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「短編小説」
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夾竹桃の吐息・其の肆

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 直斗にプラモデルを引き取ってもらった翌日から、遺品整理というか遺品処分を始めた。尤も大変なのは商売道具であるペンキや有機溶剤、それと婆さんの遺品でもある台所用品くらいで、あとはほんの僅かだ。
 手始めに俺は箪笥にある爺さんの服から片付け始める。服、とは言っても殆どが作業着で、普段出かける際の服は2,3着。あとは入院していた頃に必要だった寝間着と下着がやや多いくらいで、箪笥の三分の二くらいしか埋まっていない。

「う~ん、資源ごみに出せるのは普段着くらいかなぁ」

 俺は作業着を睨みながら呟いた。七十歳過ぎまで現役で働いていた爺さんの作業着はどれもペンキの跳ね返りでかなり汚れている。本人や家族にとってはその汚れも『職人の勲章』なのだが、他人から見れば単なる汚れだろう。このまま使わず、細かく粉砕して再生するにしても厄介な汚れだ。

「役所に聞けば良いんだろうけど、面倒くさいよなぁ」

 また、再生するにしてもそのまま着るにしても爺さんの作業着に他人に袖をとしてもらいたくないという思いもどこかにあった。俺は意を決して自治体指定の可燃ごみの袋に爺さんの服を入れる。
 それが決まれば後は早いもの、わずかばかりの普段着を残し、後は可燃ごみの袋に全てを詰め込んだ。最終的に45リットルのゴミ袋2袋に爺さんの服はまとめられた。

「さて、と。こいつを外に出しておくか」

 俺が住んでいる自治体と違い、爺さんが住んでいる町はゴミを戸別収集している。つい数年前までは収集所があったのだが、あまりのマナーの悪さに自治体が業を煮やしたらしい。
 幸い可燃ごみの収集日は明日だし、ネットをかけておけばカラスがゴミ袋をついばんでボロボロにすることもないだろう。俺は両手にパンパンのゴミ袋をぶら下げ、勝手口から外に出る。そして小さく畳んであるネットを広げ、ゴミ袋の上からかけた。

「こんなものかな・・・・・・後はちょっとだけでも食器をまとめておくか」

 俺が呟いたその時である。背後から風が吹き抜け、ふわり、と甘い花の香りが鼻をくすぐった。その瞬間、俺は勢いよく振り返る。

「あ・・・・・・」

 それは遺品整理初日にきた日に出会った少女――――――キョウコだった。



 あの日とはデザインは違うものの真っ白な白いワンピースに、髪の毛は緩やかに束ねている。化粧っけは無いもののほんのりとピンク色の唇は艶やかだ。
俺 は反射的に一歩後ずさる。だがキョウコはそんな俺の反応など全く意に介さずにっこり微笑んだ。

「こんにちは!」

 無邪気な笑みに俺もつられてしまう。だが目の前にいるキョウコは明らかに『不審者』だ。俺は表情を引き締め、できるだけ低い声で尋ねた。

「君は・・・・・・どうやって爺さん家に入っているんだ?」

 するとキョウコは困ったように眉を潜め、小首をかしげながら答えた。

「どうやって・・・・・・なんだろ?この前みたいに部屋の中の日もあれば今日みたいに中庭のときもあるし。風が通るところだったらどこにでも行けると思うんだけど」

 この子は何を言っているのだろう――――――俺は混乱する。もしかしたら知的障害か精神障害でもあるのだろうか?確か爺さん家の近所に知的障害を持つ人のための施設があったし、地域的に昔から精神病患者を屋敷に閉じ込めておく風習があるから、そういう者が逃げ出した可能性もある。
 だとしたら探している関係者もいるはずだ。きっと行方不明になった彼女を心配しているに違いない。そもそも俺の爺さんも寝たきりになる前には徘徊癖があり、親父やお袋を散々悩ませていたから他人事とは思えない。

(自宅に帰ったら行方不明者を連絡してくれる自治体アプリ入れとかないとな。いや、警察の方がいいのか・・・・・・爺さんが徘徊していた時は本当に大変だったからなぁ)

 当時はスマホさえ無かったし――――――そんな俺の思惑を打ち砕くようにキョウコが語りかけてきた。

「ねぇ、千護くん。何かイケナイ事考えているでしょう?」

今 までの無邪気さが嘘のような妖艶な笑みを浮かべ、俺の眼の前に近づいてくる。そして俺の肩に手をかけると不意に自らの唇を俺の唇に重ねてきた。





UP DATE 2018.7.7

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白いワンピースの少女・キョウコ―――明らかに『人外』の存在だとわかりそうなものですが、千護はそれを受け入れられないようです(>_<)
そりゃあそうですよね。実生活で幽霊だとかあやかしとか出てきませんし、そもそも実生活でじいさまの遺品整理だとか自分の受験勉強に追われている千護にそんな余裕などありません(๑•̀ㅁ•́๑)✧
そしてそんな余裕の無さをつけこまれてしまったのか、いきなりキョウコにキスをされてしまった千護・・・この後どうなるのか、次回をお待ちくださいませ( ̄ー ̄)ニヤリ
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