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「横浜慕情(大人向け)」
横浜慕情~虔三郎と結衣

横浜慕情 桜の銀鱗・其の壹

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一年の内最初の三ヶ月というのは瞬く間に過ぎ去ってしまうものである。一月の初旬に虔三郎が藤堂を雇って瞬く間に二ヶ月半が過ぎ、すでにあちらこちらで彼岸桜が咲き始めている。最初こそどうなるかと思った藤堂の採用だったが、意外なほど問題を起こさずにここまで来ていた。だが藤堂側は少し勝手が違ったようだ。

「自由民権運動の誘いを断ったのに、こんな形で関わるとは思いませんでした。」

 と浅黒い顔を情けなく歪めながら藤堂がぼやくのも無理はない。藤堂を雇った直後から県西部で活発化した『国会開設の建白書への署名運動』とやらで虔三郎は勿論、藤堂も駆り出されてしまったのである。前年に出された桜井静による提案を契機に神奈川でも国会開設の機運が高まったのはいいのだが、その分余計な仕事が増えるのはいただけない。
 『特別手当と小田原の甘味』を条件に藤堂は仕事を受けたが、それさえも要らないと思うほど署名活動は大変だった。最終的に六月までに県民二万三千五百五十五人分の署名を集めることになるのだがそれまでの下準備に彼らは苦労したのである。



「最初はどうなることかと思ったが・・・・・時折菓子をつまみ食いする以外藤堂がよく働いてくれたから、何とか来週中には片が付きそうだ。」

 小田原への遠征から帰ってきた虔三郎は、春物のコォトを脱ぎながら久々に顔を見る結衣に話し続けた。普段滅多に仕事の話を結衣にしない虔三郎にしては極めて珍しい。だが自分の知らない虔三郎の一面を垣間見ることが出来るようで、決して嫌ではない。

「そんなによくつまみ食いをなさる方なんですか、藤堂さんって?」

 受け取ったコォトを衣紋掛けにかけながら尋ねる結衣に対し、虔三郎は半ば呆れたように呟いた。

「大福から焼き芋、果ては菓子屋の試作品とか言う梅最中まで食いやがった。少し前になるがこの前の春節の時は『支那の商人から貰ったんですよ。』とか嬉しそうに良いながら月餅を喰らっていたな。あの大食いの半分、いや四分の一の食欲をお前に分けることが出来たらどんなにありがたいか。」

小さな棘を含んだ虔三郎のその一言に結衣は俯いてしまう。虔三郎に囲われ四ヶ月、当初よりだいぶふっくらしてきたものの他の女性に比べたらまだまだ華奢だ。虔三郎が事あるごとに甘味や折り詰めを土産に持ち帰ったりしていたが、元々の食の細さはどうしようもなく、折角の土産を妾宅の世話をする下女達に譲ってしまっているのである。

「すみません・・・・・。」

 虔三郎の気遣いは嬉しいのだが、食べることができないのはどうしようもない。結衣としてはこれでもだいぶ頑張っているのだが太りにくい体質もあるのだろう。抱きしめれば折れてしまいそうな心許なさは相変わらずだ。

「謝ることはない。元々の生活をそう変えられるものでもないだろう。」

 虔三郎はコォトを片付けた結衣を引き寄せ唇を重ねた。微かに苦い煙草の味のする接吻に結衣は身を任せる。

「・・・・・床の準備はできているな?」

 小田原帰ってきた虔三郎の、ここひと月の口癖がこの一言であった。泊まりがけと言ってもせいぜい二、三日であり、別に耐えられない日数でもないにも拘わらず虔三郎は異常に結衣を求めるのだ。その執拗さはまるで留守中に浮気をしていないか確かめる良人のようであった。

「はい。出来ております。」

 最初の一、二度こそ不手際をして虔三郎を不機嫌にさせた結衣だったが、さすがに今はそのような不手際はしない。身体をまさぐる大きな手に安堵感と期待感を感じながら、結衣は虔三郎の腕の中で頷いた。



 その布団は日だまりの匂いがした。豪奢だがどこか饐えた臭いのする遊郭のものとは明らかに違う、家庭の匂いとでも言うべきだろうか。以前の虔三郎なら気にしなかったものだが、結衣を囲ってからしばらくする内にやけに気になるようになってしまった。
 だからだろうか、最近では遊郭に行っても遊女達に食事を奢り、酒を酌み交わすだけで床に入ることはほとんど無い。虔三郎に想いを寄せている遊女の中にはそのつれなさを詰る者もいたが、『仕事』をしなくても本来の花代に加えて『男の矜持を保つための口止め料』を上積みしてくれる客に対し文句を言うものは誰もいない。
 個人的な都合だけなら遊郭に顔を出す必要もないが、そこは開発まっただ中の横浜である。遊郭からの出資も貴重な開発資金だ。それだけに付き合いをおろそかにすることはできないのである。
 そんな煩わしい付き合いを忘れさせてくれる日だまりの心地よさ-------------世間の荒波に揉まれ続けていた虔三郎が忘れ去っていたものを、結衣は思い出させてくれたのである。

「結衣・・・・。」

 虔三郎は結衣を日だまりの匂いのする布団に押し倒すと、その唇や頬に接吻をし続けながら帯を解いてゆく。

「虔三郎様、せめて明かりをもう少し小さく・・・・・。」

 伊万里焼の座敷ランプの火は絞られておらず二人の姿をはっきりと照らし出す。それを恥じた結衣が虔三郎に懇願したがそれは叶えられなかった。一対の座敷ランプ、その明るすぎる光の下に虔三郎の見立てた派手な長襦袢が顕れたのだ。
 緋色の地に桜花をあしらったその襦袢は、整ってはいるが派手さはない結衣の容貌にあまり似合っているとは思えない。しかし普段見せるものでもないし、それ以上に質の良いその肌触りを結衣は気に入っていた。否、虔三郎の心遣いを、と言った方が良いかもしれない。普段はぶっきらぼうで、乱暴な態度を示す虔三郎だが、結衣以上に結衣の身の回りのことに気がつく細やかさや優しさがある。

「虔三郎様・・・・・。」

 虔三郎の視線から逃れるように結衣はあえて虔三郎に身体を密着させると、その首に腕を回して耳朶に唇を這わせた。虔三郎に教えられるがままのその仕草は、決して上手なものではないが、他の男の影を感じさせないだけに虔三郎に何とも言えない優越感を与えるのだ。
 虔三郎は結衣の下手な愛撫を受けながら、以前よりは大きくなったもののどちらかと言えば薄めの乳房を掌で包む。小振りながらも虔三郎の手を跳ね返すような弾力は若い娘特有のものである。その弾力を味わいながら虔三郎は結衣の乳房を揉みしだきはじめた。

「・・・ふっ・・・・あんっ!」

 決して強い愛撫でも、性感を狙った愛撫でもないが、結衣は甘ったるい声を上げてしまう。もともと敏感なたちの結衣だが、虔三郎との情事に慣れるに従ってその反応はますます顕著になってきていた。唇を重ね、胸をはだけて揉み始めただけなのに頬は上気し、声には明らかな欲情が含まれる。かろうじて足許だけはまだ乱れていなかったが、それも時間の問題だろう。虔三郎の唇から、そして掌から与えられる快感に結衣は囚われてしまう。

「どうした、結衣。自分だけいい思いを貪ろうっていうのか?」

 愛撫を続けながら虔三郎は意地悪く結衣に囁く。いつの頃からだろうか、結衣の所有権を誇示するように虔三郎は『お結衣』から『結衣』へと呼び方を変化させていた。それと時を同じくして結衣への執着もますます激しくなってきている。

「どこまで貪欲なんだ、結衣は?たったこれぽっちの手管でここまで乱れる女は今まで見たことがないぞ。本当に間男を引きずり込んだりしてないだろうな?」

 生真面目な結衣をからかうように虔三郎はわざと結衣の不貞を疑っている風を装う。それを承知していながらもつい真面目に受けてしまうのが結衣の悲しいところである。虔三郎の発したからかい半分の疑いの言葉に、結衣は疑いを解いて貰おうと、再び虔三郎の耳朶に自分の唇を寄せようとするがそれはうまくいかなかった。結衣の唇が虔三郎の耳朶に触れるか触れないかのその瞬間、虔三郎の指が結衣の乳首を絶妙な力で軽くねじり上げたのだ。

「やぁっ・・・・・だめぇ・・・・!」

 苦痛を感じる直前の、ぎりぎりの強い嬲りに結衣は何も出来なくなる。快感に仰け反った首筋に舌を這わせながら虔三郎は悦に入り、変形した紅い突起をさらに指先で転がし結衣を啼かしてゆく。

「妾の分際で主に奉仕させようって言うのか・・・・・どこまで好き者なんだ、お前は。」

 襲いかかる快感に何も出来ない結衣をさらに辱めるように意地悪く囁くと、虔三郎は右手を離しすかさず乳首を口に含んで少し強めに歯を立てた。そして舌を使い激しく紅い突起を転がし始めたのだ。

「ああっーーーー!」

 指のそれ以上に激しい愛撫に、結衣はひときわ甲高い声を上げ頤を仰け反らせる。獣のような乱暴な愛撫を受け入れ、感じてしまう結衣もまた獣の片割れなのかも知れない。ならば獣同士どこまでも堕ちてゆくのも悪くないと虔三郎は右手を下の方に伸ばしていった。



 気の早い彼岸桜が妾宅の庭でちらほら咲き始めている。月明かりに照らされ、光るそれはまるで闇の中で銀色に輝いている鱗のようだ。桜の銀鱗を纏えば空を泳ぐ天女にでもなれそうな錯覚を覚えるが、愛欲の海に堕ちてしまった結衣には桜の銀鱗の欠片さえ見ることは許されない。その欲情に潤んだ目に映るのは茶褐色の髪に暗緑色の瞳-------------虔三郎ただ一人である。

「け・・・んざぶろう・・・・さまぁ・・・・。」

 いつ飽きられ、捨てられてしまうか判らない儚い立場にいながら-------------それだからこそ虔三郎にすがりついてしまう自分を浅ましいと結衣は思う。ならばせめて武士の娘の矜持を保とうとしても、虔三郎の指先一つでそれは崩されてしまうのだ。
 囲われた当初こそ、心まで奪われてはなるものかと頑なだった結衣だが、何度も身体を重ね、快楽を与えられ続けていればどんなかたくなな心も解けてゆく。

「もう・・・・・堪忍・・・・・。」

 徐々に下に降りてくる虔三郎の手に翻弄されながら、結衣はあえいだ。まだ一番肝心な場所には一切触れられていないにも拘わらず、結衣の身体は桜色に上気し、最奥の秘密の泉からは熱くたぎった蜜が溢れ出ている。どんなに抑えても溢れ出てくる欲望が切なくて、結衣は立場を忘れて虔三郎をねだってしまう。

「そんなに俺が欲しいのか、結衣。」

 普段大人しく、それこそ虔三郎が促さない限り欲求を言い出さない結衣だけに、その口から自分が欲しいと言わせることは虔三郎にとってまんざらではない。言いようのない優越感に浸りながら虔三郎は舌先を結衣の耳に差し込み、蛇のようにちろちろと舌を這わせた。

「はうんっ・・・・そこ・・・・・は・・・・。」

 くすぐったさを伴うその悪戯に、結衣はびくり、と身体を跳ね上げる。これだけ昂ぶらせれば大抵のことは受け入れるだろう------------虔三郎は前々から考えていたことを行動に移そうと決心する。

「これくらいで感じていたら、ここなんか堪らないだろうな。」

 虔三郎はにやりと笑うと蜜を滴らせる蜜壺ではなく、その影で秘やかに息づく菊座をそろりとなで上げたのだ。

「きゃあっ!」

 何度も抱かれてきたがそこに触れられたのは初めてであった。まさかの愛撫に結衣は驚き、虔三郎にしがみつくが、虔三郎は結衣を片手で強く抱きしめたまま菊座への愛撫を止めない。

「やめて・・・・・くださいませ・・・・・そこは不浄の・・・・はうんっ。」

「だめだ。」

 結衣の懇願を強く撥ね付け、そのまま虔三郎は菊座をくすぐるように愛撫し続ける。思わぬ場所への愛撫はうずきを伴い、結衣の身体を這い上がる。今までとは明らかに違う、だが決して不快ではないその感覚を受け入れてしまいそうな自分に結衣は愕然とする。どこまでも浅ましい己を知られたくなくて虔三郎から逃れようとするが身体に力が入らない。恥ずかしさのあまり、目に涙を浮かべながら無言で虔三郎に訴えかけるが虔三郎はあえてそれを無視して繊細なその部分を傷つけぬよう丁寧に嬲り続ける。

「これくらいで音を上げてどうする。まだ入り口を撫でているだけだけで怯えやがって・・・・・最終的には月役の時にも務めが果たせるようになって貰うんだから覚悟しておけ。」

 その言葉に結衣は驚きの表情を見せる。なで上げられるだけでも驚異なのに衆道の真似事まで考えているとは-------------。

「お前は俺が買ったんだぞ、その事を忘れるな。生かすも殺すも-------------どんな躾をしようと俺の勝手だ。大枚はたいて妓楼の妓を抱くなんて馬鹿な真似をいつまでも俺にさせるな。」

 冷たく、そして欲情に熱く掠れた声で言い放つと、虔三郎は指に力を込めた。



UP DATE  2010.03.09

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約2ヶ月近く振りの『横浜慕情』です。書いた本人なのに詳細なストーリーをすっかり忘れているという(爆)。
そしてお読み戴いたあとでなんですが、自由民権運動の下りはあんまり気にしないで下さいませv単に出張で家を空けるっている場面を書きたかっただけですので。基本的にこちらの方は歴史的史実を取り入れることはありますが、あくまでも雰囲気作りですのでお気楽にどうぞ~(笑)。

この前は中年黒ヒラメ夫婦が主役でしたが、今回は本来の主役が主役です。最後の方に怪しげなプレイに入りそうな感じはありますが、いっても本格的なものではないでしょう。いぢわるなふりして優しいところがありますので、虔三郎クン(爆)。お結衣ちゃんのうるうる瞳にどこまで我を通せるものか私自身楽しみにしつつ続きを書いてゆきます。


次回は3/16、23:00~の予定です。
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