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「短編小説」
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夾竹桃の吐息・其の陸

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 俺はキョウコに唇を塞がれたまま、意識が遠のくのを感じた。ピッタリと身体を密着されているにもかかわらず、妙にひんやりとしたキョウコの身体は心地よく、身も心も委ねてしまいそうになる。

(やばい。マジでここから逃げないと)

 理性ではそう思うものの身体と感情の自由が効かない。藻掻けば藻掻くほど何故か動けなくなってゆくのだ。例えるならば何かが手足に絡まるような感触、とでも言うべきか。ひんやりとした、しなやかな枝のような物体が手足に絡まるのを感じた刹那、更に全身に甘やかな痺れを感じる。

(たすけて・・・・・・誰か・・・・・・)

 なけなしの理性が心の奥底で叫ぶが、その声は誰にも届かない。まるで艶めかしい女性の吐息のような甘い痺れの中、俺の意識は遠のいていった。



 祖父の家にたどり着いた直斗は軽トラから降りた瞬間、嫌な気配を感じた。否、気配と言うより匂いというべきか。湿った土と黴が入り混じった臭いに、どこか懐かしい、甘ったるい花の匂いが重なっている。忌まわしい黴の臭気を花の匂いで誤魔化している―――そんな印象を直斗は受けた。

「この臭い、どこかの土を掘り起こしたのかな?まさか千護のやつが埋められているなんてこたぁねぇよな?」

 思わず口走ってしまった自分の不吉な言葉に直斗はブルツ、と震える。

「ウウッ、縁起でもねぇ・・・・・・しかしこの臭いは気になるな。土が残っているとなると中庭か。外を探す前にちょっと覗いてみるか」

 無視をするには土の臭いが濃すぎる。直斗は意を決して中庭へと向かった。そしてそこで思わぬものを見ることとなる。



 身体にまとわりつくのはキョウコの腕か、それとも肢体か――――――その柔らかさ、そして甘い香りに俺は陶然とする。先程まで感じていた恐怖は全く感じなくなっており、むしろこの状態がいつまでも続くことを願うばかりだ。

「好きよ、千護くん。私と一つになってほしいの・・・・・・これから先、ず~っと」

 耳元でキョウコの声が甘く囁く。吐息混じりのその声に俺はただ素直に頷いた。その瞬間、一瞬土臭い、腐葉土のような臭いが鼻を突いたが、それは幻のように一瞬にして消え去る。

(受験勉強もあるけど・・・・・・爺さん家の片付けもあるけど・・・・・・もう、いいや)

 考えることさえ億劫になった俺は、キョウコの身体と思われる柔らかな感触に身体を、そして頬を埋める。ただキョウコに溺れてしまえばいい――――――諦めにも似た、投げやりな感情をいあいたその瞬間、俺の意識を男の―――直斗の叫び声が引き裂いた。




UP DATE 2018.7.21

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毎回短くて本当に申し訳ございません(>_<)やっとホラー部分までたどり着きました(^_^;)
甘ったるい中に、土のような、黴のような臭いが隠れている状況の中、千護はキョウコに絡め取られているようです。その状況に逃げようにも逃げられず、もうどうにでもなれと投げやりになってしまっているようですが・・・。
その一方、従兄の直斗は爺さんの家で『土の臭い』を嗅ぎ取りました。二人が共通して感じているこのカビ臭い土の臭いの正体は?次回にはその正体が書けると思います(たぶん)
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