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「短編小説」
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夾竹桃の吐息・其の参

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「白いワンピースの女の子ぉ?千護、お前勉強のし過ぎで頭おかしくなったんじゃねーの?」

 山積みのプラモデルを選びながら直斗が大笑いをした。180cmは軽く越えているその体躯はがっしりしていて、俺とは対照的だ。そんな直斗はプラモデルを物色しつつ更に言葉をつなげる。

「またはこの匂いにやられたか、ってところだろ。溶剤だってだいぶ古くなっているはずなのにかなり臭いが残っているし、慣れてないやつはラリっちまうだろ。換気はちゃんとしておいたほうがいいぞ」

 直斗の忠告に俺はただただ頷くことしかできない。

「やっぱりそうなのかなぁ・・・・・・」

 俺は直斗が除けていったプラモデルを横に積み上げつつ首を傾げた。

「そうだよ。仕事で溶剤使い慣れている俺でさえきついって思うしよ。ま代里子おばさんに色々言われているんだろうけど、無理はすんなよ」

 直斗は笑いながら更にプラモデルを引き抜いた。

「おい、ホントにお前レア物ばっかり持ち帰るな。良いやつの一つくらい、俺に譲ってくれたっていいのに」

「冗談じゃねぇ。これは俺が自分でお年玉を集めて買ったりじいさんに買ってもらったりしたもんだ。本当だったら全部持ち帰りたいくらいなんだぞ」

「でも、それができないのは佑美さんが怖いからだろ?」

 その瞬間、直斗の顔が強張り俺を睨みつける。

「うっ・・・・・そこを指摘するんじゃない」

 今年30歳になるこの従兄は去年8歳年下の佑美さんと結婚したのだが、しっかり尻に敷かれている。更に今現在、佑美さんは妊娠7ヶ月目だ。佑美さんはますます強くなり、直斗の立場はますます弱くなる。唯一の救いは『作業場』にプラモデルを置けるスペースがあることかもしれない。

「そーいや仕事の方はどうなんだよ?今はフィルム全盛の時代だから塗装業もきついだろ?」

 直斗は孫の中で唯一人、爺さんの後を継いで塗装業をやっている。元々プラモデルなどを『塗る』作業も好きだったし、爺さんもそのへんを考慮して跡を継がせたのだろう。ただこのご時世、個人経営の塗装屋が店をやっていくのも楽ではない。

「まぁな。廃業する同業も少なくねぇし・・・・・・でも需要はそこそこあるんだぜ?今DIYが流行っているだろ?あれで自分じゃ手に負えなくなったお客が助けを求めに来ることが多くってさ。あと細かな塗料の相談とかさ」

「ああ、こだわる人はとことんこだわりそうだよな」

「また、そんなお客に影響されたのか佑美のやつが目覚めちまってよ。今インテリア・コーディネーターの勉強してる。子供が生まれたらそれどころじゃ無くなるだろうけど、気晴らしには良いだろうし」

「となると、余計にそのプラモは邪魔者だよな?いっそ諦めて全部売っちまえよ」

「やだね。これはこれで組み立てて作業場に飾るから」

 古ぼけたプラモデルであっても直斗にとっては大事なお宝だ。妻や子供に気を使いつつ、それでも捨てられないものを抜き出すと、乗ってきた軽トラに積み込んだ。

「さぁて、と、プラモの選別は終わったことだし、例の『幽霊部屋』でも覗いてみようか」

「おい直斗、幽霊部屋はねぇだろ。これから俺が片付けをするんだぜ?」

「大丈夫大丈夫!どーせ疲れが見せたんだろうしさ」

 直斗はそう決めつけると、奥の部屋に向かいドアを開いた。

「ほら、見てみろ。こんなホコリだらけで締め切った部屋に入り込むやつなんていねぇぞ」

 直斗の言葉に俺はまじまじと部屋の中を見つめた。確かに埃だらけの部屋に残っていたのは二、三個の紙くずと俺の足跡だけだった。大きな窓から見えるのは夾竹桃の大木だけで、殺風景この上ない。

「あの夾竹桃が花をつけていりゃあまだ理由がつけられるけど、まだまだだしな。白いワンピースの女なんて」

「夾竹桃?何で?」

「あの木はそりゃあ見事な花を咲かせるんだぜ。それこそ白い服を着ているようにさ。爺さんもあの花が好きだったよなあ。尤も害虫がつきにくい、っていうのもあったけど」

「へぇ」

「ま、どのみち白い服の女は疲れが見せた幻、ってことさ。もしまた見るようなことがあったら俺からも代里子おばさんに言ってやるから少し休め。でないと来年も受験失敗するぞ」

「冗談よせよ、直斗」

「冗談じゃねぇさ。ま、もし失敗したら俺の店で雇ってやるから安心しろ」

 そう言うと、直斗は俺の背中をバシバシ叩きながら高らかに笑った。




UP DATE 2018.6.30

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今回は『直斗』の顔見せと相成りました(*^_^*)この従兄と千護は10歳以上年が離れていますが、かなり直斗とは仲が良いようです。
で、例のプラモデルを引き取りにきてもらうついでに白い服の少女が出た部屋も確認してもらったのですが、案の定誰もおらず・・・。
あの少女は直斗が言うように千護が見た幻なのか、それとも別の何かなのか・・・次回からようやくメイン部分に取り掛かれるかな(^o^;)今回まではメインの登場人物3人?の紹介みたいな感じだったし・・・うん、多分出てくるのは千護、直斗、そして白い服の少女くらいしか出てこないかと(^_^;)この少ない人物だけでもちゃんとストーリーを進められるようがんばります(๑•̀ㅁ•́๑)✧
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