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「横浜慕情(大人向け)」
横浜慕情~昌憲と亜唯子

明豊堂分家にて(後編)~横浜慕情 昌憲と亜唯子の章・其の肆

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『亜唯子は・・・・・結衣がおまえの父親に暴行された時にできた子だ。』


 虔三郎叔父の、あまりにも衝撃的な話を聞いた滝沢は、放心状態のまま亜唯子に帰宅の挨拶もせずに明豊堂分家を後にした。

(俺と・・・・・亜唯子が・・・・兄妹だって?)

 しかもそれは、自分の父親が叔母の結衣を暴行した時に孕んだ子だという。あまりにも救いのない事実の数々を受け入れられず、滝沢は苦悩する。

(これは悪い夢だ・・・・・夢が覚めれば、きっと俺は本家の二階の部屋でまどろんでいるに違いない。)

 だが、べたべたと纏わり付く不快な海風がその甘い考えを吹き飛ばす。先ほど虔三郎叔父から聞いた話は夢なんかではないのだ。

『血の繋がった妹かもしれないから一緒になることができない』

 と、いきなり聞かされても、そう簡単に納得できるものではない。だが少しでも近親相姦の危険があるならば亜唯子との関係は諦めるべきなのだろう。出口のない迷路のような逡巡に浸かっているうちにいつの間にか滝沢は港に出てきてしまっていた。

「俺は・・・・・どうしたらいいんだ!亜唯子を諦めるなんて・・・・・!」

 岸壁の縁に腰かけ、滝沢は頭を抱えた。亜唯子をあっさり諦めることができたらこんなに苦しまなくて済むのにと、前髪を嬲る風を煩わしく感じながら滝沢は思い悩む。

 自分の愛する妻を手籠めにした男の息子に対し、きちんと理由を説明してくれた虔三郎叔父を恨むつもりは毛頭無いし、叔父の立場であれば自分もまた同じ判断を下しただろう。だが、恋心はそんな事で割り切れるものではないのだ。潮騒と汽笛、そして港で働く男達の騒めきの中、滝沢は物思いに耽っていた。



「昌憲従兄さま~っ!」

 どれくらいの時間が経ったのだろうか。不意に聞こえた亜唯子の声に、滝沢は思わず顔を上げた。すると横浜税関の方から亜唯子が走ってくるのが見えたのだ。

「亜唯子・・・・・・。」

 息を切らしながら駆け寄ってきた亜唯子は、顔を上気させ滝沢ににじり寄る。

「何で一言も言わずに家を出ちゃったの?心配したんだから!」

 亜唯子はぷう、っと頬をふくらませ滝沢に文句を言った。その仕草があまりにも愛らしく、滝沢の表情は思わず緩む。

「ああ、済まない。ちょっと叔父貴に言われたもので・・・・・大したことじゃないけどな。」

 滝沢は言葉を濁しながら亜唯子の髪に触れた。その瞬間海風が舞い、しなやかな長い髪が滝沢の指に絡む。

「お父様の言うことなんて気にしなくていいのに!」

 やはり自分に一言もなく滝沢が明豊堂分家を出てしまったのが悔しかったのだろう。亜唯子は恨めしげな視線で滝沢を見つめながら訴えた。

「そう言うなって。亜唯子にとって大事な父親なんだぞ。」

 父親---------その言葉に滝沢は心の痛みを感じた。もしかしたら亜唯子の父親は虔三郎ではなく、滝沢の父親である昌次郎である可能性もあるのだ。

(亜唯子の父親は虔三郎叔父だ!叔母を蹂躙した親父の血なんか一滴だって入っているものか!)

 だが、否定すればするほど、沸き上がる暗雲の様に不安が滝沢の心を染めてゆく。

「亜唯子・・・・・愛している。」

 このままでは虔三郎叔父との約束を破り、亜唯子に出生の秘密をこぼしてしまうかもしれない。そんな不安を亜唯子に悟られないよう、滝沢は亜唯子を強く抱きしめた。

「昌憲・・・・・にい・・・・さま?」

 普段亜唯子に対して紳士的な態度で接している滝沢の思わぬ行動に亜唯子は面食らうが、嫌がる様子もなくただ身を任せている。

(こんなに・・・・・亜唯子の身体は柔らかいんだ。もっと、子供子供しているかと思っていたけど・・・・・。)

 腕の中で滝沢に身を任せきっている亜唯子の身体は、滝沢が想像していた以上の柔らかさとしなやかさを有していた。今まで抱いたどんな女よりも魅惑的なその肢体に、滝沢は驚きと興奮を覚えてしまう。

(亜唯子が・・・・・欲しい。)

 体中の血が沸騰したかの様に滝沢の身体は熱を帯び、得体の知れぬもやもやしたものが身体の芯からわき出してくる錯覚に陥る。だが、このもやもやしたものに身も心も侵されてはいけないと軍人としての強靱な精神力でそれを押さえつけた。

「叔父貴を説得するのは大変だろうけど・・・・・必ず説得してみせるから。」

 まるで自分自身を説得するように滝沢は亜唯子にささやき、その頬に唇を寄せる。その頬も子供のものとは違う柔らかさを滝沢の唇に伝え、滝沢は己の中の獣を押さえつけようと躍起になる。

(俺には間違いなく・・・・・・忌まわしい親父の血が流れているらしい。)

 亜唯子を手中の玉の如く大事にしたいという思いは勿論ある。だがそれと同じくらい亜唯子を抱擁し、己のたぎりを亜唯子にぶつけたいという欲望もまた滝沢の中にはあるのだ。
 そんな心の均衡は、亜唯子の頬への接吻によって崩れ、もやもやした得体の知れないものが欲情という名の感情となって迸る第一歩でなってしまった事に滝沢本人は全く気づかなかった。

「亜唯子、絶対に夫婦になろうな。」

 亜唯子を我がものにしようとする己の白昼夢と戦いいながら、滝沢は自分の中の男を自覚せずにはいられなかった。



UP DATE 2010.09.02

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横浜慕情外伝四話目です。逡巡しながらも結局亜唯子のことを諦めることができないようですね、滝沢は。まぁ人間ダメ!といわれれば余計に燃え上がっちゃったりしますのでねぇ・・・・・。
今のところほっぺにちゅ~程度で済んでおりますがこの心情では一線を越えるのも時間の問題ではないかと思います。
今のところ拍手文では『本番なし』を目指しておりますが、たぶん本番に転がり込む可能性大かも・・・・・。このシリーズは本編、外伝共にあまり先を考えないようにしておりますのでどんな展開になるかわかりませんがおつきあいのほどよろしくお願いしますm(_ _)m

次回は10月第一木曜日、滝沢の妄想シーンに挑戦しようかと思います。(妄想なだけにどんだけヒドイものになるかは・・・・・・目指せ、檄エロで・爆)
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