FC2ブログ

「短編小説」
その他短編小説

夾竹桃の吐息・其の壹

 ←烏のがらくた箱~その四百三十二・そ~言えばフーリガン、っていなくなったのかなぁ(・・? →ボカロ小説・日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)41
 小雨降る6月の半ば、俺は久しぶりにじいさんの家に出向いた。晩年、認知症を患ってしまったじいさんが亡くなってから3年、兄弟同士の遺産相続争いもようやくケリが付いて遺品の片付けに取り掛かることができるようになったのである。
 とはいえ、遺品の片付けが出来るほどの暇人は浪人生である俺だけで、更に厄介なことに業者にも頼みにくい『厄介者』が家の中に大量に残っているのである。

「しかし、どこから手を付けて良いものやら・・・・・・」

 俺は古ぼけたペンキ缶の山を見つめながらため息をつく。じいさんはそこそこ腕の立つペンキ職人だった。それ故家に隣接している店舗には山程のペンキが残っていた。しかもそれはじいさんが認知症になる前に仕入れたものなので、ものによっては5年以上昔のものもある。
 更にペンキだけではなくシンナー等の有機溶剤も多く残っていた。ごく普通の家具や衣類であれば遺品整理業者に頼めばいいと思うが、流石に古くなった大量のペンキやシンナーは相応の専門家に頼まなくてはならないだろう。その前にある程度の整頓はしておくべきなのだが、その気力さえ無くなりそうなほどの量だ。俺はペンキの山に手を付けるのを諦め、二階へと上がった。そして階段を上がってすぐの部屋に入るなり、俺はそこの残っているものに目眩を覚える。

「・・・・・・何だよ、直斗のヤツ。まだプラモ持ち帰ってねぇのかよ」

 そこには従兄の直斗が持ち込んだプラモデルが大量に残っていた。幼い頃、よくじいさんの家に来てはプラモデルを作っていた。ここなら溶剤の匂いを漂わせても怒られることはなかったので気安かったのだろう。だがそんな従兄も高校生になってからは足が遠のいていた。だが、『いつか作るから』とプラモデルだけは持ち込んでいたらしい。俺が知っている量よりも遥かに多い数―――少なくとも100箱近くの、未開封プラモデルが棚いっぱいに詰め込んである。

「しゃあねぇな。LINEで一応聞いておくか」

 よくよく見れば廃番になっているレア物のプラモデルもある。オークションサイトに出せばそれなりの値段になるだろうが、流石に勝手に売り飛ばすわけにもいかない。こればかりはちゃんと持ち主に売ってもいいかどうか聞いたほうが良いだろう。俺は直斗にLINEでメッセージを送る。

「さて、と。服は全部処分しておけって云われたからまとめておくか。後は台所の食器だよな。これは業者にまとめて捨ててもらいたいところだけど・・・・・・でもおふくろがうるさそうだな」

 業者に頼むにしても、できるだけその料金を少なくしたいということで俺が送り込まれいるのである。細かな品物の処分はしておかないとおふくろが煩い。尤もおふくろはじいさんの隠し財産が目当てなんだろうが。

「そんなに金が欲しけりゃ自分で片付けをやりゃあいいのに」

 その瞬間、ファ~~~~~ンと言う間の抜けた警告音と同時に立て付けの悪い窓が揺れた。道一本隔てた処にある線路に電車が通ったのだ。
 軽トラが辛うじて入れるほどの狭い道、電車の振動が直接家を揺らすのである。神経質な人間であれば耐えられないだろうが、基本的にこの家に住んでいたのはじいさんたちの家族と住み込みの職人だ。神経質だったらそもそもこの家には住めないだろう。
 また、慣れとは恐ろしいもので俺たち孫たちもむしろ電車が通るたび揺れる家と電車が起こす風圧を楽しんでいた。今では懐かしい思い出だ。

「さて、と。一階の台所を確認する前に二階を全部調べておくか。確か職人の住み込み部屋がもう一つか二つ、あったはずだよな」

 そう、俺達が入ることを許されたのは階段を上がってすぐのひと部屋のみで、それより奥は入るなと厳しく言い渡されていた。昔の人間の割にじいさんは意外と弟子にも気を使う神経が細やかな男で、仕事以外の部分ではよっぽどのことがない限り口出ししなかったらしい。だから俺ら孫たちも奥の部屋に入ったことは無かった。

「ま、職人の部屋だからもう荷物なんて残っていないだろうけどさ」

 あったとしても共用の日用品かエロ本の類くらいだろう。少なくとも山程の食器よりは片付けは楽なはずだ――――――俺はそう思い、ドアノブに手をかけた。


 まさかあんな恐怖を味わうこととは露程も思わずに――――――。




UP DATE 2018.6.16

Next


にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ
INランキング参加中。
お気に召しましたら拍手代わりに是非ひとポチをv







お待たせしました、久しぶりの新作です(^_^;)しかも中途半端な現代物という/(^o^)\
一応舞台は自分の祖父の家をモデルにしております。なにせ古い家なので、私鉄路線ギリギリに家が建っているのですよ。さらにペンキ屋だったので遺品整理もまぁ大変で大変で( ;∀;)
そんなじいさまの家ですが、子沢山だった上に住み込みの職人も多かったため、部屋の数も半端なく多かったのです。ホント迷路のような・・・そんな迷路のような家に現れる【モノ】は何なのか?次回からようやくメイン部分が始まります(^_^;)
関連記事
スポンサーサイト




 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ 3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ 3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ 3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ 3kaku_s_L.png 雑  記
総もくじ  3kaku_s_L.png vague~道場主・作間駿次郎顛末記
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏虫~新選組異聞~
総もくじ  3kaku_s_L.png 紅柊(R-15~大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 葵と杏葉
総もくじ  3kaku_s_L.png 横浜慕情(大人向け)
総もくじ  3kaku_s_L.png 短編小説
総もくじ  3kaku_s_L.png 雑  記
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【烏のがらくた箱~その四百三十二・そ~言えばフーリガン、っていなくなったのかなぁ(・・?】へ  【ボカロ小説・日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)41】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【烏のがらくた箱~その四百三十二・そ~言えばフーリガン、っていなくなったのかなぁ(・・?】へ
  • 【ボカロ小説・日出ずる国の暗黒郷(ディストピア)41】へ