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「横浜慕情(大人向け)」
横浜慕情~虔三郎と結衣

横浜慕情 桜の銀鱗・其の貳

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だいぶ暖かさを増した春夜の闇を冷たく不機嫌な虔三郎の声が引き裂き、同時に結衣の菊座を撫でていた指に力がこもる。その刹那、結衣の秘められた菊の花が押し広げられ、固い蕾が僅かにほころんだ。さらに力を込めれば虔三郎の細い指は結衣の菊花に吸い込まれてゆくだろう。

「やあっ!」

 結衣の全てを暴く虔三郎の強引な愛撫に結衣は珍しく抵抗を見せるが、虔三郎のもう一方の腕に強く抱きしめられている為、逃げることはおろか身じろぎをすることさえ困難だ。それでも己の最も恥ずかしい部分に狙いを定め、侵入しようとしている虔三郎の指から逃れようと結衣は腰を揺すった。

「暴れるな!余計痛い思いをするぞ!」

 結衣が腰を揺すった瞬間、虔三郎が恫喝する。確かに暴れてしまったら爪などで菊花に傷がついてしまう可能性がある。その事に気がついたと言うよりは、虔三郎の恫喝におののいて結衣は身体を竦めた。

「別に俺は構わないんだぞ、結衣。慣れていないこの状態でいきなり挿れたって。」

 結衣の耳朶を舐めるように囁くと虔三郎は指の先端で菊花を弄び始めた。くすぐり、指の第一関節の四半分ほど菊花の中央に指を押し込んでは不意に気を逸らす。最初こそ身体を強張らせていた結衣だったが虔三郎の愛撫で徐々にその強ばりを解いていった。結衣の唇からは微かに喘ぎ声が漏れはじめ、ますます虔三郎を昂ぶらせてゆく。

「・・・・・そうだ。大人しく受け入れていれば無理強いはしない。」

 虔三郎は一旦結衣を解放すると、素早く己の下帯をむしり取り、腰を結衣に密着させた。熱く、硬い逸物が結衣の繊細な花弁に当たり結衣を赤面させる。そして虔三郎の手は再び結衣の菊花を捉え、今度は前と後ろ両方から責め立て始めた。
 熱い怒張は結衣の濡れそぼった花芽を擦りあげ、不埒な指は再び結衣の菊花の蕾を弄ぶ。快楽を訴えようにもその唇は虔三郎の唇に塞がれ絡め取られている。全ての性感帯から同時に与えられる快感から逃れられず、結衣の意識は欲望に霞み始めていた。虔三郎に囲われた当初は快感を感じることはあれど溺れるまではいかなかった。だが、虔三郎に女の快楽を教え込まれて四ヶ月、結衣の身体はその禁断の甘露の味をすっかり覚え、それに溺れるようになってしまっているのである。
 まるで阿片のように虔三郎の愛撫は結衣を蝕み虜にしていったが、それでも最後の一線を許すまでには至らなかった。

「このまま後ろに挿れちまえばそれほど痛みを感じないんじゃないか?結衣。」

 結衣の唇を解放した虔三郎が意地悪く囁いた言葉に、結衣の目からぽろり、と一粒の涙が零れる。

「それだけは・・・・・まだ・・・・お許し下さいませ、虔三郎様。」

 快楽に溺れつつも結衣は必死の抵抗を見せた。本来男を受け入れるべき部分での情交でさえようやく慣れてきたというのに、またあの痛い思いをしなければならないのかと思うと身体の奥底から震えが走る。少しでも猶予を引き出そうという防衛本能からなのか、結衣は必死に虔三郎に訴え目を潤ませるのだ。この潤んだ目を、そして涙を見てしまうとさすがの虔三郎もこれ以上は無理強いできなくなる。ちっ、と軽く舌打ちをすると結衣の菊花を弄んでいた指を離し、その代わりに弾けそうなくらい硬く張り詰めた己の怒張を蜜の滴る結衣のとば口へと宛がった。

「ならば月役の時でも俺を満足させられる方法を考えるんだな。いつまでも甘えが許されるとは思うなよ!」

 虔三郎は捨て台詞を吐くと、一気に結衣を貫き覆い被さった。



 遠くに波の音だけが聞こえる静かな部屋を、艶めかしい濡音と甘く掠れる結衣の喘ぎが支配する。明るすぎる座敷ランプの光の下、虔三郎と結衣は激しく交わっていた。どこまでも深く、激しく繋がりたいと結衣を強く抱きしめる虔三郎であったが心の奥底にある餓えは何故か癒せない。

(こいつは・・・・・俺のことをどう思っているんだ。)

 結衣は虔三郎が借金の代わりに買いとった女である。しかし、生殺与奪は全て虔三郎が握っているにも拘わらず、本当の意味で結衣から全てを奪うことが出来ないでいるのだ。
 確かに結衣は虔三郎に従順で、虔三郎の方が物足りないと思うほどだが、それはあくまでも金のなせる技である。その事は横浜の裏社会にも脚を突っ込んでいる虔三郎自身が嫌と言うほど知っている。望んでもしょうがないことだと頭では理解しているのに、それ以上を求め始めようとしている自分に虔三郎は自嘲した。

(俺はこいつに本気になり始めているのか・・・・・馬鹿な。)

 しかし、否定すればするほどその考えはますます大きくなってゆく。いっそ結衣に平伏してしまえば楽になるのかも知れない。だがそれは男の矜持が許さなかった。思い通りにならないのなら、いっそめちゃくちゃに壊してしまいたいと思いつつ、涙の一粒を見てしまっただけで己の意思を曲げてしまう------------こんな感情を抱いたのは初めてであった。

(妾の癖に・・・・・俺を支配するのか、結衣!)

 激しく結衣を責め立てながらも言いしれぬ不安に苛まれる。

「け・・・んざぶ・・・・ろう・・・・さま・・・・ぁ。」

 己の名を呼ぶ結衣の唇に喰らいつき、虔三郎は結衣の身体を貪欲に貪り続けた。そうでもしなければ不安に押し潰され、結衣を殺してしまいかねないのだ。

(いっそ本当にひとつになれたら・・・・。)

 いっそ身体も心も熔け果てて、二度と別れられぬようになればこの苦しみから逃れられるのだろうか・・・・・こびりつく不安を見ないように、虔三郎は目の前の快楽にのめり込んでいった。



 いつも以上に激しい情事が終わったあと、虔三郎はひとり煙草をくゆらせていた。情事で疲れ果ててしまった結衣は日だまりの匂いのする布団の中で微かな寝息を立てて寝入ってしまっている。

「まったく・・・・・無邪気な顔して主より先に寝やがって・・・・・。」

 煙草盆に灰を落としながら、人には聞かせられないような-------------起きている結衣にさえ聞かせられないような------------優しく、蕩けそうな声で憎まれ口を叩く。そもそも最愛の人に愛を囁くような声を出している自覚さえ今の虔三郎にはないだろう。
 障子越しの月明かりに照らされた結衣の寝顔は満足げな微笑みを浮かべているようで、虔三郎は指でその頬を撫でた。その時である。

「・・・ぶ・・・ろ・・・・さま。」

 結衣の唇が微かに動く。

「結衣?」

 結衣が起きたのかと思い虔三郎が答えるが、結衣はまだ寝ているらしい。起き上がることはなく僅かに身じろぎをした後、今度は虔三郎の耳にもはっきり聞こえる寝言を呟いた。

「けん・・・・ざぶろう・・・・・さま。」

 月明かりに照らされた微笑みはますます深くなり、これ以上はないほど幸せだと言わんばかりである。虔三郎は胸にちくりとした痛みを感じ、煙管を手にしたまま立ち上がり障子を開ける。
 三分咲きの彼岸桜が月明かりに銀色に輝き目に眩しい。どこまでも暗い闇の中で光り輝く彼岸桜は、妾という日陰の存在になってもまっすぐに生きようとする結衣のようだった。

「馬鹿な奴だ・・・・・・・。」

 確かに現状では、虔三郎にすがることしかできないだろう。だが、寝言とはいえ------------否、寝言だからこそ-------------あんな幸せそうな表情で自分の名を呼ばれるとは。心の片隅に『結衣を日陰者にしたのは自分だ。』という後ろ暗さを抱えているせいか、結衣の寝言は虔三郎の不安をほんの少し解きほぐす。

「・・・・・今年は一度くらい地味な花見も悪くないな。」

 仕事関係や馴染みの妓楼の花見もあるが、ひとつくらい自分のための------------自分と結衣のための花見をするのも悪くはない。煙管の灰を湿った庭先の土に落としながら虔三郎はぼんやりと考えていた。



 それから一週間後のことである。小田原への出張も一段落付き、虔三郎は配下の者達に給金を渡した。兄から任された明豊堂の支店に務めている店員へはともかく、自分子飼いの配下に対してはそれなりに良い給金を虔三郎は渡している。その分仕事もきついのだが・・・・・。

「これでようやくちゃぶ台が買えます。」

 給金を手にし、中身をちらりと覗いた藤堂が嬉しげに言う。

「ちゃぶ・・・・台?」

 意外な言葉に虔三郎は眉を顰めた。今月は特に小田原への出張分が上乗せされていただけに給金袋の中身は豊かな筈だがそれにしても『ちゃぶ台』とは意外である。この当時の『ちゃぶ台』とはは西洋料理店の食卓であり、明治三年、すでに仮名垣魯文が著した『萬国航海西洋道中膝栗毛』にこの言葉が西洋料理店の食卓を指す俗語として登場していた。

「確かに身の丈は西洋人並だがちゃぶ台はいきすぎなんじゃないのか?」

 虔三郎の疑問に藤堂はくすくすと笑って答えた。

「そんなちゃんとした『ちゃぶ台』じゃないんですよ。元々西洋料理店用に作られたものの失敗作なんですけどね。脚をぶったぎって使い易くしてくれたのを格安で譲ってくれるって知人がいるんです。」

 どうやら床に座る生活用に改良したものを作っている人物がいるらしい。もしかしたら商売になるかもしれないな、と思いつつ虔三郎はさり気なく藤堂に探りを入れる。

「しかしそんなものがお前のところの借家にあったって狭いだけだろうが。」

「いえいえ、それがそうでもないんですよ。」

 藤堂は待っていましたとばかりに、いかにちゃぶ台が便利なものかしゃべり出した。

「使う時だけ部屋の真ん中に置いて、寝る時には壁際に立てかけておけるんです。小さいものでしたら女子の力でも簡単に移動ができるんですよね。しかも裁縫台にも文机にもなりますし、そうそうお膳も要らなくなるんです!ちゃぶ台があればお椀とお茶碗意外お皿や鉢物は共有できるんで。」

「お前・・・・・家長の威厳って言うものはお前にはないのか。」

 膳を使わず、一つのちゃぶ台で食事をするという事は『家族皆平等』ということを示す。膳の置く場所------------それこそ上座、下座によって家族内の身分を示してきた日本家庭の食卓としては驚異だ。特に幼い頃から兄と格差をつけられてきた虔三郎にとってはそう簡単に信じることができない。

「家長なんて・・・・今でこそ稼ぎが同じくらいになりましたけど今までは妻が一家の大黒柱でしたんでねぇ。むしろ私の位が上がったと嬉しく思います。」

 へらへらと笑いながらも藤堂の目は笑っていなかった。もしかしたらこの男も『身分』がらみで辛酸を舐めてきたのかも知れない、だからこそ『平等』の象徴である『ちゃぶ台』にこだわるのか-------------虔三郎はこれ以上この話に突っ込まぬ方が良いと判断し話題を変えた。

「そうそう、原のおやっさんから『若いもんを連れて桜を見に来い。』って誘いを受けている。本牧まで脚を伸ばさなきゃならないんだがかまわないか?」

 『原のおやっさん』とは横浜を代表する実業家・原善三郎のことであり、表稼業------------すなわち明豊堂の支店がらみで虔三郎は二倍も年の離れている老実業家と懇意にしていた。

「もちろんです!」

「行くに決まっているでしょう!」

 彼らの目的は花より酒なのだろうが、それでも嫌々行くよりは良いだろう。虔三郎は承諾の使者を早速原善三郎の許へ向かわせた。



 そしてこの花見の席で虔三郎は私事に置いて窮地に立たされることになる。



UP DATE 2010.03.16

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『桜の銀鱗』その二です。結局結衣ちゃんのうるうるに負けて責めあぐねてしまいました、虔三郎(笑)。こうやって徐々に甘やかすようになるんでしょうね~。(そして尻に敷かれるように・・・・・以下略)。

身体を重ね合わせていながら互いの本心が掴み切れていない二人です。果たしてどこまでこの状態が続くのでしょうかねぇ。夢の中でしか己の気持ちを表現できない結衣と相手の意識が無いところでしか甘い言葉を囁けない虔三郎、似たもの同士なんでしょう。このままじゃ埒があかないので『原のおっさん』こと原善三郎様に助けて頂こうと生糸貿易で財を成した大物貿易商に次回お出まし頂くことになりました。調べればとんでもなくスゴイ人なんですが、こちらはあくまでも娯楽作品(笑)。『面倒見の良いちょっとおせっかいなおっちゃん』とだけ頭に入れて頂ければありがたいです。(暇つぶしに虔三郎をおちょくっている、ってところでしょう。)


次回は3/23、『桜の銀鱗』の章、最終話です。
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