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「短編小説」
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夾竹桃の吐息・其の漆

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 中庭に足を踏み入れたその瞬間、直斗はその違和感の原因がわからなかった。物心ついた頃から慣れ親しんできた中庭であるはずなのに、何かが違う―――と改めて庭を見回した瞬間、直斗はその原因に気が付き『あ!!』と声を上げる。

「この夾竹桃、何で赤と白の2種類の花が咲いているんだ?この夾竹桃は白い花のはずなのに」

 それほど花に詳しくない直斗だが、この中庭の夾竹桃が毎年白い花を咲かせることだけは知っている。その夾竹桃が咲かせている、下半分が赤に近い桃色の花なのだ。そしてその赤く染まった部分は徐々に上へ広がっているように直斗には見えた。その異様さに直斗はブルッ、と体を震わせ、視線を下へと移動させる。

「そういや昔、理科の実験でやったよな。白い花に色水吸わせて色を変えるって・・・きっと千護の奴が赤いペンキでもぶちまけーーーーーうわあぁ!!」

 『それ』を見た瞬間、直斗は悲鳴を上げ、尻餅をついた。



 さながらできの悪いホラー映画―――直斗の印象はまさにそれだった。夾竹桃の根が地面から這い出し、土を荒らしている。どうやら先程嗅いだ黴臭い土の臭いの原因はこれだったのだろう。更にその根に抱え込まれるように千護が埋もれていた。どうやら気を失っているようで抵抗もせずぐったりとしている。
 既に体全体が土に埋もれ、辛うじて顔が出ているだけだ。その顔もズルリ、ズルリと土の中に引きずり込まれようとしていた。このままでは千護が土に、否、化物と化した夾竹桃に飲み込まれてしまう。直斗は我に返り埋もれている千護に駆け寄った。

「千護!目ぇ覚ましやがれ!おら!」

 直斗は千護の頭の真上―――夾竹桃の幹に蹴りを入れる。中学校まで半ば強制的に柔道をやらされ、それ相応に威力がある蹴りだったが、夾竹桃はびくともせず千護も目を覚まさない。それどころか千護は気を失ったまま、ますます地面奥へと引きずり込まれていく。

「やべぇ、このままじゃ引きずり込まれちまう」

 どうしたら良いのか――――――その瞬間、直斗にある考えが浮かんだ。

「一か八か・・・・・・これしか方法は残っちゃいねぇ」

 直斗は呟くと、すぐさま祖父の作業場へと飛び込み、干からびた雑巾とベンジンを手にする。そして中庭に戻ると干からびた雑巾にベンジンをドバドバとかけ、ポケットからライターを取り出した。

「嫁さんには煙草をやめろって言われているけど、今回だけは吸っていて良かったと思えるぜ」

 言い訳がましい一言とともに直斗はライターに火を灯しベンジンを染み込ませた雑巾に近づける。勿論ベンジンで燃えやすくなっている雑巾はすぐに引火し、激しく燃え始めた。その雑巾を直斗はすぐさま赤と白の花をつけた夾竹桃に投げつける。その直後である。

ギャァァァアァァ!!

 鼓膜が破れんばかりの悲鳴が中庭に響き、うねってた夾竹桃の根が波打つ。その瞬間、わずかに千護に身体が土から浮き上がった。

「よっしゃ――――――千護!今助けてやるからな!!」

 直斗は千護の首根っこを掴むと、力任せに強引に。そして腕がようやく出ると、脇の下に腕を通し、一気に引きずり出した。

「こいつが小柄で助かったぜ――――――おい、起きろ!」

 直斗が千護の頬を叩くと、千護はようやく目を開ける。

「あれ・・・・・・直斗?」

「説明は後だ!」

 直斗は叫ぶと、地面に置いたベンジンの瓶を炎の中に蹴り飛ばす。その瞬間、火柱が上がり、一瞬夾竹桃全体を包み込んだ。

「あれは?」

「知るか!とにかく逃げるぞ!消防車と救急車はその後だ!」

 直斗の迫力に気圧された千護はただ頷くことしかできなかった。




UP DATE 2018.7.28

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とうとう『キョウコ』が本性を表しました((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
その正体は昔からこの家に生えていた白い花の夾竹桃。それがどういうわけか人間を取り込み、食らうようになってしまったようです(>_<)
千護もあわや取り込まれるところでしたが、辛うじて直斗に助けてもらい、一命をとりとめたようで・・・ε-(´∀`*)ホッ
次回は多分最終話になるかと思われます。よろしかったらお付き合いお願いいたしますm(_ _)m
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