「短編小説」
幕末歳時記

幕末歳時記 影暦 深雪(斉藤一&高木時尾 大人向け)

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『篠田家とつながりを持つことは貴殿の為にも決して悪いことではない。それにやそ殿は一時江戸にいらした事もあるから・・・。」

 使者の言葉の後半は斎藤の耳には全く入っていなかった。斎藤一改め藤田五郎と篠田やその婚姻の決定を知らされた明治四年の秋、斎藤は己の心の中の不確かな想いが何であったか理解した。


 自分は高木時尾を、一人の女子として愛おしく想っているという事に。


 しかし武士にとっての命令は絶対である。斎藤は己の想いを抹殺し、篠田やそと結婚した。



 明治六年の晩秋、またひとり会津からの仲間が亡くなった。会津から斗南の地へ移り住んでいったいどれ位の者が失意の内に亡くなったであろうか。朝敵の汚名を着せられ、痩せた土地にしがみつきながらそれでも仲間と力を合せ、主君の為と頑張ってもむなしさだけが募るばかりである。そして、今度亡くなった男は時尾の夫であった。

「藤田様・・・・大したもてなしはできねが入ってくなんしょ。」

 喪服とは名ばかりの粗末な白木綿の着物を着た時尾が通夜の手伝いに来た斎藤を迎え出る。

「風邪をこじらせたそうだな。」

 沈痛な面持ちで斎藤は時尾に語りかけた。

「もともとがおってたけど、きんな(昨日)急に・・・・。」

 泣きはらした様子もなく、落ち着いた様子で時尾は斎藤を家の中に案内する。

「あんたは夫が死んでも泣かないんだな。」

 もともと『きかない女子』ではあったが伴侶の死の時くらいは泣くのかと思っていた。しかし、泣くどころか取り乱した様子さえないのだ。

「せな(兄)が決めた相手だ。」

--------家長である兄が決めた結婚であり、夫だからと言って情があった訳ではない。

 言外のその言葉に斎藤は時尾らしさを感じ、不謹慎ながら噴き出してしまった。

「何笑っているがよ!」

 思わず噴き出してしまった斎藤を時尾はぎろり、と睨む。

「済まない・・・・あんたは本当に変わらないな。」

「それは嫌味がよ?」

 時尾はぷっ、とむむくれて斎藤に突っかかる。その表情は会津の戦の時初めて出会った時のまま----------娘のまま時が止まってしまったかの様に何一つ変わっていない。

「いいや、変わらないさ。あんたは婆さまになったって『めげえ』ままだ。」

 この男は女子を口説く時でさえ表情一つ変えない。なので時尾も一瞬斎藤の言葉を理解できずきょとんとした表情になるが言葉の意味を理解すると途端に耳まで真っ赤になる。

「な・・・な・・・・何を冗談を・・・・!」

「俺はいつも本気だ。」

 その言葉が斎藤の口から吐き出された瞬間、時尾は両手首を掴まれ廊下の壁に押し付けられる。斎藤の思わぬ行動にびっくりして斎藤の顔を見たその刹那斎藤の唇が時尾の唇に重なった。

(誰かに見られたら--------!)

 斗南では数家族が一つの家で暮らしている。時尾夫婦も夫の一族の家の片隅で暮らしていたのだ。こんな姿を誰かに見られたら・・・・・時尾は焦る。
 しかし、斎藤はそんな時尾に構わず、餓えた獣の如くひたすらに時尾の唇を貪り続けた。より深く唇を重ね合わせ、時尾のぷっくりとした唇を割ると口中を思うがままに蹂躙する。
 逃げる時尾の舌を捕まえると、これでもかというほど強く吸い、手は腰にまわされて時尾の身体を撫でまわす。粗末な喪服越しにひと肌の温かさと女盛りの柔らかさが斎藤の手に伝わり、斎藤の体中がかっ、と熱くなる。
 しかし、ここは時尾の夫の一族が住む家なのだ。押し倒し、すべてを貪りつくしたい衝動を強靭な理性で抑えつけ斎藤はゆっくりと唇を離し、時尾を開放した。

「・・・・・あんたに惚れている。」

 長い接吻の後、斎藤が時尾の目をじっと見て告白する。

「やそ様は・・・・。」

 斎藤の妻は会津藩の名門の出だ。自分など出る幕はないと時尾は俯いた。

「去年の年明けから閨の事は全く無い。」

 斎藤の心の中に別の女子がいる事に気がついたのであろうか閨事を拒み続けられ、二年近くがたっていると苦笑いする。

「だからと言ってあんたを欲望のはけ口にするつもりはない。今ならまだ己を抑える事ができる。だから、嫌ならはっきりと・・・・。」

 斎藤の言葉が終らないうちに今度は時尾の唇が斎藤の唇を塞ぐ。その、時尾らしからぬ積極さに、斉藤は時尾もまた自分を想っていてくれたことを確信した。

「・・・・・ばんげは寝ずの番があるから。」

 酒宴の時には皆かなりの量の酒を飲むであろう。普段質素な生活を強いられている分、羽目をはずす事は間違いない。その時まで---------斎藤は時尾の言葉に頷いた。



 通夜の宴が遠くから聞こえてくる。斎藤と時尾は別々に部屋から抜け出し厩で落ち合った。厠は逆の方向にあるし、よっぽどの事がなければこちらに人は来ないであろう。

「あんまり無茶はできないな。」

 さすがに出会茶屋のようにはいかない。斎藤は自分の羽織を脱ぐと、時尾の髪に藁がつかないように藁束の上にそれを敷く。そして緊張の余り小刻みに震えている時尾を優しく、しかし有無を言わせぬ力強さで抱きしめた。

「怖がらなくてもいいから・・・・・。」

 やはり親族を気にしてしまうのかそわそわと落ち着かない時尾に斎藤は接吻をし続ける。長い時間をかけてようやく緊張が解けてきた時尾の胸元に斎藤はそっと手を忍ばせた。
 小柄な体に似合わぬ、思った以上に豊かな乳房の感触が斎藤の節くれだった指に触れる。

(この肌をあの男は我が物にしていたのか・・・・。)

 しっとりとしたやわ肌に触れた瞬間、今迄感じなかった時尾の夫への嫉妬を斎藤は感じずにはいられなかった。

「時尾さん・・・・あんたの旦那はどうやってあんたを可愛がっていたんだ?」

 聞いてもしょうもない事をつい聞いてしまう。しかし、時尾は恥ずかしがり真っ赤になって俯いてしまった。

「なら、俺のやりかたでやらせてもらうぞ。」

 斎藤は時尾の胸元を押し広げると、その豊かなふくらみに顔を埋めた。



 廓の妓のような手練手管もなければ男を煽る嬌声をあげる訳でもない。まるで男を知らない生娘のように動きもぎこちない。声一つ上げる事無く、ただひたすら斎藤の責めを受ける時尾に『辛い思いをさせているのではないか』と不安に感じた斎藤であったが時尾の脚を割り、一番奥の秘められた部分に到達した時その不安は一気に解消された。
 蜜の洪水--------時尾の秘所は驚くほどぐっしょりと濡れていたのだ。

「痛いようだったら無理をするなよ。」

 斎藤は時尾の蜜壷に指をそっと挿し入れる。しかし、蜜壷に侵入したその刹那、人妻とは思えぬその狭さに斎藤は驚いた。

「あんた・・・・旦那と閨事はあったんだろうな?」

 思わずそう聞いてしまうほど、その部分は狭く感じたのだ。

「結婚当初は・・・・。」

 顔を伏せ、それだけ言うのがやっとだった。結婚してひと月ほどで時尾の夫は病に倒れたのだ。結婚直後の事であったのであらぬ噂が立った事を斎藤も思い出した。
 そうなると閨事の経験もそれほどないのであろう。斎藤は指を抜くと、己の逸物を時尾の入り口にあてがい、ゆっくりと挿入を始めた。


 時尾に初めての男を忘れろとは言えない。しかし、確実に自分の入り込む余地はある。


 己の妻との問題も決着をつけなければならない。それなのに時尾を一刻も早く己のものにしたいという欲求も抑えきれない。この腕の中にいる女子を己だけのものにできるのならばすべてを捨て去る事も厭わない--------それが会津公であっても。
 昔の自分であれば信じられぬような背信をしかねない己に気づき斎藤は思わず苦笑をこぼしてしまった。


 自分の腕の中でずっと想っていた人が声を押し殺し、自分を求める。全てが冷え切った中、自分と時尾だけが周囲を焦がさんばかりの熱を放ち情欲に溺れ、全てを忘れ去ってゆく錯覚に斉藤は陥ってゆく。
 斗南で少しずつ積み重ねてきたものを全て粉々に壊してしまいそうな危うさを感じながら、斉藤はようやく我がものにすることができた時尾をいつまでも離そうとはしなかった。



UP DATE 2010.09.16

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幕末歳時記の末席に置かせて戴きましたこの作品、実は二次創作をしていた頃に書いた古いものです。
二次作品ではありますがマンガのオリジナルキャラは全く出ていませんし、『ま、作品もUP出来なかったからお詫びもつもりで・・・・・。』と別館のエッセイ(の追記)に載っけましたら意外と好評で・・・・・(^^;)。
なのでブログ統合を機に幕末歳時記の一話として格上げさせて戴きました。(実際は明治時代の話なのですが、そこの処はご了承を・苦笑)


幕末歳時記全て、ここまでお読み戴き、ありがとうございましたm(_ _)m
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