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「短編小説」
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夾竹桃の吐息・其の伍

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 俺の唇に重ねられた唇はどこまでも柔らかく、甘かった。ただ、その甘さにはどこか禍々しいものが混じっているような気がして、俺はキョウコを突き放そうとする。しかし何故か腕に力が入らず、俺はキョウコがなすがまま唇を貪られた。

「・・・・・・かわいい人」

 暫し唇を重ねた後、ゆっくりと唇を離すとキョウコはきゅっ、と口角を上げた。その妖艶な笑みに俺はどきりとする。

「もしかして、私が知的障害か精神障害を持っていると思ったでしょ?残念、私はまともよ」

 キョウコは俺の首に腕を回す。すると華奢な身体が密着し、胸や太腿の柔らかさがいやが上にも感じられてしまう。

「ちょ、ちょっと待てよ!」

 普通であれば色っぽい妄想が思い浮かぶものなのだろう。だが、俺が感じたのは本能的な恐怖だった。このまま命さえ奪われてしまうかもしれないという、闇色の恐れ―――そんな俺の怖気を感じたのか、キョウコはエキセントリックに笑った。

「だ~め。私に魅入られたらもう逃げられないんだから」

 キョウコは再び俺に顔を近づけると、唇を押し付けてきた。




 千護が時間になっても帰ってこない。本家にもいないらしい―――千護の母親でもある叔母からのメールに直斗が気がついたのは、仕事が終わった直後だった。時間的にはメールが来てから1時間は経過していないだろう。

「っつたく、ダチとだべってるだけじゃねーの?叔母さん心配し過ぎなんだよ。千護だって男なんだしよぉ」

 未成年とはいえ今年19歳になる青年だ。多少帰りが遅くなっても問題ないと直斗は思うが、叔母はそうは思わないのだろう。叔母にとって千護はいつまでも『可愛い息子』なのだ。

「かと言ってあいつの交友関係なんてろくに知らねーし。ま、ちょいと爺さん家の近所を回って見るかな」

 何せこの界隈は有名な観光地である。本人が望むと望まないとにかかわらず、よそ者に喧嘩をふっかけられる可能性もあるのだ。
 決して喧嘩が弱い千護ではないが、万が一ということがある。直斗は仕事道具を片付けると、妻に電話をかけその旨を伝える。

「珍しいわね、真面目な千護くんが・・・じゃあ夕飯はいらないわね」。いつ帰れるかわからないし」

 何気ない妻の一言だったが、その一言に直斗の表情は強張った。

「あ、ああ・・・確か今日ハンバーグだったよな。別に明日に回してくれても」

「うん、大丈夫。子供と一緒に食べておいてあげるから心配しなくていいよ。夏場は食品が傷みやすいし」

 あっけらかんとした妻の一言に直斗はがっくりと肩を落とす。妻が作るハンバーグは直斗の大好物である。よりによってこんな日に厄介事を起こすとは・・・直斗は千護に毒づく。

「千護、覚えてろよ・・・ううっ、ハンバーグぅ」

 舌打ちをしつつ直斗は祖父の家に出向くためハンドルを切る。さっさと千護を見つけだし、ハンバーグを食べ尽くされないうちに自宅に帰るのだ・・・だが、そんなささやかな希望はあっけなく潰される事となる。



UP DATE 2018.7.14

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謎の少女・キョウコに囚われてしまった千護に一体何があったのでしょうか?
帰りが遅いと心配する千護の母親=直斗の叔母からのメールからすると、『男の子の夜遊びには少々早い時間だけど、未成年が帰宅しないにはやや遅い時間』のようです。
流石に直斗は『たまに羽目を外すことくらいあるんじゃないか?』と思っているようですが・・・これは母親の勘、というやつでしょうかねぇ(-_-;)流石に自分の息子が人間ならざるものに囚われたとは思いもしないでしょうが、何かしらの胸騒ぎを感じたのかもしれません。千護に彼女でもいれはこの役目は彼女が担うんでしょうけど…・・残念ながら千護は年齢=彼女いない歴ですので、この役目はおかーさんにしてもらうしか/(^o^)\

次回更新は7/21,ようやくキョウコの『本性』との対決になりそうです(๑•̀ㅁ•́๑)✧
(そこまで行ってくれればありがたいけど・・・がんばります(^_^;))
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