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夾竹桃の吐息・其の捌

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 燃え盛る炎に背中を焼かれながら、千護と直斗は中庭を抜け、家の外に飛び出した。火の手は予想していたよりも早く、既に火柱が上がっている。これでは救急車を呼ぶ暇はなさそうだ。

「千護!助手席に!シートベルトも忘れるなよ!安全運転なんてしてやれねぇから!」

 そう言い捨てると直斗は運転席に乗り込み、急発進をする。思い出がある祖父の家が丸焼けになってしまう悲しさも少しはあったが、不気味すぎる夾竹桃への恐怖のほうが勝った。
 とにかくこの場からいち早く逃げなければ―――大きな火事になったらきっと近所の誰かが消防に連絡してくれるだろう。直斗は一縷の望みにかけながら、この周辺で一番大きな総合病院へと軽トラを走らせる。
 当の千護は車に乗った安心からなのか助手席でぐったりしている。その顔やむき出しの腕のあたりを見ると、まるで薬品でも引っ掛けられたようなやけどを負っていた。

「これ、なんて医者に説明したら・・・夾竹桃のバケモノに引きずりこまれそうになりましたとも言えねぇし。古い棚の下敷きになった、でいいかな」

 事実をありのままに伝えても信じてもらえないだろう。直斗は病院での言い訳を考えながら車を走らせ続けた。




 千護を入院させた翌日、直斗は祖父の家へ呼び出された。というか親戚全体が現場検証のため警察に呼び出されたというべきか。案の定祖父の家は全焼しており焦げ臭い匂いが漂っている。

「取り敢えずお隣に燃え移らなくて良かったわ。どのみち更地にするつもりだったし」

「特に『おばけ夾竹桃』はな。あれは切り倒そうとするたびに厄介なことが起こっていたから」

「だから今回の放火犯に関しては私達から訴える気は毛頭ありませんので」

「ホント、ここまできれいさっぱり、しかも消防警察以外に迷惑をかけずに燃えるなんてねえ」

 不謹慎極まりないおじや、おばの会話に直斗が警察に頭を下げる。

「まぁ、他の場所でやらかしたら即逮捕ですけど、放火をされてここまで喜ばれるというのも」

 若い警察官は苦笑いを浮かべるが、おじ、おばと同年代と思われる壮年の警察官は表情を強張らせていた。それに気がついた直斗がその警察官に尋ねる。

「何か厄介なことでも?」

「あ、ああ。皆さんが云っていた『お化け夾竹桃』―――皆さんが云っているのとは少し違うかもしれないけど、俺が若い頃にはこの辺で気味の悪い自殺が多くて困っていたのを思い出したよ」

 壮年の警察官は昔を思い出すような遠い目をして若い二人に語りだした。

「ほら、この家のすぐそこに踏切があるじゃないか。そこから入り込んで自殺するやつが多かったんだけど、その近くに夾竹桃の枝葉や花が必ず散らばっていてね。しかしこの辺に生えている夾竹桃ってここの家にしかなくて・・・わざわざこの家に入り込みでもしたのかと当時の現場検証で困惑したものさ」

「え?」

 壮年の警察官の言葉に直斗が青ざめる。そんな直斗の顔色に気づくこと無く壮年の警察官は喋り続けた。

「しかも、電車にはねられたのに薬品やけどみたいな傷跡も多くって・・・防犯カメラや有刺鉄線で防御するにも限度があったけど、そういや最近そんな自殺もだいぶ減ったよな」

「薬品やけど・・・」

「どうしました?何か気づいた事でも」?

「いえ、なんでもありません」

 直斗は千護の怪我のことを口に出しそうになったが、辛うじてそれを飲み込んだ。あまり皆に心配をかけさせたくないし、あまりにもオカルトじみている。

(どちらにしろ、じいさんの家と共に燃えちまったんだ。気にすることはない)

 自分や千護が黙っていれば済むこと――――――直斗は警察官に例を述べたあと、その場から少し離れ、唇を噛み締めた。




UP DATE 2018.7.28

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初犯の事情でかなり遅れてしまいましたが、何とかUPすることが出来ました(>_<)
お化け夾竹桃は爺さんの家と共に燃え尽き、その現場検証で親戚一同呼び出されました。そこに直斗も呼び出されたようですが、そおで思わぬ話を聞かされてしまい・・・。そう、昔の路線では有刺鉄線が張り巡らしてあったんですよね~(^_^;)今はもう少しスタイリッシュになっていますが文字通り『張り巡らして』ってかんじで。なお結構錆びついていて『刺さって防止』というよりは『破傷風が怖くでみんな近寄らない』と云ったほうが正しかったりするかもです/(^o^)\

で、本当は今回終わりにしたかったのですが、まだちょっと書き足りない部分が出てきてしまいまして(>_<)
次回は入院中の千護&直斗夫婦のまとめ会話で締めたいと思います(๑•̀ㅂ•́)و✧(本当に終わりにしたい・・・)
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