の守備役を勤められているお方。その御方に更に負担を強いるというのは如何なものでしょうか」

 新見藩は知行一万石をようやく超える少大名である。このご時世、分不相応な負担を背負わされているのに、更に屋敷まで変われというのは酷ではないかと、優之輔は難色を示す。すると山田老人は『勿論交換条件があってのことだ』と種明かしをした。

「流石に『何もなし』というわけにゃいかねぇさ。それ相応の昇進や国替えを含めた領地の加増――――――または伝習隊を率いさせるって話もある」

「しかし御本人は京都にいらっしゃるわけでしょう?そんな勝手なことを江戸だけで決めても宜しいのですか?」

 場内の事情に疎い作間が兄と山田老人に尋ねる。藩主不在の中、大名屋敷の変更など許されるのだろうかと――――――しかし『むしろ若い藩主が居ないほうが好都合でね』と山田老人は意味深な笑みを浮かべた。

「勿論江戸から飛脚を飛ばしているさ。勿論根回しは江戸家老を相手にきっちりしている。俺に取っちゃむしろそっちのほうが話が通じやすいしな。それに」

 山田老人は指を折りながら新見藩藩邸がある場所の都合良さを挙げていく。

「あそこは街中とは言え一方を海に面しているし、大名屋敷や浜御殿に囲まれているから騒音の苦情が少ねぇだろう。仏蘭西の指導者らが通うにしても近場に居留地を作るにしても都合がいい。更に海軍との合同練習だってしやすいだろう――――――備中新見以外にとってはいい話だ」

 そう、何から何まで都合は良いのだ。その場所の住人である新見藩家中以外は・・・・・・。その事実に作間は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、優之輔は腕組みをする。

「確かに、幕府から貸与されている土地とは言え代々住み慣れた屋敷ですからね。渋るのも致し方ないかと」

 優之輔の言葉に山田老人も頷いた。

「だからこそ俺が『交渉役』になった、って訳さ。老中直々の御命令と来た。俺に交渉役を任せるとは、相当切羽詰まっているんだろう」

 苦笑いを浮かべながら山田老人は続ける。

「流石に百姓一揆が起こったとなれば向こうも動いてくれるとは思うが、こればかりはなんとも言えねぇ。ただでさえ攘夷志士を気取ったならず者が牢屋敷に溢れている昨今、まともな百姓を斬りたくはないんでね」

 不意に生真面目な表情を浮かべ、作間に語りかけた。

「わざわざ駿次郎までやってくる、ってぇ事は大方弟子の助命嘆願だろう。出来る限り大げさに頼み込んでくれ。できれば今回の百姓一揆は無かったことにしたいらしいからな」

 その時である、小姓の一人が山田老人を呼びに来た。

「おっと、ご老中からの呼び出した――――――じゃあな」

 そう言うと山田老人は二人の前から立ち去っていった。




UP DATE 2018.4.1

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スミマセン、予定よりだいぶ遅れてしまいました( ;∀;)ただでさえ目眩がひどい上に、木曜日から始まったお馬&腹下しに振り回されまして・・・きちんと体調管理をしなければいけないのですが、薬の副作用との関係もありなかなか難しいものがありまして・・・基礎体温の計測が全く役に立たないというのも考えものです(>_<)(←一応基礎体温は計測しているのですが薬の副作用のせいでぐっちゃぐちゃ( ;∀;))以上、遅延の理由終了です(`・ω・´)ゞ

話の中身の方ですが、幕府は八方手を尽くして各大名家に交渉をしているようです。そんな中、山田浅右衛門こと山田五三郎老人も駆り出されているようでして・・・勿論この他にもいくつかの大名家に交渉をしているかと思われますが、なかなか難しいかと思われます(>_<)
果たして練兵所はどこに作られるのか―――――次回は一揆側の描写を予定しております。
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