「短編小説」
幕末歳時記

幕末歳時記 影暦 神無の月・前編(土方歳三&お琴 大人向け)

 ←幕末歳時記 其の拾伍・神無の月(土方歳三&お琴) →葵と杏葉世嗣編 第十八話 殿様道楽・其の参
二人して戸塚村を後にした土方と琴は、内藤新宿にある旅籠に宿を取った。事情が事情だけに試衛館からあまり離れる訳にもいかないし、かといって近すぎる場所でうろつきでもしようものなら琴との関係を冷やかされそうで気恥ずかしい。戸塚村からも試衛館からもほどほどの距離にある内藤新宿は何かと都合が良い。

「なんだか・・・・・かなり賑やか・・・・・・なんですね。」

 風呂に入り、夕餉を取った後、琴は隣の部屋から聞こえてくるあられもない声に赤面する。そう、内藤新宿は飯盛女で有名であり、『その最中』の艶めかしい声や卑猥な濡音が薄っぺらい襖や壁を通して聞こえてしまうのだ。
二人が入った旅籠は決どちらかというと質の高い宿であったが、それでも飯盛旅籠という宿の性格上そう言った声や音から逃れることは出来ない。
 隣の部屋から聞こえてくる情事の声に、そわそわと落ち着きを無くす琴とは対照的に、土方は落ち着いた様子で食後の一服を吸い終わると琴の傍へ近づいてゆく。

「ここは岡場所だ。この程度、なんて事は無いさ。それに・・・・・。」

 土方がおもむろに琴の手を引き、己の胸元に抱き寄せた。ふわり、と甘い香りが琴の首筋から立ち上り、土方は陶然とする。隣からの声の所為か、それとも土方に抱きしめられた所為か、真っ赤に染まり、熱を帯びている琴の耳朶に土方は唇を近づけた。

「こんな所だからこそ、多少羽目を外しても咎められねぇ。」

 土方のあまりにも大胆な発言に驚き、思わず土方の顔を凝視した琴の唇に、土方は素早く己の唇を重ねた。そして強引に舌で琴の唇をこじ開け、口腔を蹂躙し始める。

「ん・・・・・・!」

 息さえできぬほど激しく接吻を施す土方から逃れようと、琴は抵抗を試みるが、土方はそれを許さず、さらに強く抱きしめた。琴の小さく、柔らかな舌は土方の舌によって絡め取られ、まるで本当の情交のような激しく、悩ましい濡音と、時折漏れる熱い吐息が部屋を愛欲に染め上げてゆく。
 すでに次の間に布団は敷いてあるが、そこまで行く事さえもどかしいのか、土方は唇を貪り続けながら琴をその場に押し倒した。

「・・・・・・・簪が邪魔だな。抜いちまうぞ。」

 ようやく琴の唇を解放した土方だったが、琴が言葉を発する前に怪我をしないようにと琴の髪に刺してあった二本の簪を抜いてしまう。

「髪が・・・・・・崩れてしまいます・・・・・。」

 押し倒された時点できれいに結い上げたつぶし島田は崩れかけていたのだが、土方が簪を抜いたことでその崩れはますますひどくなってしまった。頬には後れ毛が張り付いてしまい、ついさっきまで土方に吸われていた唇はまるで紅を塗ったように唾液でなまめかしく濡れ光っている。僅かに着崩れた着物はむしろ全裸よりも扇情的で、土方は体中の血が逆流するかのような激しい欲情を琴に抱かずにはいられなかった。

「諦めろ。おめぇを目の前にして髷を気にしてやれるほどの余裕なんてある訳ねぇだろう。俺をこんなに夢中にさせやがって。」

 土方は琴の額に己の額をつけてクスリと笑うと、琴の胸元に己の手を差し込んだ。土方の手を跳ね返すような弾力と、それと相反するしっとりと吸い付くような柔肌の感触を味わいながら、土方は琴の胸元をはだける。

「あ・・・・・だめ・・・・・・。」

 琴は慌て、はだけられた胸元をかき合せようとしたが叶わず、ほの暗い行灯の光に雪のように白い双球が浮かび上がった。細身の身体からは想像できないほど豊満な乳房は、心なしか小刻みに震えている。

「・・・・・こんな極上の女に今まで手を出さなかったなんて、俺もどうかしてたな。」

 白く、柔らかな乳房を手ですくい上げるように弄びながら、土方は琴の耳朶を舐る。土方の唇が嬲るその耳朶は火傷をするかと思われるほど熱を持っていて、土方の愛撫に昂ぶっていることを証明していた。
 だが、そんな女子を知り尽くした土方の愛撫にも琴は我を忘れて乱れるという事は無かった。まるで男を知らない小娘の如き反応に気をよくした土方は、熱を帯びる琴の耳朶から首筋、そして胸元へと唇を這わせてゆく。

「と・・・・し・・・・・さん。」

 土方から与えられる快楽の奔流に押し流されないように、琴は土方の頭を抱えるようにしがみついた。土方の名を呼ぶその声は甘く熱を帯び、土方をさらに煽る。商売女のように乱れはしないが、それでも懸命に土方の愛撫に応えてくれている、それが妙に嬉しく少年のように心が躍った。

「こんなに感じてくれてるたぁ、男冥利に尽きるな。」

 琴の潤んだ瞳を見つめ呟くと、豊満な乳房の上で息づき、固く勃っている乳首を口に含み、軽く歯を立てる。

「ああっ・・・・・そこっ・・・・・・。」

 羞恥の為か、押し殺した反応であったが、確実に土方の愛撫に感じている---------琴の上げてしまった声はそれを知らしめるのに充分であった。

「恥ずかしがる事なんてねぇ。俺は・・・・・おめぇの全てが見てぇんだ。」

 琴の胸に頬摺りをしながら土方は囁き、ゆっくりと膝を琴の脚の間に入れ始めた。



 帯を解く手間ももどかしく、土方は乳房を愛撫しながら膝で琴の脚を割りさき始める。ここまで来れば大抵の女子はそのまま身体を開くものだが、どういう訳か琴は逆に身体を硬くしてしまう。

(ここまで来てこれじゃあ・・・・・まるで生娘じゃねぇか。)

 土方と二歳しか違わない琴である。男の一人や二人知っているだろうと思っていたが、もしかしたら・・・・・と思わずにはいられない。

(そんなてめぇに都合の良いことばかりある訳ねぇだろう、しっかりしやがれ歳三!)

 今までどこにも嫁がずにいてくれただけでも御の字なのに、自分以外の男に肌を許しておらず、ひたすら自分を待っていてくれたなどと思い上がりも甚だしい---------何度も自分を叱咤し、琴を快楽に溺れさせることだけに集中しようとするが、どうしても気になって仕方がない。
 逸る気持ちを必死に押さえながら、土方は琴の浅葱色の蹴出しの端から手を忍ばせ、膝を撫でる。

「あ・・・・・・。」

 驚いたのか、それとも土方の手に反応したのか、琴は一瞬身体を強張らせ、声を上げた。

「大丈夫だ。俺に全てを任せてくれ。」

 生娘でなくても男の経験はそう無いのだろう。琴を怯えさせないように出来る限りの優しい声音で訴える。その声音に安心したのか、琴は土方の手が入り込みやすいようにゆっくりと脚の力を抜いた。
 普段の土方ならここで焦るようなことはせず、焦らすようにじっくりと責め立てるのだが、今はそんな余裕さえない。女子を覚えたての青年のように、それでも琴を怯えさせない程度の性急さで奥へと手を進める。
 そして、今まで望み続けながらたどり着けなかった最も秘められた場所に指が届いたまさにその瞬間、土方は驚きのあまり声を上げそうになった。

(こんなに・・・・・感じてくれていたのか。)

 琴のその部分は土方でさえ驚くほどしとどに濡れそぼっていた。遊女など男性経験が豊富な女子ほど濡れ具合は少なくなるものだが、それとは真逆である。想像以上の琴の反応に気をよくした土方は、愛撫もそこそこに最奥の蜜壺へ指を伸ばす。

「痛っ・・・・・・・。」

 だが、土方が強引に蜜壺に指を挿れた瞬間、琴が眉をしかめ再び身体を強張らせてしまった。

「あ、すまねぇ。」

 琴のあまりに痛がりように驚き、思わず土方は手を引っ込める。もしやと思っていたが、琴の痛がりよう、そして指先に感じた感触で土方は己の予想を確信に変えた。

「おい、琴。おめぇ、まさか・・・・・・男を知らねぇのか?」

 野暮を承知で先程から気になっていた事を尋ねる。

「・・・・・・・。」

 恥ずかしそうに俯き、黙ったまま琴はこくん、と頷いた。その少女のような仕草に、土方の胸は高鳴ってしまう。

「・・・・・・俺なんかに義理立てする必要なんかなかったんだぞ。」

 わざと憎まれ口を叩きながらも、土方は嬉しさのあまり琴を抱きしめた。人生でただ一人、こいつさえいれば他に女はいらないとまで想った相手が手つかずだったとは・・・・・・信じられない幸運に、土方は舞い上がる。

「・・・・・だって、ずっと歳さんのことが好きだったから。」

 それは琴も同じだったらしい。今までにないほど甘く、蕩けそうな声で、土方の腕の中で語り出した。

「行商で歳さんが戸塚村に初めて来たときからずっと・・・・・初めて歳さんを見た時からずっと好きだったの。だから・・・・・・。」

 一緒になれなくてもいい、せめて一度だけでも契りを結びたいと思ったと告白する。

「馬鹿な奴だ・・・・・。」

 それは土方も同様だった。家付きの一人娘で三味線の才もある琴の事だ、養子になりたいと言い寄る男は多かった。その中で琴の親に認めてもらおうと、まめに戸塚村へ、というよりは琴の家へ顔を出し、ようやく婚約までこぎ着けた途端上洛の話が持ち上がり、今に至るのである。

「俺なんかにかまけて・・・・・女子の一番良い時を無駄にしやがって・・・・・。」

 琴の乱れた髪を撫でながら、土方は琴の頬に己の頬を擦りつける。

「歳さんは良い時が過ぎた『とう』のたった女子は嫌い?」

 後悔に苛まれている土方を慰めるように、琴が冗談めかして耳許で囁く。

「おめぇ以外はな。というより小便臭ぇ小娘だろうが、とうのたった年増だろうが、おめぇ以外はいらねえよ・・・・・・・畜生、未練を断つ為に抱こうって思ったのに余計未練になるじゃねぇか。」

 そう乱暴に呟くと、土方は再び琴への愛撫を始めた。今まで自分を待ってくれていた琴を失望させない為に、そして今生の別れの契りを悔いのないものにする為に、土方は己の全てをかけて琴を愛しもうと改めて決意を決めたのだった。



UP DATE 2009.10.11

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いや~久々のエ○、いいですね~(つぅか実質半月書かなかっただけなんですが・苦笑)
本編に対して続きが異常に長いのは、必要な状況描写が裏の方が多いからで、決して管理人がスケベだからとかそういう訳じゃないと・・・・・・思いたいけど誰も信じてくれないんだろうな~(爆)。来年から連載予定のオリジナル新選組でもこの二人の関係は組み込んでいくつもりです。

本当は一話で終わらせるはずだったんですけど・・・・・・ぬるい上に長くなりすぎたので、一旦ここで切ります。次は本番ですv


(このあとがきは別館サイト『紅月華狼』UP時に掲載したものです。)
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